廃業と倒産の違いとは?解散・破産・休業との比較と経営者が取るべき選択肢を解説

2026.04.30

公開日:2026.04.30

2026.04.30

2026.06.24

更新日:2026.06.24

2026.06.24

廃業と倒産の違いとは?解散・破産・休業との比較と経営者が取るべき選択肢を解説

「廃業」と「倒産」は、どちらも会社が事業活動を終える状況を指す言葉として使われることがあります。しかし、法的な意味合いや社会的影響は大きく異なり、経営者にとっての負担や、従業員・取引先への影響も変わります。これらを混同したまま判断すると、本来取れたはずの選択肢を逃したり、想定以上のダメージを受けたりすることにつながります。

さらに、ニュース記事や経営関連の資料では「解散」「破産」「休業」「閉業」「休廃業」といった関連用語が混在して使われており、それぞれの定義を整理しないまま読み進めると、自分のケースがどれに該当するのかが分かりにくくなります。経営者としては、まず用語の違いを正確に理解したうえで、自社の状況に合った出口戦略を判断する必要があります。

本記事では、廃業と倒産の違いを起点として、解散・破産・休業・閉業などの関連用語との違いを整理し、それぞれのメリット・デメリット、関係者への影響、経営者が取るべき判断基準、さらに廃業や倒産を避けるための第三の選択肢までを解説します。

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廃業とは

廃業は会社や事業の終わり方を表す用語ですが、法的な手続き名ではなく広い概念として使われています。まずは定義と近年の動向を整理し、そのうえで混同されやすい用語との違いを確認します。

  • 廃業の定義
  • 廃業が増えている背景
  • 廃業と倒産・解散・破産・休業・閉業との違い

それぞれを順に見ていきます。

廃業の定義

廃業とは、経営者の意思で会社や事業を自主的に終了させることを指す広い概念です。法律上の正式な手続き名ではなく、「経営者が自ら事業をたたむこと」の総称として使われます。法人の場合は解散と清算の手続きを経て廃業が完了し、個人事業主の場合は廃業届の提出を含む税務手続きが必要です。

重要なのは、廃業は必ずしも経営状態の悪化だけを理由に行われるわけではないという点です。黒字経営であっても、後継者不在や経営者の健康問題、事業の将来性への不安などを理由に、自主的に廃業を選ぶケースが増えています。これは「黒字廃業」と呼ばれ、近年の中小企業の廃業の特徴として注目されています。

廃業が増えている背景

近年、中小企業の廃業は高い水準で推移しています。帝国データバンクの調査によると、2025年に全国で休業・廃業、解散した企業は6万7949件となり、過去10年では前年(2024年の6万9019件)に次ぐ水準でした。

特徴的なのは、廃業の背景が多様化している点です。休廃業した企業のうち、直近損益で「黒字」だった企業の割合は2025年時点で49.1%と、約半数の経営者が、赤字に追い込まれる前に、余力のあるうちに事業を畳むという判断をしていることがうかがえます。経営者の高齢化も廃業増加の要因で、休廃業・解散時の経営者年齢は2025年1-8月平均で71.65歳と、5年連続で70歳代で推移しています。後継者不在、事業の将来性への不安、経営者の健康問題などが複合的に作用して、廃業を選ぶ経営者が増えているのが現状です。

※参考:帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2025年)」

廃業と倒産・解散・破産・休業・閉業との違い

廃業と似た言葉には、倒産・解散・破産・休業・閉業など複数の用語があります。意味を混同したまま議論を進めると、手続きや影響を見誤る原因になります。ここでは廃業を軸に、それぞれの違いを整理します。

廃業と倒産の違い

廃業と倒産の最大の違いは、事業を終える理由と経営者の意思です。廃業は経営者が自主的に事業を終了させる選択で、黒字・赤字を問わず行えます。倒産も、法律上の正式な手続き名ではありませんが、経営者の自主的な選択ではなく、経営破綻による事業継続不能状態を指す一般用語です。

具体的には、倒産には法的整理(破産、民事再生、会社更生、特別清算)と私的整理があり、経営が行き詰まって事業を続けられなくなった状態で選ばれる対応です。経営者の意思で選ぶ廃業と、経営破綻に追い込まれる倒産では、社会的な印象や取引先・従業員への影響が大きく異なります。

廃業と解散の違い

解散は、法人の法律上の手続き名です。会社法に定められた正式な用語で、会社の事業活動を停止して法人格を消滅させるプロセスの一部を指します。これに対して廃業は、経営者が事業を終了させるという広い概念で、法的手続き名ではありません。

関係性を整理すると、法人が廃業する場合は、解散決議を行い、清算手続きを経て、清算結了登記によって法人格が消滅します。つまり、解散は廃業の中の一つのステップとして位置づけられます。個人事業主の場合は法人とは異なり解散という手続きはなく、廃業時には廃業届の提出を含む必要書類への対応を行います。

廃業と破産の違い

破産は、裁判所の関与のもとで会社の資産を換価し、債権者に分配する法的整理手続きの一種です。経営者の意思で選ぶ廃業と異なり、債務超過や支払不能に陥った会社が、最終手段として選ぶ手続きとして位置づけられます。

廃業と破産の大きな違いの一つは、債務を完済できるかどうかです。廃業では、会社の資産を処分して債務を完済し、残余財産を株主に分配するのが基本です。債務を完済できない場合は、破産や特別清算などを含む債務整理の手続きを検討することになります。破産では裁判所が選任する破産管財人が資産処分を行い、債権者への配当を実施します。

廃業と休業の違い

休業は、事業活動を一時的に停止することを指します。廃業と異なり、法人格や事業そのものは存続したまま、活動だけを止める状態です。将来的な事業再開の可能性を残せる点が特徴で、廃業や倒産と比べて可逆性のある選択肢になります。

ただし、休業中も法人の税務申告は必要です。均等割などの扱いは自治体や休業の実態によって異なるため、事前確認が必要です。また、役員変更登記などの義務も残ります。長期間の休業は実質的な廃業と変わらない状態になりやすく、最終的にどうするかを計画的に判断する必要があります。

廃業と閉業・閉店の違い

閉業や閉店は、店舗や事業の営業を終えることを指す一般用語で、法律上の明確な定義はありません。飲食店や小売店などが「店舗の営業を終了する」意味で使われることが多く、廃業とほぼ同義で使われるケースもあります。

ただし、閉店が「店舗単位の営業終了」を指す一方で、廃業は「会社や事業者としての活動終了」を指す点で使い分けられることがあります。複数店舗を持つ会社が1店舗だけ閉じる場合は閉店と呼ばれ、会社全体の事業を終える場合は廃業と呼ばれる傾向があります。なお、帝国データバンクなど調査機関が使う「休廃業」は、倒産(法的整理)を除く自主的な事業停止を統計上まとめた用語で、休業と廃業を包括的に扱っています。

廃業の手続きと費用

廃業を決めたあとは、会社・事業の形態に応じた手続きを順に進める必要があります。法人と個人事業主では必要な手続きが異なり、想定していなかった費用が発生することもあるため、全体像を把握しておくことが重要です。

特に法人の場合は、解散から清算結了まで複数の段階を踏むため、一定の期間と費用がかかります。事前に流れと費用を理解しておくことで、手元に残る資金の見通しを立てやすくなります。主な内容は以下の通りです。

  • 法人(株式会社)が廃業する場合の手続の流れ
  • 個人事業主が廃業する場合の手続き
  • 廃業にかかる費用の目安

それぞれを順に解説します。

法人(株式会社)が廃業する場合の手続き

株式会社が廃業する場合は、まず株主総会で解散の決議を行い、清算人を選任または確認します。その後、解散および清算人選任の登記を行い、会社は清算手続きに入ります。続いて、官報公告や知れたる債権者への個別催告によって、債権者保護手続きを行い、2か月以上の一定期間内に債権の申し出を受け付けます。

債権者への公告・催告手続きと並行して、会社の資産を換価し、債務を弁済します。残余財産があれば株主に分配し、清算事務が終わったら、株主総会で決算報告の承認を受けて清算結了登記を行います。清算結了により法人格が消滅し、清算結了登記を行うことで手続きが完了します。解散から清算結了までには、少なくとも2か月以上の期間を要します。

個人事業主が廃業する場合の手続き

個人事業主の場合は、法人のような解散・清算の手続きはなく、税務署や都道府県税事務所などへの届出が中心になります。具体的には、個人事業の開業・廃業等届出書を提出し、青色申告を行っていた場合は所得税の青色申告の取りやめ届出書を提出します。

このほか、消費税の課税事業者であれば事業廃止届出書を、従業員を雇っていた場合は給与支払事務所等の廃止届出書を提出します。予定納税の対象であれば減額申請を検討するなど、状況に応じた対応が必要です。個人事業主の廃業は法人より手続きが簡素ですが、提出期限のある書類もあるため、漏れのないように進めることが重要です。

廃業にかかる費用の目安

法人の廃業には、解散・清算人選任・清算結了の登記にかかる登録免許税や、官報公告の掲載費用などがかかります。すべての手続きを自社で行う場合でも、これらだけで数万円以上になることが一般的です。司法書士や税理士などの専門家へ依頼する場合は、別途報酬が発生します。

加えて、設備や在庫の処分費用、事務所の原状回復費用なども必要になり、これらを含めると、規模によっては百万円単位の費用がかかることもあります。廃業には費用がかかるため、手元に残る資金が想定より少なくなる可能性に注意が必要です。一人会社や中小企業の廃業手続きと費用の詳細は、以下の記事もご覧ください。

一人会社の廃業手続きの流れは?解散・清算の流れや費用、M&Aとの違いを解説

倒産の種類と手続き

倒産は、特定の決まった手続きを指す言葉ではなく、複数の法的手続きや私的な対応をまとめて表す総称です。大きくは、会社を消滅させる清算型と、事業を残して立て直す再建型に分かれ、裁判所を通さずに進める私的整理もあります。

どの方法を取るかによって、事業や雇用を残せるか、経営者個人への影響がどの程度かが変わります。倒産という言葉を正しく理解するために、それぞれの種類を整理しておくことが重要です。主な分類は以下の通りです。

  • 清算型の法的整理
  • 再建型の法的整理
  • 私的整理

それぞれを順に見ていきます。

清算型の倒産

破産は、裁判所が選任する破産管財人が会社の資産を換価し、債権者に配当する清算型の法的手続きです。債務超過や支払不能に陥った会社が選ぶ手続きで、中小企業の倒産で用いられる代表的な手続きです。経営者は財産の管理処分権を失い、手続きは管財人と裁判所の主導で進みます。

特別清算は、解散後清算中の株式会社が債務超過の疑いなどの状態にある場合に、裁判所の監督のもとで清算を行う手続きです。破産と同じ清算型ですが、債権者との協定などに基づいて進められる点が特徴で、破産よりも柔軟に手続きを進められる場合があります。いずれも会社を消滅させる方向の手続きである点は共通しています。

再建型の倒産

民事再生は、事業を継続しながら再建を図ることを目的とする手続きです。原則として、現在の経営者が引き続き経営にあたりながら、再生計画に基づいて債務を整理していきます。中小企業でも活用できる手続きで、事業や雇用を残せる可能性がある点が、清算型との大きな違いです。

会社更生は、株式会社を対象とする再建型の手続きで、実務上は大規模会社で利用されることが多い手続きです。裁判所が選任する更生管財人のもとで再建が進められ、担保権の実行も手続きの中に取り込まれます。手続きが厳格で大がかりなため、中小企業では、会社更生よりも民事再生が検討されることが多くなります。再建型を選べる場合は、倒産手続きであっても事業を残せる可能性があります。

私的整理

私的整理は、裁判所を通さずに、債権者との協議によって債務を整理する方法です。法的整理に比べて手続きが公になりにくく、取引先や金融機関との関係に配慮しながら再建や整理を進めやすい点がメリットです。

私的整理には、中小企業活性化協議会の支援や、各種の私的整理ガイドラインを活用する方法があります。ただし、私的整理は対象となる債権者の同意を得る必要があるため、調整が難航する場合もあります。自社の状況に応じて、法的整理と私的整理のどちらが適しているかを、早い段階で専門家と検討することが大切です。

廃業を選ぶメリット・デメリット

廃業を選ぶことには、経営者にとってメリット・デメリットの両方があります。自主的な選択だからこそ、得られるものと失うものを事前に把握しておくことが重要です。

  • 廃業のメリット
  • 廃業のデメリット

それぞれを具体的に見ていきます。

廃業のメリット

廃業を選ぶことで得られる主なメリットは以下の通りです。

  • 経営者の意思で事業を終了できる
  • 資産を残したまま撤退できる可能性がある
  • 破産手続きを経ずに事業を閉じられる
  • 倒産と比べて社会的な印象の悪化を抑えやすい

特に重要なのは、廃業は経営者の判断で進められる点です。債務を完済できる状態で廃業すれば、残余財産を株主に分配でき、引退後の生活資金として活用できます。また、経営のプレッシャーから解放され、別のキャリアに進む余地が生まれることも、経営者個人にとっての大きなメリットになります。

廃業のデメリット

一方で、廃業には見過ごせないデメリットもあります。主なデメリットは以下の通りです。

  • 従業員対応が必要になる
  • 取引先との関係が途切れる
  • 屋号・ブランド・顧客関係などの無形資産を失う可能性がある
  • 廃業手続きに費用がかかる
  • 経営者保証が残る可能性がある

廃業では、長年かけて築いてきた屋号や取引先との関係、従業員との信頼関係といった無形の価値がすべて失われます。さらに、廃業手続きにも一定の費用がかかるため、手元に残る資金が想定より少なくなるケースがあります。これらの点を踏まえると、廃業以外の選択肢も含めて比較検討することが望ましい対応です。

倒産(破産)を選ぶメリット・デメリット

倒産のうち、清算型の法的整理として最も一般的なのが破産手続きです。債務超過で廃業を選べない状況では、破産が現実的な選択肢となります。破産を選ぶ場合のメリット・デメリットを整理します。

  • 倒産(破産)のメリット
  • 倒産(破産)のデメリット

それぞれを具体的に見ていきます。

倒産(破産)のメリット

破産を選ぶことで得られる主なメリットは以下の通りです。

  • 債務整理を法的手続きのもとで進められる
  • 裁判所の関与のもとで整理を進められる
  • 債権者からの取り立てが止まる
  • 経営者個人の再出発につながる可能性がある

破産手続きでは、裁判所関与のもとで、資産処分や債権者への配当が進められます。経営者が個別対応から一定程度切り離され、裁判所のコントロールのもとで整理を進められるため、精神的な負担を軽減できます。また、経営者保証を負っている場合も、経営者保証に関するガイドラインの活用などにより、個人破産を回避できる可能性があります。

倒産(破産)のデメリット

一方で、破産には以下のようなデメリットがあります。

  • 個人保証債務の整理方法によっては、信用情報や将来の資金調達に影響が及ぶ
  • 経営者保証の状況によっては、経営者個人の資産にも影響が及ぶ可能性がある
  • 従業員・取引先への影響が大きい
  • 社会的な印象が悪化しやすい
  • 再起業時の信用回復に時間がかかる

破産や保証債務の整理方法による影響は、経営者個人の信用や再起業時の資金調達にも及ぶ可能性があります。経営者保証を負っている場合、会社の破産に伴って経営者個人も破産や債務整理を選ばざるを得ないケースもあります。廃業との比較では、経営者個人への影響の大きさが決定的な違いになります。

関係者への影響の違い

廃業と倒産では、経営者自身だけでなく、従業員・取引先・金融機関などの関係者に与える影響も大きく異なります。会社の終わり方を判断する際には、関係者への影響まで含めて検討することが重要です。

  • 従業員への影響
  • 取引先・債権者への影響
  • 金融機関・経営者保証への影響

それぞれの立場での影響を順に見ていきます。

従業員への影響

廃業の場合、経営者の判断で計画的に進められるため、従業員への説明や再就職のサポートなどの準備期間を確保しやすくなります。会社都合退職として扱い、未払い給与等の精算を進めやすいケースがあります。

一方、倒産(特に破産)の場合、会社の資金が枯渇した状態で手続きが始まることが多く、従業員への退職金や未払い給与の支払いが滞るリスクがあります。ただし、未払い賃金については「未払賃金立替払制度」によって、一定の要件のもとで立替払いを受けられる仕組みがあります。とはいえ、突然の雇用喪失は従業員の生活に大きな影響を与えるため、事前の準備や説明の時間を確保しやすい廃業の方が、従業員の負担を抑えやすくなります。

取引先・債権者への影響

廃業の場合、取引先への説明や債権債務の整理を計画的に進められます。買掛金の完済、売掛金の回収、契約の終了手続きなどを段階的に行うことで、取引先への影響を最小限に抑えられます。事前に相談しながら代替先の紹介などを行えば、取引先との関係を整理しやすくなります。

倒産(破産)の場合、債権者は裁判所の配当手続きに従って債権の一部しか回収できないケースが多くなります。取引先の経営にも影響が及び、連鎖倒産のリスクを生むおそれもあります。債権回収不能による損失は、取引先との関係を超えて業界全体への影響にも及ぶため、倒産は廃業よりも社会的な影響範囲が広くなります。

金融機関・経営者保証への影響

廃業の場合、借入金を完済できれば金融機関との関係は円満に終えられます。完済できない場合でも、経営者保証に関するガイドラインを活用することで、経営者個人への影響を最小限に抑えられる可能性があります。金融機関との事前協議を通じて、廃業の進め方を調整することも重要です。

倒産(破産)の場合、金融機関は担保権の実行や一括返済を求めることがあります。経営者保証を負っている場合は、経営者個人にも返済義務が及び、個人資産の処分や個人破産に発展するケースもあります。経営者保証の扱いは、廃業と倒産を分ける大きな論点になるため、早い段階で弁護士や税理士と相談することが重要です。

廃業と倒産の判断基準

自社が廃業を選べる状況か、それとも倒産手続きを取る必要があるのかは、複数の基準で判断します。ここでは経営者が最初に確認すべき3つの判断軸を整理します。

  • 債務を完済できるかで判断する
  • 保有資産と負債のバランスで判断する
  • 経営者保証の有無で判断する

それぞれを順に見ていきます。

債務を完済できるかで判断する

最初の判断軸は、会社の資産を処分したときに債務を完済できるかどうかです。保有する資産(現預金・売掛金・棚卸資産・不動産・設備など)を時価で売却したと仮定した場合に、負債(買掛金・借入金・未払金など)を全額返済できれば、廃業(通常清算)が可能です。

逆に、資産を全て処分しても債務が残る状態(債務超過)では、原則として廃業は選べず、破産や特別清算といった法的整理の手続きに進むことになります。判断の出発点は、自社の貸借対照表を時価ベースで確認することです。税理士や公認会計士と相談しながら、資産・負債の実態を把握する作業が欠かせません。

保有資産と負債のバランスで判断する

債務を完済できるかどうかに加えて、保有資産と負債のバランスを詳細に見ることも重要です。会計上は債務超過でなくても、現金化しにくい資産(固定資産・売掛金の回収困難分など)が多い場合、実質的な資金繰りは逼迫していることがあります。

逆に、会計上は赤字でも、不動産や有価証券などの含み益のある資産を持っている場合、これらを処分することで廃業を実現できるケースもあります。帳簿上の数字だけでなく、資産を実際に換金できるかという観点で評価することが、廃業の可否判断につながります。この判断は専門的な知識を要するため、税理士・公認会計士との連携が重要です。

経営者保証の有無で判断する

中小企業の経営者は、会社の借入金に対して個人保証(経営者保証)を提供しているケースが一般的です。経営者保証の有無は、廃業と倒産を分ける重要な判断軸になります。

経営者保証を負っている場合、会社が破産すると経営者個人にも返済義務が及びます。返済できない場合は、経営者個人も破産や債務整理を選ばざるを得ません。経営者保証に関するガイドラインを活用することで、経営者個人への影響を軽減できる可能性がありますが、要件を満たす必要があります。また、後述のM&Aを活用すれば、買い手と金融機関の交渉によって経営者保証を解除できる場合もあります。経営者保証の扱いは、廃業・倒産・M&Aのいずれかを選ぶかに直結する論点であるため、早期に金融機関や専門家へ相談することが重要です。

黒字でも廃業を選ぶ経営者が一定数存在する

近年の休廃業・解散では、経営状態が悪化していない、いわゆる黒字廃業も一定割合を占めています。帝国データバンクの調査でも、休廃業・解散した企業のうち、約半数が直近で黒字だったとされ、赤字に陥る前に自主的に事業を畳む経営者が一定数いることがうかがえます。

黒字での廃業は、経営者の判断としては合理的に見える一方で、価値のある事業を消滅させてしまう側面もあります。背景と課題を整理することで、廃業以外の選択肢を検討する余地が見えてきます。主な論点は以下の通りです。

  • 黒字廃業が増えている理由
  • 黒字廃業で失うもの
  • 黒字廃業に代わる会社売却

それぞれを順に解説します。

黒字廃業が増えている理由

黒字廃業の主な理由の一つは、後継者の不在です。事業そのものは順調でも、親族や社内に引き継ぐ人材がいない場合、経営者は事業を続ける道を見出せず、自主的な廃業を選ばざるを得ない場合があります。経営者の高齢化が進むなかで、後継者不在は引き続き重要な課題になっています。

加えて、事業の将来性への不安や、経営者自身の健康問題も理由になります。今は黒字でも、市場の縮小や競争の激化を見据えて、体力のあるうちに事業を畳もうと判断する経営者もいます。前向きな決断に見えても、背景には引き継ぎ先が見つからないという事情がある場合があります。

黒字廃業で失うもの

黒字で廃業すると、これまで築いてきた顧客基盤や取引先との関係、従業員の雇用、許認可、ブランドといった無形資産が失われる可能性があります。これらは長年の事業活動の積み重ねによって生まれたものであり、廃業によって一度失うと、同じ形で取り戻すことは難しくなります。

経営者にとっても、廃業では、原則として手元に残るのは資産を処分し、債務や費用を精算した後の残余財産です。事業が生み出してきた将来の収益力は、譲渡対価として評価されにくくなります。M&Aであれば対価として評価される可能性があった事業価値を、廃業では回収できない場合があります。黒字で価値のある事業ほど、廃業による損失は大きくなりやすいといえます。

黒字廃業に代わる会社売却

黒字で事業に価値がある会社は、廃業以外に第三者への会社売却(M&A)を選べる可能性があります。M&Aであれば、顧客基盤や従業員、許認可などを買い手に引き継げる場合があり、経営者は事業価値に応じた譲渡対価を受け取れる可能性があります。廃業では消滅してしまう価値を、対価に換えられる可能性がある点が大きな違いです。

後継者がいないという理由だけで廃業を選ぶ前に、自社にどの程度の価値がつく可能性があるかを確認しておくことが重要です。自社の価値の考え方は、以下の記事で詳しく解説しています。

うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~

廃業・倒産を避ける第三の選択肢

廃業と倒産は、いずれも会社としての活動を終えることを意味します。しかし、事業そのものを終わらせずに承継する選択肢があれば、従業員の雇用や取引先との関係、経営者の手取りの面で、より有利な結果を得られる可能性があります。

  • 親族・社内への事業承継
  • 休業による一時的な事業停止
  • M&A

それぞれの選択肢について順に見ていきます。

親族・社内への事業承継

親族や社内の従業員・役員に事業を引き継ぐ選択肢です。後継者候補がいる場合、廃業や倒産を回避して事業を次世代に継承できます。親族内承継、役員・従業員承継(MBO・EBO)のいずれかが選ばれるケースが一般的です。

事業承継では、株式の移転、経営者保証の扱い、税務上の手続きなど、事前に整理すべき論点が多くあります。事業承継税制を活用すれば、後継者の相続税・贈与税の負担を軽減できる場合もあります。事業承継の選択肢については、以下の記事も参考になります。

多くのオーナー経営者が「M&A」を検討せざるを得ない状況だが…そもそも「事業承継」にはどんな選択肢があるのか?

休業による一時的な事業停止

休業は、事業活動を一時的に停止する選択肢です。将来的な事業再開の可能性を残せる点が特徴で、廃業や倒産と比べて可逆性のある選択肢です。経営者の体調不良や事業環境の一時的な悪化など、短期的な要因で事業継続が難しい場合に検討される傾向があります。

ただし、休業中も法人の税務申告や均等割などの固定費は発生します。長期間の休業は実質的な廃業と変わらない状態になりやすいため、最終的にどうするかを計画的に決めておく必要があります。あくまで一時的な選択肢として位置づけ、その間に廃業・M&A・事業承継のいずれを選ぶかを判断するのが現実的です。

M&A

M&Aは、第三者に事業を売却する選択肢です。株式譲渡や事業譲渡の形で買い手に事業を引き継ぐことで、従業員の雇用や取引先との関係を維持したまま、経営者は譲渡対価を受け取れます。廃業では消滅する屋号・ブランド・無形資産を、M&Aなら買い手に引き継いでもらえる可能性があります。

特に重要なのが、経営者保証の解除と手取り額の違いです。廃業では経営者保証が残り続けるリスクがある一方、M&Aでは買い手と金融機関の交渉によって保証を解除できる可能性があります。また、M&Aでは営業権・のれんを含めた評価が対価となるため、廃業(残余財産のみ)よりも経営者の手取りが多くなるケースもあります。赤字企業や債務超過に近い状態でも買い手が見つかる場合があり、倒産手続きに進む前にM&Aの可能性を探る価値があります。

M&Aでは買い手との交渉が成否を分けるため、売り手の立場で条件を整理し、利益を守ってくれる専門家の起用が重要です。中立的な立場でマッチングを行う仲介サービスとは別に、売り手専属のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を起用する選択肢もあります。自社に合う進め方を見極めるうえで、早い段階から専門家に相談することが望ましい対応です。

赤字企業でも売却できるケースについては、以下の記事が参考になります。

赤字企業の売却はできる?売却できる企業の特徴や成功させるポイントを解説

廃業と倒産に関するよくある質問

廃業と倒産を検討する経営者から、よく挙がる質問を整理します。

廃業と倒産では、どちらが経営者の負担が小さいですか?

一般的には、債務を完済できる状態で自主的に進める廃業のほうが、経営者の負担は小さくなりやすいといえます。倒産、特に破産では、経営者保証がある場合に経営者個人の債務整理や自己破産が問題になることがあり、社会的信用への影響が生じやすいためです。

ただし、債務超過に陥っている場合は廃業を選べないこともあり、状況によって取り得る選択肢は変わります。

廃業にはどれくらいの費用がかかりますか?

法人の場合、解散・清算人選任・清算結了の登記にかかる登録免許税や官報公告費用などがかかります。これに設備や在庫の処分費用、事務所の原状回復費用、専門家への報酬を加えると、規模によっては百万円単位になることもあります。

手元に残る資金を見積もるうえで、廃業にかかる費用も踏まえておくことが重要です。

黒字でも廃業すべきでしょうか?

黒字で事業に価値がある場合は、廃業よりも会社売却(M&A)を検討する余地があります。M&Aであれば、従業員や取引先との関係を維持しながら、事業価値に応じた譲渡対価を受け取れる可能性があります。

後継者がいないという理由だけで廃業を決める前に、売却の可能性を確認しておくことが望ましいです。

廃業を避けてM&Aで売却できるのは、どんな会社ですか?

許認可、顧客基盤、技術・有資格者、安定した収益などがある会社は、買い手にとって価値があり、廃業せずに売却できる可能性があります。一見すると売却が難しそうな小規模・赤字の会社でも、強みを整理することで買い手候補が見つかる場合があります。M&Aの失敗を避けるための注意点は、以下の記事もご覧ください。

M&Aの失敗事例11選|失敗の原因や成功させるポイントを紹介

まとめ

廃業と倒産は、会社の終わり方を表す言葉として混同されがちですが、経営者の意思で選ぶか、経営破綻に追い込まれるかという点で本質的に異なります。関連する用語(解散・破産・休業・閉業)と合わせて整理しておくことで、自社の状況を正確に把握できます。

  • 廃業は経営者の意思による自主的な事業終了、倒産は経営破綻による事業継続不能状態
  • 廃業では債務の完済が前提、債務超過の場合は破産など法的整理が必要
  • 従業員・取引先・金融機関への影響は、廃業の方が計画的に対応しやすい
  • 経営者保証の扱いは、廃業・倒産・M&Aのどれを選ぶかに直結する重要論点
  • 廃業・倒産の前に、事業承継・休業・M&Aといった選択肢を検討する余地がある

会社の終わり方は、経営者自身、従業員、取引先、家族に及ぼす影響が大きい重要な判断です。財務状況や経営者保証の有無を正確に把握したうえで、廃業・倒産だけでなく事業承継やM&Aといった選択肢も含めて比較することが、後悔のない判断につながります。状況が悪化してから検討を始めると選択肢が限られるため、早い段階で税理士・弁護士・M&Aの専門家と相談し、自社にとって最適な道を見極めることが望ましい対応です。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

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売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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