企業概要書(IM)と他の資料の違いとは?会社案内との違いやM&Aでの使い分けを売り手目線で解説
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- M&Aの基礎
公開日:2026.06.29
2026.06.29
更新日:2026.06.29
2026.06.29
「企業概要書」という言葉は、文脈によって異なる意味で使われることがあります。一つは、営業や採用で使う会社紹介の資料・会社案内に近い意味です。もう一つが、M&Aで会社を売却する際に、買い手候補へ会社の詳細情報を伝える資料です。M&Aで用いる企業概要書は、インフォメーション・メモランダム(IM)とも呼ばれます。
特に売り手にとっては、M&Aの企業概要書が、会社案内とどう違い、他の開示資料とどう使い分けるのかを理解しておくことが重要です。資料の使い分けを誤ると、情報が漏れたり、買い手候補の検討が進みにくくなることがあります。
本記事では、M&Aの企業概要書(IM)と会社案内の違いや、あわせて使う開示資料に加え、開示するまでの流れとその後の検討プロセス、売り手が扱う際の注意点まで解説します。
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企業概要書(IM)とは
企業概要書(IM)とは、M&Aで売却を検討している会社の概要や詳細情報を買い手候補に伝えるためにまとめる資料です。事業内容、会社の強み、財務状況、組織体制、株主構成、事業計画、リスクなどを記載し、買い手候補が買収検討を進めるかどうか、条件を検討する際の判断材料になります。インフォメーション・メモランダムの頭文字をとって、IMとも呼ばれます。
企業概要書は、M&Aで用いる開示資料の中でも、初期検討から条件交渉へ進むうえで重要な役割を持ちます。買い手候補は、秘密保持契約締結後、企業概要書をもとに会社の全体像、強み、リスク、買収後の可能性を把握し、具体的な検討に進みます。
記載する内容や、作成のポイントについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aにおけるインフォメーション・メモランダム(IM)とは?内容や目的、作成のポイントを解説
M&Aの企業概要書と会社案内の違い
M&Aの企業概要書は、営業や採用で使う会社案内とは目的・開示範囲・閲覧者が異なる資料です。いずれも「会社の概要をまとめた資料」ですが、目的や中身が異なります。主な違いは以下の通りです。
- 作成する目的の違い
- 記載する情報の違い
- 開示する相手の違い
それぞれを順に解説します。
作成する目的の違い
会社案内は、自社を社外に広く知ってもらうために作る公開・営業用の資料です。新しい取引先や、採用の応募者などに向けて、会社の魅力を伝えます。これに対してM&Aの企業概要書は、買い手候補が買収検討を進めるかどうか、また条件を検討するために作る資料です。目的が、宣伝・採用広報ではなく、M&Aの検討材料を提供する点にあります。
売り手としては、M&Aの企業概要書が、買い手の判断材料として作る資料である点を理解しておくことが重要です。会社案内の延長で作ると、買い手候補が必要とする財務・事業・組織・リスク情報が不足する可能性があります。
記載する情報の違い
会社案内は、会社の魅力、サービス、沿革、採用・営業向けメッセージなどを中心にまとめます。これに対してM&Aの企業概要書は、財務状況、会社の強み、事業KPI、組織体制、株主構成、取引先、許認可、事業計画、リスクなど、買収検討に必要な踏み込んだ情報を記載します。買い手は、こうした情報をもとに、会社の価値、リスク、買収後のシナジーや投資回収可能性を検討します。
売り手としては、M&Aの企業概要書には、会社案内よりも詳しい情報が必要になる点を理解しておくことが重要です。買い手の判断に必要な情報がそろっていないと、検討が進みません。
開示する相手の違い
会社案内は、一般に広く外部へ提示できる資料です。これに対してM&Aの企業概要書は、関心を示し、秘密保持契約を結んだ買い手候補にのみ開示するのが一般的です。売却検討の事実や、財務・取引先・組織・事業計画などの機密情報が含まれるため、開示する相手が限られます。
売り手としては、M&Aの企業概要書を、誰にでも見せてよい資料ではない点を理解しておくことが重要です。開示する相手・タイミング・資料範囲を限定することが、機密情報の保護につながります。
企業概要書とあわせて使うM&Aの開示資料
M&Aでは、企業概要書のほかにも、段階に応じて複数の開示資料を使います。それぞれの役割を知っておくと、企業概要書の位置づけが分かります。主な資料は以下の通りです。
- ノンネームシート
- CIM(守秘性の高いIM)
- 事業計画書・決算書・補足資料
それぞれを順に解説します。
ノンネームシート
ノンネームシートは、会社が特定されにくい形で、対象企業の概要を買い手候補に伝える初期資料です。業種、地域、事業規模、財務概要などを匿名・概数でまとめ、買い手の関心を確かめるために使われます。企業概要書を開示する前に、買い手候補の初期的な関心を確認する入口の資料です。
売り手としては、ノンネームシートで関心を確かめてから、秘密保持契約を締結し、企業概要書で詳細を開示するという順番を理解しておくことが重要です。匿名・概略情報のノンネームシートと、秘密保持契約後に開示する実名・詳細情報の企業概要書を使い分けます。
CIM(守秘性の高いIM)
CIMとは、Confidential Information Memorandumの略で、M&Aで買い手候補に開示する詳細資料を指します。実務上、IMとほぼ同じ意味で使われることもあります。IMとCIMは明確に別資料として分けられるとは限りません。いずれも機密性の高い情報を含むため、秘密保持契約締結後に、開示先や開示範囲を管理して提示することが重要です。外資系・投資銀行系の実務や一定規模以上の案件では、CIMという呼称が使われることがあります。
売り手としては、CIMが、企業概要書と同じ役割を持ちつつ、より機密性を重視した資料である点を理解しておくことが重要です。呼び方に幅はありますが、買い手候補に対象会社の詳細情報を伝える資料である点は共通します。
事業計画書・決算書・補足資料
事業計画書や決算書は、企業概要書に記載した内容を裏づけるための重要資料です。事業計画書は、今後の事業の方向性や数値の計画を示し、決算書は、過去の業績、財政状態、キャッシュフローなどを確認するための資料です。これらは、企業概要書の内容を裏づける資料としても使われます。
売り手としては、事業計画書や決算書が、企業概要書を補い、会社の実態を示す資料である点を理解しておくことが重要です。これらの資料が整っていると、買い手候補の検討が進みやすくなる場合があります。
企業概要書を開示するまでの流れ
企業概要書は、M&Aの流れの中で、通常は秘密保持契約を結んだ後に開示します。順番を知っておくと、どの段階でどこまで情報を出すべきかを判断しやすくなります。主な流れは以下の通りです。
- ノンネームシートで初期的な関心を確かめる
- 秘密保持契約(NDA)のあとに企業概要書を開示する
- デューデリジェンスで企業概要書の内容を検証する
それぞれを順に解説します。
ノンネームシートで初期的な関心を確かめる
最初の段階では、ノンネームシートを使って、買い手候補の関心を確かめます。会社が特定されにくい形で概要を伝え、関心を示すかどうかを見ます。この段階では、まだ会社名や詳しい情報は開示しません。
売り手としては、初期の打診では、会社が特定されない範囲にとどめることが重要です。早い段階で会社名や詳細情報を出すと、情報漏えいのリスクが高まります。
秘密保持契約(NDA)のあとに企業概要書を開示する
ノンネームシートで関心を示した買い手候補とは、秘密保持契約を結びます。そのうえで、会社名を明らかにした企業概要書を開示します。秘密保持契約によって、開示情報の目的外利用や外部漏えいを防ぐための枠組みを作ったうえで、踏み込んだ情報を伝えます。
売り手としては、企業概要書を開示する前に、原則として秘密保持契約を結んでから開示することが重要です。契約を結ばずに詳細を渡すと、情報漏えい時に売り手が不利な立場になるリスクがあります。
秘密保持契約については、以下の記事でも詳しく解説しています。
デューデリジェンスで企業概要書の内容を検証する
企業概要書をもとに買い手候補の検討が進むと、デューデリジェンス(買収先の調査)に移ります。買い手候補は、企業概要書に記載された内容を、資料、面談、現地確認、専門家調査などを通じて確認します。企業概要書は、デューデリジェンスで確認される論点の起点にもなります。
売り手としては、企業概要書の内容が、後の調査で確認される点を理解しておくことが重要です。企業概要書と実態が食い違うと、買い手候補の不信、価格調整、条件変更、交渉停止につながる場合があります。
デューデリジェンスについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは?目的や流れ、売り手側のポイントを解説
売り手が企業概要書を扱う際の注意点
企業概要書を扱う際には、売り手として注意すべき点があります。情報を守りながら買い手候補の検討を進めるために、知っておくことが重要です。主な注意点は以下の通りです。
- 開示する情報の範囲に注意する
- 正確で、強みとリスクが伝わる内容にする
- 開示のタイミングを守る
それぞれを順に解説します。
開示する情報の範囲に注意する
企業概要書では、開示する情報の範囲に注意が必要です。買い手候補の検討に必要な情報を伝える一方で、競争上重要な情報や個人情報、取引先名などを早い段階で出しすぎると、情報漏えいや目的外利用のリスクが高まります。どこまで開示するかを、段階に応じて見極めます。
売り手としては、企業概要書で開示する情報を、相手や段階に応じて調整することが重要です。すべてを一度に開示するのではなく、NDA締結後であっても必要な範囲にとどめる判断が求められます。
正確で、強みとリスクが伝わる内容にする
企業概要書は、正確でありながら、会社の強み、成長余地、リスクへの対応状況が伝わる内容にすることが重要です。事実と異なる内容や誇張があると、後の調査で問題になることがあります。一方で、強みが十分に伝わらないと、自社の強みが十分に評価に反映されない可能性があります。
売り手としては、正確さと魅力の両方を満たす内容にすることが重要です。事実に基づきつつ、自社の強みが伝わるように工夫することが、買い手候補の理解や評価に影響します。
開示のタイミングを守る
企業概要書は、開示の相手・範囲・タイミングを管理することが重要です。秘密保持契約を結ぶ前に開示すると、情報が守られないまま外部に漏れるおそれがあります。関心を示し、秘密保持契約を結んだ相手に、段階的に開示するという順番を守ります。
売り手としては、企業概要書を開示する相手と段階を、慎重に判断することが重要です。開示相手やタイミングを誤ると、情報管理や交渉上のリスクが高まります。
売り手と買い手の情報格差
当社の調査では、M&A経験者の9割以上が取引に何らかの後悔を感じたとされています。その背景の一つとして、売り手と買い手の情報格差が示されています。企業概要書のように、売り手の情報を正確に伝える資料を適切に使うことが、情報格差による後悔やトラブルを抑えることにつながる可能性があります。
※参考:PR TIMES「M&A経験者の9割以上が『後悔あり』。売り手と買い手の情報格差がトラブルの引き金に」
まとめ
M&Aの企業概要書(IM)は、営業や採用で使う会社案内とは異なり、買い手候補の検討材料となる機密性の高い開示資料です。会社名を伏せたノンネームシートで初期的な関心を確かめ、秘密保持契約を結んだ買い手候補に、会社名や詳細情報を含む企業概要書を開示するのが一般的です。事業計画書や決算書などとあわせて、段階に応じて使い分けられます。
特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。
- M&Aの企業概要書は、会社案内とは目的も中身も異なること
- ノンネームシートで関心を確かめ、企業概要書で詳細を開示すること
- 企業概要書は、原則として秘密保持契約を結んだ相手に、段階的に開示すること
- 開示する情報の範囲とタイミングを、段階に応じて見極めること
企業概要書は、他の資料と使い分け、適切な範囲とタイミングで開示することで、情報管理をしながら買い手候補の検討を進めやすくなります。資料の使い分けは、売り手が情報を管理し、自社に合う買い手候補との交渉につながる可能性があります。納得のいくM&Aを実現するためには、早い段階から売り手の立場で情報開示、買い手探索、条件交渉を支援できる専門家と連携し、開示資料の準備から交渉までを一緒に進めていくことが、よりよい結果につながる可能性があります。
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