後継者がいない会社はどうなる?廃業を避けてM&Aで事業を存続させる方法を解説
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- 事業承継
公開日:2026.04.30
2026.04.30
更新日:2026.04.30
2026.04.30
親族にも社内にも事業を託せる人がいない。そんな状況に直面したとき、多くの経営者が真っ先に考えるのが廃業です。ただ、長年育ててきた事業、従業員の雇用、取引先との関係を、後継者がいないという理由だけで失うのは、本当に避けられない選択肢なのだろうかと感じる経営者も少なくありません。
実際、後継者不在に直面した中小企業の中には、廃業ではなく第三者への事業譲渡(M&A)で事業を存続させているケースが数多く存在します。小規模な会社、業績が安定しない会社、地方の会社であっても、条件が整えば買い手が見つかる事例は着実に増えています。後継者がいない会社にとって、M&Aは廃業を避けるための現実的な選択肢となり得ます。
本記事では、後継者不在の中小企業の現状、取れる4つの選択肢、選択肢の判断軸、M&Aを選ぶメリットと廃業のデメリット、後継者不在でもM&Aが可能な理由、成功のポイントまでを売り手経営者の視点で整理します。
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後継者がいない中小企業の現状
日本の中小企業では、後継者不在の問題が長年にわたって経営課題となってきました。近年は事業承継支援の拡充により改善傾向にあるものの、依然として多くの企業で、後継者が「いない」または「未定」の状況が続いています。
帝国データバンクの2025年の調査によれば、全国の全業種約27万社のうち、後継者が「いない」または「未定」の企業は13.8万社に上り、後継者不在率は50.1%となりました。7年連続で前年を下回る改善傾向にあるものの、依然として中小企業の約半数で後継者が不在または未定という実態が続いています。特に小規模企業では57.3%と高水準で推移しており、規模が小さい企業ほど後継者対策が進みにくい状況が続いています。
後継者不在の背景には、経営者の高齢化、親族内での承継意欲の低下、少子化による候補者の減少、経営環境の複雑化による承継準備の遅れなど、複数の要因が複雑に絡み合っています。特に、親族内承継を前提としてきた中小企業で、子どもが家業を継がない選択をするケースが増えており、従来の承継パターンが通用しなくなってきています。
一方で、事業承継の形態は近年大きく変化しています。2025年の新任代表者の就任経緯別では、血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」が36.1%で、これまで最多だった「同族承継」の32.3%を上回りました。さらに、M&Aなど外部からの承継も20%を超える水準に達しており、「脱ファミリー」の流れが加速しています。後継者がいないからといって廃業を選ばず、新しい承継の形を模索する経営者が増えているのが現状です。
※参考:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」
後継者がいない会社が取れる4つの選択肢
後継者がいない場合、経営者が取りうる選択肢は大きく4つに整理できます。それぞれの選択肢には特徴があり、自社の状況や経営者の希望によって適した選択は異なります。
- 親族内承継
- 社内承継
- 廃業
- 第三者承継(M&A)
それぞれの選択肢を順に見ていきます。
親族内承継
親族内承継は、経営者の子どもや配偶者、兄弟姉妹などの親族に事業を引き継ぐ選択肢です。従来の中小企業の事業承継では最も一般的な形で、経営者としての覚悟や会社への理解を持った後継者を育成しやすい点が特徴です。
ただし、親族内で後継者を確保できるケースは減少しています。子どもが別のキャリアを選んでいる、家業を継ぐ意思がない、経営者としての適性や意欲が不足しているなど、様々な理由で親族内承継が難しい状況が増えています。また、事業承継時の株式移転に伴う贈与税・相続税の負担や、経営者保証の引き継ぎも、親族内承継のハードルとなります。
社内承継
社内承継は、役員や従業員の中から後継者を選び、事業を引き継ぐ選択肢です。親族外ではあるものの、会社の事業や文化をよく理解した人材に引き継げる点が特徴で、近年は親族内承継を上回る水準で選ばれています。
社内承継の課題は、後継者個人の資金調達です。株式を買い取るための資金確保や、金融機関からの融資の引き継ぎ、経営者保証の扱いが大きな論点となります。候補となる役員・従業員に経営者としての覚悟や責任を引き受ける意思が必要で、候補者本人の承諾を得ることが第一歩です。
社内承継の進め方については、以下の記事もご覧ください。
多くのオーナー経営者が「M&A」を検討せざるを得ない状況だが…そもそも「事業承継」にはどんな選択肢があるのか?
廃業
廃業は、後継者が見つからない場合に事業を終了する選択肢です。経営者自身の判断で事業を畳み、資産の処分・債務の整理・従業員対応などを進める選択肢です。自主的に事業を終了する点で、債務超過による倒産とは区別されます。
廃業は一見シンプルな選択肢に見えますが、従業員の雇用喪失、取引先との関係断絶、資産処分の損失、地域経済への影響など、多くの負担を伴います。特に、業績が黒字の状態で後継者がいないという理由だけで廃業する「黒字廃業」は、経営資源が社会に引き継がれない点で大きな損失となります。詳細は後述します。
第三者承継(M&A)
第三者承継(M&A)は、親族や社内以外の第三者に事業を譲渡する選択肢です。株式譲渡や事業譲渡の形で、適切な買い手企業に会社や事業を引き継ぎます。後継者問題の解決策として、近年注目度が高まっている選択肢です。
M&Aの最大の利点は、事業と従業員の雇用を守りつつ、経営者が譲渡対価を得て引退できる点です。親族や社内に候補者がいなくても、全国あるいは海外の企業の中から買い手を探せるため、選択肢の幅が広がります。小規模な会社や業績に課題がある会社でも、条件次第で買い手が見つかるケースがあり、廃業を避けるための現実的な手段として機能しています。
選択肢の判断軸
4つの選択肢のうち、どれが自社に最適かは、会社の状況や経営者の希望によって異なります。判断するための主要な4つの軸を整理します。
- 候補者の有無で判断する
- 経営者保証や相続への影響で判断する
- 従業員・取引先への影響で判断する
- 譲渡対価の受取りを重視するかで判断する
それぞれの判断軸を順に見ていきます。
候補者の有無で判断する
最も基本的な判断軸は、社内外に後継者候補がいるかどうかです。親族内に意欲と適性のある候補者がいれば親族内承継、社内に経営を任せられる役員や従業員がいれば社内承継が選択肢になります。候補者がいない場合、M&Aや廃業を中心に検討することになります。
重要なのは、候補者の「意思」と「適性」の両方を確認することです。形式的な後継者候補がいても、本人に継ぐ意思がない、経営者として必要な能力や経験が不足している場合は、実質的には候補者不在の状態です。曖昧な状態で承継を進めると、承継後に事業運営に支障が出るリスクがあります。早期に候補者との対話を深め、現実的な見通しを立てることが重要です。
経営者保証や相続への影響で判断する
経営者保証の扱いと、相続税・贈与税への影響も重要な判断軸です。中小企業のオーナー経営者は、会社の借入金に個人保証を提供しているケースが多く、この保証をどう整理するかが選択肢を左右します。
親族内承継・社内承継では、後継者が経営者保証を引き継ぐか、新たに保証人となる必要があります。後継者側の抵抗感が強いケースも多く、金融機関との交渉が必要です。一方、M&Aでは、買い手や金融機関との協議を通じて、経営者保証の解除や整理を進められる可能性があります。相続の観点でも、親族内承継とM&Aでは資産の持ち方が変わるため、承継後の資産設計に違いが生じます。
従業員・取引先への影響で判断する
従業員の雇用維持や取引先との関係継続は、多くの経営者にとって重要な判断基準です。
親族内承継・社内承継・M&Aのいずれも事業継続を前提とするため、従業員の雇用や取引先との関係を維持しやすい選択肢です。一方、廃業を選ぶと、従業員の雇用が失われ、取引先との契約も終了することになります。雇用と取引関係を守りたい場合、廃業は最後の選択肢として位置づけ、他の3つの選択肢を優先的に検討することが望ましい対応です。
譲渡対価の受取りを重視するかで判断する
創業者として長年築いてきた会社の価値を、現金化できるかどうかも判断の分かれ道です。引退後の生活資金、新規事業の原資、資産の分散投資、相続対策など、創業者利益の受け取りを重視する場合、選択肢は絞られます。
M&Aでは、スキームによっては株式譲渡の対価として経営者が現金を受け取れる点が大きな特徴です。親族内承継でも株式の譲渡対価は発生しますが、後継者の資金調達が難しく、廉価での譲渡や贈与になるケースが多くあります。社内承継も同様に、後継者の資金力に制約されます。廃業を選ぶと、資産を処分した後に残る現金は限定的で、創業者利益を得るという目的は達成しにくくなります。引退後の生活設計や資産計画を考慮したうえで、譲渡対価の受取りを優先するかを判断することが重要です。
後継者がいない場合にM&Aを選ぶメリット
後継者がいない会社にとって、M&Aは廃業を避けるだけでなく、複数の面でメリットをもたらす選択肢です。売り手経営者にとっての主なメリットを整理します。
- 事業と従業員の雇用を守れる
- 創業者利益を獲得できる
- 経営者保証を解除できる
- 取引先・地域経済との関係を維持できる
それぞれのメリットを順に見ていきます。
事業と従業員の雇用を守れる
M&Aの最大のメリットは、長年育ててきた事業と従業員の雇用を守れる点です。株式譲渡の場合、法人格がそのまま残るため、従業員との雇用関係は継続されます。事業譲渡の場合でも、買い手と従業員が新たな雇用契約を結ぶ形で雇用が維持されるのが一般的です。
廃業を選ぶと、すべての従業員が職を失うことになります。一方、M&Aでは買い手企業が既存の事業体制を引き継ぐため、従業員が同じ職場で働き続けられます。買い手企業の資本力や販売網を活用することで、事業がさらに成長し、従業員の処遇が改善するケースもあります。従業員に対する経営者としての責任を果たすという観点でも、M&Aは重要な選択肢となります。
創業者利益を獲得できる
M&Aでは、株式譲渡の対価として経営者に現金が支払われます。長年の事業経営で築いた企業価値を、創業者利益として現金化できる点は、売り手経営者にとって大きなメリットです。
創業者利益は、引退後の生活資金、新規事業の原資、資産運用の元手、次世代への相続対策など、様々な形で活用できます。廃業を選んだ場合、資産を処分した後に残る現金は限定的で、長年の経営努力が金銭的に報われにくい構造となります。M&Aによって企業価値を対価として回収できる可能性があります。
経営者保証を解除できる
中小企業のオーナー経営者は、会社の借入金に個人保証を提供しているケースが一般的です。M&Aを通じて買い手と金融機関が交渉することで、経営者保証を解除できるのも大きなメリットです。
経営者保証が残ると、会社を手放した後も責任が残り、引退後の生活設計にも影響する可能性があります。廃業の場合、会社の借入金を完済するまで経営者保証は続き、資産処分の結果によっては個人資産まで差し出す必要が生じます。M&Aでは、買い手や金融機関との調整によって、売り手経営者の個人的な責任を整理しやすくなる場合があります。経営者個人のリスクを整理しやすい点は、M&Aの重要な価値の一つです。
取引先・地域経済との関係を維持できる
長年の取引を通じて築いてきた取引先との関係や、地域経済との結びつきも、M&Aによって維持できます。廃業では取引先との契約がすべて終了し、地域経済からも事業が消えてしまいますが、M&Aでは事業が継続するため、これらの関係が存続します。
特に地方の中小企業では、地域経済のインフラとして機能している会社も少なくありません。取引先や顧客、地域にとっても、事業の存続は重要な意味を持ちます。買い手が地域外の企業であっても、事業そのものが続くことで地域への経済的貢献は維持されます。売り手経営者が長年積み上げてきた取引先との信頼関係を、次の経営体制に引き継げるという点でも、M&Aには大きな意義があります。
廃業を選んだ場合のデメリット
廃業を選ぶと、後継者不在の問題は解消されますが、その代償として複数の大きなデメリットを受け入れる必要があります。廃業を検討する前に、失うものの全体像を把握しておくことが重要です。
- 従業員の雇用が失われる
- 取引先との関係が途絶える
- 廃業に伴うコストと資産処分の負担
- 地域経済への影響
それぞれのデメリットを順に見ていきます。
従業員の雇用が失われる
廃業を選ぶと、多くの場合、従業員の雇用を維持できなくなります。長年会社を支えてきた従業員に対して、経営者として最も大きな影響を与える結果となります。再就職支援や退職金の上乗せなどで補う経営者もいますが、従業員のキャリアや生活への影響は避けられません。
特に、専門性の高い技能を持つ従業員、長年勤続してきたベテラン従業員、地域に根付いて働く従業員にとって、廃業による失職は大きな打撃となります。M&Aであれば雇用を維持できる可能性があるため、廃業を選ぶ前に買い手探索を試みる価値は十分にあります。
取引先との関係が途絶える
廃業により、取引先との契約は終了することになります。長年信頼関係を築いてきた取引先、自社の事業に強く依存している取引先、地域の中小企業同士で支え合ってきた取引先との関係が、途絶えることになります。
取引先にとっても、突然の取引終了は事業運営に影響を与えます。新たな仕入先や販売先を探す負担が発生し、場合によっては取引先の経営にも影響を及ぼすことがあります。M&Aでは事業が継続するため、こうした取引先への影響を抑えやすくなります。
廃業に伴うコストと資産処分の負担
廃業は「ただ事業を辞める」という単純な行為ではありません。在庫や設備の処分、事務所・工場の原状回復、退職金の支払い、法人の清算手続きなど、多額の費用と時間がかかります。金額や期間は会社の規模や状況によって大きく異なり、一定の廃業コストが発生します。
さらに、資産の売却価格は通常、帳簿上の価値を下回ります。設備や在庫は二束三文での処分になりがちで、不動産も急いで売却すると市場価格を下回ることが多くあります。債務を返済した後に残る現金は限定的で、長年の経営努力が十分に報われにくい構造です。M&Aであれば事業そのものに対価が付く可能性があるため、金銭的な回収は廃業より有利になる傾向があります。
地域経済への影響
中小企業は地域経済の重要な担い手であり、廃業は地域全体に影響を与えます。従業員の失職による地域の雇用減少、取引先の連鎖的な経営悪化、税収の減少、地域コミュニティの希薄化など、一社の廃業が地域経済に波及する影響は大きいものがあります。
特に地方では、中小企業が地域のインフラとして機能しているケースが多く、一社の廃業が地域全体の衰退につながることもあります。廃業を選ぶ前に、M&Aによる事業承継の可能性を探ることは、経営者個人のためだけでなく、地域社会への責任を果たす観点でも意義があります。
後継者がいない会社でもM&Aは可能
M&Aは大企業や有名企業だけのものという誤解が根強く残っていますが、実際には、後継者不在の中小企業でも活用が進んでいる手法です。自社でも本当にM&Aができるのか不安を抱える経営者に向けて、現実的な論点を整理します。
- 小規模な会社でも売却事例は多い
- 業績に課題がある会社にも買い手が付く可能性がある
- 地方の会社にも買い手のニーズがある
それぞれを順に見ていきます。
小規模な会社でも売却事例は多い
売上数千万円規模、従業員数名程度の小規模な会社でも、M&Aによる事業譲渡の事例は数多く存在します。中小企業基盤整備機構や民間のM&A仲介事業者が運営するマッチングサイトでは、小規模案件が取り扱われており、買い手側にも「小さくても安定的に収益を生んでいる会社」を探すニーズがあります。
買い手の側にも、大きな買収に踏み切れない個人投資家や、小規模事業の集合体を作りたい企業など、様々なニーズがあります。個人による小規模M&A(マイクロM&A)への関心も高まっており、数百万〜数千万円規模の取引が活発に行われています。会社の規模を理由にM&Aを諦めるのではなく、まず専門家に相談して買い手がいるかを確認することが重要です。
業績が良くない会社にも買い手がいる
業績が赤字の会社や、債務超過の会社でも、M&Aで買い手が見つかるケースがあります。買い手側が「足元の業績そのもの」ではなく、「事業の将来性」「従業員の技能」「取引先との関係」「許認可」「特定地域での拠点」などに価値を見出すケースが多くあります。
たとえば、買い手企業が新規事業参入や地域展開を検討している場合、赤字会社であっても拠点や顧客基盤を取得できる意義は大きいものがあります。また、買い手の経営資源と組み合わせることで収益を立て直せる見込みがあれば、現状に課題があっても買収を検討する買い手もいます。業績に課題があるという理由だけで選択肢を閉ざさず、自社の隠れた価値を専門家と一緒に探すことが重要です。
地方の会社にも買い手のニーズがある
都市部の会社だけでなく、地方の会社にもM&Aの機会は広がっています。地方の会社には、特定地域での顧客基盤、地域に根付いたブランド、地域特有のノウハウ、地理的な拠点価値など、都市部の企業にはない独自の価値があります。
買い手側には、地方進出を検討する企業、地域特有の事業に参入したい企業、地方の優良企業を取得して事業ポートフォリオを広げたい投資家など、様々なニーズがあります。地方金融機関や地域のM&A仲介事業者、全国の買い手ネットワークを持つM&Aアドバイザーの活用により、地方の会社でも、適切な買い手を見つけられる可能性が高まっています。地方の企業でもM&Aの成約事例が増えているため、まずは専門家に相談することで、選択肢が見えやすくなります。
M&Aを成功させるためのポイント
後継者がいない会社がM&Aを成功させるには、事前準備と適切な支援体制が重要です。売り手経営者が押さえておくべき具体的なポイントを整理します。
- 早期に準備を始める
- 企業価値を高める取り組みを行う
- 売り手専属の専門家に相談する
- 国の支援制度を活用する
それぞれのポイントを順に見ていきます。
早期に準備を始める
M&Aは準備から成約まで一定の期間を要します。経営者の体調悪化や急な環境変化が起きてから検討を始めるのは遅れやすいため、経営者が元気なうちに、できるだけ早い段階から準備を始めることが望ましい対応です。
早期に準備を始めることで、財務資料の整理、株主構成の確認、キーパーソンの育成、取引先との関係強化など、企業価値を高める取り組みを進める時間的余裕ができます。また、複数の買い手候補とじっくり交渉できるため、条件面でも有利に進められます。時間的な余裕がない状態での交渉は、売り手にとって不利な条件を受け入れざるを得ない状況を招くリスクがあります。
企業価値を高める取り組みを行う
M&A前の数年間で、企業価値を高める取り組みを計画的に進めることで、より有利な条件での譲渡が実現しやすくなります。主な取り組みは、収益力の改善、無駄なコストの削減、業務プロセスの標準化、キーパーソンの育成、主要取引先との関係強化などです。
特に、経営者個人への依存度を減らす取り組みは重要です。経営者がいなくても事業が回る体制を作ることで、買い手にとっての引き継ぎリスクが低下し、企業価値の評価が上がります。また、就業規則の整備、未払い残業代の有無確認、簿外債務の解消など、デューデリジェンスで論点になりやすい項目を事前に整えておくことも、成約に向けた重要な準備となります。
売り手専属の専門家に相談する
M&Aの支援を行う専門家には、大きく分けて仲介サービスとFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の2種類があります。仲介サービスは売り手・買い手の双方と契約し、中立的にマッチングを行うサービスです。一方、FAは売り手または買い手のどちらか一方と契約し、依頼者の利益最大化を目的とします。
後継者不在の経営者にとって、売り手専属のFAを活用することで、自社の利益を守った交渉が進められます。仲介サービスは両方から手数料を受け取る構造上、売り手の利益最大化だけを目的とする立場とは異なります。後継者不在の立場では、買い手に対して交渉力で劣りがちな局面が多く、売り手専属の味方となる存在の有無が譲渡条件を大きく左右します。
仲介サービスとFAの違いについては、以下の記事もご覧ください。
中小企業オーナーが知るべき「M&A仲介サービス」と「FA」の本質的な違い
国の支援制度を活用する
国や自治体は、中小企業の事業承継を支援する様々な制度を整備しています。中小企業庁の「事業承継・引継ぎ支援センター」は全国47都道府県に設置されており、無料で事業承継に関する相談を受けられます。M&Aの買い手探索もサポートしており、公的機関としての安心感と実績を兼ね備えています。
他にも、事業承継税制(特例措置)による相続税・贈与税の納税猶予、事業承継・引継ぎ補助金による費用支援、金融機関の事業承継支援融資などが活用可能です。特に事業承継税制では、特例承継計画や個人事業承継計画の提出期限が見直されており、親族内承継を検討する場合は早期の活用を検討する価値があります。自社の状況に合った支援制度を専門家と一緒に整理することで、負担を軽減しながら事業承継を進められます。
まとめ
後継者がいない会社にとって、選択肢は廃業だけではありません。親族内承継・社内承継・M&A・廃業の4つの中から、自社の状況に合った選択肢を見つけることで、事業と従業員の雇用を守り、経営者としての責任を果たせます。特に押さえておくべき論点は以下の通りです。
- 日本の後継者不在率は50.1%(2025年)で、中小企業の約半数が後継者を決められていない
- 4つの選択肢は、親族内承継・社内承継・廃業・第三者承継(M&A)
- 選択肢は候補者の有無・経営者保証・従業員や取引先への影響・譲渡対価の4軸で判断する
- M&Aには事業と雇用の維持、創業者利益の獲得、経営者保証の整理、取引先との関係維持のメリットがある
- 廃業では雇用喪失、取引先との関係断絶、廃業コスト、地域経済への影響などのデメリットが発生
- 小規模・業績不振・地方の会社でも、M&Aで買い手が見つかる事例は多い
後継者不在であっても、M&Aの可能性を検討したうえで廃業の判断を下すことが合理的です。廃業を決断する前に、M&Aという選択肢が現実的に機能するかを検討する価値があります。売り手経営者として主導権を持って事業承継を進めたい場合、売り手専属のFAや公的支援機関への早期相談が、後悔のない選択につながります。
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