会社売却を家族に相談するタイミングは?立場別に話す内容と反対されたときの3つの対応
公開日:2026.11.04
2026.11.04
更新日:2026.11.04
2026.11.04
会社の売却は、家族の生活や相続にも関わる決断です。家族に相談する理由、配偶者・子ども・株主の親族など立場別に話す内容、相談する4つのタイミング、注意点、反対されたときの対応と、並行して相談したい専門家を解説します。

会社を売ることを、まず誰に話せばよいのか。家族に話せば反対されるかもしれない。子どもが継ぐつもりでいたらどうしよう。会社の売却は、経営者一人の問題ではありません。売却の代金や引退後の暮らしは家族の生活に関わり、家族が株主や保証人であれば、手続きにも関わります。一方で、話す相手や時期を誤ると、情報が漏れたり、家族の間で対立が生じたりすることもあります。本記事では、家族に相談する理由と、立場別に話す内容、相談のタイミングを解説します。あわせて、相談するときの注意点、反対されたときの対応、家族と並行して相談したい専門家を示します。
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会社売却は関わりの深い人に早めに相談する
会社の売却は、経営者だけで決めて進めるものではありません。家族の生活や財産、会社の手続きに関わるため、関わりの深い人には早めに相談します。
一方で、M&Aでは情報の管理が重要です。売却の検討が社内や取引先に早く伝われば、従業員の動揺や取引の見直しを招くおそれがあります。中小企業庁のガイドラインも、M&Aの検討では秘密を守ることの重要性を示しています。
つまり、相談する相手を絞り、相手ごとに話す時期と内容を変えることが大切です。
| 相手 | 話す時期の目安 | 主に話す内容 |
| 配偶者 | 売却を考え始めた段階 | 引退後の生活、売却代金の使い方 |
| 後継者候補の子ども | 売却を考え始めた段階 | 継ぐ意思の有無 |
| 株主の家族 | 専門家に相談した後 | 株式の扱い |
| 役員の家族 | 最終契約の前(買い手候補と条件の大枠が決まった段階) | 退任の時期や退職金など売却後の処遇 |
| ほかの親族 | クロージングの後 | 売却の結果 |
まずは、自分の家族の中で、誰がどの立場にあたるかを確認します。
会社売却を家族に相談する3つの理由
家族への相談は、気持ちの問題だけではありません。相談すべき主な理由は以下の3つです。
- 子どもや兄弟が継ぐ意思を持っている場合がある
- 家族が株主や役員、保証人なら同意や手続きが要る
- 売却代金や引退後の暮らしが家族の生活に関わる
それぞれを順に解説します。
子どもや兄弟が継ぐ意思を持っている場合がある
経営者が気づいていないだけで、子どもや兄弟が会社を継ぐ意思を持っている場合があります。 思い込みで売却を進めると、家族の関係にひびが入るおそれがあります。
子どもの事業承継意欲に関する調査|日本政策金融公庫総合研究所
日本政策金融公庫の2021年の調査では、後継者が決まっていない親の事業について、子どもの約3割から4割が承継の意欲を示しました。一方、継ぐかどうか判断できない人の理由の首位は「事業承継について親と話をしないから」(35.3%)でした。
売却を決める前に、子どもの考えを直接聞きます。
家族が株主や役員、保証人なら同意や手続きが要る
家族が株主や役員、借入金の保証人になっている場合は、原則として、売却に同意や手続きが必要です。 株式は、持っている各株主が自分で売るものであるためです。
家族が役員であれば、退任の手続きや退職金の扱いを決めます。家族が保証人や担保の提供者であれば、保証や担保を外す手続きが要ります。
会社の株主名簿と、借入金の保証人の一覧を確認し、関わる家族を洗い出します。
株式が親族に分散している場合の集約方法については、下記で解説しています。
売却の進め方や仲介会社から提案を受けた際の注意点を、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
売却代金や引退後の暮らしが家族の生活に関わる
売却の代金や、引退後の暮らし方は、家族の生活に直接関わります。 経営者の収入が役員報酬から売却代金に変われば、家計の組み立ても変わるためです。
売却の後に、経営者が会社に残るのか、完全に引退するのかによっても、家族の暮らしは変わります。
住まいや子どもの教育、親の介護など、家族の今後の予定と、売却の時期を照らし合わせます。
家族の立場別に相談する内容
家族の立場によって、話すべき内容は異なります。立場別に相談する内容は以下の4つです。
- 配偶者には引退後の生活と売却代金の使い方を話す
- 子どもには継ぐ意思がないかを先に確かめる
- 株主や役員の家族には株式の扱いと売却後の処遇を話す
- 保証人や担保を出している家族には保証の外し方を伝える
それぞれを順に解説します。
配偶者には引退後の生活と売却代金の使い方を話す
配偶者には、引退後の生活と、売却代金をどう使うかを話します。 売却の代金は、夫婦の老後の資金や、将来の相続の財産になるためです。
売却の代金には税金がかかります。株式の譲渡益には、所得税と住民税を合わせて20.315%の税金がかかるのが原則です。
税引き後の手取りの見込みをもとに、住まいや生活費、資産の運用の方針を話し合います。会社の株式が現金に変わることで、将来の相続の準備の仕方も変わります。
売却にかかる税金と手取りの考え方については、下記で詳しく解説しています。
会社売却後にかかる税金は?計算方法や確定申告、税引後手取りを増やす対策を解説
子どもには継ぐ意思がないかを先に確かめる
子どもには、売却の話をする前に、会社を継ぐ意思がないかを確かめます。 売却を決めた後に継ぎたいと言われても、取引を止めると、買い手候補との関係や費用の面で負担が生じる可能性があります。
日本政策金融公庫の調査によると、子どものうち、親から継いでほしいと言われた経験がある割合は、承継の意欲がある層で高く、関心のない層では4.1%にとどまりました。
親が何も伝えなければ、子どもも考える機会がありません。会社の現状と、継ぐ場合の責任を率直に伝えたうえで、本人の意思を聞きます。
株主や役員の家族には株式の扱いと売却後の処遇を話す
株主や役員である家族には、持っている株式をどう扱うかと、売却後の処遇を話します。 株式を売るかどうかは、各株主が自分で決めることであるためです。
株式の譲渡に会社の承認が必要と定款で定めている会社では、原則として株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認の手続きも要ります(会社法第136条、第139条第1項)。役員の家族には、退任の時期や退職金、売却後も会社に残る可能性を伝えます。
株主ごとの持株数と、売却への考えを一覧にします。
保証人や担保を出している家族には保証の外し方を伝える
会社の借入金の保証人や、担保を出している家族には、売却の後に保証や担保をどう外すかを伝えます。 売却の後も保証が残れば、家族が会社の借金を背負い続けることになるためです。
中小企業庁の資料は、M&Aの成立と同時に経営者保証を解除することを優先すべき対応としています。
買い手が借入金を借り換えるか、金融機関に保証の変更を求めるかなど、外し方の見通しを家族と共有します。
経営者保証の解除の方法については、下記で解説しています。
M&Aにおける経営者保証とは?解除方法やガイドライン、トラブル対策も解説
家族に相談する4つのタイミング
家族に話す時期は、相手によって変えます。相談の主なタイミングは以下の4つです。
- 売却を考え始めたら配偶者や後継者候補の子どもに話す
- 専門家に相談したあと株主の家族に株式の扱いを話す
- 最終契約の前に役員の家族に処遇を伝える
- クロージングのあとにほかの親族へ伝える
それぞれを順に解説します。
売却を考え始めたら配偶者と後継者候補の子どもに話す
売却を考え始めた段階で、配偶者と、後継者の候補になりうる子どもに話します。 二人の考えによって、売却するかどうか自体が変わるためです。
考え始めの段階では、売却を決めたとは伝えず、選択肢の一つとして考えていることを話します。将来の不安や希望を率直に聞き、家族の意見を踏まえてから、専門家に相談します。
専門家に相談したあと株主の家族に株式の扱いを話す
専門家に相談して売却の見通しが立った後で、株主である家族に株式の扱いを話します。 売却の方法や価格の目安が分かっていれば、具体的に話せるためです。
株式の売却に同意してもらえるかを確かめ、買い手探しを始める前に意思をそろえます。持株数が多い家族ほど、早めに丁寧に説明します。
最終契約の前に役員の家族に処遇を伝える
最終契約を結ぶ前に、役員を務める家族に、売却後の処遇を伝えます。 退任や退職金の扱いを、最終契約に反映する必要があるためです。
早すぎると情報が漏れる心配があるため、買い手候補と条件の大枠が決まった段階で伝えます。本人の希望を聞き、最終契約の交渉に反映できるようにします。
役員退職金の考え方については、下記で解説しています。
役員退職慰労金はM&Aでいくらまで?功績倍率法と損金算入の3要件を解説
クロージングのあとにほかの親族へ伝える
会社の株主や役員でないほかの親族には、クロージングの後に売却を伝えます。 手続きに関わらない人に早く伝えても、情報が漏れるおそれが高まるためです。
伝える際は、売却に至った理由と、従業員の雇用や取引先との関係が維持される見込みを話します。地域の取引先と付き合いのある親族には、特に丁寧に説明します。
家族に相談するときの3つの注意点
家族への相談は、進め方を誤ると売却の進行に影響する可能性があります。家族に悪気がなくても起こりうる点に注意します。注意したい点は以下の3つです。
- 話した内容が社内や取引先に漏れないようにする
- 売却価格の見込みを決まったことのように話さない
- 家族の意見だけで売るかどうかを決めない
それぞれを順に解説します。
話した内容が社内や取引先に漏れないようにする
家族に話した内容が、社内や取引先に漏れないようにします。 家族が会社で働いていたり、取引先と付き合いがあったりすると、意図せず伝わることがあるためです。
売却の話が漏れれば、従業員が不安から辞めたり、取引先が取引を見直したりするおそれがあります。話す際は、誰にも話さないよう明確に伝えます。
従業員へ伝える時期と順番については、下記で解説しています。
M&Aを従業員に説明する適切なタイミングは?役職別の順番と3つの注意点
売却価格の見込みを決まったことのように話さない
売却価格の見込みを、決まったことのように家族に話さないようにします。 価格は、買い手候補の調査や交渉によって変わるためです。
金額は幅をもって伝え、変わりうることを話しておきます。
家族の意見だけで売るかどうかを決めない
家族の意見は大切ですが、家族の意見だけで売るかどうかを決めないようにします。 家族は、会社の経営や業界の状況を詳しく知らないことが多いためです。
家族が賛成していても、売却が会社と従業員にとって最善とは限りません。
家族の意見に加えて、専門家の見方や会社の将来の見通しを踏まえて判断します。
家族に反対されたときの3つの対応
家族から売却に反対されることもあります。反対は、家族が会社を大切に思っている表れでもあります。反対されたときの主な対応は以下の3つです。
- 反対の理由が承継の希望か不安かを聞き分ける
- 第三者の専門家から選択肢を説明してもらう
- 親族内承継や社内承継と比べて判断する
それぞれを順に解説します。
反対の理由が承継の希望か不安かを聞き分ける
家族が反対する理由が、自分が継ぎたいという希望なのか、売却への不安なのかを聞き分けます。 理由によって、とるべき対応が異なるためです。
継ぎたいという希望であれば、承継の道を本気で検討します。生活や従業員への不安であれば、売却後の条件を具体的に示すことで解消できる場合があります。
まずは反論せずに、理由を最後まで聞きます。
第三者の専門家から選択肢を説明してもらう
家族の不安が強い場合は、第三者の専門家から選択肢を説明してもらいます。 経営者本人が説明するより、客観的に受け止めてもらいやすいためです。
顧問税理士や売り手側のFAに同席してもらい、売却の流れや手取りの見込み、売却しない場合の見通しを説明してもらいます。
家族の質問には、同席した専門家に答えてもらいます。
親族内承継や社内承継と比べて判断する
売却だけでなく、親族への承継や、役員・従業員への承継と比べて判断します。 家族の反対をきっかけに、ほかの選択肢を改めて検討できるためです。
それぞれの方法で、経営者の手取り、従業員の雇用、会社の将来がどう変わるかを並べて比べます。
比べた結果を家族と共有し、全員が納得できる方法を選びます。
親族内承継・社内承継・M&Aの違いについては、下記で詳しく解説しています。
事業承継とM&Aの違いとは?3つの承継方法と後悔しない相談先の選び方を解説
家族と並行して相談したい4つの相談先
家族だけでは、売却の判断に必要な知識が不足する場合があります。家族と並行して相談したい主な相談先は以下の4つです。
オーナーズ株式会社の2026年の調査では、初めの接点として信頼しやすいのは、士業からの紹介(78.9%)と取引金融機関からの紹介(71.1%)でした。
事業承継・M&Aの相談先選定に関する実態調査|RISONAL
- 顧問税理士
- 取引金融機関
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 売り手専属のFA
それぞれを順に解説します。
顧問税理士
顧問税理士は、会社の財務と税金を熟知している身近な相談先です。 株価の目安や、売却にかかる税金を試算してもらえます。
ただし、M&Aの実務に詳しいとは限りません。M&Aの経験の有無を確かめ、必要に応じて専門家を紹介してもらいます。
取引金融機関
取引のある金融機関は、借入金や経営者保証の扱いについて相談できる相手です。 M&Aの部門を持ち、買い手候補を紹介してくれる金融機関もあります。
ただし、金融機関には融資先としての立場もあります。相談の際は、金融機関がどの立場で関わるのかを確認します。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が各都道府県に設けている公的な相談窓口です。 親族内承継から第三者への売却まで、中立の立場で相談に応じています。
中小企業庁も、M&Aのトラブルに違和感を抱いた場合の相談先として、同センターを挙げています。
売り手専属のFA
売り手専属のFAは、売り手側の立場で助言する専門家です。 売り手と買い手の双方から報酬を得る仲介会社と異なり、売り手の意向を踏まえて条件交渉を支援します。
仲介会社とFAの立場の違いについては、下記で解説しています。
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
会社売却の家族への相談に関するよくある質問
家族への相談について、売却を考える経営者から寄せられることの多い質問を3つ取り上げます。家族に知らせずに売れるか、株式を持つ家族の同意、売却後に家族を残せるかの3点です。
家族に知らせずに会社を売ることはできますか?
家族が株主、役員、保証人のいずれでもなければ、原則として法的には可能です。ただし、売却の代金は家族の生活や相続に関わります。売却の後に知った家族との関係が悪化することもあるため、少なくとも配偶者には話しておくことが望ましいです。
家族が株式を持っている場合は全員の同意が要りますか?
会社の株式をすべて売る場合は、株式を持つ家族の全員が自分の株式を売ることに同意する必要があります。株式は、各株主の財産であるためです。一部の家族が売らない場合は、買い手候補が全株式を取得できなくても買うかを判断します。
売却後も家族を会社に残すことはできますか?
できる場合があります。家族を従業員や役員として残すことを、売却の条件として交渉します。ただし、買い手候補が受け入れるかは、家族の役割や会社への貢献によります。残る場合の処遇は、最終契約に明記します。
まとめ
会社の売却は、家族の生活や財産、会社の手続きに関わる決断です。関わりの深い家族には早めに相談し、相手ごとに話す時期と内容を変えることが大切です。
要点は以下のとおりです。
- 子どもや兄弟が継ぐ意思を持っていないかを、売却を決める前に確かめる
- 株主や役員、保証人の家族には、株式や処遇、保証の外し方を話す
- 配偶者と後継者候補の子どもには、売却を考え始めた段階で話す
- 価格の見込みを決まったことのように話さず、情報の管理を徹底する
- 家族に反対されたら理由を聞き分け、専門家を交えてほかの選択肢と比べる
家族の理解は、売却を最後まで進める支えになります。家族と話すのと並行して、売り手の立場で助言する専門家に早めに相談してください。
売却前に押さえておきたい注意点は、資料でも確認できます。
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