M&Aの事業計画とは?売り手が書く7つの項目と作り方、買い手候補が見る3つの点

2026.10.27

公開日:2026.10.27

2026.10.27

2026.10.27

更新日:2026.10.27

2026.10.27

M&Aの事業計画とは?売り手が書く7つの項目と作り方、買い手候補が見る3つの点

M&Aの事業計画は、売却する会社の将来の売上や利益の見通しを示す計画です。使われる4つの場面、書く7つの項目、数値を作る手順、買い手候補が確かめる点、楽観的な計画が売り手に不利になる理由と、使える公的なツールを解説します。

会社を売ろうとしたら、買い手候補から「事業計画を出してください」と言われた。日々の経営はしてきたが、数年先の数字を書面にまとめたことはない。

M&Aの事業計画は、売却する会社の将来の売上や利益の見通しを示すものです。買い手候補は事業計画をもとに会社の将来性を判断し、価格を考えます。根拠のない数字を並べれば、かえって売り手に不利になることもあります。

本記事では、事業計画が使われる場面と、書く項目、数値の作り方を解説します。あわせて、買い手候補が確かめる点と、楽観的な計画が不利になる理由、使える公的なツールを示します。

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M&Aの事業計画とは

M&Aの事業計画とは、売却する会社が今後数年間に、どれだけの売上と利益を上げ、どのような投資を行うかの見通しをまとめたものです。買い手候補は、過去の決算に加えて事業計画を見て、会社の将来性を判断します。

中小企業白書2025年版によると、経営計画を策定している事業者は約5割で、計画の期間は3年以内が過半数を占めています。同白書は、経営計画を策定している事業者は、策定していない事業者に比べて売上高と付加価値額の伸びが高い傾向があるとしています。

2025年版 中小企業白書 第2部第1章第1節 経営戦略|中小企業庁

日々の経営のための計画と、M&Aの事業計画の違いは、読み手にあります。M&Aでは、会社の外の買い手候補が読み、数値の根拠を確かめます。

売却を考え始めたら、買い手候補に説明できる形で、事業計画を整えていきます。

売却の進め方や仲介会社から提案を受けた際の注意点を、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。

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事業計画の策定の基本については、下記もあわせてご覧ください。

事業計画を策定する

M&Aで売り手の事業計画が使われる4つの場面

売り手が作る事業計画は、M&Aの手続きのさまざまな場面で使われます。主な場面は以下の4つです。

  • 企業概要書で買い手候補に将来性を伝える
  • DCF法などで株式価値を算定する
  • デューデリジェンスで買い手候補が数値の根拠を検証する
  • アーンアウトの業績目標の基準になる

それぞれを順に解説します。

企業概要書で買い手候補に将来性を伝える

買い手候補に会社を紹介する企業概要書で、事業計画は会社の将来性を伝える材料になります。 買い手候補は、過去の実績だけでなく、今後の成長の見込みを知りたいと考えるためです。

成長の道筋が具体的に描かれていれば、買い手候補の関心を引きやすくなります。

企業概要書には、計画の数値に加えて、成長の根拠となる取り組みを短くまとめて載せます。数値だけの計画より、取り組みと数値が結びついた計画の方が、買い手候補が検討を進めやすくなる場合があります。

企業概要書の構成と、ほかの資料との違いは下記で解説しています。

企業概要書(IM)と他の資料の違いとは?会社案内との違いやM&Aでの使い分けを売り手目線で解説

DCF法などで株式価値を算定する

将来の現金の流れをもとに評価するDCF法などでは、事業計画が株式価値の算定に使われます。 計画の売上や利益から、将来のキャッシュフローを見積もるためです。

計画の数値は、算定される株式価値に影響します。

評価に影響するため、計画の数値は買い手候補による確認の対象になりやすい項目です。評価に使われる前提を、FAなどの専門家とともに確認します。

DCF法の計算方法については、下記で詳しく解説しています。

DCF法とは?M&Aでの計算方法やメリット・デメリットを売り手目線で解説

デューデリジェンスで買い手候補が数値の根拠を検証する

買い手候補のデューデリジェンスでは、事業計画の数値の根拠が検証されます。 買い手候補は、計画が実現できるものかを、取引先や過去の実績から確かめます。

根拠を説明できない数値は、買い手候補の評価で修正される可能性があります。

質問に答えられなければ、計画全体の信頼性に影響する可能性があります。売上の見込みの根拠となる受注の状況や、取引先との契約を、資料としてそろえておきます。

デューデリジェンスの流れと売り手の準備については、下記をご覧ください。

M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは?目的や流れ、売り手側のポイントを解説

アーンアウトの業績目標の基準になる

売却の後に業績に応じて追加の代金を支払うアーンアウトでは、事業計画が業績の目標の基準になることがあります。 計画を達成すれば追加の代金を受け取れる仕組みです。

ただし、売却の後の経営は買い手が担うため、売り手の努力では目標を達成できないことがあります。

アーンアウトは、条件によっては売り手に不利になる場合があります。代金はクロージングの時点で一括で受け取ることを基本に交渉します。

アーンアウトの契約上の注意点は、下記で解説しています。

アーンアウト条項とは?税務・会計処理や契約上の注意点を売り手目線で解説

企業概要書に入れる7つの項目

企業概要書に決まった様式はありませんが、買い手候補が知りたい項目を押さえて作ります。順に読めば、会社の今と将来がつながる構成にします。入れたい項目は主に以下の7つです。

  • 会社の概要
  • 事業の内容と強み・成長ストーリー
  • 市場と競合の状況
  • 売上の計画
  • 費用と利益の計画
  • 設備投資と人員の計画
  • 事業のリスク

それぞれを順に解説します。

会社の概要

会社の沿革、組織、株主の構成、主要な役員を記載します。 買い手候補が、会社の全体像をつかむための項目です。

沿革には、事業の転機となった出来事を入れます。組織図には、部門ごとの責任者と人数を示します。

事業の内容と強み・成長ストーリー

何を、誰に、どのように提供しているかを記載します。 主要な商品やサービス、顧客の層、販売の方法をまとめます。

また、単に事業の内容をまとめるのではなく、他社にない強みや今後の成長ストーリーも、具体的に示します。強みは、取引先から選ばれている理由として書くと伝わりやすくなります。

市場と競合の状況

事業を行う市場の規模や動向と、主な競合他社を記載します。 市場が伸びているか、縮んでいるかは、計画の前提になります。

業界の統計や公的な資料を使うと、市場の動向の説得力が増します。競合と比べた自社の位置づけも示します。

売上の計画

今後3〜5年の売上の見通しを、年ごとに記載します。 顧客別や商品別に分けて示すと、伸びの根拠が伝わります。

新しい取り組みによる売上は、既存の売上と分けて示します。分けておけば、買い手候補は確度の高い部分を見極められます。

費用と利益の計画

売上の計画に対応する費用と利益の見通しを記載します。 原材料費や人件費、家賃などの主な費用を示します。

利益は、営業利益の段階まで示すのが一般的です。値上げや原価の上昇など、費用の前提も書き添えます。

設備投資と人員の計画

計画を実現するために必要な設備投資と、人員の採用の計画を記載します。 投資や採用の時期と金額を示します。

売上が伸びても投資が足りなければ、計画は成り立ちません。投資の資金を自己資金でまかなうか、借入で調達するかも示します。

事業のリスク

計画の達成を妨げるおそれのあるリスクを記載します。 主要な取引先への依存や、原材料の価格の変動などです。

リスクへの対策もあわせて示すと、計画の信頼性を説明しやすくなります。リスクを隠すと、調査で見つかったときに信頼に影響する可能性があります。

事業計画の数値を作る4つの手順

事業計画の数値は、過去の実績を土台に作ります。数値を作る手順は以下の4つです。

  • 過去3〜5期の決算を実態の損益に直す
  • 売上を顧客別や商品別に分けて伸びの根拠を置く
  • 費用を固定費と変動費に分けて利益を出す
  • 過去の実績から大きく離れない数値に整える

それぞれを順に解説します。

過去3〜5期の決算を実態の損益に直す

最初に、過去3〜5期の決算を、事業の実態を表す損益に直します。 中小企業の決算には、経営者の報酬や私的な支出、一度きりの収入や費用が含まれていることがあるためです。

例えば、相場より高い役員報酬や、会社の経費にしている私的な支出は、調整の対象になります。

調整の内容と理由を一覧にし、計画の出発点とします。

実態の損益に直す調整の考え方は、下記もご参照ください。

修正EBITDAとは?調整項目の考え方と売り手ができる3つの事前準備を解説

売上を顧客別や商品別に分けて伸びの根拠を置く

売上を顧客別や商品別に分け、それぞれに伸びの根拠を置きます。 売上の総額だけを伸ばした計画では、買い手候補は根拠を確かめられないためです。

既存の顧客の取引の継続、新しい顧客の獲得、値上げの効果などを、分けて見込みます。

主要な顧客ごとに、過去の取引額の推移と今後の見込みを並べます。

費用を固定費と変動費に分けて利益を出す

費用を、売上に応じて増える変動費と、売上にかかわらずかかる固定費に分けて、利益を計算します。 売上が伸びたときに、利益がどれだけ増えるかを正しく示せるためです。

原材料費や外注費は変動費に、家賃や正社員の人件費は固定費に分けるのが一般的です。

過去の決算から、変動費の割合と固定費の額を算出し、計画に当てはめます。

過去の実績から大きく離れない数値に整える

最後に、計画の数値が過去の実績から大きく離れていないかを確かめ、整えます。 実績から急に伸びる計画は、買い手候補から根拠を問われやすいためです。

急に伸びる計画を立てる場合は、伸びる理由を具体的に示す必要があります。

過去の伸び率と計画の伸び率を並べて、差を説明できるかを確かめます。

買い手候補が売り手の事業計画で確かめる3つの点

買い手候補は、事業計画を鵜呑みにせず、実現できるかを確かめます。確かめられる点を先に知っておけば、説明の準備ができます。買い手候補が確かめる主な点は以下の3つです。

  • 売上の伸びに根拠があるか
  • 過去の実績と計画の数値がつながっているか
  • 経営者が抜けても計画が成り立つか

それぞれを順に解説します。

売上の伸びに根拠があるか

買い手候補がまず確かめるのは、売上の伸びに根拠があるかです。 受注の状況、新しい顧客との商談、値上げの交渉の結果などが根拠になります。

根拠のない伸びは、買い手候補の評価で計画から外される可能性があります。業界全体の伸び率を上回る計画は、特に根拠を問われます。

伸びの根拠ごとに、裏付けとなる資料を用意します。

過去の実績と計画の数値がつながっているか

過去の実績と、計画の数値が自然につながっているかも確かめられます。 直近の決算から、計画の初年度に急に利益が増えていれば、理由を問われます。

月次の試算表で、計画の初年度の進み具合を示せると、説得力が増します。

直近の月次の実績と、計画の初年度の数値を比べて、ずれがないかを確認します。

経営者が抜けても計画が成り立つか

買い手候補は、売り手の経営者が抜けた後も計画が成り立つかを確かめます。 中小企業では、経営者個人の営業力や人脈に売上が依存しているケースがあるためです。

経営者が抜けると売上が落ちる計画は、買い手候補の評価に影響する可能性があります。

経営者が担ってきた役割を社員に承継する計画を、事業計画とあわせて示します。

キーパーソンの処遇と承継については、下記もあわせてご覧ください。

M&Aでキーマンの処遇はどうなる?経営者と従業員を守る5つのポイント

楽観的な事業計画が売り手に不利になる3つの理由

売却価格を高くしようとして楽観的な計画を作ると、かえって売り手に不利になる場合があります。主な理由は以下の3つです。

  • デューデリジェンスで計画が修正されると減額の根拠になる
  • 計画にもとづくアーンアウトで追加の対価を受け取れなくなる
  • 買い手候補の信頼を失って交渉が打ち切られるおそれがある

それぞれを順に解説します。

デューデリジェンスで計画が修正されると減額の根拠になる

デューデリジェンスで計画が修正されると、買い手候補はそれを理由に価格の引き下げを求めます。 当初の価格が、楽観的な計画をもとに提示されていたためです。

交渉の終盤での減額は、売り手が断りにくい状況で求められます。

最初から実現できる計画を示し、減額の根拠を与えないことが大切です。

計画にもとづくアーンアウトで追加の対価を受け取れなくなる

楽観的な計画をもとにアーンアウトを組むと、目標に届かず、追加の代金を受け取れなくなります。 高い目標は達成が難しく、売り手の受け取る総額が減るためです。

売却の後は、経営の判断を買い手が行うため、目標の達成を売り手が左右できません。

アーンアウトを提案された場合は、条件を受け入れる前に、一括での支払いを求めます。

買い手候補の信頼を失って交渉が打ち切られるおそれがある

計画の根拠の乏しさが明らかになると、買い手候補の信頼を失い、交渉を打ち切られることがあります。 買い手候補は、計画以外の説明も疑うようになるためです。

一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。他の買い手候補に、交渉が打ち切られた事実が伝わるおそれもあります。

数値の根拠を説明できない計画は、提出する前に見直します。

事業計画の下準備にはローカルベンチマークなどの公的なツールを使える

事業計画を一から作るのが難しい場合は、公的なツールで下準備ができます。

経済産業省のローカルベンチマークは、無償で使える経営の診断のツールです。決算書の数値を入力すると、売上高増加率、営業利益率、労働生産性、EBITDA有利子負債倍率、営業運転資本回転期間、自己資本比率の6つの指標が自動で計算され、業種ごとの基準と比べられます。

ローカルベンチマーク(ロカベン)|経済産業省

財務の数値に加えて、商流や業務の流れ、経営者や事業についての非財務の情報も整理できます。

市場の動向をつかむには、地域経済分析システム(RESAS)も使えます。中小企業白書2025年版は、RESASの経営環境分析のメニューで、自社の業界の規模と動向を簡単な操作で把握できると紹介しています。

ツールで整理した結果を、事業計画の「事業の内容」や「市場と競合の状況」の材料にします。

M&Aの事業計画に関するよくある質問

事業計画について、売却を検討する経営者から寄せられることの多い質問を3つ取り上げます。事業計画がなくても売れるか、事業計画は誰が作るか、作成にAIを使ってよいかの3点です。

事業計画がなくても会社は売れますか?

売却できる場合があります。中小企業庁のガイドラインは、中小企業のM&Aでは時価純資産法などで算定した価値をもとに交渉するケースが多いとしています。ただし、事業計画があれば、会社の将来性を根拠をもって説明でき、価格の交渉で根拠を示しやすくなります。

評価方法ごとの違いは、下記で詳しく解説しています。

DCF法と時価純資産法の違いとは?5つの比較軸と実務の年倍法・マルチプル法を解説

中小M&Aガイドライン|中小企業庁

事業計画は誰が作るのですか?

内容を決めるのは、事業を一番よく知る経営者です。数値の整理や資料の形式は、顧問税理士や売り手側のFAが支援します。買い手候補が作る計画に任せず、売り手自身の見通しを示すことが大切です。社内の幹部に部門ごとの数値を作らせる方法もあります。

事業計画の作成にAIを使ってもよいですか?

文章の下書きや、数値の整理の補助には使えます。ただし、取引先の名前などの秘密の情報を入力する際は、情報の扱いに注意が必要です。数値の根拠は自社の実績にもとづき、最終的な内容は経営者が確かめます。

まとめ

M&Aの事業計画は、売却する会社の将来の売上や利益の見通しを示すものです。買い手候補は事業計画をもとに将来性を判断し、価格を考えます。

要点は以下のとおりです。

  • 事業計画は、企業概要書に掲載し、主にDCF法によるバリュエーションで使用される
  • 会社の概要から事業のリスクまで、7つの項目を押さえて作る
  • 過去の決算を実態の損益に直し、実績から大きく離れない数値に整える
  • 買い手候補は、売上の伸びの根拠と、経営者が抜けても成り立つかを主にデューデリジェンスで確かめる
  • 楽観的な計画は減額の根拠となり、アーンアウトは売り手に不利になりやすい

事業計画は、売り手が会社の価値を説明するための重要な資料です。根拠のある計画を作り、買い手候補との交渉に臨んでください。

売却前に押さえておきたい注意点を、資料でも確認できます。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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