M&Aにおける吸収合併とは?メリットや手続き流れも解説

2026.04.30

公開日:2026.04.30

2026.04.30

2026.04.30

更新日:2026.04.30

2026.04.30

M&Aにおける吸収合併とは?メリットや手続き流れも解説

吸収合併は、M&Aやグループ内再編の文脈で頻繁に登場する用語ですが、株式譲渡や事業譲渡といった他のM&A手法との違いを正確に理解している経営者は多くありません。吸収合併は会社法上の明確な組織再編手続きであり、包括承継や合併比率の算定、債権者保護手続きなど、他の手法とは異なる論点があります。

売り手経営者がM&Aを検討する際、吸収合併を選択肢となるケースは限られています。特に中小企業の第三者承継では株式譲渡が主流で、吸収合併は、主にグループ内再編や親子会社統合の場面で活用される傾向があります。ただし、適格合併に関する税務上の取扱いや繰越欠損金の引継ぎといった論点を理解することで、組織再編の選択肢を広げやすくなります。

本記事では、吸収合併の定義と会社法上の位置づけ、新設合併・子会社化・株式譲渡・事業譲渡・会社分割との違い、メリット・デメリット、手続きの流れ、判断基準、成功のポイントまでを体系的に解説します。

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吸収合併とは

吸収合併とは、2社以上の会社が1つになる組織再編手法の一つで、1社が存続会社として残り、他の会社を吸収して消滅させる取引を指します。会社法上の正式な組織再編行為で、存続会社が消滅会社の権利義務を包括的に承継する仕組みです。

吸収合併では、消滅会社の法人格は消滅し、存続会社のみが残ります。消滅会社の株主には、対価として存続会社の株式または金銭などが交付されます。一般的に、上場企業のグループ内再編や、親会社による子会社の統合、M&Aによる完全な組織統合を目的とする場面で活用されます。

会社法上、吸収合併は組織再編行為として位置づけられており(会社法748条以下)、原則として両社の株主総会での特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。※簡易合併や略式合併に該当する場合は例外があります。

吸収合併と似た手法との違い

吸収合併は組織再編の一種ですが、他のM&A手法や類似の組織再編と混同されることがあります。それぞれの違いを整理することで、自社のケースに合った手法を見極めやすくなります。

  • 吸収合併と新設合併の違い
  • 吸収合併と子会社化の違い
  • 吸収合併と株式譲渡の違い
  • 吸収合併と事業譲渡の違い
  • 吸収合併と会社分割の違い

それぞれの違いを順に見ていきます。

吸収合併と新設合併の違い

新設合併は、既存の会社がすべて消滅し、新たに設立する会社がそれらの権利義務を承継する合併手法です。吸収合併が既存の1社を存続させるのに対し、新設合併では合併当事者すべてが消滅し、新会社に一本化される点が違いです。

実務上は、新設合併はほとんど選ばれません。新設合併では、許認可等の取扱いを個別に確認する必要があり、実務負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。手続き負担の大きさから、合併実務のほぼすべてが吸収合併で処理されているのが実情です。

吸収合併と子会社化の違い

子会社化は、ある会社が別の会社の株式の過半数を取得することで、親子関係を構築する取引です。株式譲渡やTOB(株式公開買付け)によって実現され、対象会社は子会社として存続します。

吸収合併との最大の違いは、子会社化では両社の法人格がそのまま残る点です。子会社化では親会社と子会社が別法人として存続し、それぞれ独立して事業運営を続けます。一方、吸収合併では消滅会社の法人格が消滅し、存続会社に完全に統合されます。組織統合の深さで両者は大きく異なります。

吸収合併と株式譲渡の違い

株式譲渡は、売り手株主が保有する株式を買い手に譲渡することで、経営権を移転するM&A手法です。会社そのものはそのまま存続し、資産・負債・契約・雇用関係は会社に残ったまま維持されます。

吸収合併と株式譲渡の違いは、承継主体と対価の受取人にあります。吸収合併では会社同士が当事者となり、消滅会社の株主に現金や存続会社の株式などが交付されます。一方、株式譲渡では株主と買い手が当事者となり、売り手株主に譲渡対価が支払われます。中小企業のM&Aでは株式譲渡が主流で、吸収合併はグループ内再編や完全統合を目的とする場面で選ばれる傾向があります。

M&A手法全体の比較については以下の記事もご覧ください。

M&Aのスキームを紹介!メリット・デメリットや最適なスキームを選ぶポイントを解説

吸収合併と事業譲渡の違い

事業譲渡は、会社の中の特定事業や資産・契約を切り出して譲渡するM&A手法です。譲渡対象を個別に特定できるため、不採算事業や不要資産を手元に残すことが可能です。

吸収合併との違いは、承継の仕組みにあります。吸収合併では消滅会社の権利義務がすべて存続会社に包括承継されるのに対し、事業譲渡では個別承継となり、譲渡対象を一つずつ移転する必要があります。事業譲渡では従業員の同意や契約の再締結が必要になるのに対し、吸収合併では契約や雇用関係が包括承継されます。※許認可の取扱いは個別法の確認が必要です。

事業譲渡の詳細については以下の記事もご覧ください。

事業譲渡とは何か?オーナー経営者が知っておくべき基本と実務ポイント

吸収合併と会社分割の違い

会社分割は、会社の事業に関する権利義務を、別の会社へ包括的に承継させる組織再編手法です。既存会社へ承継させる吸収分割と、新設会社へ承継させる新設分割の2種類があります。

吸収合併との違いは、承継範囲と存続の有無にあります。吸収合併では会社全体の権利義務が承継され、消滅会社の法人格は消滅します。会社分割は特定事業のみを承継し、分割会社の法人格は残ります。一部事業のみを切り出したい場合は会社分割、会社全体を統合したい場合は吸収合併というように、目的に応じて使い分けられます。

会社分割の詳細については以下の記事もご覧ください。

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吸収合併のメリット

吸収合併は手続きが複雑な組織再編ですが、他の手法にはない独自のメリットがあります。主なメリットを整理します。

  • 組織統合を早期に実現できる
  • 包括承継で事業の連続性を保てる
  • 合併対価を株式にすれば資金調達が不要
  • 消滅会社の繰越欠損金を引き継げる可能性がある

それぞれのメリットを具体的に見ていきます。

組織統合を早期に実現できる

吸収合併では、効力発生日をもって消滅会社の権利義務がすべて存続会社に承継され、組織が一体化します。株式譲渡で子会社化したうえで統合を進める場合と比較して、統合完了までの期間を短縮できる点が大きなメリットです。

特にグループ内再編で、親会社が子会社を統合するケースや、同業2社を一つにまとめるケースでは、吸収合併によって迅速な組織統合を実現できます。統合後のシナジー効果を早期に発現させたい場合に有効な手段です。

包括承継で事業の連続性を保てる

吸収合併では、消滅会社の資産・負債・契約・雇用などが包括的に存続会社に承継されます。※許認可の取扱いは個別に確認が必要です。

事業譲渡のように契約を個別に再締結する必要がなく、従業員の雇用関係や取引先との契約もそのまま引き継げる点が特徴です。

この包括承継により、合併実行後も事業運営を中断せずに継続できます。特に長年の取引関係や複雑な契約を多数持つ企業では、個別承継の手続き負担を回避できる意味は大きくなります。事業の連続性を重視する場面で、吸収合併は有力な選択肢になります。

合併対価を株式にすれば資金調達が不要

吸収合併では、消滅会社の株主への対価として、存続会社の株式を交付することが可能です。現金対価の場合と異なり、買収資金を外部から調達する必要がありません。

このような株式対価の吸収合併では、存続会社にとってはキャッシュアウトを伴わずに組織統合を実現できるメリットがあります。大型の統合案件でも現金負担を抑えて再編を進めやすくなります。一方、消滅会社の株主にとっては、統合後の会社の株主として残ることを意味するため、対等合併のニュアンスを持たせやすい点も特徴です。

消滅会社の繰越欠損金を引き継げる可能性がある

吸収合併が税制上の「適格合併」の要件を満たす場合、消滅会社の繰越欠損金を存続会社が引き継げる可能性があります。繰越欠損金とは、過去の赤字を将来の黒字と相殺して法人税負担を軽減につなげられる税務上の項目です。

適格合併の要件は複雑で、存続会社の保有する消滅会社株式の割合に応じて完全支配関係・支配関係・共同事業の3類型に分かれます。要件を満たせば、資産の含み損益に対する課税が繰り延べられ、繰越欠損金も引き継げる可能性があるため、税務上のメリットが見込まれます。ただし、繰越欠損金の引継ぎには制限規定もあり、すべての欠損金が自動的に引き継げるわけではない点に注意が必要です。詳細は税理士に事前に確認しておくことが重要です。

吸収合併のデメリット

吸収合併には多くのメリットがある一方で、他の手法にはない独自のデメリットも存在します。事前にリスクを把握しておくことで、実行後のトラブルを抑えやすくなります。

  • 手続きが複雑で時間と労力がかかる
  • 経営統合(PMI)の負担が大きい
  • 株主の持株比率が希薄化する可能性がある
  • 簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクがある

それぞれのデメリットを順に見ていきます。

手続きが複雑で時間と労力がかかる

吸収合併は会社法上の厳格な手続きを踏む必要があり、株式譲渡などの他のM&A手法と比較して、手続きの複雑さが大きなデメリットになります。合併契約の締結、事前開示書類の備置、株主総会の承認決議、債権者保護手続き、反対株主の株式買取請求対応、効力発生、事後開示、登記申請など、複数のステップを一定の順序で進める必要があります。

特に債権者保護手続きでは、官報公告や個別催告を経て、異議申述のための最低1か月の期間を確保する必要があります。全体のスケジュールは、合併決定から効力発生まで数か月程度かかるのが一般的です。手続きの抜けや順序ミスは合併の無効原因になるため、弁護士・司法書士・税理士との連携が不可欠です。

経営統合(PMI)の負担が大きい

吸収合併では、効力発生日をもって消滅会社の組織がそのまま存続会社に統合されます。株式譲渡のように子会社として独立させた状態を維持しにくいため、合併直後から、統合後の組織としての運営が始まります。

このため、人事制度・給与体系・就業規則・社内システム・業務プロセスの統合について、効力発生日までにある程度準備しておく必要があります。異なる企業文化や業務慣行を持つ2社が一体化するため、現場では混乱や摩擦が生じやすく、経営統合(PMI)の負担は、他のM&A手法と比べて大きくなる傾向があります。統合計画の事前策定と、合併後の丁寧なフォローアップが欠かせません。

株主の持株比率が希薄化する可能性がある

吸収合併で合併対価を株式とする場合、存続会社は新たに株式を発行して消滅会社の株主に交付します。その結果、存続会社の既存株主の持株比率が希薄化します。

上場企業の場合、株式の希薄化は株価下落の要因となることがあります。また、オーナー経営者にとっては、自身の持株比率が下がることで、経営権に影響が出る可能性もあります。合併比率の設計によって希薄化の程度は変わるため、既存株主への影響を事前にシミュレーションし、適切な合併比率を算定することが重要です。

簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクがある

吸収合併では包括承継が原則のため、消滅会社に存在する簿外債務や偶発債務も存続会社に引き継がれます。簿外債務とは決算書に計上されていない債務を、偶発債務とは将来発生する可能性のある債務を指します。

株式譲渡と同様に、合併後に予期しない債務が発覚するリスクがあります。訴訟リスク、未払い残業代、税務リスク、保証債務などが典型的な論点です。このリスクを回避するため、合併前のデューデリジェンス(詳細調査)を徹底することが欠かせません。また、合併契約書における表明保証条項の設計も、リスク軽減の重要な手段です。

吸収合併の手続きの流れ

吸収合併は、会社法上の厳格な手続きを経て進められます。全体の流れを押さえておくことで、実行スケジュールを計画しやすくなります。

  • 合併契約の締結
  • 事前開示書類の備置
  • 株主総会の承認決議
  • 債権者保護手続き
  • 反対株主の株式買取請求対応
  • 効力発生と事後開示
  • 登記申請

それぞれのステップを順に見ていきます。

合併契約の締結

吸収合併の第一歩は、存続会社と消滅会社の間で合併契約を締結することです。取締役会設置会社では、合併契約の締結に取締役会決議が必要となります。

合併契約書には、会社法第749条で定められた法定記載事項として、合併対価の内容、合併比率、効力発生日、合併対価の割当てに関する事項などを明記します。これらの事項が欠けていると合併が無効となる可能性があるため、弁護士のチェックを受けながら作成することが重要です。合併契約の締結が、その後のすべての手続きの出発点になります。

事前開示書類の備置

合併契約締結後、効力発生日までの間、存続会社と消滅会社はそれぞれ事前開示書類を本店に備え置く必要があります。会社法第782条・第794条で定められた手続きで、株主や債権者が合併内容を確認できるようにするためのものです。

事前開示書類には、合併契約の内容、合併対価の相当性に関する事項、消滅会社の計算書類、存続会社の財務情報などを記載します。事前開示書類は一定の起算日から効力発生日まで備え置きが必要で、効力発生日後の開示は別途整理が必要です。書類に不備があると合併手続きの有効性が争われる原因になるため、法定要件に従った書類作成が必要です。

株主総会の承認決議

吸収合併は重要な組織再編行為として、存続会社と消滅会社それぞれの株主総会での特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。効力発生日までに必要な決議を完了させる必要があります。

ただし、一定の要件を満たす簡易合併や略式合併では、株主総会決議を省略できる場合があります。簡易合併は、合併対価の規模が存続会社の純資産の5分の1以下である場合などに適用され、存続会社の株主総会決議が不要になります。略式合併は、特別支配関係(90%以上の議決権保有)がある場合に、被支配会社の株主総会決議が不要になります。自社が該当するかを事前に確認することで、手続きを効率化できます。

債権者保護手続き

吸収合併では、債権者に異議を述べる機会を与えるための債権者保護手続きが必要です。官報への公告と、知れている債権者への個別催告を行い、1か月以上の異議申述期間を設けます。

異議を述べた債権者に対しては、弁済・担保の提供・信託の設定などの対応を取る必要があります。債権者保護手続きに不備があると合併の有効性が争われるおそれがあるため、対象債権者の漏れがないよう、事前に債権者リストを整理することが重要です。官報公告の掲載には1〜2週間程度かかるため、全体スケジュールに織り込んでおく必要があります。

反対株主の株式買取請求対応

合併に反対する株主は、会社に対して自己の保有する株式を公正な価格で買い取るよう請求できます。会社法上認められた権利で、吸収合併の効力発生日の20日前までに、買取請求の通知または公告を行う必要があります。

反対株主からの買取請求があった場合、会社は公正な価格で株式を買い取る義務を負います。価格について協議が整わない場合には、裁判所に価格決定の申立てを行うことも可能です。上場企業では市場株価を参考に価格を設定するケースが一般的ですが、非上場企業では評価方法を巡って争われることもあるため、専門家の関与が必要になります。

効力発生と事後開示

合併契約書で定めた効力発生日に、消滅会社の権利義務が存続会社に承継されます。効力発生日は、株主総会決議や債権者保護手続きがすべて完了した後の日付を設定する必要があります。

効力発生後、存続会社は事後開示書類を作成し、本店に6か月間備え置く必要があります。事後開示書類には、合併の経緯、合併対価の相当性に関する事項、合併後の財務状況などを記載します。株主や債権者が合併の内容を事後に確認するための手続きで、会社法上の義務として求められます。

登記申請

効力発生後、原則として2週間以内に、存続会社では変更登記、消滅会社では解散登記を申請する必要があります。登記は本店所在地を管轄する法務局で行います。

必要書類は、合併契約書、株主総会議事録、債権者保護手続きを証する書面など、登記内容に応じて整理が必要です。登録免許税が発生するため、事前に必要コストを確認しておくことが重要です。登記完了をもって、合併の対外的な効力が確定します。

吸収合併を選ぶ際の判断基準

吸収合併は有力な組織再編手法ですが、すべてのM&A案件で適した手法とは限りません。自社の状況に合った手法を選ぶために、判断基準を整理しておくことが重要です。

  • グループ内再編か外部M&Aかで判断する
  • 合併対価を株式にしたいかで判断する
  • 繰越欠損金の引継ぎの可否で判断する
  • 適格合併の要件を満たせるかで判断する

それぞれの判断軸を順に見ていきます。

グループ内再編か外部M&Aかで判断する

吸収合併が活用される場面は、主にグループ内再編や関連会社の統合です。親会社による子会社の吸収、同一グループ内の事業再編、持株会社化に伴う統合などで多く選ばれます。グループ内では株主構成が比較的単純で、手続きを進めやすいためです。

一方、外部M&A(第三者への売却や買収)では、吸収合併は一般的ではありません。買い手と売り手が別々の株主構成を持つ場合、合併比率の算定や反対株主対応が複雑になり、株式譲渡の方が簡便です。中小企業の第三者承継では株式譲渡が主流で、吸収合併を選ぶのは特殊な事情がある場合に限られます。

合併対価を株式にしたいかで判断する

合併対価として存続会社の株式を交付したい場合は、吸収合併は有力な選択肢になります。現金対価を使わずに組織統合を実現できるため、財務負担を抑えられます。

対等合併の形を取りたい場合や、消滅会社の株主を統合後の会社の株主として残したい場合も、株式対価の吸収合併が適しています。一方、売り手株主が現金を得たい場合は、吸収合併よりも株式譲渡の方が目的に合います。対価の形態に応じて、適切な手法を選ぶ必要があります。

繰越欠損金の引継ぎの可否で判断する

消滅会社に繰越欠損金があり、かつ存続会社で活用できる見込みがある場合、吸収合併は税務上のメリットが見込まれます。適格合併の要件を満たせば、繰越欠損金を引き継いで将来の法人税負担を軽減できる可能性があります。

ただし、繰越欠損金の引継ぎには制限規定があります。特定資本関係(5年超の支配関係)がない場合など、引継ぎ制限が適用されるケースがあり、全額を引き継げるとは限りません。繰越欠損金の活用を目的に吸収合併を検討する場合は、税理士と事前に要件を確認し、引継ぎ可能額をシミュレーションしておくことが重要です。

適格合併の要件を満たせるかで判断する

吸収合併の税務上の扱いは、適格合併と非適格合併で大きく異なります。適格合併では、一定の場合に消滅会社の資産を簿価で承継でき、課税が繰り延べられます。非適格合併では時価評価が必要となり、税務上の課税関係が生じます。

適格合併の要件は、完全支配関係(100%支配)、支配関係(50%超支配)、共同事業の3類型に分かれ、それぞれ異なる要件を満たす必要があります。共同事業要件では、事業関連性・規模要件・経営参画要件・従業者引継要件・事業継続要件などの複数の条件をクリアする必要があります。適格合併の要件を満たせるかは、吸収合併を選ぶかどうかの重要な判断軸になります。要件が複雑なため、早い段階で税理士と協議することが必須です。

吸収合併を成功させるためのポイント

吸収合併は手続きが複雑で、関係者への影響も大きい組織再編です。事前の準備と専門家の関与が、成否に大きく影響します。

  • 合併比率を適正に算定する
  • 従業員・取引先への影響を事前に整理する
  • 適格合併の要件を事前に確認する
  • 早期に専門家へ相談する

それぞれのポイントを具体的に見ていきます。

合併比率を適正に算定する

合併比率は、消滅会社の株主に対してどれだけの存続会社株式を交付するかを定める比率で、吸収合併の公正さを担保する重要な要素です。合併比率が適正でないと、両社の株主間で不公平が生じ、反対株主からの買取請求や訴訟リスクが高まります。

合併比率の算定には、両社の企業価値評価が前提となります。インカムアプローチ(DCF法など)、マーケットアプローチ(類似会社比較法)、コストアプローチ(純資産法)の複数の手法で評価し、両社にとって妥当な比率を設計します。第三者評価機関に評価を依頼することで、客観性を担保しやすくなる点も重要です。上場企業では株価が参考になりますが、非上場企業では評価の不確実性が高いため、専門家の関与が欠かせません。

従業員・取引先への影響を事前に整理する

吸収合併では消滅会社の従業員が存続会社の従業員として統合されます。就業規則・給与体系・人事制度などが異なる場合、統合方針を事前に整理し、従業員に丁寧に説明することが重要です。

取引先への影響も見過ごせません。包括承継により契約は引き継がれますが、チェンジ・オブ・コントロール条項が契約に含まれている場合、相手方の同意が必要になるケースもあります。主要取引先には合併前に説明を行い、取引継続の意思を確認しておくことで、合併後のトラブルを防げます。合併後のPMI計画を事前に策定し、従業員・取引先への影響を軽減する取り組みが、成功の鍵となります。

適格合併の要件を事前に確認する

適格合併と非適格合併では税務上の扱いが大きく異なり、実行後の税負担に直結します。合併の計画段階で、自社のケースが適格合併の要件を満たせるかを確認しておくことが重要です。

特に共同事業要件では、事業関連性・規模要件・経営参画要件・従業者引継要件・事業継続要件の5つの条件をすべて満たす必要があり、要件判定は複雑です。要件を誤って判断すると、想定外の課税が発生し、合併の経済合理性が損なわれる可能性があります。税理士と早期に協議し、要件充足の見込みと必要な対応を整理しておくことで、合併実行後のリスクを回避できます。

早期に専門家へ相談する

吸収合併は会社法・税法・労働法・会計など、複数の専門領域が絡み合う組織再編です。経営者が独力で全ての論点を判断するのは現実的ではなく、弁護士・司法書士・税理士・公認会計士・M&Aアドバイザーとの連携が不可欠です。

特に売り手経営者の立場でM&Aを検討する場合、吸収合併が最適な手法かどうかの判断から始める必要があります。実務上、中小企業の第三者承継では株式譲渡が主流であり、吸収合併が選ばれるのは特殊な場面に限られます。売り手の利益を守るためには、売り手専属のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を活用する選択肢もあります。手法選択の段階から信頼できる専門家に相談し、自社に最適な組織再編の形を整理することが、成功への近道になります。

まとめ

吸収合併は、会社法に基づく組織再編手法の一つで、消滅会社の権利義務を存続会社に包括承継させる仕組みです。M&Aの他の手法と比べて、組織統合の深さと包括承継が特徴ですが、手続きの複雑さや統合の負担という独自のデメリットもあります。

  • 吸収合併は会社法上の組織再編で、存続会社が消滅会社の権利義務を包括承継する
  • 株式譲渡・事業譲渡・会社分割との違いを理解し、目的に合った手法を選ぶことが重要
  • 組織統合の早期実現・包括承継・繰越欠損金引継ぎといったメリットがある
  • 手続きの複雑さ・PMIの負担・簿外債務リスクなどのデメリットもある
  • 適格合併の要件を満たせば税務上のメリットが見込まれるため、早期の税理士相談が重要

吸収合併はグループ内再編や親子会社統合で多用される一方、中小企業の第三者承継では株式譲渡が主流です。自社の状況に合った手法を選ぶためには、手法選択の段階から専門家に相談し、複数の選択肢を比較することが望ましい対応です。売り手経営者の利益を守る観点では、売り手専属のFAの活用も含めて、早期に相談を始めることで、後悔のない組織再編につながります。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

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