会社を廃業すると資産はどうなる?売却から分配までの流れと5つの注意点
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- M&Aの進め方
公開日:2026.10.27
2026.10.27
更新日:2026.10.27
2026.10.27
会社を廃業すると、資産は現金に換えられて債務の返済にあてられ、残った分が株主に分配されます。資産の種類ごとの処分方法、負債とのバランスによる行き先の違い、受け取る際の税金、手元に残る資産を増やすために確認したい5つのことを解説します。

会社をたたんだら、預金や不動産、社長が会社に貸したお金はどうなるのか。廃業を考える経営者からよく聞かれる疑問です。会社の資産は、廃業すると現金に換えられ、まず債務の返済にあてられます。株主の手元に届くのは返済を終えて残った分だけで、受け取る段階で税金もかかります。
本記事では、資産の処分方法と、負債との関係で変わる資産の行き先を確認したうえで、受け取る際の税金を解説します。あわせて、手元に残る資産を増やすために確認したい5つのことを示します。
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会社を廃業すると資産は換金されて債務の返済にあてられる
会社の資産は、社長個人のものではなく会社のものです。社長が全株式を持っていても、廃業するからといって会社の預金を自由に引き出せるわけではありません。
廃業すると、会社の資産は次の順序で扱われます。
- 資産を売却し、売掛金を回収して現金に換える
- 借入金や買掛金、税金などの債務を返済する
- 返済を終えて残った財産を、株主に分配する
会社法第502条は、清算中の会社は原則として債務を弁済した後でなければ、株主に財産を分配できないと定めています。
株主が受け取れるのは、資産の総額ではなく、債務を差し引いた残りです。
資産を現金に換える作業や債務の返済は、清算人が会社の名前で行います。清算人には解散前の社長が就くことが多いものの、社長個人としてではなく、清算する会社の代表として手続きを進める立場です。会社の資産を個人の口座へ移すといった処理は、手続きに沿わない限りできません。
廃業後の手取りを考えるときは、資産と負債の両方を並べて確認します。
解散・清算の手続きの流れは、下記で解説しています。
一人会社の廃業手続きの流れは?解散・清算の流れや費用、M&Aとの違いを解説
資産の種類によって処分の方法が異なる
会社が持つ資産は、種類によって現金に換える方法と注意点が異なります。主な資産の扱いは次のとおりです。
| 資産の種類 | 主な処分の方法 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 現金・預金 | 債務の返済にあてる | 引き出しは清算の手続きに沿って行う |
| 売掛金・貸付金 | 取引先や借り手から回収する | 回収できない分は価値がなくなる |
| 在庫 | 販売するか、買取業者に引き取ってもらう | 帳簿の金額で売れるとは限らない |
| 不動産 | 第三者に売却する | 担保が付いていれば金融機関との調整が要る |
| 車両・機械設備 | 中古市場で売却する | リース物件は会社の資産ではない |
| 保険積立金 | 保険を解約して返戻金を受け取る | 帳簿の金額と返戻金が異なる場合がある |
| 有価証券・会員権 | 売却または名義変更する | 換金に時間がかかる場合がある |
帳簿に載っている金額と、実際に換金できる金額は一致しないのが通常です。換金の手間と時間も資産ごとに異なります。
資産の一覧を作り、処分の方法と換金できる見込み額を書き込みます。
清算での不動産の処分方法は、下記で解説しています。
会社清算で不動産を処分するには?3つの方法と流れ、税金、売却という選択肢を解説
負債とのバランスで資産の行き先は変わる
資産が誰の手に渡るかは、負債との大小で決まります。同じ資産を持っていても、借入金の額によって株主に届く金額は大きく異なる場合があります。行き先が変わる場面は以下の3つです。
- 資産で負債を返し切れる場合
- 負債が資産を上回る債務超過の場合
- 経営者が会社の借入金を連帯保証している場合
それぞれを順に解説します。
資産で負債を返し切れる場合
資産で負債を返し切れる場合は、返済後に残った財産が株主に分配されます。 株主総会の決議で解散し、清算人が資産の換金と返済を進める通常の清算の手続きです。
分配される割合は、原則として持株比率に応じて決まります。株主が社長1人であれば、残った財産はすべて社長が受け取ります。
ただし分配までには、債権者に申出を求める期間(2か月以上。会社法第499条)を設ける必要があり、時間がかかります。資産の売却に手間取れば、分配の時期はさらに遅れます。分配を受け取る時期を見込み、生活資金の計画に反映します。
負債が資産を上回る債務超過の場合
負債が資産を上回る場合は、資産はすべて債権者への返済にあてられ、株主には何も残りません。 通常の清算は進められず、原則として、裁判所が関与する特別清算や破産の手続きになります。
破産の場合は、裁判所が選ぶ破産管財人が会社の資産を管理し、換金して債権者に配当します。会社の資産を経営者が自由に処分することはできなくなります。
返し切れない債務が残る見込みであれば、資産を動かす前に弁護士などの専門家へ相談します。
廃業・破産の違いと借入金の扱いは、下記で解説しています。
廃業と倒産の違いとは?解散・破産・休業との比較と経営者が取るべき選択肢を解説
経営者が会社の借入金を連帯保証している場合
経営者が会社の借入金を連帯保証していれば、会社の資産で返し切れなかった分は経営者個人に請求されます。 保証によって、会社の債務が経営者個人の負担に及ぶためです。
廃業すると、会社の資産で返せる金額を超えた部分が、個人の負担に置き換わります。個人の預金や自宅が返済の対象になる場合もあります。
経営者個人の負担は、会社の資産をいくらで換金できるかで変わります。換金額が帳簿より小さくなれば、保証人として返す金額は増えます。保証を付けている借入金の残高と、会社の資産で返せる範囲を並べて確認し、金融機関との協議の前に専門家へ相談します。
経営者保証の解除の方法は、下記で解説しています。
M&Aにおける経営者保証とは?解除方法やガイドライン、トラブル対策も解説
残った資産を受け取るときにかかる税金
資産が株主の手元に届くまでに、会社と株主の両方で税金がかかります。押さえたい点は以下の3つです。
- 資産の譲渡益には会社に法人税がかかる
- 残余財産の分配はみなし配当と株式の譲渡に分けて課税される
- 金銭以外で分配すると評価額で課税される
それぞれを順に解説します。
資産の譲渡益には会社に法人税がかかる
資産を換金して帳簿の金額を上回る現金が入れば、差額は会社の利益となり、法人税の対象になります。 会社を閉じる手続きの途中でも、利益が出れば申告と納税が必要です。
利益が出やすい資産は、土地に限りません。
- 減価償却が終わった車両や機械を中古で売った場合
- 保険を解約して、積立額を上回る返戻金を受け取った場合
- 取得した時より値上がりした有価証券を売った場合
反対に、在庫や設備を帳簿より安く手放せば損失が出ます。利益と損失を合わせた結果で税額が決まり、納めた税金の分だけ株主に渡る財産は減ります。換金する資産ごとに損益の見込みを出し、顧問税理士などの専門家と換金の順序を決めます。
残余財産の分配はみなし配当と株式の譲渡に分けて課税される
株主の手元に届いた財産は、税金の上では2つに切り分けられます。 出資した元手の払い戻しにあたる部分と、元手を超えて会社に貯まっていた利益にあたる部分です。後者が配当とみなされます。
No.1330 資本の払戻しや解散による残余財産の分配を受けたとき(みなし配当)|国税庁
国税庁の通達は、株式の譲渡所得等の収入金額とみなされる金額を、交付を受けた金銭等の価額の合計額からみなし配当の額を差し引いた金額としています。
配当とみなされた部分は、原則として配当所得として、給与や年金など他の所得と合算して課税されます。会社は株主に、みなし配当の額を通知します。通知された額をもとに、確定申告の要否を確認します。
残余財産の分配とみなし配当は、下記で詳しく解説しています。
会社清算の残余財産の分配はどう決まる?流れと税金、手取りが減る3つの注意点を解説
M&Aでみなし配当は発生する?課税の仕組みや手取りへの影響を売り手目線で解説
金銭以外で分配すると評価額で課税される
会社の土地や株式を現金に換えずに受け取る場合も、税金がかからないわけではありません。 受け取った財産を分配の時点の価額に置き換えて、現金で受け取った場合と同じように課税の計算をします。
手元に現金が入らないのに、税金だけは現金で納めることになります。土地であれば、名義を移す登記の費用や不動産取得税もかかります。
現物で受け取るか、会社で売却してから現金で受け取るかで、手間も税負担も変わります。受け取り方を決める前に、納税資金をどう用意するかを税理士などの専門家と確認します。
廃業前に手元へ残る資産を増やすために確認したい5つのこと
廃業の準備しだいで、手元に残る金額は変わります。確認したいことは以下の5つです。
- 資産を時価で洗い出して換金できる額を試算する
- 役員貸付金や役員借入金を清算前に精算する
- 役員退職金を支給するかどうかを検討する
- 会社の資産を身内に時価より安く売らない
- 会社ごと売却した場合の手取りと比べる
それぞれを順に解説します。
資産を時価で洗い出して換金できる額を試算する
最初に、資産を時価で洗い出し、換金できる額を試算します。 帳簿の金額で手取りを見積もると、実際の分配額と大きく差が出る場合があります。
見直しが必要になりやすい資産は次のとおりです。
- 長く売れ残っている在庫
- 回収の見込みが立たない売掛金
- 解約返戻金が積立額を下回る保険
- 値上がりや値下がりした土地
時価で作り直した貸借対照表から、返済後に残る金額を試算します。手続きの費用や従業員への退職金も差し引いておくと、実際の手取りに近づきます。不動産は複数の業者から査定を取ります。
役員貸付金や役員借入金を清算前に精算する
社長と会社の間の貸し借りは、清算の前に整理します。 会社から社長への貸付金は会社の資産であり、清算では回収の対象になります。
一方、社長から会社への貸付金は、会社にとっては負債です。会社の資産で返済されるか、社長が返済を受けずに放棄するかを決める必要があります。
放棄すると、会社に債務を免除された利益が生じ、法人税がかかる場合があります。貸し借りの残高を確認し、精算の方法を税理士などの専門家と決めます。
役員退職金を支給するかどうかを検討する
会社の財産を受け取る方法として、役員退職金を支給するかを検討します。 退職金として受け取るか、残余財産の分配として受け取るかで、税金のかかり方が異なります。
国税庁は、退職所得は他の所得と分離して税額を計算し、勤続年数に応じた退職所得控除額を差し引いた残りの2分の1を課税の対象とするとしています。ただし役員としての勤続年数が5年以下の場合は、2分の1とする措置がありません。
支給額によって会社側の扱いも変わります。退職金と残余財産の配分を、税理士などの専門家に試算してもらいます。
役員退職金の決め方は、下記で解説しています。
役員退職慰労金はM&Aでいくらまで?功績倍率法と損金算入の3要件を解説
会社の資産を身内に時価より安く売らない
会社の車や設備を家族に安く譲れば手元に残る、という考え方には注意が必要です。 安く譲った分だけ会社の現金が減り、債権者への返済や株主への分配にあてる財産が少なくなるためです。
税務上も、時価との差額を会社から個人への利益の移転とみなされ、想定外の課税を受ける場合があります。
債権者がいる場合は、さらに注意が要ります。中小M&Aガイドラインは、債務超過の会社が事業を不当に低い対価で譲渡した場合、債権者から詐害行為取消権を行使されるなどのリスクがあるとしています。家族に譲る資産があれば、価格の決め方を税理士などの専門家と事前に確認します。
会社ごと売却した場合の手取りと比べる
廃業を決める前に、会社ごと売却した場合の手取りと比べます。 清算では、資産を一つずつ処分した金額しか残りません。
会社を売却する場合、譲渡価格は資産の価値だけで決まるとは限りません。中小M&Aガイドラインは、時価純資産で算出した金額に数年分の利益を加算して譲渡額を決める場合もあるとしています。
利益が出ている会社ほど、清算と売却の差が大きくなる傾向があります。売却であれば、資産を個別に処分する手間や、処分で生じる損失も抑えやすくなります。売り手側の立場に立つFAに、売却した場合の手取りの見込みを相談します。
廃業とM&Aの違いは、下記で詳しく解説しています。
廃業とM&Aの違いを徹底解説!メリットや税金、向いているケースも紹介
売却の進め方や仲介会社から提案を受けた際の注意点を、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
会社の廃業と資産に関するよくある質問
会社の廃業と資産について、相談の現場で多く寄せられる質問を3つ取り上げます。一人会社の場合の受け取り、廃業費用の支払い、清算後に見つかった資産の扱いの3点です。
一人会社で社長が全株主なら残った資産はすべて受け取れますか?
債務をすべて返した後に残った財産は、株主である社長がすべて受け取れます。ただし、債権者に申出を求める期間が過ぎるまでは分配できません。受け取る金額のうち、みなし配当にあたる部分には所得税がかかり、分配の際に源泉徴収(所得税及び復興特別所得税20.42%)されます。
廃業にかかる費用は会社の資産から支払えますか?
支払えます。解散や清算結了の登記費用、官報公告の掲載料、税理士や司法書士への報酬は、清算の手続きに必要な費用として会社の財産から支払うのが通常です。費用を差し引いた後の金額が、債務の返済と分配の原資になります。
清算結了の後に資産が見つかったらどうなりますか?
会社に分配すべき財産が残っていたことになり、清算は終わっていなかったものとして扱われます。清算人が残りの財産を処分し、改めて分配する必要があります。財産を漏れなく洗い出しておけば避けられる手間です。登記の手続きも伴うため、司法書士などの専門家に相談します。
まとめ
会社を廃業すると、資産は現金に換えられ、まず借入金や買掛金などの債務の返済にあてられます。株主が受け取れるのは、返済を終えて残った財産だけです。
要点は以下のとおりです。
- 会社の資産は会社のもので、債務を返す前に株主へ分配することはできない
- 債務超過であれば資産は債権者に渡り、連帯保証があれば個人にも請求が及ぶ
- 残余財産は、みなし配当と株式の譲渡に分けて課税される
- 役員貸付金や役員借入金は、清算の前に精算の方法を決める
- 退職金と残余財産の配分、身内への売却価格で、税負担は変わる
清算で手元に残るのは、資産を一つずつ処分した金額です。廃業を決める前に、会社ごと売却した場合の手取りと比べてください。
会社を売却する際に押さえておきたい注意点は、資料でも確認できます。
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