M&Aの反社チェックとは?調べる範囲と4つの方法と売り手が見るべき7つのポイント
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- M&Aの進め方
公開日:2026.10.27
2026.10.27
更新日:2026.10.27
2026.10.27
M&Aの反社チェックは、取引の相手方と役員・株主が反社会的勢力でないかを確かめる手続きです。重要な理由、調べる範囲と4つの方法、行うタイミング、売り手の備えと、買い手に疑いが出たときの対応を解説します。

会社を売る相手が、実は反社会的勢力と関わっていたらどうなるのか。M&Aでは、会社自体と従業員の将来を相手に託すため、相手方の素性を確かめることが重要です。M&Aの反社チェックは、取引の相手方と役員・株主が反社会的勢力でないかを確かめる手続きです。売り手にとっては、買い手候補を確かめる場面と、自社が確かめられる場面の両方があります。本記事では、反社チェックが重要な理由と、調べる範囲・方法・タイミングを解説します。あわせて、売り手が自社の調査に備えることと、買い手候補に疑いが出たときの対応を示します。
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M&Aの反社チェックとは
M&Aの反社チェックとは、取引の相手方の会社と、相手方の役員や株主などの関係者が、暴力団をはじめとする反社会的勢力や関係者でないかを確かめる手続きです。
政府は2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を定め、反社会的勢力とは取引を含めた一切の関係を遮断することを基本原則としています。同指針は、暴力団が企業活動を装うなどして実態を隠しており、暴力団排除の意識が高い企業でも、知らずに取引してしまう可能性があると指摘しています。
M&Aでは、会社や事業自体を相手に引き渡します。相手が反社会的勢力であれば、従業員や取引先まで巻き込む被害につながるおそれがあります。
買い手の候補が挙がった段階から、反社チェックを売却の手順に組み込みます。
M&Aで反社チェックが重要な3つの理由
反社会的勢力との関わりは、会社に深刻な影響を及ぼします。反社チェックが重要な理由は以下の3つです。
- 反社会的勢力が関わる取引は契約の解除や損害賠償の原因になる
- 金融機関との取引を続けられなくなるおそれがある
- 暴力団排除条例で契約の相手方を確かめるよう求められている
それぞれを順に解説します。
反社会的勢力が関わる取引は契約の解除や損害賠償の原因になる
反社会的勢力が関わる取引は、契約の解除や損害賠償の原因になる可能性があります。 多くの企業は、契約書に暴力団排除条項を設けているためです。
警察庁「令和5年度 企業を対象とした反社会的勢力との関係遮断に関するアンケート(調査結果)」
長野県警察の資料によると、暴力団排除条項では、相手方が暴力団などと判明した場合に契約を解除でき、解除に伴う損害賠償を負わないと定めるのが一般的です。
取引先が買収後の会社との契約を解除すれば、事業の継続が難しくなる可能性があります。主要な取引先の契約書に暴力団排除条項があるかを確認します。
金融機関との取引を続けられなくなるおそれがある
株主や役員に反社会的勢力が関わると、金融機関との取引を続けられなくなるおそれがあります。 全国銀行協会は、融資と当座勘定の暴力団排除条項の参考例を2011年6月に改正しています。
多くの金融機関は、取引先が反社会的勢力と判明した場合に、取引を停止し、解約できる条項を導入しています。
借入金の一括返済を求められれば、資金繰りが行き詰まるおそれがあります。買い手候補が金融機関との取引に支障のない相手かを確かめます。
暴力団排除条例で契約の相手方を確かめるよう求められている
各都道府県の暴力団排除条例は、事業者に契約の相手方を確かめるよう求めています。 東京都の条例(第18条)では、契約が暴力団の活動を助長する疑いがある場合に、相手方が暴力団関係者でないかを確認するよう努めると定めています。
条例は、暴力団への利益供与も禁じています(第24条)。
会社の所在地の条例で、事業者に何が求められているかを確認します。
M&Aの反社チェックで調べる3つの範囲
反社チェックは、相手方の会社だけを調べても十分ではありません。会社の表向きの情報に問題がなくても、背後にいる人物や会社に問題がある場合があるためです。調べる範囲は以下の3つです。
- 会社と過去の商号
- 役員と主要株主
- 関連会社と主要な取引先
それぞれを順に解説します。
会社と過去の商号
相手方の会社は、現在の商号だけでなく、過去の商号でも調べます。 問題を起こした会社が、商号を変えて取引を続けている場合があるためです。
過去の商号や本店の所在地は、商業登記簿(登記事項証明書)の履歴で確かめられます。
現在の商号で問題がなくても、過去の商号で報道や行政処分が見つかることがあります。登記簿で判明した過去の商号ごとに検索します。
役員と主要株主
相手方の役員と主要な株主も、調べる対象に含めます。 会社の表向きの代表者に問題がなくても、実際に会社を動かす株主に問題がある場合があるためです。
中小企業庁の資料も、仲介会社やFAが買い手候補を調べる対象として、買い手候補の会社に加え、経営者、役員、主要株主、関連会社を挙げています。
株主が法人であれば、株主である法人の役員と株主までたどります。
関連会社と主要な取引先
相手方の関連会社と主要な取引先も、必要に応じて調べます。 相手方が、グループ会社や取引先を通じて反社会的勢力とつながっている場合があるためです。
親会社や子会社、資金の出し手となっている会社は、特に確認が必要です。
関連会社の範囲は、相手方の決算書や会社案内で確かめられます。どこまで調べるかを、FAや弁護士などの専門家と相談して決めます。
反社チェックの4つの方法
反社チェックには、手軽な方法から専門的な方法まであります。主な方法は以下の4つです。
警察庁「令和5年度 企業を対象とした反社会的勢力との関係遮断に関するアンケート(調査結果)」
- インターネットと新聞記事を検索する
- 商業登記簿で役員や所在地の変遷を確かめる
- 専門のツールや調査会社を使う
- 疑いがあれば警察や暴力追放運動推進センターに相談する
それぞれを順に解説します。
インターネットと新聞記事を検索する
最初に、インターネットと新聞記事で、相手方の名前を検索します。 中小企業庁の資料も、買い手候補の調査の方法として、Web上の不芳情報の検索を挙げています。
会社名と役員名を、「逮捕」「行政処分」「暴力団」などの言葉と組み合わせて検索します。
新聞記事のデータベースを使えば、過去の報道も確かめられます。検索した言葉と結果を記録に残します。
商業登記簿で役員や所在地の変遷を確かめる
商業登記簿で、役員や本店の所在地の移り変わりを確かめます。 中小企業庁の資料も、買い手候補の事業実態の確認方法として、商業登記簿の確認を挙げています。
短い期間に役員や本店所在地が何度も変わっている場合は、注意が必要です。
登記簿は法務局で誰でも取得できます。現在の事項だけでなく、履歴の分かる登記簿を取り寄せます。
専門のツールや調査会社を使う
反社チェックの専門ツールや調査会社を使う方法もあります。 中小企業庁の資料は、外部のデータベースや調査会社を活用した調査を挙げています。
専門ツールは、報道などの情報を集めたデータベースから、名前で一括して照会できます。
調査会社は、より深い聞き取りや現地での調査も行います。疑いの程度に応じて、使う方法を選びます。
疑いがあれば警察や暴力追放運動推進センターに相談する
調べた結果、疑いが残る場合は、警察や暴力追放運動推進センターに相談します。 政府の指針は、平素から警察、暴力追放運動推進センター、弁護士と緊密に連携することを求めています。
警察は、一定の要件を満たす場合に、事業者に暴力団員に関する情報を提供しています。
相談の際は、相手方の情報と、疑いを持った理由を整理して持参します。
反社チェックの費用は方法によって変わる
反社チェックの費用は、どの方法で、どこまで調べるかによって大きく変わります。
| 方法 | 費用の考え方 |
|---|---|
| インターネットや新聞記事の検索 | 主に社内の手間。新聞記事データベースは利用料がかかる場合がある |
| 商業登記簿の取得 | 1通ごとの手数料がかかる |
| 専門ツール | 月額の利用料や、照会の件数に応じた料金がかかる |
| 調査会社 | 調べる範囲と深さに応じて、案件ごとに見積もる |
| 警察や暴力追放運動推進センターへの相談 | 公的な相談窓口として利用できる |
M&Aでは、仲介会社やFAが反社チェックを行い、調査の費用を報酬に含めている場合もあります。
調査を省けば、問題のある相手と取引するおそれが高まります。仲介会社やFAに、調べ方と費用の負担を確認します。
M&Aの流れで反社チェックを行う4つのタイミング
反社チェックは、一度行えば終わりではありません。M&Aの流れの中で行うタイミングは以下の4つです。
- 仲介契約やFA契約の前に支援機関が依頼者を確かめる
- 秘密保持契約の前に買い手候補を確かめる
- デューデリジェンスで役員や株主まで調べる
- 最終契約で反社会的勢力でないことを表明保証する
それぞれを順に解説します。
仲介契約やFA契約の前に支援機関が依頼者を確かめる
仲介会社やFAは、契約を結ぶ前に依頼者を確かめます。 中小企業庁の資料は、仲介会社やFAが、買い手候補と契約を結ぶ前に、買い手候補の反社会的勢力への該当性などを調べるよう求めています。
売り手も、仲介会社やFAから自社について確認を受けます。
同じ資料は、仲介会社やFAが、売り手との契約の前に、想定している買い手候補の調査の概要を売り手に説明しなければならないとしています。説明を受けた内容を記録に残します。
仲介会社とFAの立場の違いについては、下記で解説しています。
M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説
M&A仲介会社から提案を受けた際の注意点を、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
秘密保持契約の前に買い手候補を確かめる
会社の情報を開示する前に、買い手の候補を確かめます。 秘密保持契約を結べば、会社名や財務の情報を相手に渡すことになるためです。
一度渡した情報は、取り戻せません。
候補が挙がった段階で、インターネットと登記簿で最低限の確認を行います。疑いがあれば、秘密保持契約を結ぶ前に候補から外します。
秘密保持契約で取り決める内容は、下記で解説しています。
デューデリジェンスで役員や株主まで調べる
交渉が進んだ段階では、相手方の役員や株主まで範囲を広げて調べます。 中小企業庁の資料は、M&Aの手続きが進む過程でも必要な調査を行い、最終契約までに相手方を十分に確かめるよう求めています。
買い手候補が売り手を調べるデューデリジェンスと並行して、売り手も買い手候補を確かめます。
調べた範囲と結果を、最終契約の前に仲介会社やFAと共有します。
デューデリジェンスの流れと売り手の対応は、下記で解説しています。
M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは?目的や流れ、売り手側のポイントを解説
最終契約で反社会的勢力でないことを表明保証する
最終契約では、双方が反社会的勢力でないことを表明し、保証します。 契約の後に虚偽が分かった場合に、契約を解除し、損害の賠償を求める根拠になるためです。
表明保証とあわせて、暴力団排除条項を設けるケースが多く見られます。
表明保証の対象に、役員や主要株主まで含まれているかを確認します。
表明保証の内容と注意点は、下記で解説しています。
最終契約で確認したい条項は、弁護士監修のチェックリストにまとめています。
【無料資料】最終契約前に弁護士と共に確認するべき契約書の項目
売り手が自社の反社チェックに備える3つのこと
売り手も、買い手候補から反社チェックを受けます。説明に詰まれば、交渉が止まる可能性があります。自社の調査に備えることは以下の3つです。
- 株主名簿を整えて所在が分からない株主をなくす
- 過去の取引先や役員の経歴を一覧にする
- 自社の契約書に暴力団排除条項を入れる
それぞれを順に解説します。
株主名簿を整えて所在が分からない株主をなくす
株主名簿を整え、所在が分からない株主をなくしておきます。 買い手候補は、株主の素性まで確認することがあるためです。
所在が分からない株主がいると、反社会的勢力との関係がないことを説明できません。
株主名簿の記載と、実際の株主が一致しているかを確認します。名義だけの株主や、相続で分散した株式は、売却の前に整理します。
株主名簿の整え方と名義株の解消は、下記で解説しています。
M&Aに向けた株主名簿の整備とは?不備のリスクや売り手側の進め方を解説
名義株とは?M&Aで問題になる理由や実質株主の確認、解消方法を解説
過去の取引先や役員の経歴を一覧にする
過去の主な取引先と、役員の経歴を一覧にしておきます。 買い手候補から問い合わせを受けた際に、すぐに説明できるようにするためです。
過去に問題のある相手と取引があった場合も、関係を断った経緯を示せれば、説明がつきます。
退任した役員を含めて、在任の期間と経歴を整理します。
自社の契約書に暴力団排除条項を入れる
自社の取引の契約書に、暴力団排除条項を入れておきます。 政府の指針は、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入することを求めています。
警察庁「令和5年度 企業を対象とした反社会的勢力との関係遮断に関するアンケート(調査結果)」
条項があれば、反社会的勢力との関係を遮断する体制が整っていることを、買い手候補に示せます。主要な取引先との契約書から、順に見直します。
買い手候補に反社の疑いが出たときの3つの対応
買い手候補に反社会的勢力の疑いが出た場合は、すぐに対応を決めます。判断が遅れるほど、渡す情報が増えます。主な対応は以下の3つです。
企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について|法務省
- 担当者任せにせず会社として判断する
- 交渉を打ち切り自社の情報をそれ以上渡さない
- 警察や暴力追放運動推進センター、弁護士に相談する
それぞれを順に解説します。
担当者任せにせず会社として判断する
疑いが出たときは、担当者だけに任せず、会社として判断します。 政府の指針は、反社会的勢力への対応を担当者や担当部署だけに任せず、経営トップ以下、組織全体として対応するよう求めています。
担当者が一人で対応すると、相手方の要求に応じざるを得ない状況に陥ることがあります。
経営者が自ら判断し、対応の方針を記録に残します。
交渉を打ち切り自社の情報をそれ以上渡さない
疑いが強ければ、交渉を打ち切り、自社の情報を追加で渡すことはしません。 渡した情報が、不当な要求の材料に使われるおそれがあるためです。
打ち切りを伝える際は、理由を詳しく説明する必要はありません。
秘密保持契約に基づき、渡した資料の返還や破棄を求め、対応の経過を記録に残します。
警察や暴力追放運動推進センター、弁護士に相談する
交渉を打ち切る前後に、警察や暴力追放運動推進センター、弁護士に相談します。 打ち切った後に、相手方から不当な要求を受けることがあるためです。
政府の指針も、不当な要求には民事と刑事の両面から法的に対応するとしています。
相手方とのやり取りの記録を整理し、相談の際に持参します。
M&Aの反社チェックに関するよくある質問
反社チェックについて、経営者から寄せられることの多い質問を3つ取り上げます。個人情報保護法との関係、問題がなければ安全か、コンプライアンスチェックとの違いの3点です。
反社チェックをすることは個人情報保護法に反しませんか?
公開されている情報を、取引の判断のために確認すること自体は、直ちに個人情報保護法に反するものではありません。同法第27条第1項第2号は、人の生命、身体または財産の保護のために必要で、本人の同意を得ることが困難な場合などに、同意のない第三者提供を認めています。取り扱いに迷う場合は、弁護士などの専門家に確認します。
反社チェックで問題がなければ安全な買い手と考えてよいですか?
そうとは限りません。中小企業庁は、M&Aの後に会社の資金を流出させ、経営者保証を解除しないまま連絡を絶つ不適切な買い手の存在を指摘しています。財務の状況や、過去のM&Aで契約を守ってきたかも、あわせて確かめます。
不適切な買い手の手口と見抜き方は、下記で解説しています。
M&A詐欺とは?代表的な手口や被害事例、見抜くためのポイントも解説
コンプライアンスチェックと反社チェックは何が違いますか?
反社チェックは、反社会的勢力との関わりの有無を調べるものです。コンプライアンスチェックは、反社会的勢力との関わりに加えて、法令違反や行政処分、訴訟、過去の取引上のトラブルなど、より広い範囲を調べます。M&Aでは、両方を行うケースが多く見られます。
コンプライアンス違反が見つかった場合の影響は、下記で解説しています。
M&Aでコンプライアンス違反が発覚すると?6つの類型と価格への影響、売却前の点検
まとめ
M&Aの反社チェックは、取引の相手方と役員・株主が反社会的勢力でないかを確かめる手続きです。会社の売却では、買い手候補を確かめる場面と、自社が確かめられる場面の両方があります。
要点は以下のとおりです。
- 反社会的勢力との関わりは、契約の解除や金融機関との取引停止につながる
- 会社だけでなく、過去の商号、役員、主要株主、関連会社まで調べる
- 検索と登記簿の確認から始め、疑いがあれば調査会社や警察に相談する
- 秘密保持契約の前、デューデリジェンス、最終契約の各段階で確かめる
- 疑いが出たら、会社として判断し、情報を渡さず、外部の専門機関に相談する
会社を託す相手を確かめることは、従業員と取引先への影響を抑えることにもつながります。仲介会社やFAがどこまで調べているかを確認し、自社でも買い手候補を確かめてください。
買い手候補を選ぶ際の注意点は、資料でも確認できます。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。 また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。 まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
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