M&Aで株主総会の特別決議が必要な手法は?要件や売り手側の注意点も解説
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- M&Aのスキーム
公開日:2026.06.26
2026.06.26
更新日:2026.06.26
2026.06.26
M&Aを進める際、用いる手法によっては、株主総会の特別決議が必要になります。特別決議とは、会社にとって重要な事項を決めるために必要な、要件の厳しい決議です。事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転などでは、原則として株主総会の特別決議による承認が必要になります。
特に売り手にとっては、自社が選ぶM&Aスキームで特別決議が必要かどうかが、スケジュールや実行可能性に影響します。株式が分散していると、必要な賛成を得られず、M&Aの実行が難しくなる場合があります。
本記事では、株主総会の特別決議の要件や株主総会決議の種類に加え、M&Aで特別決議が必要になる手法や、売り手が注意すべき手続き上のリスクまで解説します。
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株主総会の特別決議とは
株主総会の特別決議とは、会社法上、定款変更や組織再編など会社・株主に大きな影響を与える事項について求められる、普通決議より要件の重い決議です。通常の決議よりも多くの賛成が求められ、定款変更、事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転など、会社の組織・事業・株主の地位に大きく関わる事項を決める際に用いられます。
特別決議が成立するには、会社法で定められた要件を満たす必要があります。原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。定款で別段の定めを置くことにより、定足数を議決権の3分の1以上まで緩和できる場合があります。
事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転などを実行する場合、原則として特別決議による株主総会の承認が必要になります。要件が厳しい分、株式の分散状況や反対株主の有無によっては、必要な賛成を集めることが難しくなる場合があります。売り手としては、自社のM&Aで特別決議が必要かどうかを、早い段階で確認しておくことが重要です。
※参考:e-Gov法令検索「会社法」
株主総会の決議の種類
株主総会の決議には、普通決議、特別決議、特殊決議など、要件の異なる種類があります。決める事項の重要度に応じて、必要な決議が変わります。主な決議の種類は以下の通りです。
- 普通決議
- 特別決議
- 特殊決議
それぞれを順に見ていきます。
普通決議
普通決議は、役員選任や剰余金の配当など、多くの通常事項で用いられる決議です。原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で成立します。役員の選任、剰余金の配当などに用いられることがあります。
売り手としては、普通決議は特別決議より成立要件が軽い点を理解しておくことが重要です。まず自社が選ぶM&Aスキームで、株主総会決議が必要か、必要な場合は普通決議か特別決議かを確認する必要があります。
特別決議
特別決議は、普通決議より要件の厳しい決議です。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。事業譲渡や合併、定款の変更など、会社の重要な事項を決める際に用いられます。
売り手としては、事業譲渡、合併、会社分割など多くの組織再編・事業移転スキームで、原則として特別決議が必要になる点を理解しておくことが重要です。出席株主の議決権の3分の2以上という高い賛成が求められるため、株式が分散している場合は、特に注意が必要です。
特殊決議
特殊決議は、一定の事項について、特別決議よりもさらに重い要件が求められる決議です。たとえば、すべての株式に譲渡制限を設ける定款変更などで用いられ、会社法上、対象事項に応じて、株主の半数以上かつ議決権の3分の2以上、または総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上など、より厳しい要件が求められます。M&Aそのものよりも、株式の譲渡制限を新たに設ける定款変更など、限られた事項で問題になります。
売り手としては、特殊決議が必要な場面は限られるものの、要件がいっそう厳しい点を理解しておくことが重要です。どの決議が必要かは事項ごとに定められているため、専門家に確認することが望ましいです。
M&Aで特別決議が必要になる主な手法
M&Aの手法のうち、いくつかは、原則として実行前に株主総会の特別決議を必要とします。どの手法が当てはまるかを知っておくと、必要な手続きを把握できます。主な手法は以下の通りです。
- 事業譲渡
- 合併
- 会社分割
- 株式交換・株式移転
それぞれを順に解説します。
事業譲渡
事業の全部または重要な一部を譲渡する場合など、一定の事業譲渡では、原則として株主総会の特別決議が必要です。会社の事業そのものや重要な事業資産を移転するため、株主の承認を求めるものです。簡易事業譲渡など一定の要件を満たす場合には、株主総会決議を省略できることがあります。
売り手としては、事業譲渡を選ぶ場合、譲渡対象の規模や内容によって特別決議が必要になる点を踏まえて準備することが重要です。事業譲渡の基本については、以下の記事でも詳しく解説しています。
事業譲渡とは何か?オーナー経営者が知っておくべき基本と実務ポイント
合併
合併では、原則として、消滅会社・存続会社等の当事会社で株主総会の特別決議が必要になります。会社の組織が変わり、株主の地位にも影響するため、株主の承認を求めるものです。吸収合併でも新設合併でも、原則として特別決議が必要です。ただし、簡易合併・略式合併に該当する場合は省略できることがあります。
売り手としては、合併では自社で株主総会承認が必要か、簡易・略式の例外に該当するかを確認する必要がある点を理解しておくことが重要です。株主の数が多い場合は、賛成を集めるための準備に時間がかかることがあります。
会社分割
事業に関する権利義務を他社に承継させる会社分割でも、原則として株主総会の特別決議が必要です。吸収分割と新設分割があり、いずれも会社の組織再編に当たるため、原則として株主の承認を求めるものです。簡易分割や略式分割に該当する場合には、株主総会決議を省略できることがあります。
売り手としては、会社分割を用いる場合も、特別決議が必要になる点を踏まえておくことが重要です。一部の事業を切り出し、グループ内再編、事業承継などで用いられることがあります。
株式交換・株式移転
株式交換や株式移転といった、完全親子会社関係をつくる手法でも、原則として株主総会の特別決議が必要です。対象会社の株主の保有株式が親会社株式等に置き換わるなど、株主の地位に影響するため、株主の利害に関わるものとして、原則として株主総会の承認が求められます。
売り手としては、これらの手法が、株主の保有する株式に影響する点を理解しておくことが重要です。どの手法を用いるかによって、必要な決議、反対株主の権利、スケジュールが変わります。
特別決議が不要になるケース
M&Aの手法の中には、株主総会の特別決議が原則不要なものや、一定要件のもとで決議を省略できる場合があります。手続きの負担は手法によって異なります。主なケースは以下の通りです。
- 株式譲渡の場合
- 簡易組織再編・簡易事業譲渡の場合
- 略式組織再編の場合
それぞれを順に見ていきます。
株式譲渡の場合
株式譲渡では、売り手株主が保有株式を譲渡するだけであれば、原則として株主総会の特別決議は不要です。株式譲渡は、契約当事者である会社自体は変わらず、会社の組織再編行為ではないためです。中小企業のM&Aで株式譲渡が用いられる理由の一つは、会社側の組織再編手続きに比べて手続きが比較的簡素になりやすい点です。
売り手としては、株式譲渡では、通常、売り手会社の株主総会特別決議が不要である点が、手法を選ぶ際の判断材料になることを理解しておくことが重要です。ただし、譲渡制限株式の場合は、会社の承認機関による譲渡承認手続きが必要です。株式譲渡の仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aにおける株式譲渡とは?メリットや注意点、手続きの流れを解説
簡易組織再編・簡易事業譲渡の場合
合併、会社分割、株式交換、事業譲渡などでも、対価や譲渡資産の規模などが一定基準以下の場合、株主総会決議を省略できる場合があります。合併・会社分割・株式交換などでは簡易組織再編、事業譲渡では簡易事業譲渡として扱われます。交付対価や譲渡対象資産の規模が会社の純資産額等に比べて小さい場合に認められます。株主への影響が小さいため、株主総会承認を省略できる場合があります。
売り手としては、簡易組織再編・簡易事業譲渡に当たれば、株主総会決議を省略できる場合がある点を理解しておくことが重要です。ただし、要件を満たすかどうかの判断は、専門家に確認することが大切です。
略式組織再編の場合
一方の会社が相手会社の特別支配会社に当たる場合など、一定の支配関係がある組織再編では、株主総会決議を省略できる場合があります。これを略式組織再編といい、支配関係により株主総会決議の結果が実質的に左右されにくい場合に、手続簡素化の例外として認められるものです。
売り手としては、すでに一定の特別支配関係がある会社同士の組織再編では、決議を省略できる場合がある点を理解しておくことが重要です。どのケースに当たるかは、議決権割合、組織再編の種類、当事会社の立場によって変わります。
売り手が特別決議で注意すべきリスク
特別決議が必要なM&Aでは、売り手側で株主対応・反対株主対応・手続不備への注意が必要になります。事前に把握しておくことで、対応を準備できます。主なリスクは以下の通りです。
- 株式分散により必要な賛成を得られないリスク
- 反対株主による買取請求のリスク
- 決議の遅延ややり直しのリスク
それぞれを順に見ていきます。
株式分散により必要な賛成を得られないリスク
株式が複数の株主に分散していると、特別決議に必要な3分の2以上の賛成を得られず、決議が成立しないリスクがあります。経営者や賛同株主が十分な議決権を持っていない場合、他の株主の賛成が得られず、特別決議が成立しない可能性があります。株式の分散は、特別決議の成立やスケジュールに影響する要因になります。
売り手としては、M&Aを検討する前に、株主構成、議決権割合、反対が想定される株主の有無を確認し、必要に応じて株式集約を検討することが重要です。株式の集約については、以下の記事でも詳しく解説しています。
反対株主による買取請求のリスク
特別決議が必要なM&Aでは、一定の組織再編や事業譲渡では、反対株主が会社に対して自己の株式を公正な価格で買い取るよう請求できる場合があります。これを反対株主の買取請求といいます。買取りの資金が必要になり、買取価格や手続きをめぐって対立が生じることもあります。
売り手としては、反対株主の買取請求が、資金負担、価格決定手続、スケジュール遅延につながる点を理解しておくことが重要です。反対株主の買取請求については、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aにおける反対株主の買取請求とは?対象や流れ、対応策も解説
決議の遅延ややり直しのリスク
株主総会の招集通知、議案、基準日、議決権行使、議事録作成には、会社法や定款に基づく手続きがあります。招集の通知や決議の方法に不備があると、決議取消し・不存在・無効の主張や、やり直しが問題になるリスクがあります。手続きの不備は、M&A全体の遅れにつながります。
売り手としては、株主総会の手続きを正確に進めることが重要です。手続きの進め方や議事録の作成には専門的な知識が求められるため、弁護士、司法書士、FAなどのM&Aアドバイザーなどの専門家と連携することが重要です。
特別決議を見据えた手法の選択や、株式の集約などの備えを進めるには、売り手の立場でスキーム選択や株主対応を支援できる専門家がいると進めやすくなります。売り手専属のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の役割については、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
まとめ
株主総会の特別決議とは、会社の重要な事項を決めるために必要な、要件の厳しい決議です。M&Aでは、事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転などを実行する際に原則として必要となり、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が求められます。一方、株式譲渡では原則として不要です。
特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。
- 自社のM&Aの手法で、特別決議が必要かどうかを確認すること
- 特別決議には、原則として定足数と出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要であること
- 株式が分散している場合は、株主構成と議決権割合を確認し、必要に応じて株式集約や事前説明を検討すること
- 反対株主の買取請求など、決議に伴うリスクに備えること
M&Aで特別決議が必要かどうかは、選ぶ手法によって変わり、株式の保有状況によっては手続きが思うように進まないこともあります。手法の選択、株主構成の確認、株式集約や反対株主対応を早めに準備しておくことが、M&Aを円滑に進めるうえで重要です。安心してM&Aを進めるためには、早い段階から売り手の立場で支援できる専門家と連携し、手法の検討から手続きまでを一緒に進めていくことが、納得のいく結果につながりやすくなります。
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