M&Aの前に設備投資はするべき?売却価格への影響と補助金で注意する3つの点
-
#
- M&Aの進め方
公開日:2026.10.27
2026.10.27
更新日:2026.10.27
2026.10.27
M&Aの前の設備投資は、評価方法によって売却価格への反映のされ方が変わります。価格を下げる設備の状態、投資を判断する3つの基準、買い手に示す準備、補助金で買った設備の注意点と承継時に使える補助金を解説します。

古くなった機械を、売却の前に入れ替えるべきか。新しい設備にすれば会社の価値は上がりそうだが、多額の投資が本当に売却価格に反映されるのかは分からない。
M&Aの前の設備投資は、評価方法によって売却価格への反映のされ方が変わります。投資の時期や資金の出し方を誤ると、手元に残る金額が減ることもあります。
本記事では、設備投資が売却価格にどう反映されるかと、売却価格に影響しやすい設備の状態を解説します。あわせて、投資を判断する基準、買い手に示す準備、補助金で買った設備の注意点を示します。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。 また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。 まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
設備投資とは
設備投資とは、事業に使う機械や建物、車両、ソフトウェアなどを取得したり、更新したりするための支出です。取得した設備は、使える期間にわたって減価償却費として少しずつ費用になります。
財務省の法人企業統計によると、2026年4〜6月期の全産業(金融業、保険業を除く)の設備投資(ソフトウェアを除く)は、前年同期比で3.6%増えました。
M&Aでは、設備は会社の価値を支える資産であると同時に、更新の費用がかかる負担にもなります。
| 見方 | 内容 |
|---|---|
| 資産としての価値 | 設備を売った場合や、同じ設備を買い直す場合の金額 |
| 収益を生む力 | 設備が生み出す売上と利益 |
| 将来の負担 | 更新や修繕にかかる費用 |
自社の設備がどの見方で評価されるのかを、売却を考え始めた段階で確認します。
設備投資は評価方法によって売却価格への反映のされ方が変わる
同じ設備投資でも、どの評価方法を使うかによって、売却価格への影響は異なります。主な評価方法ごとの違いは以下の3つです。
- 時価純資産法では設備の時価が純資産に加わる
- 年買法では減価償却費が利益を減らして価格を押し下げる
- DCF法では将来の更新投資がキャッシュフローから差し引かれる
それぞれを順に解説します。
時価純資産法では設備の時価が純資産に加わる
資産と負債を時価で評価する時価純資産法では、設備の時価が純資産に加わります。 帳簿の金額ではなく、中古で売った場合の価格などで評価し直します。
専用の機械は、中古での買い手が少なく、帳簿の金額より時価が低くなることがあります。
投資した金額が時価として評価されるとは限りません。主要な設備の中古の相場を、売却の前に調べておきます。
時価純資産法とDCF法の違いは、下記で詳しく解説しています。
DCF法と時価純資産法の違いとは?5つの比較軸と実務の年倍法・マルチプル法を解説
年買法では減価償却費が利益を減らして価格を押し下げる
時価純資産に数年分の利益を加える年買法では、投資の直後に減価償却費が増え、利益を押し下げます。 利益に掛け算をして価格を出すため、利益の減少は価格の減少につながります。
一方で、新しい設備の分だけ時価純資産は増えます。
どちらの影響が大きいかは、投資の額と時期によって変わります。投資をした場合としない場合の評価額を、FAに試算してもらいます。
年買法の計算方法は、下記で解説しています。
DCF法では将来の更新投資がキャッシュフローから差し引かれる
将来の現金の流れをもとに評価するDCF法では、将来に予定される設備の更新費用がキャッシュフローから差し引かれます。 更新の時期が近い設備が多いほど、評価が下がる可能性があります。
反対に、売却の前に更新を済ませていれば、将来の更新費用は小さくなります。
買い手がどの時期にどれだけの更新費用を見込んでいるかを確認し、売り手の見込みと比べます。
DCF法の計算方法は、下記で解説しています。
DCF法とは?M&Aでの計算方法やメリット・デメリットを売り手目線で解説
設備の状態が売却価格に影響しやすい3つのケース
設備の状態によっては、買い手候補から価格の引き下げを求められる場合があります。いずれも、買い手候補の調査で確認されやすい点です。価格に影響しやすいケースは以下の3つです。
- 更新の時期が近い古い設備が多い
- 設備投資の借入金やリース債務が残っている
- 使っていない設備が帳簿に残っている
それぞれを順に解説します。
更新の時期が近い古い設備が多い
更新の時期が近い古い設備が多いと、買い手候補は近い将来の更新費用を価格から差し引こうとする場合があります。 買収した直後に多額の投資が必要になるためです。
老朽化した設備は、故障による生産の停止のリスクも抱えています。
設備ごとの使用年数と、メーカーの部品の供給が続くかを確認します。買い手候補に聞かれる前に、更新の計画を示せるようにします。
設備投資の借入金やリース債務が残っている
設備投資のための借入金やリースの支払いが残っていると、残高の分が価格から差し引かれる場合があります。 買い手候補は、借入金と同じく、リースの残りの支払いも負債として扱うことがあるためです。
設備の価値が上がっても、借入金で買っていれば、純資産はほとんど増えません。
借入金とリースの残高を設備ごとに一覧にし、売却価格への影響を確認します。
リース債務の扱いと引き継ぎの手続きは、下記で詳しく解説しています。
M&Aでリース債務はどう扱われる?売却価格への影響と引き継ぎの手続き、売り手が必要な準備
使っていない設備が帳簿に残っている
使っていない設備が帳簿に残っていると、評価の段階で減額される可能性があります。 事業に使っていない設備は、収益を生まないためです。
撤去や処分に費用がかかる設備は、さらに価格を下げる要因になります。
工場の片隅に置かれたままの古い機械や、使わなくなった車両がよくある例です。使っていない設備は、売却の前に売却や除却を済ませます。除却損が出る場合は、決算への影響も確認します。
売却前の準備全般については、下記で詳しく解説しています。
M&Aの磨き上げとは?売却価格を高める5つの領域と進め方を解説
売却前に設備投資をするかを判断する3つの基準
売却の前の設備投資は、効果を見極めてから判断します。投資の目的が、事業の成長か、売却価格の引き上げかによっても判断は変わります。判断の基準は以下の3つです。
- 投資の効果が売却までに利益として表れるか
- 買い手が引き継いだあとも使う設備か
- 借入で投資すると売り手の手取りが減らないか
それぞれを順に解説します。
投資の効果が売却までに利益として表れるか
投資の効果が、売却までに利益の増加として表れるかを見ます。 効果が表れる前に売却すれば、買い手候補は投資の成果を評価に反映しにくいためです。
生産性を上げる設備でも、稼働が安定するまで時間がかかります。従業員が操作に慣れるまでの期間や、不良品の発生が落ち着くまでの期間も見込む必要があります。
売却の時期から逆算して、決算に効果が表れるまでの期間を見込みます。
買い手が引き継いだあとも使う設備か
買い手が引き継いだ後も、対象の設備を使い続けるかを考えます。 買い手が自社の設備に置き換える予定なら、投資が評価されない可能性があります。
同業の買い手は、生産の拠点を集約することがあります。
買い手の候補が絞れていれば、FAを通じて設備の使い方の方針を探ります。候補が決まる前の大きな投資は慎重に判断します。
借入で投資すると売り手の手取りが減らないか
借入金で設備投資をすると、売り手の手取りが減らないかを確認します。 設備が増えても、同じ額の借入金が増えれば、株式の価値は変わらないためです。
投資の効果が価格に反映されなければ、借入の利息の分だけ手取りが減ります。
自己資金で投資するか、借入で投資するかによって、手取りがどう変わるかを試算します。
売却後にかかる税金と手取りの考え方は、下記で解説しています。
会社売却後にかかる税金は?計算方法や確定申告、税引後手取りを増やす対策を解説
売却の進め方や仲介会社から提案を受けた際の注意点を、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
設備の状態を買い手に示す3つの準備
設備の状態を正しく示せれば、買い手候補の不安を和らげ、価格の引き下げを防ぐことにつながります。進めたい準備は以下の3つです。
- 固定資産台帳と設備の現物を照らし合わせる
- 設備ごとの更新の時期と費用の見込みを一覧にする
- 修繕や点検の記録をそろえる
それぞれを順に解説します。
固定資産台帳と設備の現物を照らし合わせる
最初に、固定資産台帳と、実際にある設備を照らし合わせます。 台帳に載っているのに現物がない設備や、現物があるのに台帳にない設備が見つかることがあるためです。
台帳と現物が合っていないと、買い手候補は管理の体制に不安を持つ可能性があります。すでに廃棄した設備が台帳に残っていれば、資産を過大に見せていると受け取られかねません。
設備ごとに設置の場所と状態を確認し、台帳を正しい内容に直します。
買い手候補による調査(DD)の流れは、下記で解説しています。
M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは?目的や流れ、売り手側のポイントを解説
設備ごとの更新の時期と費用の見込みを一覧にする
次に、設備ごとに、更新の時期と費用の見込みを一覧にします。 買い手候補は、買収の後にどれだけの投資が必要かを知りたいと考えるためです。
一覧があれば、買い手候補が過大な更新費用を見込むことを防ぎやすくなります。今後5〜10年の更新の予定を年ごとに並べると、投資の山がいつ来るかが伝わります。
メーカーや設備業者から更新費用の見積もりを取り、一覧の根拠として添えます。
修繕や点検の記録をそろえる
設備の修繕や点検の記録をそろえます。 定期的に手入れされた設備であることを示せれば、使用年数が長くても評価を保ちやすくなります。
法令で点検が義務づけられている設備は、点検の記録がないと、法令違反を指摘される可能性があります。クレーンやボイラー、消防設備などが代表的です。
点検の記録と修繕の履歴を、設備ごとにまとめておきます。大きな故障と、故障後の対応の記録も含めます。
補助金で設備投資をした会社が売却で注意する3つの点
補助金を使って買った設備には、売却の際に特有の制約があります。注意したい点は以下の3つです。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領|中小企業基盤整備機構
- 処分制限期間の設備を事業譲渡で移すと承認と納付が要る
- 事業計画期間中に大企業へ承継すると目的に反する使用とみなされる
- 株式譲渡でも事業化状況の報告や賃上げの要件は会社に残る
それぞれを順に解説します。
処分制限期間の設備を事業譲渡で移すと承認と納付が要る
補助金で買った設備を、処分が制限される期間のうちに事業譲渡で移すと、事前の承認と補助金の納付が必要になります。 公募要領は、補助事業で取得した財産の譲渡を、制限される処分の一つとしているためです。
公募要領によると、処分する場合は、残存簿価相当額や譲渡額などにより、補助金の額を限度に納付しなければなりません。
事業譲渡を検討する場合は、補助金で買った設備の一覧と、処分が制限される期間を確認します。
事業計画期間中に大企業へ承継すると目的に反する使用とみなされる
補助金で買った設備を、事業計画の期間中に大企業へ承継すると、補助金の目的に反する使用とみなされることがあります。 中小企業の成長を支える補助金であるためです。
中小企業新事業進出補助金の手引きは、大企業への承継などで補助事業以外に用いた場合を、交付の目的に反する使用と判断するとしています。
買い手が大企業の場合は、補助金の返還が必要になるかを、事務局に確認します。
株式譲渡でも事業化状況の報告や賃上げの要件は会社に残る
株式譲渡で会社ごと売っても、補助金に伴う報告や賃上げの要件は会社に残ります。 補助金を受けたのは会社であり、株主が変わっても義務は続くためです。
公募要領などによると、事業化の状況の報告は5年間で計6回求められ、賃上げの目標を達成できなければ補助金の返還を求められます。
買い手候補は、返還の可能性を価格の交渉で持ち出す場合があります。残っている義務を一覧にして、買い手候補に開示します。
承継に伴う設備投資には事業承継・M&A補助金を使える場合がある
事業の承継に伴う設備投資には、事業承継・M&A補助金を使える場合があります。中小企業庁の事業承継・M&A補助金は、承継やM&Aの場面ごとに、いくつかの枠を設けています。
事業承継・M&A補助金 申請要件|事業承継・M&A補助金事務局
| 枠 | 主な対象 |
|---|---|
| 事業承継促進枠 | 5年以内に親族内承継や従業員承継を予定する事業者の設備投資など |
| 専門家活用枠 | M&Aに伴う専門家の活用の費用 |
| PMI推進枠 | M&Aで経営資源を譲り受けた後の統合のための専門家費用や設備投資 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継やM&Aに伴う既存事業の廃業の費用 |
16次公募の申請受付は、2026年10月2日から11月6日までです。事業承継促進枠の補助上限は800万円から1,000万円とされています。
第三者への売却を予定している売り手は、専門家活用枠で、M&Aの専門家に支払う費用の一部の補助を受けられる場合があります。公募は回ごとに要件や期間が変わるため、申請の前に最新の公募要領を確認します。
事業承継・M&A補助金の枠と申請の流れは、下記で詳しく解説しています。
事業承継・M&A補助金とは?売り手でも使える枠や申請の流れを解説
M&Aの設備投資に関するよくある質問
設備投資とM&Aについて、経営者から寄せられることの多い質問を3つ取り上げます。設備投資が多い業界はどこか、赤字の会社は売れるか、リースの設備は引き継げるかの3点です。
設備投資が多い業界はどこですか?
一般に、製造業のほか、運輸業や情報通信業、電気・ガス業など、大きな設備を使う業種で設備投資が多くなります。設備投資の多い業種では、設備の状態が売却価格に与える影響も大きくなります。業種ごとの設備投資の動向は、財務省の法人企業統計で確認できます。
赤字でも設備が多い会社は売れますか?
売れる場合があります。中小企業庁のガイドラインは、中小企業のM&Aでは時価純資産法などで算定した価値をもとに交渉するケースが多いとしています。設備を必要とする買い手にとっては、赤字でも設備に価値があります。新たに同じ設備をそろえるより、会社ごと買う方が早く安い場合もあるためです。
リースの設備もM&Aで引き継げますか?
株式譲渡では、リース契約は会社に残ります。ただし、契約に株主の変更の通知や承諾の条項があれば、リース会社への対応が必要です。事業譲渡では、リース会社の承諾を得て契約を移します。リースの残高は、買い手候補が負債として価格の交渉に含めることがあります。
まとめ
M&Aの前の設備投資は、評価方法によって売却価格への反映のされ方が変わります。投資の効果と資金の出し方を見極めてから判断することが大切です。
要点は以下のとおりです。
- 年買法では投資の直後の減価償却費が、DCF法では将来の更新費用が評価に響く
- 古い設備、借入金やリースの残り、使っていない設備は価格に影響しやすい
- 売却前の投資は、効果の時期、買い手の使い方、手取りへの影響で判断する
- 固定資産台帳、更新の見込み、点検の記録を整えて買い手に示す
- 補助金で買った設備は、処分の制限や報告・賃上げの義務が残る
設備投資は、売却の直前に慌てて行うものではありません。売却の時期を見据えて、投資するかどうかを専門家と試算してから決めてください。
売却前に押さえておきたい注意点は、資料でも確認できます。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。 また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。 まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
関連記事
-
事業譲渡による退職は会社都合になる?離職理由の分かれ目と売り手の5つの確認事項
2026.10.27
2026.10.27
#M&Aの進め方
-
M&Aで価格以外に比較すべき条件とは?手取りと売却後を左右する11の項目
2026.10.27
2026.10.27
#M&Aの進め方
-
M&A仲介の提示価格の妥当性は?売り手が確かめたい5つの視点を解説
2026.10.27
2026.10.27
#企業価値・株式価値評価(バリュエーション)
-
M&Aの反社チェックとは?調べる範囲と4つの方法と売り手が見るべき7つのポイント
2026.10.27
2026.10.27
#M&Aの進め方
-
会社を廃業すると資産はどうなる?売却から分配までの流れと5つの注意点
2026.10.27
2026.10.27
#M&Aの進め方
カテゴリ一覧
-
事業承継を考える
-
M&Aを検討・進行する
-
売却後を考える
-
その他