M&Aアドバイザーは中途解約できる?解約前に確認する4つの条項と費用、乗り換えの注意点
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- M&Aの進め方
公開日:2026.10.01
2026.10.01
更新日:2026.10.01
2026.10.01
M&Aアドバイザーとの契約は中途解約できることがありますが、契約内容によっては支払済みの報酬は戻らず、テール条項の制約にも留意する必要があります。解約を検討したほうがよい場面、契約書で確認する4つの条項、中小M&Aガイドラインが示す条項の目安、乗り換え時の注意点を解説します。

契約して半年経つが、買い手候補の紹介が止まったままだ。着手金と月額報酬だけが出ていく。解約したいが、違約金や解約後の制約が気になる。M&Aアドバイザーとの契約は中途解約できますが、支払済みの報酬は原則として戻らず、解約後もテール条項の制約が残ります。
本記事では、解約を検討したほうがよい場面と契約書で確認する4つの条項を示したうえで、中小M&Aガイドラインが示す条項の目安を解説します。あわせて、解約の手順と乗り換え時の注意点を示します。
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M&Aアドバイザーとの契約は中途解約できるが費用と解約後の制約が残る
FA契約や仲介契約は、業務の委託を内容とする契約です。民法第651条は、委任について各当事者がいつでも解除できると定めています。
ただし、解約できることと負担がないことは別です。支払済みの着手金や月額報酬は原則として戻らず、解約後に成約した場合の手数料を定めるテール条項も残ります。
中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、FA契約・仲介契約の契約条項について複数の留意点を示しています。契約書の条項が目安に沿っているかを、解約の前に確認します。
まずは手元の契約書を取り出し、契約期間と解約条項の該当ページを開きます。
M&Aアドバイザーの役割と選び方については、下記で解説しています。
M&Aアドバイザーとは?業務内容や重要性、失敗しない選び方も解説
M&A専門家の選び方とは?種類や役割、失敗しないためのポイントも解説
中途解約を検討したほうがよい場面
不満があっても、解約が最善とは限りません。検討に値する場面は以下の4つです。
- 買い手候補の紹介が止まり進捗の報告がない
- 仲介の立場で買い手候補寄りの条件に誘導される
- 担当者が交代して事業の理解が引き継がれない
- 着手金や月額報酬に見合う作業が行われていない
それぞれを順に解説します。
買い手候補の紹介が止まり進捗の報告がない
解約を検討する第一の場面が、活動の停滞です。 中小M&Aガイドラインは、マッチングに通常は数か月から1年程度を要すると見込まれるとしています。
目安の期間を過ぎても候補先が出てこず、報告もなければ、進行に問題が生じているサインです。打診先の一覧と各社の反応を書面で求め、実際の活動量を確認します。
買い手候補の探し方と打診の進め方は、下記で解説しています。
M&Aの買い手の探し方とは?5つのルートと打診の進め方を売り手目線で解説
仲介の立場で買い手候補寄りの条件に誘導される
解約を検討する第二の場面が、立場の偏りです。 仲介者は売り手と買い手候補の双方と契約するため、双方の利益が対立する局面が生じます。
価格や条件の交渉で、一方的に譲歩を求められていないかを点検します。判断に迷う場合は、別の専門家へ意見を求める方法もあります。
仲介とFAの立場の違いについては、下記で解説しています。
【事業売却はM&A仲介に任せてはいけない】FAとM&A仲介の売却手法の違いは?
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
担当者が交代して事業の理解が引き継がれない
解約を検討する第三の場面が、担当者の交代です。 事業の内容や交渉の経緯が引き継がれていなければ、一から説明をやり直すことになります。
交代後の面談で、過去のやり取りが把握されているかを確認します。引き継ぎが不十分であれば、責任者への申し入れを先に行います。
着手金や月額報酬に見合う作業が行われていない
解約を検討する第四の場面が、費用と作業の不均衡です。 着手金や月額報酬を払い続けているにもかかわらず、成果物が出てこない状態です。
確認するのは次の点です。
- 企業概要書の作成と更新の状況
- 打診した買い手候補の件数と結果
- 報告の頻度と内容
契約書に記載された業務範囲と、実際の作業を照らし合わせます。差があれば、書面で改善を求めたうえで判断します。
解約前に契約書で確認する4つの条項
判断の前に、契約の中身を把握します。感情で動けば、不利な条件のまま解約することになります。確認する条項は以下の4つです。
- 中途解約の可否と予告期間
- 着手金・月額報酬・中間金の扱い
- 解約後に成約した場合のテール条項
- 直接交渉の制限と秘密保持の義務
それぞれを順に解説します。
中途解約の可否と予告期間
まず見るのが、解約できるかどうかです。 契約書に中途解約の定めがあれば、手続きと予告期間が記載されています。
確認する項目は次のとおりです。
- 中途解約の可否と、必要な理由の有無
- 通知の方法と予告期間
- 解約の効力が生じる時期
予告期間が定められていれば、通知から効力発生まで時間がかかります。条項を読み、解約が成立する日を逆算します。
着手金・月額報酬・中間金の扱い
次に確認するのが、支払済みの報酬の扱いです。 返還の定めがあるかどうかで、負担は大きく変わります。
対象となる費用は次のとおりです。
- 契約時に支払った着手金
- 毎月支払っている月額報酬(リテイナーフィー)
- 基本合意時に支払った中間金
返還の定めがなければ、戻らないのが原則です。支払済みの総額を集計し、解約による損失を把握します。
着手金・中間金・成功報酬の仕組みについては、下記で詳しく解説しています。
M&Aの成功報酬とレーマン方式とは?基準額で変わる3つの注意点
解約後に成約した場合のテール条項
解約後まで効力が残るのが、テール条項です。 契約終了後の一定期間内に成約した場合、元のアドバイザーへ手数料を支払う定めを指します。
確認する項目は次のとおりです。
- テール期間の長さ
- 対象となる買い手候補の範囲
- 手数料の算定方法
対象の範囲が広く定められていれば、乗り換えの障害になります。条項の文言を正確に読み取り、対象先を特定します。
直接交渉の制限と秘密保持の義務
交渉の自由を制約する条項もあります。 依頼者が自ら買い手候補を見つけて直接交渉することを禁じる定めです。
あわせて、秘密保持の義務が契約終了後も続く場合があります。渡した資料の返還や廃棄についても定めを確認します。
制限の範囲と有効期間を読み取り、解約後に取れる行動を把握します。
秘密保持義務に違反した場合の責任については、下記で解説しています。
M&Aで機密保持違反が起きるとどうなる?民事・刑事・行政上の責任と対処法を解説
中途解約にかかる費用
解約には金銭的な負担が伴うことがあります。何が戻り、何が戻らないかを先に把握しておきましょう。押さえる点は以下の3つです。
- 支払済みの着手金や月額報酬は原則として返還されない
- 違約金や実費の精算を定めている契約がある
- アドバイザー側の義務違反があれば費用なしで解除できる場合がある
それぞれを順に解説します。
支払済みの着手金や月額報酬は原則として返還されない
解約しても、払った分は戻らないのが通常です。 着手金は業務の開始に対する対価、月額報酬は期間中の業務に対する対価とされるためです。
返還を求めるには、契約書に返還の定めがあるか、アドバイザー側に義務違反がある必要があります。契約書の返還条項の有無を確認します。
違約金や実費の精算を定めている契約がある
解約時の支払を定める契約もあります。 違約金のほか、実費の精算が求められる場合があります。
対象になりやすいのは次のとおりです。
- 企業概要書の作成にかかった費用
- 買い手候補への打診に要した交通費
- 外部専門家へ支払った費用
金額の根拠を示すよう求められます。請求があった場合に備え、内訳の提示を求める姿勢で臨みます。
アドバイザー側の義務違反があれば費用なしで解除できる場合がある
相手方に契約違反があれば、扱いは変わります。 契約で定めた業務を行わない、秘密保持に反したといった事情があれば、債務不履行を理由とする解除を主張できる余地があります。
主張には根拠の記録が必要です。報告の有無、打診の実績、やり取りの記録を時系列でまとめ、弁護士へ相談します。
M&Aを途中でやめる場合の注意点は、下記で解説しています。
M&Aは途中でやめられる?破談の原因やタイミング、売り手側の注意点を解説
中小M&Aガイドラインで確認できる契約条項の目安
契約条項には、公的な目安があります。中小M&Aガイドラインが示す内容は以下の5つです。
- 専任条項の契約期間は最長6か月から1年以内
- テール条項の期間は最長2年から3年以内
- テール条項の対象は紹介を受けた買い手候補に限る
- 任意の時点で中途解約できる条項が望ましい
- 直接交渉の制限は契約終了までに限る
それぞれを順に解説します。
専任条項を設ける場合の契約期間は最長でも6か月から1年以内が目安とされている
契約期間には目安があります。 中小M&Aガイドラインは、専任条項を設ける場合の契約期間について、最長でも6か月から1年以内を目安とするとしています。
※参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章Ⅱ7 専任条項の留意点 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
専任条項とは、他の支援機関へ重ねて依頼することを制限する定めです。期間が長いほど、依頼者は身動きが取れなくなります。
自社の契約期間が目安を超えていないかを確認します。
テール条項の期間は最長でも2年から3年以内が目安とされている
テール期間にも目安が示されています。 同ガイドラインは、テール期間について最長でも2年から3年以内を目安とするとしています。
テール期間が長ければ、解約後も長期にわたって手数料の負担が残ります。10年といった長期の定めがあれば、目安から大きく外れています。
※参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章Ⅱ9 テール条項の留意点 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
契約書のテール期間を確認し、目安との差を把握します。
テール条項の対象は支援機関が関与・接触した買い手候補に限るとされている
対象範囲にも制約があります。 同ガイドラインは、テール条項の対象を、M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定するとしています。
打診されていない買い手候補まで対象に含む条項であれば、目安から外れています。紹介を受けた候補先の一覧を求め、対象範囲を確定させます。
依頼者が任意の時点で中途解約できる条項を設けることが望ましいとされている
中途解約の定めについても示されています。 同ガイドラインは、依頼者が任意の時点で仲介契約・FA契約を中途解約できる旨を明記する条項を設けることが望ましいとしています。
※参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章Ⅱ7 専任条項の留意点 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
契約書に中途解約の定めがなければ、目安に沿っていません。交渉の際の根拠として示せます。
直接交渉を制限する条項は契約が終わるまでに限るとされている
直接交渉の制限にも期間の目安があります。 中小M&Aガイドラインは、直接交渉の制限に関する条項の有効期間を、仲介契約・FA契約が終了するまでに限定するとしています。
あわせて、制限される候補先は、当該M&A専門業者が関与・接触し紹介した候補先のみに限定するとされています。
契約終了後も制限が続く条項であれば、目安から外れています。
M&Aアドバイザーとの契約を中途解約するステップ
判断が固まれば、手順に沿って進めます。ステップは以下の4つです。
- 契約書の条項と支払済みの報酬を確認する
- セカンドオピニオンで解約の判断を確かめる
- 書面で解約を通知し受領の記録を残す
- 紹介を受けた買い手候補の一覧を受け取っておく
それぞれを順に解説します。
契約書の条項と支払済みの報酬を確認する
着手は、事実の確認からです。 事実を確かめないまま動けば、不利な条件で解約することになりかねません。
整理する項目は次のとおりです。
- 契約日、契約期間、更新の有無
- 支払済みの金額と支払日
- 解約、テール、直接交渉制限の各条項
上記をまとめ、判断の材料にします。
セカンドオピニオンで解約の判断を確かめる
解約の是非は、第三者の目で確かめます。 進捗の遅れが相手方の問題か、案件の性質によるものかは、当事者には判断しにくい部分です。
中小M&Aガイドラインは、他の支援機関へセカンド・オピニオンを求めることを許容すべきだとしています。ただし秘密保持義務違反にならないよう注意が必要だとも示されています。
※参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章Ⅱ7 専任条項の留意点 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
相談先へ、秘密保持の範囲を先に確認します。
相談先の選び方については、下記で解説しています。
事業承継とM&Aの違いとは?3つの承継方法と後悔しない相談先の選び方を解説
M&A支援会社から提案を受けた際の注意点は、資料でも確認できます。無料でダウンロードできます。
書面で解約を通知し受領の記録を残す
通知は書面で行います。 口頭では、通知した事実と日付を証明できません。
記載する内容は次のとおりです。
- 契約を特定する情報(契約日、契約名)
- 解約する旨と根拠となる条項
- 解約の効力が生じる日
配達証明付きの内容証明郵便を使えば、到達の記録が残ります。控えを保管し、日付を記録します。
紹介を受けた買い手候補の一覧を受け取っておく
解約前に入手しておきたいのが、候補先の一覧です。 テール条項の対象を確定させるために要ります。
一覧に含める項目は次のとおりです。
- 打診した買い手候補の名称
- 打診の日付と結果
- 秘密保持契約を締結した先
一覧がなければ、後に対象範囲で争いが生じます。解約通知と併せて、書面での提出を求めます。
解約後に別のアドバイザーに依頼するときの注意点
乗り換えには制約が伴います。注意点は以下の3つです。
- テール条項の対象となる買い手候補とは新しいアドバイザー経由でも手数料が生じうる
- 前のアドバイザーに渡した資料と秘密保持の範囲を確認する
- 次の依頼先とは契約前に中途解約とテール条項の条件を確認する
それぞれを順に解説します。
テール条項の対象となる買い手候補とは新しいアドバイザー経由でも手数料が生じうる
乗り換えで大きな論点となるのが、テール条項です。 対象となる買い手候補と成約すれば、新しいアドバイザーを通じていても、元のアドバイザーへの手数料が発生しうるためです。
二重の手数料負担を避けるには、対象先を把握しておく必要があります。前段で入手した候補先の一覧を、新しいアドバイザーへ共有します。
前のアドバイザーに渡した資料と秘密保持の範囲を確認する
渡した資料の扱いも確認します。 決算書や顧客リストが相手方に残ったままでは、情報管理の懸念が残ります。
確認する項目は次のとおりです。
- 提出した資料の一覧
- 契約終了後の返還または廃棄の定め
- 秘密保持義務が存続する期間
返還または廃棄を書面で求め、完了の報告を受け取ります。
次の依頼先とは契約前に中途解約とテール条項の条件を確認する
同じ失敗を繰り返さないため、契約前に条件を確認します。 中小M&Aガイドラインは、仲介契約・FA契約の締結前に、業務の範囲・内容や手数料、専任条項、テール条項などを記載した書面の交付と説明を求めています。
※参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章Ⅱ4(2)仲介契約・FA契約の締結 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
売り手のみと契約するFAは、売り手側の条件設計と交渉に専念できる立場にあります。契約前に、解約とテールの条件を書面で確認します。
M&A支援会社の比較ポイントは、下記で解説しています。
M&Aの相談先はどこがいい?コンサル会社の比較ポイントを売り手目線で解説
M&Aアドバイザーの中途解約に関するよくある質問
M&Aアドバイザーの中途解約について、相談の現場で多く寄せられる質問を3つ取り上げます。基本合意後でも解約できるか、アドバイザー側から解除されることはあるか、トラブルの相談先の3点です。
買い手候補との基本合意の後でも解約できますか?
契約上は可能です。ただし基本合意の段階で中間金を支払っていれば、返還されないのが通常です。買い手候補との関係にも影響するため、解約の理由と時期は慎重に判断します。基本合意に独占交渉権の定めがあれば、買い手候補との関係でも制約が残ります。
アドバイザー側から契約を解除されることはありますか?
契約書に解除事由が定められていれば、依頼者側の資料提出の遅れや虚偽の説明などを理由に解除される場合があります。契約書の解除条項を確認し、自社が該当しないかを点検します。
アドバイザーとのトラブルはどこに相談できますか?
中小企業庁は、M&A支援機関に係る相談窓口を設けています。あわせて、事業承継・引継ぎ支援センターや弁護士への相談も選択肢です。相談の前に、契約書とやり取りの記録を時系列でまとめておきます。
M&Aに関する詐欺的な手口と見抜き方は、下記で解説しています。
M&A詐欺とは?代表的な手口や被害事例、見抜くためのポイントも解説
まとめ
M&Aアドバイザーとの契約は中途解約できますが、支払済みの報酬は原則として戻らず、テール条項の制約も残ります。判断の前に、契約書の条項を正確に読み取ることが先決です。
要点は以下のとおりです。
- 確認する条項は、中途解約・報酬の扱い・テール条項・直接交渉の制限の4つ
- 中小M&Aガイドラインは、専任条項の契約期間を最長6か月から1年以内、テール期間を最長2年から3年以内の目安としている
- テール条項の対象は、紹介を受けた買い手候補に限るとされている
- 解約前に、紹介を受けた候補先の一覧を書面で受け取る
- 乗り換え先とは、契約前に解約とテールの条件を確認する
契約書を読み直すところから始まります。まずは契約期間と解約条項を確認し、ガイドラインの目安と照らし合わせてください。
仲介会社から提案を受けた際に確認したい点は、こちらの資料でも確認できます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
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