株式譲渡契約書の注意点とは?売り手が署名前に確認したい7つの条項を解説

2026.11.04

公開日:2026.11.04

2026.11.04

2026.11.04

更新日:2026.11.04

2026.11.04

株式譲渡契約書の注意点とは?売り手が署名前に確認したい7つの条項を解説

株式譲渡契約書は、署名した後に条件を変えるのが難しい書面です。売り手が注意したい理由、記載する主な項目、署名前に確認したい7つの条項、会社法上の手続き、締結までの流れを売り手視点で解説します。

買い手候補から最終契約書の案が届いたものの、条文が多く、どこを見ればよいか分からない。株式譲渡契約書は、会社を売却する条件を最終的に確定させる書面です。署名した後は条件を変えにくく、売却後の代金の受け取りや保証の解除も、書かれた内容に従って処理されます。本記事では、売り手が注意したい理由と記載する主な項目を説明したうえで、署名前に確認したい7つの条項を解説します。あわせて、会社法上の手続きと締結までの流れを示します。

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株式譲渡契約書で売り手が注意したい理由

株式譲渡契約書は、会社を売却する条件を確定させる書面です。署名した時点で、価格も保証の範囲も、売却後の義務も決まります。

中小M&Aガイドライン|中小企業庁

売り手が注意したい理由は以下の3つです。

  • 署名した後は条件を変えにくい
  • クロージング後の支払いや保証の解除は契約の定めに従う
  • 仲介会社やFAの支援はクロージングで終わる場合がある

それぞれを順に解説します。

署名した後は条件を変えにくい

株式譲渡契約書は、署名した後に条件を変えるのが難しい書面です。 修正には買い手の合意が必要で、売り手から一方的に変更を求められないためです。

中小M&Aガイドラインは、デュー・ディリジェンスが十分になされない場合、最終契約で売り手が負う表明保証の範囲や補償の負担が増える可能性を指摘しています。

※参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ3(7)デュー・ディリジェンス

修正したい点は、署名日より前に書面で買い手候補へ伝えます。

クロージング後の支払いや保証の解除は契約の定めに従う

クロージング後に生じる売り手の権利と義務は、契約書の定めに従って処理されます。 残代金の受け取りや経営者保証の解除、補償の請求は、いずれも書かれた内容が基準になります。

定めが曖昧であれば、売り手の主張を裏付ける根拠がありません。口頭で合意した事項も、書面にない限り効力を主張しにくくなります。

クロージング後に受ける支払いと手続きを書き出し、それぞれが条文に記載されているかを確認します。

仲介会社やFAの支援はクロージングで終わる場合がある

FAや仲介会社の支援は、クロージングで終了する契約もあります。 売却後に補償を請求された場合や、経営者保証の解除が進まない場合に、支援機関の関与を期待できない可能性があります。

中小M&Aガイドラインは、支援機関に対し、提供する業務をM&Aのプロセスごとに整理して書面で説明することを求めています。

依頼中の支援機関との契約書で業務の範囲を確認し、クロージング後の対応を誰が担うかを決めておきます。

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株式譲渡契約書に記載する主な項目

株式譲渡契約書には、取引の対象と条件、当事者が負う義務が記載されます。主な項目は次のとおりです。

項目主な内容
譲渡の対象譲渡する株式の種類と数
譲渡価格と支払方法金額、支払時期、支払方法
クロージング実行日、代金と株券・書類の受け渡し
前提条件クロージングまでに満たすべき条件
表明保証当事者が事実として保証する事項
誓約事項クロージングの前後に当事者が守る義務
補償表明保証違反などで生じた損害の填補
解除契約を解除できる事由と手続き
一般条項秘密保持、競業避止、準拠法、管轄

項目の名称や順序は契約によって異なり、すべてが一つの条文にまとまっているとは限りません。経営者保証の解除や役員退職慰労金のように、誓約事項や別紙で定める項目もあります。

案を受け取ったら上記の項目がそろっているかを照合し、欠けている項目があれば買い手候補に理由を確認します。

売り手が署名前に確認したい株式譲渡契約書の7つの条項

署名前の確認で、売り手の手取りと売却後の負担が変わります。確認したい条項は以下の7つです。

  • 譲渡価格と支払時期・支払方法
  • 価格調整とアーンアウト
  • 表明保証と除外事項
  • 補償の上限と請求期間
  • 経営者保証の解除
  • 役員退職慰労金
  • 競業避止義務

それぞれを順に解説します。

譲渡価格は支払時期と支払方法まで決めておく

譲渡価格は、金額だけでなく支払時期と支払方法まで決めておきます。 金額が同じでも、受け取る時期と方法によって手取りと回収の確実性が変わるためです。

定める内容は次のとおりです。

  • クロージング日に支払う金額
  • 振込先の口座と着金の確認方法
  • 代金の支払いと株券や書類の受け渡しを同時に行うこと

株式を引き渡した後に代金が入らない事態は避ける必要があります。クロージング当日に、着金を確認してから株券や書類を渡す段取りを契約に書き込みます。

価格調整やアーンアウトは発動条件と計算方法を明記する

価格調整やアーンアウトの条項は、発動条件と計算方法を明記します。 曖昧なまま署名すれば、売却後に手取りが減る余地が残るためです。

売り手の立場では、アーンアウトや代金の分割払いは原則として避けたい条件です。対価の一部の受け取りが、売却後の業績や買い手の資力に左右されるからです。

やむを得ず入れる場合に定める内容は次のとおりです。

  • 判定に使う指標と算定方法
  • 判定の対象期間
  • 買い手側の経営判断で数値が下がった場合の扱い

条件案を受け取ったら、下振れした場合の手取り額を試算します。

アーンアウトや分割払いの注意点は、下記で詳しく解説しています。

アーンアウト条項とは?税務・会計処理や契約上の注意点を売り手目線で解説

表明保証は事実と異なる点を除外事項として書き出す

表明保証では、事実と異なる点を除外事項として書き出します。 表明保証とは、会社の財務や法令遵守などについて、一定の事項が真実であると当事者が表明し保証する条項です。

売り手が把握している問題を除外せずに署名すれば、後から表明保証違反を主張される可能性があります。

除外事項として書き出す例は次のとおりです。

  • 未払残業代などの労務上の問題
  • 係争中または係争のおそれがある事案
  • 許認可や取引契約上の不備

把握している事項は、開示資料の番号を付して別紙に列挙します。

表明保証の内容や違反した場合の扱いは、下記で解説しています。

M&Aにおける表明保証条項とは?重要性や内容、注意点を解説

補償には上限額と請求期間を設ける

補償には、上限額と請求期間を設けます。 補償とは、表明保証違反などによって相手方に生じた損害を填補する義務です。

定めがなければ、売却で受け取った対価に近い金額の請求を受ける可能性も残ります。

交渉で定める内容は次のとおりです。

  • 補償の上限額
  • 請求できる期間
  • 少額の請求を除外する下限額
  • 開示済みの事項を補償の対象外とする定め

上限と期間は交渉事項です。売り手専属のFAや弁護士と、受け入れられる範囲を事前に決めます。

中小企業庁が検討会で示した株式譲渡契約書のサンプルでは、補償の総額の上限を譲渡価額に対する割合で定める条項例が示され、100%に近い上限を設ける場合は、その妥当性を慎重に吟味する必要があると注記されています。

※参考:中小企業庁「第3回 中小M&A市場の改革に向けた検討会」資料3 株式譲渡契約書サンプル(令和7年10月7日)

経営者保証は解除の期限と解除されない場合の対応を定める

経営者保証は、解除の期限と解除されない場合の対応まで定めます。 会社の借入に付いた個人保証が残れば、売却後も責任を負い続けるためです。

中小M&Aガイドラインは、経営者保証の解除または譲り受け側への移行を、最終契約で買い手の義務として明確に位置付けることの検討を求めています。

定める内容は次のとおりです。

  • 解除の手続きを行う期限
  • 期限までに解除されない場合の対応
  • 解除までに保証の履行を求められた場合の補償

前述の株式譲渡契約書のサンプルでは、クロージング日から一定期間内に経営者保証が解除されない場合などに、売り手が契約を解除し、または株式を買い戻せる条項例も示されています。金融機関との交渉を誰が、いつまでに始めるかを条文で確認します。

※参考:中小企業庁「第3回 中小M&A市場の改革に向けた検討会」資料3 株式譲渡契約書サンプル(令和7年10月7日)

経営者保証の解除の方法については、下記で詳しく解説しています。

M&Aにおける経営者保証とは?解除方法やガイドライン、トラブル対策も解説

役員退職慰労金は金額と支払時期を契約に書く

役員退職慰労金は、金額と支払時期を契約に書きます。 オーナー経営者が退任する場合、株式の対価とは別に退職慰労金を受け取る設計が用いられます。

支払うのは売却後の会社であり、支給の決議を行うのも買い手側になります。口頭の約束だけでは、売却後に支払われない事態を防げません。

定める内容は次のとおりです。

  • 支給額と算定の根拠
  • 支払時期と支払方法
  • 支給に必要な決議を買い手が行う義務

退職慰労金と株式の対価の配分は、税負担にも影響します。配分を決める前に、税理士などの専門家へ手取り額の試算を依頼します。

退職慰労金が支払われないトラブルについては、下記もあわせてご覧ください。

「約束したのに、『退職金』が支払われない」…中小企業M&Aで起きている〈売却側の泣き寝入り事件〉の根本理由

競業避止義務は期間と業務の範囲を限定する

競業避止義務は、期間と業務の範囲を限定します。 株式譲渡では、売り手が売却後に同種の事業を行わない旨を契約で定めることが多くあります。

範囲が広すぎれば、売却後の事業や再就職の選択肢が狭まります。期間や地域、業務の範囲が限定されていない条項は、交渉の対象です。

確認する点は次のとおりです。

  • 制限される期間
  • 対象となる地域
  • 対象となる事業の範囲
  • 従業員の勧誘禁止など付随する義務

売却後に予定している活動を書き出し、条項に抵触しないかを確認します。

競業避止義務の範囲の決め方は、下記で解説しています。

M&Aにおける競業避止義務とは?定める際の注意点も解説

株式譲渡に必要な会社法上の手続き

契約書への署名とは別に、会社法上の手続きを踏まなければ株式の移転は完了しません。必要な手続きは以下の3つです。

  • 譲渡制限株式は会社の承認を受ける
  • 株券発行会社は株券の交付で譲渡の効力が生じる
  • 株主名簿の名義書換で会社に対抗できる

それぞれを順に解説します。

譲渡制限株式は会社の承認を受ける

譲渡制限株式を譲渡するには、会社の承認を受けます。 中小企業の多くは、定款で株式の譲渡に会社の承認を要する旨を定めています。

承認を行う機関は、定款の定めによります。取締役会を置く会社では取締役会、置かない会社では株主総会が承認するのが原則です(会社法第139条第1項)。

定款を確認し、承認の決議をクロージングまでに済ませます。

譲渡承認の請求書の書き方は、下記で解説しています。

株式譲渡承認請求書とは?記載事項や書き方、手続きの流れも解説

株券発行会社は株券の交付で譲渡の効力が生じる

株券発行会社では、株券を交付しなければ譲渡の効力が生じません。 会社法は、株券発行会社の株式の譲渡について、株券の交付を効力の要件としています(会社法第128条第1項)。

現在の会社法では株券を発行しないことが原則です。ただし古い会社では、定款に株券を発行する旨の定めが残っている場合があります。

登記事項証明書で株券発行会社かを確認し、株券が手元にあるかを点検します。

株主名簿の名義書換で会社に対抗できる

株式を取得した買い手は、株主名簿の名義書換によって会社に対抗できます。 会社法は、取得者の氏名と住所を株主名簿に記載しなければ、株式の譲渡を会社に対抗できないとしています(会社法第130条第1項)。

株券を発行しない会社では、名義書換の請求に、原則として売り手の協力が必要になります(会社法第133条第2項)。

クロージング当日の書類に名義書換の請求書を含め、売り手側の押印を済ませます。

株式譲渡契約書を締結するまでの流れ

署名までには、段階を踏んで条件を固めます。流れは以下の4段階です。

  • 基本合意書や意向表明書の条件を最終契約案に引き継ぐ
  • デューデリジェンスの結果を表明保証と価格に反映する
  • 弁護士のリーガルチェックで条文を確認する
  • 売り手専属のFAと修正点を交渉して署名する

それぞれを順に解説します。

基本合意書や意向表明書の条件を最終契約案に引き継ぐ

最初に、基本合意書で決めた条件や買い手候補より提示された意向表明書の内容が最終契約の案に引き継がれているかを確認します。 譲渡価格の考え方やスケジュール、従業員の処遇などが抜けていないかを照合します。

基本合意や意向表明書から変わった条件があれば、理由を確認します。

基本合意書や意向表明書と最終契約案を並べ、相違点を一覧にします。

デューデリジェンスの結果を表明保証と価格に反映する

次に、デューデリジェンスの結果を表明保証と価格に反映します。 買い手候補の調査で見つかった事項は、価格の調整か契約条項で処理されます。

指摘された事項が表明保証の除外事項に含まれているかを確認します。含まれていなければ、後から違反を主張される余地が残ります。

指摘事項の一覧と、反映された条文の対応表を作ります。

弁護士のリーガルチェックで条文を確認する

三つ目に、弁護士のリーガルチェックで条文を確認します。 表明保証や補償の条項は、文言の違いで売り手の負担が大きく変わるためです。

買い手候補側が契約案を用意する場合は、買い手候補の立場から作られているのが通常です。よって、売り手側として交渉を有利に進めるため、可能な限り契約案は売り手側が弁護士と共に作成して買い手候補側に提示することが望まれます。

売り手専属のFAと修正点を交渉して署名する

最後に、売り手専属のFAと共に修正点を買い手候補側と交渉して署名します。 弁護士が挙げた修正点のうち、どこまでを求めるかは交渉の判断になります。

売り手のみと契約するFAは、売り手の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすい立場にあります。

譲れない条件と譲歩できる条件を分け、優先順位をFAと決めてから交渉に臨みます。

株式譲渡契約書に関するよくある質問

株式譲渡契約書について、相談の現場で多く寄せられる質問を3つ取り上げます。収入印紙は必要か、中小企業庁のひな形をどう使うか、事業譲渡の契約書とどう違うかの3点です。

株式譲渡契約書に収入印紙は必要ですか?

原則として、株式譲渡契約書は印紙税の課税文書に該当しないと整理されます。印紙税の第1号文書は、不動産や無体財産権、営業などの譲渡に関する契約書であり、株式は含まれていません。ただし代金を受け取った旨を記載すると、金銭の受取書(第17号文書)として課税される場合があります。

印紙税 質疑応答事例|国税庁

M&Aの契約書ごとの印紙税は、下記で解説しています。

M&Aで印紙税がかかる契約書は?金額や負担を抑える方法も解説

中小企業庁のひな形をそのまま使ってもよいですか?

中小企業庁は、検討会の配布資料として株式譲渡契約書のサンプルを示していますが、個別の取引の事情までは反映されていません。表明保証の除外事項や補償の上限は、案件ごとに定めます。

※参考:中小企業庁「第3回 中小M&A市場の改革に向けた検討会」資料3 株式譲渡契約書サンプル(令和7年10月7日)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/ma_shijou/003/003.pdf

株式譲渡と事業譲渡で契約書の注意点は変わりますか?

変わります。事業譲渡では資産や契約を個別に移すため、契約の承継に原則として相手方の同意が要ります。会社法第21条の競業禁止の定めも適用され、契約書は営業の譲渡に関する契約書として第1号文書に該当する場合、印紙税の課税対象となります。株式譲渡は会社ごと移るため、こうした手続きは原則として生じません。

まとめ

株式譲渡契約書は、売却の条件を最終的に確定させる書面です。署名した後に条件を変えるのは難しく、売却後の権利と義務は条文に従って処理されます。

要点は以下のとおりです。

  • 譲渡価格は支払時期と方法、代金と株券の同時交換まで定める
  • アーンアウトや分割払いは原則として避け、入れる場合は発動条件と計算方法を明記する
  • 表明保証は除外事項を書き出し、補償には上限と期間を設ける
  • 経営者保証の解除は、期限と解除されない場合の対応まで定める
  • 契約とは別に、譲渡承認や名義書換などの会社法上の手続きを済ませる

署名前の確認が、条件を整える最後の機会です。契約書の案を受け取ったら、売り手側の弁護士とFAに確認を依頼してください。

最終契約の前に確認したい契約書の項目は、弁護士監修のチェックリストにまとめています。

【無料資料】最終契約前に弁護士と共に確認するべき契約書の項目

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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