個人事業主が親から子に事業承継する方法!税金や必要な手続きも解説
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- 事業承継
公開日:2026.04.30
2026.04.30
更新日:2026.04.30
2026.04.30
個人事業主として長年続けてきた事業を、親から子に引き継ぎたいと考える経営者は少なくありません。しかし、法人の事業承継と比べて情報が少なく、どのような方法や手続きで進めればよいか迷うケースが多く見られます。
個人事業主の事業承継は、法人の場合と異なり、株式ではなく事業用資産や屋号、取引関係などを個別に引き継ぐ形になります。そのため、贈与・相続・M&Aのいずれの方法を選ぶかによって、必要な手続きや税務上の取扱いは大きく変わります。
本記事では、個人事業主が親から子に事業承継する具体的な方法、発生する税金、必要な手続き、活用できる支援制度を整理して解説します。
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個人事業主が親から子に事業承継する方法
個人事業主が親から子に承継する方法は、大きく3つに分けられます。選ぶ方法によって発生する税金や必要な手続きが異なるため、事業の状況や家族構成、後継者の意向を踏まえて検討する必要があります。
- 生前贈与によって承継する
- 相続によって承継する
- M&Aによって承継する
それぞれの方法には特徴があるため、順に見ていきます。
生前贈与によって承継する
生前贈与は、親が存命のうちに事業用資産を子へ移転する方法です。計画的に承継を進められる点がメリットであり、親が存命のうちに事業運営の引き継ぎまで進めやすくなります。
贈与の対象としては、事業用の預金、売掛金、棚卸資産、機械設備、車両、不動産などが考えられます。屋号の使用や取引先との契約関係について個別に整理しながら引き継ぐため、実質的には事業全体を子へ承継する形になります。
ただし、贈与額が大きくなると贈与税が発生するため、暦年課税や相続時精算課税制度の活用を検討する必要があります。
事業承継には複数の選択肢があるため、以下の記事も参考になります。
多くのオーナー経営者が「M&A」を検討せざるを得ない状況だが…そもそも「事業承継」にはどんな選択肢があるのか?
相続によって承継する
相続は、親の死亡に伴って事業用資産を子が承継する方法です。相続は、生前贈与と異なり、承継のタイミングを選べません。そのため、後継者の準備が整わないまま事業を引き継ぐリスクがあります。
相続では、事業用資産のほか、事業に関連しない個人資産もまとめて相続の対象となります。法定相続人が複数いる場合は、遺産分割協議によって誰がどの資産を引き継ぐかを決める必要があり、事業用資産が分散すると事業継続が難しくなることもあります。こうした事態を防ぐため、遺言書の作成や生前の話し合いが重要になります。
M&Aによって承継する
M&Aによる承継は、親子間であっても有償で事業を譲渡する方法です。個人事業の場合は、法人のM&Aで一般的に行われる株式譲渡とは異なり、事業譲渡の形を取るのが一般的で、事業用資産や契約関係などを個別に整理しながら子へ承継していきます。
親子間のM&Aでは、無償または著しく低い価格で譲渡すると贈与税の対象となる可能性があるため、適正な譲渡価格の設定が重要です。また、親が受け取る譲渡代金は、所得税の対象となります。有償譲渡の形を取ることで、親は引退後の生活資金を確保しやすくなる一方、子は事業取得資金の準備が必要になります。
事業譲渡の基本については、以下の記事で詳しく解説しています。
事業譲渡とは何か?オーナー経営者が知っておくべき基本と実務ポイント
親から子へ個人事業を承継する際に生じる主な税金
個人事業主の事業承継では、承継方法によってかかる税金が異なります。同じ事業用資産を引き継ぐ場合でも、生前贈与・相続・有償譲渡のいずれを選ぶかで税負担が大きく変わるため、事前に整理しておくことが重要です。
- 贈与税
- 相続税
- 所得税
- 消費税
贈与税
贈与税は、生前贈与によって事業用資産を子に引き継ぐ場合に発生します。個人から個人への贈与に対して課される税金で、暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方法があります。
暦年課税では、1年間に贈与を受けた額から基礎控除110万円を差し引いた金額に対して贈与税が課されます。税率は課税価格に応じて10%から55%の累進課税となっており、一定の要件を満たす親子間贈与では特例税率が適用される場合があります。事業用資産の評価額が大きい場合は、相続時精算課税制度の活用も検討対象になります。
個人版事業承継税制も確認しておく
個人事業の親族内承継では、贈与税や相続税の負担を軽減できる制度として「個人版事業承継税制」があります。これは、一定の要件を満たした後継者が、青色申告に係る事業に使われていた特定事業用資産を贈与または相続等により取得した場合に、贈与税・相続税の納税猶予や免除を受けられる特例です。
ただし、誰でも自動的に使える制度ではありません。都道府県知事による認定が必要であり、対象となる事業や資産、承継後の継続要件なども定められています。不動産貸付業等は対象外とされているため、親から子への承継を検討する際は、早い段階で税理士や支援機関に確認しておくことが重要です。
相続税
相続税は、親が亡くなって事業用資産を子が相続する場合に発生します。相続税は、事業用資産だけでなく、現金・預金・不動産・有価証券などを含めた相続財産全体に対して課されます。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、相続財産が基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しません。事業用資産については、一定の要件を満たせば特例の適用を受けられる場合があります。たとえば、事業用の宅地に対する「特定事業用宅地等の特例」を活用すれば、評価額を最大80%減額できるケースがあります。
所得税
所得税は、親が子に事業を有償譲渡した場合、親に対して課される税金です。譲渡によって生じる所得区分は、譲渡する資産の種類によって異なります。
土地・建物などの不動産は、所有期間に応じた分離課税(長期譲渡所得20.315%、短期譲渡所得39.63%)が適用されます。機械設備や車両などの減価償却資産は、総合譲渡所得として他の所得と合算して課税されます。棚卸資産の譲渡は事業所得として扱われます。親が受け取る譲渡対価については、資産の区分に応じて翌年の確定申告で整理する必要があります。
株式譲渡における税金の考え方については、以下の記事も参考になります。
「税引後の売却対価」はいくら?個人・法人の「株式の譲渡所得」にかかる税金
消費税
消費税は、M&Aによって事業を有償譲渡する場合に、譲渡する資産の一部に課される税金です。親が消費税の課税事業者である場合は、課税資産の譲渡について消費税が問題になります。
事業譲渡における消費税は、譲渡対象資産のうち課税資産(棚卸資産、機械設備、車両、建物など)に対して課されます。一方、土地は非課税取引であり、売掛金などの金銭債権は消費税の課税対象になりません。譲渡契約書では、資産ごとに課税・非課税を区分して譲渡価格を設定する必要があります。生前贈与や相続では通常、消費税の売上課税は問題になりませんが、有償譲渡では譲渡資産ごとに課税・非課税を切り分けて整理する必要があります。
個人事業主が親から子に事業承継する際に必要な手続き
個人事業の事業承継は、後継者の選定から実際の引き継ぎまで、段階を追って進める必要があります。準備不足のまま承継を進めると、事業の継続に支障が出たり、税務上のトラブルが生じたりすることがあります。
- 後継者の選定と準備
- 事業運営に必要な知識やスキルの共有
- 承継方法に応じた税務・法務の準備
- 税務・許認可・対外関係の手続きを実行する
- 実務の引き継ぎ
後継者の選定と準備
最初のステップは、後継者となる子を明確にし、本人の意思を確認することです。子が複数いる場合は、誰が事業を継ぐのか、他の子にはどのような資産を分配するのかを早い段階で話し合う必要があります。
後継者が決まったら、事業の現状を共有します。売上・利益の推移、主要な取引先、借入の状況、設備の状態など、事業を引き継ぐうえで必要な情報を開示します。後継者が事業を引き継ぐ判断を行ううえでも、実態を正確に伝えることが重要です。
事業運営に必要な知識やスキルの共有
後継者が事業を引き継ぐまでに、経営判断に必要な知識やスキルを移転する期間を設けます。長年の経験に基づく暗黙知は短期間では引き継ぎにくいため、数年単位で段階的に移行することが望まれます。
具体的には、後継者に事業の主要業務を担当させる、取引先への紹介を行う、資金繰りや経理の実務を経験させるといった方法があります。親が健在のうちに、後継者が自分の判断で事業を回せる状態まで持っていくことが理想です。
承継方法に応じた税務・法務の準備
承継方法に応じた税務・法務上の準備が必要です。生前贈与を選ぶ場合は、贈与契約書の整備や贈与税申告の要否を確認する必要があります。相続の場合は、遺言書の作成を検討することで、事業用資産を確実に後継者に引き継げるよう準備します。
また、税負担を軽減できる制度の適用可否を事前に確認しておくことも重要です。税理士などの専門家に相談し、事前にシミュレーションを行うことで、想定外の税負担を避けることができます。
税務・許認可・対外関係の手続きを実行する
個人事業の承継では、後継者が新たな届出や契約整理が必要になるのが通常です。具体的には、税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出、青色申告を希望する場合は「所得税の青色申告承認申請書」の提出などが求められます。
一方、親は事業を廃止するため、廃業に関する届出書を税務署に提出します。消費税の課税事業者である場合は、消費税関連の届出も必要です。許認可が必要な業種では、後継者が新たに許認可を取得する必要があり、業種によっては数か月の準備期間が必要になります。
実務の引き継ぎ
法的手続きと並行して、実務面の引き継ぎも進めます。取引先への変更通知、従業員対応、入出金口座や決済手段の切替え、リース契約等の整理など、事業運営に関わる各種手続きを順次行います。
取引先への通知は、事業の継続性に対する不安を与えないよう、後継者と共に挨拶回りを行うのが望ましい対応です。従業員がいる場合は、雇用条件の維持を明確に伝え、安心して勤務を続けられる環境を整えます。
親子間の事業承継に活用できる制度・仕組み
親子間の事業承継では、税負担や資金負担を軽減するための支援制度が複数用意されています。制度を活用することで、スムーズな承継と後継者の負担軽減を図れる場合があります。
- 小規模企業共済制度
- 個人版事業承継税制
- 家族信託の活用
小規模企業共済制度
小規模企業共済制度は、個人事業主や小規模企業の経営者が、廃業や退職時の生活資金を積み立てられる国の制度です。毎月の掛金が全額所得控除の対象となり、現役時代の節税効果と退職後の資金確保を両立できます。
親が事業を廃業して子に承継する場合、親はこれまで積み立てた共済金を受け取ることができます。受け取る共済金は退職所得扱いとなり、税制上の優遇が受けられるため、他の収入と比べて税負担が軽くなります。引退後の生活資金を確保する手段として、事業承継のタイミングで活用を検討する価値があります。
個人版事業承継税制
経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を円滑に進めるための国の制度です。個人事業主の事業承継に対しても、「個人版事業承継税制」が適用される場合があります。
個人版事業承継税制は、後継者が先代事業者から事業用資産を贈与・相続によって取得した場合、その事業用資産にかかる贈与税・相続税の納税を猶予・免除する制度です。適用には、事業の継続要件や後継者の要件を満たす必要があります。適用期間や要件は変更される可能性があるため、検討時点の最新情報を税理士や中小企業庁の窓口で確認することが重要です。
家族信託の活用
家族信託は、財産の管理や承継を家族間で設計できる仕組みです。親が認知症などで判断能力を失う前に、信頼できる家族に財産の管理を託すことで、事業の継続性を確保できます。
個人事業主の場合、事業用資産を信託財産として設定し、子を受託者とすることで、親の判断能力が低下しても事業を継続できる体制を作れます。また、信託契約の設計によって、親が元気なうちは親が受益者として事業の利益を受け取り、一定のタイミングで子に受益権を移すといった柔軟な設計も可能です。家族信託の設計には専門知識が必要なため、弁護士や司法書士への相談が推奨されます。
事業承継信託の考え方については、以下の記事も参考になります。
オーナー経営者は必ず知っておくべき有事の備え。”事業承継信託”とは?
まとめ
個人事業を親から子へ承継する方法には、生前贈与、相続、有償譲渡の3つがあります。それぞれに特徴があり、発生する税金や必要な手続きが異なるため、事業の状況と後継者の意向を踏まえて選択する必要があります。
特に親子間の事業承継では、以下のような論点を踏まえて進め方を決めることが重要です。
- 生前贈与・相続・M&Aのいずれを選ぶかで、贈与税・相続税・所得税の負担が変わること
- 後継者の選定と知識・スキルの移転に数年単位の準備期間を確保すること
- 税制上の特例や支援制度を活用することで、税負担を軽減できる可能性があること
- 法的手続きと実務の引き継ぎを並行して進める必要があること
- 事業承継税制や家族信託など、専門家の関与が必要な手続きは早めに相談すること
個人事業主の事業承継は、法人の事業承継と比べて手続きがシンプルに見えますが、税務・法務上の論点は少なくありません。早めに専門家と相談しながら、親子双方が納得できる形で承継を進めていくことが重要です。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
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