M&Aの弁護士費用はいくら?料金の決まり方と依頼前に確認したい5つのこと
公開日:2026.11.04
2026.11.04
更新日:2026.11.04
2026.11.04
M&Aの弁護士費用には決まった相場がなく、料金の種類と依頼する業務の範囲で金額が変わります。料金の計算方法、売り手が依頼する主な業務、依頼前に確認したい5つのこと、費用を抑える3つの方法を売り手視点で解説します。

契約書のチェックを弁護士に頼みたいが、いくらかかるのか見当がつかない。M&Aの弁護士費用は、事務所ごとに料金の決め方が違い、同じ依頼でも見積もりに差が出ます。金額だけで比べると、含まれる業務の範囲を見落として、後から追加の費用が発生することもあります。本記事では、相場が決まっていない理由と料金の計算方法を取り上げたうえで、売り手が依頼する主な業務を解説します。あわせて、依頼前に確認したい5つのことと、費用を抑える方法を示します。
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M&Aの弁護士費用に決まった相場がない理由
M&Aの弁護士費用には、全国で決まった相場がありません。弁護士報酬は、2004年4月1日に日本弁護士連合会の報酬基準が廃止され、各弁護士が自ら定める仕組みに変わったためです。
日弁連は報酬の自由化にあわせ、弁護士に報酬基準の作成や報酬の説明、委任契約書の作成を求める「弁護士の報酬に関する規程」を整備しました。金額は事務所ごとに異なりますが、算定の根拠を確認できる仕組みはあります。
M&Aでは、案件ごとに論点の数と難しさが大きく異なります。株式譲渡か事業譲渡か、デューデリジェンスの範囲はどこまでか、契約交渉が何往復するかによって、必要な作業時間が変わります。同じ規模の会社でも費用に差が出るのは、作業量が案件ごとに違うためです。
費用を比べる際は、金額だけでなく、計算方法と依頼する業務の範囲をあわせて確認します。
M&Aの支援実績がある弁護士事務所は、下記で紹介しています。
M&Aの支援実績がある弁護士事務所7選!対応領域・強み別に整理
M&Aの弁護士費用は料金の種類で計算方法が変わる
M&Aの弁護士費用は、料金の種類によって計算方法が変わります。主な種類は次のとおりです。
| 料金の種類 | 計算の仕方 | M&Aで使われやすい場面 |
|---|---|---|
| 法律相談料 | 相談の時間に応じて計算する | 依頼前の相談、論点の整理 |
| 着手金・報酬金 | 依頼時と成果に応じて支払う | 紛争の解決が中心となる案件 |
| タイムチャージ | 弁護士の作業時間に時間単価を掛ける | 契約書のレビュー、DDへの対応 |
| 定額報酬 | 業務ごとに金額をあらかじめ決める | 秘密保持契約など定型的な書面のレビュー |
| 顧問料 | 月額で継続的に支払う | 日常的な法務の相談 |
| 実費 | 交通費や郵送費など実際にかかった額 | 業務全般 |
M&Aの契約書のレビューや交渉では、作業時間に応じて計算するタイムチャージが用いられることが多くあります。交渉の回数や論点の数を事前に見積もりにくいためです。
一方でタイムチャージは、交渉が長引くほど費用が増える仕組みでもあります。総額の見通しを立てにくい点は、依頼者にとっての負担になる場合があります。
依頼の前に、どの料金の種類で計算するのか、複数を組み合わせるのかを確認します。
売却の進め方や仲介会社から提案を受けた際の注意点を、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
売り手がM&Aで弁護士に依頼する主な業務
弁護士への依頼は、M&Aの段階ごとに内容が変わります。売り手が依頼する主な業務は以下の4つです。
- 秘密保持契約やアドバイザリー契約のリーガルチェック
- 買い手候補が行う法務デューデリジェンスへの対応
- 株式譲渡契約書や事業譲渡契約書のレビューと交渉
- クロージング後の紛争対応
それぞれを順に解説します。
秘密保持契約やアドバイザリー契約のリーガルチェック
最初の依頼対象は、秘密保持契約やアドバイザリー契約のリーガルチェックです。 M&Aの検討を始めると、買い手候補との秘密保持契約や、仲介会社・FAとの契約を結びます。
アドバイザリー契約では、次の条項が売り手の負担を左右します。
- 専任条項とテール条項の期間と範囲
- 手数料の計算方法と最低手数料
- 中途解約の可否
中小M&Aガイドラインは、支援機関に対し、契約締結前に手数料や専任条項、テール条項などを書面で説明することを求めています。説明を受けた内容と契約書の条文が一致しているかを、弁護士に確認してもらいます。
アドバイザリー契約の手数料やテール条項は、下記で解説しています。
M&AにおけるFAの手数料とは?M&A仲介会社との違いや失敗しない選び方を解説
こんなはずでは…M&A業者が謳う「非専任」や「完全成功報酬」の落とし穴
買い手候補が行う法務デューデリジェンスへの対応
買い手候補が行う法務デューデリジェンスへの対応も、依頼の対象です。 法務デューデリジェンスとは、買い手候補が対象会社の契約や許認可、労務、訴訟などの法的なリスクを調べる手続きを指します。
売り手側の弁護士が関与すれば、次のような対応を任せられます。
- 開示資料の整理と開示範囲の判断
- 買い手候補からの質問への回答案の作成
- 指摘された問題点の是正方法の検討
指摘された事項は、表明保証や譲渡価格に反映される場合があります。開示の仕方を誤ると、売却後の補償に影響する可能性があります。指摘事項の一覧を弁護士と共有し、回答の方針を決めます。
DDの流れと売り手側の準備は、下記で解説しています。
M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは?目的や流れ、売り手側のポイントを解説
株式譲渡契約書や事業譲渡契約書のレビューと交渉
最終契約書のレビューと交渉は、弁護士の役割の中心です。 株式譲渡契約書や事業譲渡契約書の条項は、売却後の売り手の負担を左右します。
レビューで確認する主な条項は次のとおりです。
- 表明保証の範囲と除外事項
- 補償の上限と請求期間
- 経営者保証の解除の扱い
- 競業避止義務の期間と範囲
買い手候補側が用意した案は、買い手候補の立場から作られていることが多いです。修正を求める条文と理由の一覧を弁護士に作ってもらい、交渉に臨みます。
クロージング後の紛争対応
クロージング後に生じた紛争への対応も、弁護士に依頼する業務です。 表明保証違反を理由とした補償の請求や、経営者保証の解除が進まない場合などが該当します。
中小M&Aガイドライン(第3版)は、最終契約後にトラブルに発展するリスクと対応策について解説を加えています。
紛争への対応は、請求額や交渉の経過によって費用が大きく変わります。売却後に争いが生じた場合に備え、依頼先の弁護士と費用の考え方を事前に確認します。
弁護士に依頼する前に確認したい5つのこと
依頼してから費用の認識がずれないよう、事前に確認します。確認したいことは以下の5つです。
- 料金の計算方法と見積もりの範囲を確認する
- 報酬の定めが委任契約書に書かれているか確認する
- 時間制の場合は上限や途中報告の有無を確認する
- M&Aの取引実績と対応できる範囲を確認する
- 買い手候補側の依頼を受けていないか確認する
それぞれを順に解説します。
料金の計算方法と見積もりの範囲を確認する
依頼の前に、料金の計算方法と見積もりの範囲を確認します。 同じ金額でも、含まれる業務が違えば比較になりません。見積もりの範囲を超えた作業は追加費用として請求されることが多いため、範囲の確認が総額に影響します。
確認する内容は次のとおりです。
- 料金の種類と単価
- 見積もりに含まれる業務と含まれない業務
- 追加の費用が発生する条件
複数の事務所から見積もりを取る場合は、依頼する業務の一覧を先に作り、同じ範囲で見積もりを依頼したうえで比較します。
報酬の定めが委任契約書に書かれているか確認する
報酬の定めが、委任契約書に書かれているかを確認します。 口頭の説明だけでは、後から費用の認識が食い違ったときに根拠を示せません。
日弁連の「弁護士の報酬に関する規程」は、弁護士が事件を受任する際に、報酬の定めを含む委任契約書を作成することを求めています。
確認する項目は次のとおりです。
- 報酬の種類と金額、計算方法
- 支払の時期
- 契約を途中で終了した場合の精算
契約書の写しを受け取り、条項を読んだうえで署名します。
時間制の場合は上限や途中報告の有無を確認する
時間制で依頼する場合は、上限や途中報告の有無を確認します。 タイムチャージは作業時間に応じて費用が増えるため、総額が読みにくい料金体系です。
取り決めておく内容は次のとおりです。
- 費用の上限額、または上限に近づいた段階での事前連絡
- 作業時間の明細を提出する頻度
- 担当する弁護士ごとの時間単価
月ごとの請求額を確認し、想定を超えそうな段階で依頼範囲を見直します。
M&Aの取引実績と対応できる範囲を確認する
M&Aの取引実績と、対応できる範囲を確認します。 企業法務を扱う弁護士でも、M&Aの契約交渉に慣れているとは限りません。
確認する内容は次のとおりです。
- 中小企業のM&Aで売り手側を担当した経験
- 株式譲渡と事業譲渡のどちらに対応できるか
- 税務や労務の論点を他の専門家とどう連携するか
過去の担当案件の概要を、守秘の範囲で説明してもらいます。
買い手候補側の依頼を受けていないか確認する
依頼しようとする弁護士が、買い手候補側の依頼を受けていないかを確認します。 弁護士法第25条第1号は、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件について、弁護士は職務を行ってはならないと定めています。
同じ取引で買い手候補の相談に乗っている弁護士には、原則として売り手の代理を依頼できません。顧問弁護士が買い手候補とも取引がある場合も、利害の衝突が生じえます。
依頼の前に、買い手候補の社名を伝えて利益相反の有無を確認してもらいます。
M&Aの弁護士費用を抑える3つの方法
費用は、依頼の仕方で変わります。何をどこまで頼むかを決めるのは依頼者自身です。抑える方法は以下の3つです。
- 相談する論点を絞って依頼範囲を決める
- 事業承継・M&A補助金の対象になるか確認する
- 売り手専属のFAと役割を分担して依頼範囲を絞る
それぞれを順に解説します。
相談する論点を絞って依頼範囲を決める
相談する論点を絞って、依頼範囲を決めます。 すべての業務を一括で依頼すれば、費用が膨らみやすくなります。
依頼範囲の決め方の例は次のとおりです。
- 最終契約書のレビューと交渉だけを依頼する
- 表明保証と補償の条項に絞って意見を求める
- 定型的な秘密保持契約は事務所の定額料金を使う
自社で判断できる事項と、専門家の判断が必要な事項を分けます。論点の一覧を作り、優先度の高いものから依頼します。
事業承継・M&A補助金の対象になるか確認する
事業承継・M&A補助金の対象になるかを確認します。 同補助金の専門家活用枠は、M&Aに伴って専門家を活用する費用の一部を補助する制度です。
補助対象となる委託費には、最終契約書等の作成やレビューを弁護士に委任した費用が含まれるとされています。
注意したいのは時期です。補助金は交付決定後に補助事業が始まる仕組みで、交付決定前に契約・発注した費用は原則として対象外です。
事業承継・M&A補助金(14次公募以降)|事業承継・M&A補助金事務局
公募ごとに要件や上限が変わるため、弁護士と契約する前に事務局の公募要領を確認します。
事業承継・M&A補助金の枠や申請の流れは、下記で解説しています。
事業承継・M&A補助金とは?売り手でも使える枠や申請の流れを解説
売り手専属のFAと役割を分担して依頼範囲を絞る
売り手専属のFAと役割を分担し、弁護士への依頼範囲を絞ります。 条件交渉の進め方や論点の整理をFAが担えば、弁護士は条文の確認に専念しやすくなります。
分担の例は次のとおりです。
- FA:買い手候補との条件交渉、論点の優先順位づけ
- 弁護士:条文の意味とリスクの確認、修正案の作成
- 税理士:手取り額と税負担の試算
役割が重なれば、同じ作業に二重の費用を払うことになります。依頼の前に、FAと弁護士の担当範囲を書面で決めておきます。
売り手側FAの業務内容は、下記で解説しています。
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
M&Aの弁護士費用に関するよくある質問
M&Aの弁護士費用について、相談の現場で多く寄せられる質問を3つ取り上げます。弁護士費用以外にかかる費用、弁護士費用の税務上の扱い、顧問弁護士への依頼の可否の3点です。
M&Aでは弁護士費用のほかにどのような費用がかかりますか?
主に、仲介会社やFAへの手数料と、会計士や税理士への費用がかかります。株式の譲渡では、譲渡益に対する税金も生じます。事業譲渡では、不動産の移転登記や印紙税など、移転する資産に応じた費用も加わります。費用の内訳を、売却の検討段階で一覧にします。
売却時にかかる税金は、下記で解説しています。
M&Aの弁護士費用は経費や譲渡費用として扱えますか?
立場によって扱いが変わります。個人が株式を譲渡した場合、譲渡のために直接要した費用は譲渡費用として差し引けます。一方で国税庁は、土地や建物の譲渡の例で、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用にならないとしています。個別の判断は税理士などの専門家へ確認します。
顧問弁護士にM&Aの対応も依頼できますか?
依頼できますが、M&Aの経験と利益相反の有無を確認します。顧問弁護士は会社の事情に詳しい一方、M&Aの契約交渉に慣れているとは限りません。買い手候補とも取引がある場合は、利益相反の確認が必要です。必要に応じて、M&Aを扱う別の弁護士と分担します。
まとめ
M&Aの弁護士費用には決まった相場がなく、料金の種類と依頼する業務の範囲で金額が変わります。2004年に報酬基準が廃止され、各弁護士が報酬を定める仕組みになっているためです。
要点は以下のとおりです。
- 契約書のレビューや交渉は、作業時間に応じたタイムチャージで計算されることが多い
- 依頼前に、計算方法と見積もりの範囲、委任契約書の定めを確認する
- 時間制の場合は、上限と途中報告を取り決める
- 買い手候補側の依頼を受けていないかを事前に確認する
- 事業承継・M&A補助金は、交付決定前に契約した費用が原則として対象外になる
費用を抑える方法の一つは、依頼範囲を絞ることです。売り手専属のFAと役割を分担し、弁護士には条文の確認と修正に専念してもらってください。
最終契約の前に弁護士と確認したい契約書の項目は、チェックリストにまとめています。
【無料資料】最終契約前に弁護士と共に確認するべき契約書の項目
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