M&Aにかかる税金はいくら?手法別の金額や節税方法も紹介
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- 法務・税務・DD
公開日:2026.04.30
2026.04.30
更新日:2026.04.30
2026.04.30
M&Aで会社や事業を売却しても、譲渡価額がそのまま手取りになるわけではありません。売却によって得た利益には税金がかかるため、最終的な手元に残る額は税引後で判断する必要があります。税金の種類や計算方法を理解していないと、想定していた手取り額と実際の金額に大きな差が生じるおそれがあります。
M&Aにかかる税金は、個人株主か法人株主か、株式譲渡か事業譲渡かといった条件によって変わります。同じ譲渡価額でも、手法の選択や対価設計次第で、税負担が数百万から数千万円単位で変わるケースも少なくありません。
本記事では、M&Aにかかる税金の基礎から、手法別の税額、手元に残る額を高める対策、2026年の税制改正ポイントまでを整理して解説します。
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M&Aにかかる税金の基礎知識
M&Aで発生する税金を理解するには、税金の種類と課税対象を整理する必要があります。立場や手法によって税金の種類が変わるため、自社のケースがどれに該当するかを把握することが重要です。
- M&Aで発生する税金の種類
- 個人株主と法人株主で税金が異なる
それぞれを順に見ていきます。
M&Aで発生する税金の種類
M&Aで発生する主な税金は以下の通りです。立場や手法によって適用される税金が異なります。
- 譲渡所得税・住民税:個人株主が株式譲渡で得た利益にかかる
- 法人税等:法人株主の株式譲渡益や、事業譲渡における売り手法人の譲渡益にかかる
- 消費税:事業譲渡で課税資産を譲渡した場合にかかる
- 不動産取得税・登録免許税:事業譲渡で不動産を含む場合にかかる
- 贈与税:時価より著しく低い価格で譲渡した場合にかかる可能性がある
それぞれの税金は計算方法や税率が異なるため、自社の譲渡形態に応じて適用される税金を把握することが、手取り額の正確な試算につながります。
個人株主と法人株主で税金が違う
株式を譲渡する株主が個人か法人かによって、適用される税金が変わります。税率も大きく異なるため、譲渡する主体によって手取り額は変動します。
- 個人株主:譲渡所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%の分離課税
- 法人株主:法人税等(実効税率約30%)が他の所得と合算して課税
個人株主の場合は分離課税のため、他の所得と合算されず、税率が一定です。法人株主の場合は他の損益と通算できる一方、税率は総じて高くなります。どちらが有利かは、譲渡価額や他の損益の状況によって異なります。
【売り手側】M&Aで発生する税金
売り手側で発生する税金を、手法別に具体的に見ていきます。計算式と税率を押さえたうえで、自社の譲渡価額をもとに概算の税額を試算できるようにしておくことが重要です。
- 個人株主の株式譲渡にかかる税金
- 法人株主の株式譲渡にかかる税金
- 事業譲渡にかかる税金
- 株価シミュレーターで試算する
個人株主の株式譲渡にかかる税金
個人株主が株式を譲渡した場合、譲渡益は譲渡所得として分離課税されます。税率は合計20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)です。
計算式は以下の通りです。
- 譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)
- 税額 = 譲渡所得 × 20.315%
たとえば譲渡価額1億円、取得費1,000万円、譲渡費用500万円の場合、譲渡所得は8,500万円となり、税額は約1,727万円です。分離課税のため、給与所得や他の事業所得とは合算されません。確定申告が必要で、譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までに申告・納税します。
「税引後の売却対価」はいくら?個人・法人の「株式の譲渡所得」にかかる税金
法人株主の株式譲渡にかかる税金
法人株主が株式を譲渡した場合、譲渡益は法人税等の対象となります。税率は法定実効税率で約30%です。他の損益と通算でき、繰越欠損金がある場合は相殺が可能です。
計算式は以下の通りです。
- 譲渡益 = 譲渡価額 − 株式の簿価
- 税額 = 譲渡益 × 実効税率(約30%)
たとえば譲渡価額5億円、簿価2億円の場合、譲渡益は3億円、税額は約9,000万円となります。個人株主と比較すると税率は高くなりますが、他の事業で赤字がある場合は相殺できるメリットがあります。法人の事業年度終了後2か月以内に確定申告・納税を行います。
事業譲渡にかかる税金
事業譲渡では、売り手法人が譲渡益に対して法人税等を負担します。また、譲渡対象に課税資産が含まれる場合は、消費税も発生します。
計算式は以下の通りです。
- 事業譲渡益 = 譲渡価額 − 譲渡対象資産の簿価純額
- 法人税額 = 事業譲渡益 × 実効税率(約30%)
- 消費税 = 課税資産部分 × 消費税率
事業譲渡では、譲渡対象資産を課税資産(棚卸資産・建物・機械設備など)と非課税資産(土地・売掛金など)に区分し、課税資産部分に消費税がかかります。譲渡契約書では、資産ごとの対価を明確に区分しておく必要があります。不動産を含む場合は、買い手に不動産取得税・登録免許税も発生するため、交渉時に確認すべきポイントです。
株価シミュレーターで試算する
税金の計算には、そもそも自社の譲渡価額がいくらになるかを把握する必要があります。譲渡価額の概算が分かれば、手取り額のシミュレーションも可能になります。
RISONALでは、企業情報を入力するだけで概算の譲渡価額を試算できる株価シミュレーターを提供しています。EBITDAマルチプルを基礎とした評価方法で、自社の大まかな市場価値を把握できます。税金を含めた手取り額の試算の出発点として、一度試算してみることを推奨します。
以下からシミュレーターをご利用いただけます。
M&Aで手元に残る額を高めるための工夫
M&Aの譲渡価額は同じでも、対価設計やスキーム選択を工夫することで、手元に残る額が変わります。税法の範囲内で認められている制度を適切に活用することで、想定よりも多くの譲渡対価を手元に残せる可能性があります。
- 役員退職金を活用する
- 経営資源集約化税制を活用する
- 概算取得費の取扱いを確認する
- 買収ニーズのある資産に絞って売却する
いずれも税法上認められた制度や取扱いで、専門家と相談したうえで活用を検討する価値があります。
役員退職金を活用する
譲渡対価の一部を、経営者への役員退職金として支給する方法です。退職所得は分離課税で、退職所得控除の適用があり、原則として課税対象額は2分の1となるため、株式譲渡益として受け取るより税負担が軽くなるケースがあります。
特に勤続年数が長い経営者ほど、退職所得控除の枠が大きくなり、手取り額の増加効果が期待できます。ただし、過大な退職金は損金算入が認められない可能性があるため、適正額の範囲で設計する必要があります。役員退職金の適正額は、最終月額報酬や勤続年数、功績の程度などを踏まえて検討するのが一般的です。
経営資源集約化税制を活用する
中小企業事業再編投資損失準備金制度とも呼ばれる制度で、買い手側の税制優遇ですが、売り手側も制度の存在を理解しておくことで交渉を有利に進めやすくなる場合があります。
この制度は、買い手が中小企業のM&Aで取得した株式について、取得価額の一定割合を損金として積み立てることを認める制度です。買い手の税負担が軽減されるため、その分を譲渡価額の交渉に活用できる可能性があります。適用要件や期限があるため、税理士と相談しながら交渉に組み込むことが重要です。
概算取得費の取扱いを確認する
個人株主が株式を譲渡する際、取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を取得費とみなして計算できる取扱いがあります。古くから株式を保有している経営者や、取得費の資料が残っていない場合に検討される取扱いです。
たとえば譲渡価額6億円で、取得費が不明な場合には、概算取得費は3,000万円として計算します。実際の取得費より大きくなるため譲渡所得が減ります。取得費は必要経費として控除できる項目のため、金額が大きいほど税額が小さくなります。取得費が分かる場合は実額で、分からない場合は概算取得費で計算することになります。
買収ニーズのある資産に絞って売却する
事業譲渡や会社分割を活用して、買い手が本当に必要とする事業や資産だけに絞って売却する方法です。不要資産を手元に残すことで、譲渡対象を絞り込み、結果的に税負担を軽減できる可能性があります。
たとえば、不動産や余剰現金を会社分割で別会社に切り出し、事業本体のみを売却するケースがあります。切り出した会社は資産管理会社として残し、相続対策などに活用する設計が検討されることもあります。ただし、組織再編に伴う手続きが複雑で、税務上の取扱いを踏まえた設計が必要になるため、M&Aに詳しい専門家との事前相談が欠かせません。
2026年のM&A税制改正のポイント
M&Aに関連する税制は毎年改正があり、適用期限や要件が変更されます。2026年時点で押さえておくべき主な改正ポイントを整理します。
- 事業承継税制(特例措置)の計画提出期限の見直し
- 個人版事業承継税制の個人事業承継計画の提出期限の見直し
- 中小企業事業再編投資損失準備金制度の適用状況
令和8年度税制改正では、事業承継税制の特例措置について、計画提出期限の見直しが公表されています。個人版については、個人事業承継計画の提出期限が令和10年9月30日までと案内されています。法人版の特例承継計画の提出期限については、最新の公表資料を確認したうえで判断することが重要です。適用期限(法人版2027年12月末、個人版2028年12月末)までの承継自体は変わらないため、事業承継を検討する経営者は早めに認定支援機関に相談することが推奨されます。
また、中小企業事業再編投資損失準備金制度は引き続き運用されており、買い手側の税負担軽減策として活用されています。税制は毎年改正されるため、最新の内容は国税庁や中小企業庁の公式情報を確認することが重要です。
※参考:令和8年度与党税制改正大綱
M&A税金のよくある質問
M&Aの税金に関して、経営者から寄せられることの多い質問を整理しました。具体的な論点を把握しておくことで、専門家への相談も進めやすくなります。
- M&Aの税金はいつ払う?
- 譲渡価額はどのように決まって税金に影響する?
- 個人株主と法人株主どちらが有利?
- 赤字会社でも税金は発生する?
- 専門家にはいつ相談すればいい?
M&Aの税金はいつ払う?
税金の納付タイミングは、売り手が個人か法人かによって異なります。
- 個人株主:譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告・納税
- 法人株主:事業年度終了後2か月以内に法人税の確定申告・納税
M&Aの譲渡対価を受け取ったタイミングと、税金を払うタイミングにはズレがあります。譲渡代金を受け取った直後に使ってしまうと、納税時に資金不足になるケースもあるため、納税資金を別に確保しておくことが重要です。
譲渡価額はどのように決まって税金に影響する?
譲渡価額は、企業価値評価の3つのアプローチ(インカム・マーケット・コスト)を組み合わせて算定するのが一般的です。最終的には買い手との交渉で決まりますが、算定根拠を明確にすることで、適正な価額での合意につながります。
譲渡価額が決まると、そこから取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対して税金が計算されます。譲渡価額を把握することは、税金の概算試算の第一歩です。RISONALの株価シミュレーターで概算を確認したうえで、税理士と手取り額のシミュレーションを行うのが現実的な流れです。
個人株主と法人株主どちらが有利?
一概にどちらが有利とは言えず、譲渡価額・他の所得状況・繰越欠損金の有無などによって変わります。
- 個人株主が有利なケース:譲渡価額がそれほど大きくなく、他に相殺すべき所得・欠損金がない
- 法人株主が有利なケース:他の事業で赤字があり、繰越欠損金と相殺できる、あるいは資産管理会社を活用した承継を計画している
資産管理会社を活用して株式を法人保有とする設計は、相続対策と組み合わせて活用されるケースがあります。M&Aの数年前から税理士と相談し、適切な株主構成を整えておくことで、手取り額の最大化につながります。
赤字会社でも税金は発生する?
赤字会社でも、M&Aによる譲渡で譲渡益が出れば税金が発生します。ただし、繰越欠損金がある場合は、譲渡益と相殺して税負担を軽減できる可能性があります。
赤字会社の売却では、譲渡価額が純資産を下回るケースもあり、この場合は譲渡損が発生して税負担が生じないこともあります。赤字であっても事業そのものに価値があれば買い手が付くケースがあり、税務上の扱いは個別に検討する必要があります。
専門家にはいつ相談すればいい?
M&Aの検討を始めた段階で、早めに税理士やFAに相談することが重要です。
スキーム選択の段階で税務を織り込むことで、選択肢が広がります。成約直前での相談では、手取り額を高める余地が限定的になるため、早期相談が重要です。
まとめ
M&Aにかかる税金は、手法の選択と対価設計次第で、手取り額が大きく変わります。基本的な計算式を押さえたうえで、制度を適切に活用することが、想定に近い手取りを実現する上で重要です。
- 個人株主の株式譲渡は譲渡所得税・住民税20.315%、法人株主は法人税等約30%
- 事業譲渡では売り手法人に法人税等、課税資産部分に消費税が発生
- 役員退職金の活用や取得費が不明な場合の取扱いの確認などにより、手元に残る額が変わる可能性がある
- 事業承継税制は計画提出期限の見直しが行われており、最新の公表情報の確認が必要
- 早期に税理士やFAへ相談し、スキーム選択の段階から税務を織り込むことが重要
譲渡価額の把握から始めて、税引後の手取り額までシミュレーションすることで、M&Aの判断材料が揃います。RISONALの株価シミュレーターで概算を把握し、税理士やFAと手取り額の試算を行うことで、自社にとって最適な出口戦略を見極めやすくなります。
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