M&Aで印紙税がかかる契約書は?金額や負担を抑える方法も解説
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- M&Aの進め方
公開日:2026.06.26
2026.06.26
更新日:2026.06.26
2026.06.26
M&Aを進めると、契約書の作成にあたって、印紙税がかかる文書を作成する場合があります。印紙税とは、契約書などの課税文書を作成した際にかかる税金です。M&Aでは、どの契約書に印紙税がかかるかが、用いる手法によって変わります。
特に売り手にとっては、印紙税は、売り手が負担する場合には手取りに影響する費用の一つです。金額は契約書によって異なり、負担を抑えられる場合もあるため、あらかじめ把握しておくことで、不要な負担を抑えやすくなります。
本記事では、M&Aの契約書ごとの印紙税や、印紙税を抑える方法に加え、売り手が注意すべき点まで解説します。
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M&Aにおける印紙税とは
印紙税とは、契約書や領収書など、印紙税法上の「課税文書」を作成した際に課される税金です。課税文書に当たる場合、原則として、定められた金額の収入印紙を文書に貼り、消印することで納付します。どの文書が課税文書に当たり、いくらの印紙税がかかるかは、印紙税法で定められています。
M&Aでは、契約の場面でさまざまな文書が作成されます。株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、合併契約書、会社分割契約書、領収書などです。これらのうち、どの文書に印紙税がかかるかは、文書の種類によって異なります。同じM&Aでも、用いる手法によって、印紙税の負担は変わります。
印紙税は、一つひとつの金額は大きくない場合もありますが、契約書の通数や手法によっては、無視できない負担になることがあります。売り手としては、自社のM&Aでどの文書に印紙税がかかるかを把握し、電子契約の利用、作成通数、記載金額の扱いなどを確認し、適法な範囲で負担を抑えられるか検討することが重要です。
M&Aで作成される主な契約書ごとの印紙税
M&Aでは、用いる手法によって作成する契約書が異なり、印紙税のかかり方も変わります。代表的な契約書ごとに、印紙税の扱いを理解しておくことが重要です。主な契約書は以下の通りです。
- 株式譲渡契約書
- 事業譲渡契約書
- 合併契約書・会社分割契約書
それぞれを順に解説します。
株式譲渡契約書
株式譲渡契約書には、株式譲渡そのものを定めるだけであれば、原則として印紙税の課税文書には該当しないと整理されます。印紙税の課税対象は印紙税法上の課税文書に限られ、株式譲渡契約書は通常、課税文書の類型に直接該当しないためです。
中小企業のM&Aで多く用いられる株式譲渡では、契約書の内容が株式譲渡のみであれば、収入印紙が不要と整理されることが多いです。
売り手としては、株式譲渡では、契約書の内容によっては印紙税がかからない点を理解しておくことが重要です。ただし、代金受領に関する領収書や、契約書内に債務引受・保証・受取書に該当する記載がある場合などは、別途印紙税の確認が必要です。
株式譲渡の仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aにおける株式譲渡とは?メリットや注意点、手続きの流れを解説
事業譲渡契約書
事業譲渡契約書は、営業の譲渡に関する契約書として第1号文書に該当する場合、印紙税がかかります。事業譲渡契約書は、印紙税法上の「営業の譲渡に関する契約書」に該当する場合があり、契約書に記載された金額に応じて、印紙税の額が決まります。金額が大きいほど印紙税も高くなり、記載金額によっては数万円から数十万円になる場合があります。
売り手としては、事業譲渡では株式譲渡と異なり、契約書に印紙税がかかる点を理解しておくことが重要です。記載する金額によって税額が変わるため、契約書の作成時に確認しておく必要があります。
合併契約書・会社分割契約書
合併契約書、吸収分割契約書、新設分割計画書は、第5号文書として印紙税がかかります。これらは、1通または1冊につき4万円の印紙税が定められています。組織再編を伴うM&Aでは、こうした文書にも印紙税が生じます。
売り手としては、組織再編を用いる場合、合併契約書・吸収分割契約書・新設分割計画書については定額の印紙税がかかる点を把握しておくことが重要です。原本や正本を複数作成する場合は、課税文書ごとに印紙税がかかる可能性を見込んでおく必要があります。
※参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
印紙税がかかるその他の文書
M&Aでは、契約書のほかにも、印紙税がかかる文書があります。見落としやすい文書もあるため、あわせて把握しておくことが重要です。主な文書は以下の通りです。
- 金銭または有価証券の受取書(領収書)
- 基本合意書・意向表明書
それぞれを順に解説します。
金銭または有価証券の受取書(領収書)
売却代金を受け取った際に発行する領収書などの金銭または有価証券の受取書には、内容によって印紙税がかかる場合があります。受取金額が5万円以上で、営業に関する受取書に当たる場合などに課税され、金額に応じて印紙税の額が決まります。
株式譲渡契約書が課税文書に当たらない場合でも、領収書の発行有無・営業に関する受取書かどうか・売上代金かどうかによって、領収書側の印紙税確認が必要です。
売り手としては、契約書が課税文書に該当しない場合でも、代金の領収書が別途課税文書に該当する場合がある点に注意することが重要です。発行する金額や状況によって扱いが変わるため、確認しておく必要があります。
※参考:国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
基本合意書・意向表明書
基本合意書や意向表明書は、その内容によって、印紙税がかかる場合とかからない場合があります。名称だけで課税・非課税は判断できず、記載内容によって課税文書に該当する場合があります。
独占交渉、秘密保持、業務委託、債務引受、保証、金銭消費貸借などの内容を含む場合は確認が必要です。文書の記載内容によって判断が分かれます。
売り手としては、初期段階の文書でも、名称ではなく実質的な記載内容によって印紙税がかかる場合がある点を理解しておくことが重要です。
基本合意書については、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aの基本合意書(MOU)とは?記載内容・法的拘束力・独占交渉権と売り手の注意点を解説
M&Aで印紙税の負担を抑える方法
M&Aの印紙税は、いくつかの方法で抑えられる場合があります。負担を軽くするために、検討できる方法を知っておくことが重要です。主な方法は以下の通りです。
- 電子契約を利用する
- 株式譲渡を選ぶ
- 契約書の記載金額・消費税額の表示に注意する
それぞれを順に解説します。
電子契約を利用する
電子契約を利用すると、印紙税がかからないとされています。印紙税は印紙税法上の課税文書を作成した場合に課される税金であり、電磁的記録は印紙税法上の「文書」に含まれないとされているため、電子契約のみで完結する場合には印紙税が課されないと整理されています。M&Aでも電子契約を利用できる場合があります。
売り手としては、電子契約のみで契約を完結できれば、印紙税の負担を抑えられる場合がある点を理解しておくことが重要です。買い手の対応状況、契約書の原本作成方針、金融機関・専門家の運用にもよるため、電子契約が利用できるかを事前に確認しておく必要があります。
株式譲渡を選ぶ
株式譲渡契約書には原則として印紙税がかからないため、事業譲渡や組織再編に比べて、契約書にかかる印紙税の負担が軽くなる場合があります。中小企業のM&Aで株式譲渡が用いられる理由の一つには、契約承継や許認可、税務、会社法手続きなどを含む手続き全体の整理が比較的しやすい場合がある点が挙げられます。
売り手としては、印紙税だけでなく、税金や手続き全体を踏まえて手法を選ぶことが重要です。印紙税の負担は手法を決める要素の一つであり、ほかの税金や条件とあわせて検討する必要があります。
契約書の記載金額・消費税額の表示に注意する
印紙税は、文書の種類や契約書に記載された金額に応じて変わるため、記載金額の扱いに注意することも、負担に関わります。たとえば、第1号文書、第2号文書、第17号文書では、消費税額等を区分記載することで、消費税額等を印紙税の記載金額に含めない扱いができる場合があります。文書の種類と記載方法によって、印紙税額が変わることがあります。
売り手としては、契約書の記載の仕方が印紙税に影響する場合がある点を理解しておくことが重要です。ただし、記載金額の扱いは判断が難しいため、契約書の作成には、税理士、弁護士、司法書士などの専門家に確認することが望ましいです。
M&A契約書については、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aの印紙税で売り手が注意すべき点
M&Aの印紙税には、売り手が見落としやすい点もあります。後の負担やトラブルを防ぐために、押さえておくことが重要です。主な注意点は以下の通りです。
- 課税文書の作成通数分の負担
- 収入印紙の貼り忘れ・消印漏れによる過怠税
- 印紙税・契約関連費用の負担者の取り決め
それぞれを順に解説します。
課税文書の作成通数分の負担
印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された課税文書ごとにかかります。売り手・買い手がそれぞれ署名押印済みの原本または正本を1通ずつ保管する場合、それぞれが課税文書に該当すれば両方に印紙税がかかります。通数が増えるほど、印紙税の負担も増えていきます。
売り手としては、契約書を何通作成するかによって、印紙税の負担が変わる点を理解しておくことが重要です。原本を1通にし、もう一方は単なる写しを保管するなど、契約成立を証明する文書の作成通数を抑える方法もあります。ただし、写しに署名押印や原本証明がある場合は課税対象となることがあります。
収入印紙の貼り忘れ・消印漏れによる過怠税
課税文書に必要な収入印紙を貼らなかった場合や、貼った印紙を所定の方法で消さなかった場合、過怠税が課されます。印紙を貼らなかった場合、原則として本来の印紙税額とその2倍に相当する金額の合計、つまり印紙税額の3倍の過怠税が課されることがあります。税務調査を予知していない段階で自主的に申し出た場合、過怠税が印紙税額の1.1倍に軽減されることがあります。
売り手としては、印紙の貼り忘れが、本来より重い負担につながる点に注意することが重要です。どの文書に印紙が必要かを確認し、貼り忘れを防ぐことが重要です。
印紙税・契約関連費用の負担者の取り決め
印紙税を売り手と買い手のどちらが負担するかは、当事者間の取り決めによります。契約書を2通作成する場合、それぞれが保管する1通分の印紙税を各自で負担することもありますが、負担方法は当事者間で取り決める必要があります。負担の仕方を明確にしておかないと、後で認識のずれが生じることがあります。
売り手としては、印紙税を含む費用の負担を、取引条件の一部として取り決めておくことが重要です。印紙税、専門家費用、登記費用、振込手数料などの負担を曖昧にしたまま進めると、想定より手取りが減る場合があります。
印紙税を含め、M&Aにかかる税金や費用は、手法の選び方によって変わります。M&Aにかかる税金・費用の全体像については、以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
印紙税とは、契約書などの課税文書を作成した際にかかる税金です。M&Aでは、株式譲渡契約書には原則としてかからないと整理される一方、事業譲渡契約書、合併契約書、吸収分割契約書、新設分割計画書などにはかかる場合があります。用いる手法によって、印紙税の負担は変わります。
特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。
- 自社のM&Aで、どの契約書に印紙税がかかるかを確認すること
- 電子契約のみで完結する場合など、印紙税を抑えられる場合があること
- 印紙の貼り忘れ・消印漏れによる過怠税に注意すること
- 印紙税を含む費用の負担者を、取引条件として取り決めること
印紙税は、一つひとつは小さく見えても、手法、契約書の作成通数、費用負担の取り決めによっては、売り手の手取りに影響します。電子契約の利用、作成通数の調整、記載金額の確認などにより、適法な範囲で負担を抑えられる場合があります。
納得のいくM&Aを実現するためには、早い段階から売り手の立場で支援できる専門家と連携し、税金や費用を含めて手取りを見据えた準備を進めていくことが、よりよい結果につながりやすくなります。
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