再生型M&Aとは?売り手が知っておきたい手続きの選び方と5つの注意点
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- M&Aのスキーム
公開日:2026.11.04
2026.11.04
更新日:2026.11.04
2026.11.04
再生型M&Aは、財務が悪化した会社が、スポンサーへの事業の承継と債務の整理を組み合わせて事業を立て直す方法です。進め方となる4つの手続きの違い、4つの手法、メリット、売り手が知っておきたい5つの注意点と手順を解説します。

借入金の返済が重く、自力で立て直すのは難しい。だが事業と従業員は残したい。再生型M&Aは、財務が悪化した会社が、スポンサーへの事業の承継と債務の整理を組み合わせて、事業を立て直す方法です。どの手続きで進めるかによって、関わる機関も、債権者の同意の取り方も変わります。
本記事では、再生型M&Aを進める4つの手続きと4つの手法の違いを示したうえで、売り手にとってのメリットを解説します。あわせて、知っておきたい5つの注意点と進める手順を示します。
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再生型M&Aとは
再生型M&Aとは、借入金が過大になるなど財務が悪化した会社が、事業を引き受ける企業やファンド(スポンサー)の支援を受け、債務の整理と組み合わせて事業を立て直す方法です。スポンサー型M&Aとも呼ばれます。
通常のM&Aとの大きな違いは、債権者が関わる点にあります。会社の資産で借入金を返し切れない状態では、株主と買い手候補の合意だけでは取引を進められません。債務の減免や返済条件の変更について、金融機関などの債権者の理解を得る必要があります。
中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、債務超過の会社であっても、買い手候補が事業に魅力を感じる場合には、M&Aが実現する可能性があるとしています。
財務が悪化していても、収益を生む事業があれば、引き継ぐ先が見つかる場合があります。事業ごとの採算を確認し、引き継げる事業があるかを見極めます。
赤字や債務超過の会社の売却については、下記で解説しています。
赤字企業の売却はできる?売却できる企業の特徴や成功させるポイントを解説
財務が悪化した会社の売却で押さえたい注意点は、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
再生型M&Aは4つの手続きのどれで進めるかで関与する機関と債権者の同意が変わる
再生型M&Aは、いずれかの手続きの中で進めます。代表的な手続きは以下の4つです。
- 中小企業活性化協議会の支援を受けて進める
- 中小企業の事業再生等に関するガイドラインに沿って進める
- 事業再生ADRで進める
- 民事再生の手続きの中で進める
それぞれを順に解説します。
中小企業活性化協議会の支援を受けて進める
中小企業活性化協議会は、すべての都道府県に設置されている、中小企業の再生などを支援する公的機関です。 2022年4月に、中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターを統合して発足しました。
前身の中小企業再生支援協議会は2003年に創設され、中小企業の再生の相談に長く応じてきました。
協議会が金融機関との調整を支援し、手続きは原則として非公表で進みます。なお、民事再生や破産をすでに申し立てた企業は、協議会の支援の対象になりません。まず所在地の協議会に、財務の状況を相談します。
中小企業の事業再生等に関するガイドラインに沿って進める
中小企業の事業再生等に関するガイドラインは、中小企業が金融機関と協議して債務を整理するための手続きを定めたものです。 2022年3月に研究会が取りまとめ、同年4月から適用されています。
独立した立場の第三者支援専門家が、会社が作る計画の内容を検証する点が特徴です。
ガイドラインに法的な拘束力はありませんが、中小企業と金融機関が自発的に尊重することが期待されています。その後も改定が重ねられており、2026年11月時点の最新版は2026年3月の改定版です。
事業再生ADRで進める
事業再生ADRは、裁判所を通さずに、中立な専門家が債権者と会社の間を調整する手続きです。 産業競争力強化法などに基づき、経済産業大臣の認定を受けた事業者が手続きを行います。
経済産業省の資料(令和7年度版)によると、認定を受けた事業者は事業再生実務家協会のみです。
主な対象は金融機関の債権で、取引先の債権は原則として手続きの対象外とされます。規模の大きな会社で使われることが多い手続きです。
民事再生の手続きの中で進める
民事再生は、裁判所の関与のもとで、債権者の多数決によって債務を整理する手続きです。 民事再生法に基づき、裁判所が認可した再生計画に沿って弁済します。
取引先の債権も手続きの対象となり、一部の債権者が反対しても、法定の多数の同意(民事再生法第172条の3)と裁判所の認可があれば計画が成立します。
一方で、手続きの開始は公表されるため、取引先に知られます。金融機関との協議では合意が見込めない場合の選択肢として検討します。
再生型M&Aの4つの手法
スポンサーに事業を引き継ぐ方法にも、いくつかの型があります。代表的な手法は以下の4つです。
- スポンサーが出資して会社ごと再建する
- 事業譲渡で収益事業だけをスポンサーに移す
- 会社分割で収益事業を切り出してスポンサーに移す
- 収益事業を第二会社に移して元の会社を清算する
それぞれを順に解説します。
スポンサーが出資して会社ごと再建する
スポンサーが会社に出資し、会社自体を残して再建する手法です。 債務の一部の免除を受けたうえで、スポンサーが新たな株主になります。
法人が存続するので、営業の許可も取引の契約も、原則として名義を移す手続きなしで使い続けられます。ただし、チェンジオブコントロール条項のある契約や、株主・役員の変更に届出が必要な許認可は個別に確認します。
ただし、会社が抱える債務も残るため、スポンサー候補によるデューデリジェンスで詳しく確認されやすくなります。帳簿に載っていない債務がないかを、事前に洗い出します。
事業譲渡で収益事業だけをスポンサーに移す
事業譲渡で、採算のとれる事業だけをスポンサーに移す手法です。 スポンサーは、必要な資産と契約だけを引き受けられます。
元の会社には、譲らなかった事業と債務が残り、譲渡の代金で債務を返済します。
中小M&Aガイドラインは、債務超過の会社が事業を譲渡する場合、清算した場合の価値を相当程度超える金額での譲渡が求められるとしています。譲渡の価格の根拠を、第三者の評価で示せるようにします。
会社分割で収益事業を切り出してスポンサーに移す
会社分割で収益事業を切り出し、スポンサーに移す手法もあります。 分割の契約に定めた権利と義務がまとめて移るため、取引先との契約や従業員を一つずつ移す手間を減らせます。
一方で、原則として債権者保護手続き(会社法第789条・第799条・第810条)や、労働契約承継法に基づく従業員への通知などの法定の手続きが必要です。
取引先の数が多い事業では、事業譲渡より手続きの負担が小さくなる場合があります。移す契約の数を数えて、手法を比べます。
会社分割の種類と進め方については、下記で詳しく解説しています。
M&Aにおける会社分割とは?吸収分割と新設分割の違いやメリットも解説
収益事業を第二会社に移して元の会社を清算する
収益事業を新しい会社(第二会社)に移し、債務の残った元の会社を清算する手法です。 第二会社方式と呼ばれます。
中小M&Aガイドラインは、中小企業活性化協議会の関与のもとで事業譲渡などを行い、譲渡後の元の会社を特別清算などで整理する手法が採用されるケースがあるとしています。
中小企業庁は、協議会のスキームで第二会社方式を利用した場合の、各種補助金の取り扱いも示しています。補助金の利用を予定している場合は、事前に確認します。
協議会スキームの相談企業が第二会社方式を利用した場合の各種補助金事業における取扱いについて|中小企業庁
第二会社方式の進め方と注意点については、下記で詳しく解説しています。
第二会社方式とは?事業再生の手法やメリット・デメリット、注意点を解説
売り手が再生型M&Aで得られる3つのメリット
再生型M&Aには、廃業や破産にはない利点があります。従業員や取引先など、会社の外の関係者への影響を抑えやすい点が違いの一つです。主なメリットは以下の3つです。
- 従業員の雇用と取引先との関係を残しやすくなる
- 債務の減免で事業を続けられる状態に戻せる可能性がある
- 経営者保証を会社の債務と一体で整理できる場合がある
それぞれを順に解説します。
従業員の雇用と取引先との関係を残しやすくなる
事業がスポンサーに引き継がれれば、従業員の雇用と取引先との関係を残しやすくなります。 破産であれば、事業は止まり、雇用も取引も失われます。
スポンサーのもとで事業が続けば、取引先は仕入れや販売の相手を失わずに済みます。
雇用を引き継ぐ範囲は、交渉の結果しだいです。維持したい雇用の範囲を、交渉の前に決めておきます。
債務の減免で事業を続けられる状態に戻せる可能性がある
債務の一部の免除や返済条件の変更を受けることで、事業を続けられる状態に戻せる可能性があります。 過大な借入金の返済が、事業の利益を上回っている状態を解消できるためです。
債権者にとっても、破産より多くの回収が見込めれば、減免を受け入れる理由になります。
減免を求めるには、事業の将来の収益と返済の見通しを示す必要があります。事業ごとの採算を数字で示せるよう準備します。
経営者保証を会社の債務と一体で整理できる場合がある
会社の債務の整理とあわせて、経営者の保証債務を整理できる場合があります。 中小企業の事業再生等に関するガイドラインは、保証人の保証債務について、主たる債務との一体整理に努めるとしています。
経営者保証の解除や整理の方法については、下記で解説しています。
M&Aにおける経営者保証とは?解除方法やガイドライン、トラブル対策も解説
会社の手続きと保証債務の整理を別々に進めると、時間と費用がかかります。手続きの最初から、保証債務の扱いを弁護士などの専門家と協議します。
売り手が再生型M&Aで知っておきたい5つの注意点
再生型M&Aには、通常のM&Aにはない制約があります。知っておきたい注意点は以下の5つです。
- オーナーの株式の対価はほとんど得られない場合がある
- 金融機関などの債権者の同意を得る必要がある
- 債務免除益に法人税がかかる場合がある
- 残る債権者を害する事業の移転は買い手に請求される場合がある
- 資金繰りが尽きてからでは選べる手法が限られる
それぞれを順に解説します。
オーナーの株式の対価はほとんど得られない場合がある
再生型M&Aでは、オーナーが株式の対価をほとんど受け取れない場合があります。 債務超過の会社の株式には、価値がほとんど残らないためです。
債権者が債務の免除を受け入れる中で、株主が先に対価を得ることは、債権者の理解を得にくくなります。
売却で手元に資金を残すことを前提にせず、事業と雇用を残すことを目的に据えて判断します。
債務超過の会社の株式価値の考え方は、下記で詳しく解説しています。
債務超過の株式譲渡は0円・1円になる?株式価値の考え方と売却時の注意点を解説
金融機関などの債権者の同意を得る必要がある
再生型M&Aを進めるには、金融機関などの債権者の同意が必要です。 協議会や事業再生ADRなどの私的整理では、原則として対象となる債権者全員の同意がなければ計画が成立しません。
民事再生であれば、多数の同意で計画が成立します。
経済産業省は、金融債権を対象に議決権総額の4分の3以上の同意と裁判所の認可で権利の変更を行える早期事業再生法を、2026年12月11日に施行する予定としています。手続開始時の公示がないため、取引先に知られにくい点も特徴です。手続きを選ぶ時点で、使える制度を専門家と確認します。
債務免除益に法人税がかかる場合がある
債務の免除を受けると、免除された額が会社の利益となり、法人税の対象になる場合があります。 債務免除益と呼ばれます。
中小M&Aガイドラインは、債務免除益を打ち消すのに十分な欠損金や資産の評価損があるかが重要だとしています。法的整理や一定の私的整理では、期限切れの欠損金も使える場合があるとしています。
課税が弁済の原資を減らすことがあるため、顧問税理士などの専門家と課税の見込みを確認します。
残る債権者を害する事業の移転は買い手に請求される場合がある
元の会社に残る債権者を害すると知りながら事業を移すと、買い手が債務の履行を求められる場合があります。 会社法第23条の2は、残存債権者が、承継した財産の価額を限度として、譲受会社に債務の履行を請求できると定めています。会社分割にも同様の規定があります(会社法第759条第4項など)。
ただし、譲受会社が譲渡の効力が生じた時点で残存債権者を害することを知らなかった場合や、譲渡した会社について再生手続開始の決定などがあった場合は、譲受会社への請求はできないとされています(同条第1項ただし書・第3項)。
買い手候補が安心して事業を引き受けられるよう、適正な価格と手続きで進めます。
資金繰りが尽きてからでは選べる手法が限られる
資金繰りが尽きてからでは、選べる手法が限られます。 スポンサーを探す時間も、債権者と協議する時間もなくなるためです。
中小M&Aガイドラインは、資金繰りに懸念がある場合は資金繰り表を作成し、可能な限り日次の単位まで把握して、資金が尽きる時期を確認する必要があるとしています。
資金繰りの見通しが立たなくなる前に、専門家に相談します。
再生型M&Aを進める3つの手順
再生型M&Aは、資金が続くうちに始めることが重要です。手順を先に知っておけば、相談の時期を逃さずに済みます。進める手順は以下の3つです。
- 資金繰りが続く期間を把握して専門家に相談する
- 入札などで複数のスポンサー候補から選ぶ
- 事業再生計画に債権者の同意を得て実行する
それぞれを順に解説します。
資金繰りが続く期間を把握して専門家に相談する
最初に、資金繰りがあとどれだけ続くかを把握し、専門家に相談します。 残された期間によって、選べる手続きと手法が決まるためです。
相談先は次のとおりです。
- 中小企業活性化協議会
- 事業再生に詳しい弁護士
- スポンサーの探索を担うFA
相談の際は、直近の決算書と資金繰り表を持参します。借入金の一覧と、保証の有無もまとめておくと、手続きの見立てが早くなります。
スポンサーの探索を担う売り手側FAの役割は、下記で解説しています。
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
入札などで複数のスポンサー候補から選ぶ
スポンサーは、一社に絞り込まずに、複数の候補を並べて決めます。 候補が一社だけでは、提示された条件が妥当かを判断できないためです。
入札の形をとれば、債権者に対しても、公平な手順で選んだことを示しやすくなります。条件の比較では、債権者への弁済額だけでなく、引き継がれる従業員の数や、資金が入る時期も並べます。
候補ごとの評価を表にまとめ、債権者への説明資料として使います。
入札方式の進め方と注意点については、下記で解説しています。
M&Aの入札(オークション)方式とは?特徴やメリット、注意点を解説
事業再生計画に債権者の同意を得て実行する
支援の内容が固まった段階で、事業再生計画を作り、債権者の同意を得て実行します。 計画には、債務の減免の内容や、事業の承継の方法、返済の見通しを盛り込みます。
債権者にとって、破産した場合より有利な内容になっていることが、同意を得るうえで重要です。
計画が成立した後も、実行の状況を債権者に定期的に報告します。
再生型M&Aに関するよくある質問
再生型M&Aを検討する経営者からは、似た質問が繰り返し寄せられます。ここでは、再生債権とは何か、廃業とどちらを選ぶべきか、社長は退任するのかの3つを取り上げます。
再生債権とは何ですか?
再生債権とは、民事再生法第84条第1項に定める、民事再生の手続きで、手続きの開始前の原因に基づいて生じた、会社に対する財産上の請求権のことです。金融機関の貸付金や、開始前の取引の代金が該当します。再生債権は、原則として再生計画に従って減免された額で弁済されます。
再生型M&Aと廃業はどちらを選べばよいですか?
事業に収益力があり、引き継ぐ先が見込めるなら、再生型M&Aを検討します。債務超過の会社が廃業する場合、破産になれば事業は止まり、従業員は職を失います。事業を続けた場合の価値と、清算した場合の価値を比べてから判断します。
再生型M&Aでは社長は退任しなければなりませんか?
退任が求められるとは限りません。スポンサーが、事業に詳しい社長に経営を続けてもらうことを望む場合もあります。ただし、債務の減免を受ける場合は、経営責任のとり方を債権者から問われることが多いとされます。最終的な処遇は、スポンサーとの話し合いで決まります。
まとめ
再生型M&Aは、財務が悪化した会社が、スポンサーへの事業の承継と債務の整理を組み合わせて、事業を立て直す方法です。どの手続きで進めるかによって、関わる機関と債権者の同意の取り方が変わります。
要点は以下のとおりです。
- 中小企業活性化協議会、中小企業版のガイドライン、事業再生ADR、民事再生のいずれかで進める
- 出資、事業譲渡、会社分割、第二会社方式の中から手法を選ぶ
- 私的整理は原則として債権者全員の同意が必要で、2026年12月には多数決の新制度が施行予定
- 債務免除益への課税と、残る債権者を害する事業の移転に注意する
- 資金繰りが尽きる前に、専門家に相談してスポンサーを探す
再生型M&Aは、時間の制約が大きい手続きです。手元の資金が尽きる前に、手続きと手法を専門家と比べ、事業と雇用を残す道を探してください。
再生型M&Aを含め、売却を検討する前に押さえておきたい注意点は、資料でも確認できます。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。 また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。 まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
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