株式譲渡承認請求書とは?記載事項や書き方、手続きの流れも解説
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- M&Aの基礎
公開日:2026.06.02
2026.06.02
更新日:2026.06.02
2026.06.02
中小企業のオーナー経営者が自社株式を譲渡する際、定款で譲渡制限が定められている会社では、会社の承認を得るための「株式譲渡承認請求書」を提出する必要があります。書類の記載内容や手続きの流れを把握しておかないと、譲受人が会社に対して株主としての地位を主張できない場合もあります。
特に売り手にとっては、譲渡承認の手続きをスムーズに進めることが、M&Aや事業承継の成立可能性に直結します。
本記事では、株式譲渡承認請求書の記載事項と、手続きの流れや注意点を解説します。
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株式譲渡承認請求書とは
株式譲渡承認請求書は、譲渡制限株式を譲渡する際に、会社に対して承認を求めるために提出する書類です。会社法に基づいて、譲渡制限のある株式について会社の承認を得るために必要となる手続きの一つです。主な論点は以下の通りです。
- 株式譲渡承認請求書の定義
- 譲渡承認請求が必要な理由
それぞれを順に見ていきます。
株式譲渡承認請求書の定義
株式譲渡承認請求書とは、譲渡制限が付いた株式を譲渡する際に、株式の譲渡人または譲受人が会社に対して承認を求めるために提出する書面です。会社法第136条と第137条に基づく譲渡承認請求に関する書類であり、譲渡承認手続きの起点となります。
書面には、譲渡する株式の数、種類株式発行会社では株式の種類と種類ごとの数、譲受人の氏名または名称などを記載します。会社に提出後、定款や会社法に従って承認可否が決定され、承認後に株主名簿の名義書換などを行うことで、譲受人は会社や第三者に対して株主としての地位を主張できます。M&Aにおける株式譲渡の詳細は、以下の記事もご覧ください。
M&Aにおける株式譲渡とは?メリットや注意点、手続きの流れを解説
譲渡承認請求が必要な理由
中小企業の多くは、定款で「当会社の株式を譲渡するには、会社の承認を要する」などの譲渡制限規定を設けているケースが多くあります。望ましくない第三者の株主参加を防ぎ、会社の経営の安定を保つために設けられる仕組みです。
譲渡制限が定められた株式を会社の承認を得ずに譲渡しても、会社に対しては譲受人が株主としての地位を主張できない場合があります。承認請求書を提出して所定の手続きを踏むことで、会社に対して譲受人を株主として認めてもらう前提が整います。
株式譲渡承認請求書の記載事項
株式譲渡承認請求書には、会社法に基づき明らかにすべき事項があります。必要事項に漏れがあると、会社が承認可否を判断できない場合があるため、必要な項目を漏れなく記載することが重要です。主な記載事項は以下の通りです。
- 譲渡する株式の種類と数
- 譲渡人と譲受人の情報
- 譲渡承認を求める意思表示
- 承認されない場合の対応依頼
それぞれを順に見ていきます。
譲渡する株式の種類と数
譲渡する株式の種類(普通株式や種類株式など)と、株式数を明記します。種類株式を発行している会社では、種類ごとに譲渡する株式数を分けて記載することが必要です。
株式の数が誤って記載されていると、承認可否の判断や株主名簿の名義書換にも影響します。会社が発行している株式の構成を確認したうえで、正確に記載することが重要です。
譲渡人と譲受人の情報
譲渡人(株式を譲り渡す側)と譲受人(株式を受け取る側)の氏名・住所を明記します。法人が当事者となる場合は、商号と本店所在地を記載します。実務上は、代表者の氏名を併記することもあります。
譲受人の情報は、会社側が譲渡先を把握するための重要な要素です。譲渡相手の属性や会社との関係性は、会社が承認を判断する材料になります。
譲渡承認を求める意思表示
書面の中心となる内容として、譲渡承認を求める旨を明確に記載します。「下記株式について、譲受人への譲渡を承認していただきたく、ここに請求します」といった形で、承認を求める意思を示します。
意思表示が曖昧だと、書面の有効性に疑義が生じる場合があります。請求の対象と目的が明確に伝わる形で記載することが大切です。
承認されない場合の対応依頼
会社が譲渡を承認しない場合に備え、譲渡人または譲受人は、会社または会社が指定する買取人による買取を併せて請求できます。買取請求権を行使するためには、株式譲渡承認請求書に「承認されない場合は、会社または指定買取人が買い取ることを請求する」といった文言を記載しておくことが必要です。
譲渡制限株式や株式譲渡の手続きに関する詳細は、以下の記事もご覧ください。
株式譲渡承認請求書の書き方
株式譲渡承認請求書の作成では、法定の決まった様式はないものの、会社法上明らかにすべき事項を漏れなく記載することが基本です。書面の冒頭には「株式譲渡承認請求書」というタイトルを明記し、宛先として会社名を記載します。実務上は、代表取締役名を併記することもあります。
本文では、譲渡する株式の種類と数、譲渡相手の情報、承認を求める意思などを順に記載し、末尾に提出日と請求者の署名・押印を記入します。譲渡人と譲受人の双方が連名で請求する場合は、両者の署名・押印を求められることがあります。実印や印鑑証明書を求められる場合もあるため、定款や会社の運用ルールを事前に確認することが重要です。
承認請求書と承認通知書を兼ねた書式を用意している会社もあります。雛形は会社や弁護士事務所が無償で公開している場合があるため、活用しながら自社の状況に合わせて記載内容を調整するのが現実的です。
株式譲渡承認の手続きと流れ
株式譲渡承認の手続きは、請求書の提出から株主名簿の書き換えまで、複数の工程を順番に進めていきます。手続きの流れを把握しておくことで、各段階で必要な対応が明確になります。基本的な流れは以下の通りです。
- 譲渡承認請求書の提出
- 取締役会または株主総会での承認決議
- 承認通知の送付
- 株主名簿の書き換え
それぞれの工程を順に見ていきます。
譲渡承認請求書の提出
譲渡人または譲受人が、会社に対して株式譲渡承認請求書を提出します。提出方法は持参や郵送が一般的ですが、後日のトラブルを避けるため、内容証明郵便や受領印付きの提出記録を残しておくことが望ましい対応です。
提出後、会社は所定の期間内に承認の可否を決定する必要があります。会社法では、一定の場合を除き、請求の日から2週間以内に承認可否の通知をしない場合、承認したものとみなされます。
取締役会または株主総会での承認決議
会社は、定款の定めに従って取締役会または株主総会で承認決議を行います。承認機関は、原則として株主総会、取締役会設置会社では取締役会ですが、定款に別段の定めがある場合はその定めに従います。
決議では、譲受人の属性や、譲渡が会社の経営に与える影響などを踏まえて、承認するかどうかを判断します。決議内容は議事録に記録し、後日の証拠として保管します。
株式譲渡の必要書類は、以下の記事もご覧ください。
株式譲渡の必要書類とは?手続きの流れや税金、失敗しないための注意点を徹底解説
承認通知の送付
承認決議の結果を、譲渡人または譲受人に書面で通知します。承認通知書には、承認の可否、決議の日付、対象株式の内容などを明記します。
会社法では、一定の場合を除き、請求の日から2週間以内に通知が行われない場合、譲渡を承認したものとみなされます。承認の判断と通知の準備は、所定の期間内に確実に進めることが重要です。
株主名簿の書き換え
譲渡承認後、譲渡当事者は会社に対して株主名簿の名義書換を請求し、会社は名義書換手続きを行います。譲渡人の保有株式数を減らし、譲受人を新たな株主として記録することで、譲受人は会社に対して株主としての地位を主張できるようになります。
株主名簿の書き換えが完了していないと、譲受人は会社に対して株主としての権利を主張できません。名義書換を確実に進めることが、譲渡手続きの重要な工程になります。
譲渡承認請求書が不要となるケース
すべての株式譲渡で、株式譲渡承認請求書が必要になるわけではありません。会社の定款や株式移転の原因によっては、承認請求が不要になる場面があります。主なケースは以下の通りです。
- 譲渡制限のない株式の場合
- 相続や合併による包括承継の場合
- 一人会社の場合
それぞれを順に見ていきます。
譲渡制限のない株式の場合
定款で譲渡制限を設けていない会社の株式は、原則として当事者間の合意により自由に譲渡できます。上場会社の株式や、定款で譲渡制限を定めていない非上場会社の株式が該当します。
譲渡制限のない株式では、会社の承認手続きを経ずに譲渡が完了します。譲渡承認請求書の作成や提出は不要ですが、会社に対して株主としての地位を主張するには、株主名簿の名義書換が必要です。
相続や合併による包括承継の場合
株主の死亡による相続や、株主である法人の合併によって株式が移転する場合は、原則として譲渡承認請求が不要です。相続や合併は法律に基づく包括承継であり、譲渡承認手続きの対象外として扱われます。
ただし、定款で、相続などにより株式を取得した者に対して会社が売渡請求をできる旨を定めている会社もあります。定款の規定を事前に確認することが大切です。
一人会社など、承認手続きが実質的に簡略化しやすい場合
株主が1名しかいない一人会社では、株主と会社の意思決定者が一致している場合が多く、承認手続きをスムーズに進めやすいです。ただし、取締役会非設置の会社であっても、会社法や定款に従った承認決議・記録作成は必要です。
必要な書面上の手続きは省略せず、譲渡承認の議事録は作成しておくことが望ましい対応です。後日のM&Aや事業承継の場面で、譲渡履歴を確認する書類として求められる場合があります。
株式譲渡承認請求を進める際の注意点
株式譲渡承認請求は、書類の作成と決議の運営、株主名簿の管理など、複数の工程が絡む手続きです。準備の質と確認の徹底が、譲渡の有効性に直結します。具体的に押さえたい注意点は以下の通りです。
- 定款の譲渡制限規定を確認する
- 必要書類を漏れなく準備する
- 承認決議のスケジュールを確認する
- 売り手の立場に立てる専門家とともに進める
それぞれを順に見ていきます。
定款の譲渡制限規定を確認する
最初に、会社の定款で譲渡制限がどのように定められているかを確認します。承認機関が取締役会か株主総会か、定款に別段の定めがあるか、会社が承認しない場合の買取人指定の手続きがどうなっているかなど、定款の規定によって手続きが変わります。
定款を確認せずに手続きを進めると、承認機関の選定誤りや、決議の有効性に疑義が生じる場合があります。承認請求の準備段階で、定款の関連条項を必ず確認することが欠かせません。
必要書類を漏れなく準備する
株式譲渡承認請求書のほかにも、株式譲渡契約書、議事録、株主名簿など、複数の書類が必要になります。書類の不備は手続きの遅延につながるため、提出前に漏れがないかを確認することが大切です。
特に、譲渡人と譲受人の押印や、定款や会社所定の様式に沿った記載は、後日のトラブル回避のためにも丁寧に進めることが重要です。
承認決議のスケジュールを確認する
会社法では、一定の場合を除き、請求の日から2週間以内に承認可否の通知をしない場合、承認したものとみなされます。決議のための取締役会や株主総会を、適切な時期に開催する必要があります。
スケジュール調整が遅れると、2週間経過によって承認されたとみなされる場合があります。会社側で承認可否を慎重に判断したい場合は、スケジュールを早めに組むことが重要です。
売り手の立場に立てる専門家とともに進める
株式譲渡を含むM&Aの依頼先には、仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)という2つの形態があります。仲介は売り手と買い手の双方と契約して間に立つ立場であり、FAは売り手または買い手のいずれか一方と契約して依頼者の利益を優先する立場です。報酬を依頼者側からのみ受け取るFAは、一般に利益相反が構造的に起こりにくいといえます。
売り手としては、自社の状況に応じて、利益相反が生じにくい支援者を選ぶ選択肢を持つことが、納得度の高い取引につながりやすくなります。仲介とFAの違いや選び方は、以下の記事もご覧ください。
M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説
まとめ
株式譲渡承認請求書は、譲渡制限株式の譲渡について会社の承認を得るために重要な書類です。記載事項や手続きの流れを把握し、所定のプロセスを順に進めることで、譲受人が会社に対して株主としての地位を主張しやすくなります。
特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。
- 定款の譲渡制限規定を確認したうえで請求書を作成すること
- 記載事項を漏れなく記入し、必要書類を準備すること
- 承認決議のスケジュールを早めに調整すること
- 売り手の立場に立てる専門家とともに進めること
株式譲渡承認請求は、書類の正確性と手続きの確実性によって、M&Aや事業承継をスムーズに進めやすくする取り組みです。早い段階から定款と必要書類を確認し、信頼できる専門家とともに進めることで、納得度の高い取引につながりやすくなります。
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