サーチファンドとは?M&Aの仕組みや売り手側のメリット、注意点を解説
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- M&Aの基礎
公開日:2026.06.29
2026.06.29
更新日:2026.06.29
2026.06.29
後継者がいない会社を売却する際、買い手候補の一つとしてサーチファンド型の承継が検討されることがあります。サーチファンドとは、経営者を志す個人であるサーチャーが、投資家等の支援を受けて承継候補企業を探索・買収し、自ら経営に参画する仕組みです。事業承継の選択肢の一つとして、日本でも取り上げられる機会が増えています。
特に売り手にとっては、サーチファンドは、会社の経営を引き継ぐ買い手候補の一つになり得ます。後継者がいなくても、事業継続に意欲のある相手に会社を引き継げる可能性があります。
本記事では、サーチファンドによるM&Aの仕組みや流れに加え、売り手にとってのメリットや注意点、向いているケースまで解説します。
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サーチファンドとは
サーチファンドとは、経営者を志す個人であるサーチャーが、投資家等の支援を受けながら買収候補企業を探索し、買収後にその会社の経営を担う投資・事業承継モデルです。買収候補企業を探索し、買収後に経営を担う人を「サーチャー」と呼び、サーチャーが買収先を探すことから、サーチファンドと呼ばれます。
サーチファンドは、米国で発展してきた仕組みで、日本でも事業承継・中小企業M&Aの選択肢として紹介されるようになっています。後継者がいない中小企業にとって、経営を引き継ぐ候補者と出会える可能性がある手法として位置づけられます。サーチャーは、経営者として企業を承継・成長させることを目指す人材であり、買収した会社の経営者として、事業の承継と成長を目指します。
投資家の資金を活用する点ではファンド型の仕組みですが、一般的な投資ファンド(PEファンド)とは、買収主体や経営関与のあり方が異なります。一般的なPEファンドでは、ファンドや運用会社が複数案件へ投資し、投資先の経営支援や売却益を目指すことが多いのに対し、サーチファンドでは、サーチャーが中心となって1社を探索・買収し、買収後に経営者として参画する点が特徴です。
サーチファンドは、買い手の類型の一つとして理解しておくと、売却の相手を選ぶ際の参考になります。買い手の類型については、以下の記事でも詳しく解説しています。
【事業売却の予備知識】「買い手の類型」からわかる“提示される売却条件”の傾向
サーチファンドによるM&Aの流れ
サーチファンドによるM&Aは、サーチャーの探索、投資家との資金調達、買収実行、経営承継という流れで進みます。流れを知っておくと、どのように会社が引き継がれるかが分かります。主な流れは以下の通りです。
- サーチャーが買収先を探す
- 投資家から買収資金を調達する
- 買収後にサーチャーが経営する
それぞれを順に解説します。
サーチャーが買収先を探す
サーチファンドでは、まずサーチャーが買収・承継候補となる会社を探します。サーチャーは、投資家の支援を受けながら、自分が経営を担えると判断した会社を、投資家や支援機関の助言を受けながら探します。後継者不在であり、一定の収益力・安定性・成長余地がある中小企業などが対象になることがあります。
売り手としては、サーチャーが買収後に経営を担う前提で会社を探している点を理解しておくことが重要です。M&A全体の流れについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&Aの流れとは?準備からクロージング・PMIまで全ステップを売り手目線で解説
投資家から買収資金を調達する
買収候補が具体化すると、サーチャーは投資家等から買収に必要な資金を調達・確定します。サーチャー個人の資金だけでは買収資金を賄えないことが多く、投資家の出資や金融機関借入を組み合わせる場合があるためです。複数の投資家や金融機関が、買収資金や買収後の経営支援を担うことがあります。
売り手としては、買収の資金が投資家から提供される仕組みを理解しておくことが重要です。資金調達の確度が高いほど、取引実行の見通しを確認しやすくなります。
買収後にサーチャーが経営する
買収が成立すると、サーチャーが代表者や経営陣として会社の経営を担うことが一般的です。前の経営者から事業を引き継ぎ、従業員とともに事業を続けます。投資家は、取締役会・助言・追加資金・ネットワーク提供などを通じて経営に関与する場合があります。
売り手としては、買収後はサーチャーが経営を担う点を理解しておくことが重要です。会社の経営が、誰にどう引き継がれるかを、確認しておく必要があります。
売り手にとってサーチファンドを検討するメリット
サーチファンドへの売却には、売り手にとっていくつかのメリットがあります。どのようなメリットがあるかを知っておくと、出口の選択肢として検討できます。主なメリットは以下の通りです。
- 後継者不在でも承継候補になり得る
- 事業継続・雇用維持を重視する相手と出会える可能性がある
- 経営意欲のある個人に引き継げる可能性がある
それぞれを順に解説します。
後継者不在でも承継候補になり得る
サーチファンドへの売却のメリットの一つは、後継者がいない場合でも、事業承継の候補になり得ることです。サーチャーが新しい経営者として会社を引き継ぐため、社内や親族に後継者がいない場合でも、第三者承継により事業継続を目指せる可能性があります。廃業以外の選択肢として検討できます。
売り手としては、後継者不在の課題を、サーチファンドで解決できる可能性がある点を理解しておくことが重要です。会社をたたむのではなく、引き継いでもらう選択肢になります。
事業継続・雇用維持を重視する相手と出会える可能性がある
サーチファンドへの売却では、従業員の雇用維持や事業継続を重視する買い手候補と出会える可能性があります。サーチャーは、買収した会社を自ら経営し、事業を続けることを目指すため、従業員の雇用や現場運営の継続を前提に検討されることがあるためです。
売り手としては、従業員の雇用維持を重視する場合に、サーチファンドが買い手候補の一つになり得る点を理解しておくことが重要です。長く働いてきた従業員の処遇は、売り手が気にする論点の一つです。
経営意欲のある個人に引き継げる可能性がある
サーチファンドへの売却では、経営への意欲がある個人に会社を引き継げる可能性があります。サーチャーは、自ら経営者になることを目指して会社を探しているため、経営者として会社を承継・成長させる意欲を持っていることが多いです。会社の成長に取り組む意欲のある相手に、事業を引き継げる可能性があります。
売り手としては、会社の将来を託せる相手かどうかを、経営経験、業界理解、人柄、投資家の支援体制から見極めることが重要です。事業を大切に引き継ぐ姿勢が確認できれば、売却後の承継イメージを持ちやすくなります。
売り手がサーチファンドで注意すべき点
サーチファンドへの売却には、売り手として注意すべき点もあります。納得度の高い選択をするために、知っておくことが重要です。主な注意点は以下の通りです。
- サーチャーの経営経験・業界理解・資質
- 投資家・金融機関の関与と意思決定権限
- 買収後の経営方針・PMI方針
それぞれを順に解説します。
サーチャーの経営経験・業界理解・資質
サーチファンドでは、サーチャーの経験や資質を見極めることが重要です。サーチャーは個人であるため、経営経験、業界理解、組織運営力、資金調達力、投資家との関係は人によって異なります。会社・従業員・取引先を引き継ぐ相手として適切かどうかを、慎重に確かめる必要があります。
売り手としては、サーチャーの人柄、経営方針、業界理解、資金調達の確度、投資家の支援体制を、直接確かめることが重要です。会社や従業員を引き継ぐ相手として信頼できるかが、判断の重要なポイントになります。
投資家・金融機関の関与と意思決定権限
サーチファンドでは、サーチャーの背後にいる投資家が、経営にどう関わるかを確認することが重要です。投資家が出資する場合、株式保有割合、取締役派遣、重要事項の承認権、追加資金の有無などを通じて、経営に関与することがあります。誰が意思決定権限を持ち、投資家がどの範囲で経営に関与するのかを、把握しておく必要があります。
売り手としては、サーチャー、投資家、金融機関の役割分担と意思決定権限を理解しておくことが重要です。投資ファンドによる株式の取得については、以下の記事でも詳しく解説しています。
事業売却の前に知るべき…買い手が投資ファンドだと「過半数の株式取得」が基本条件になる理由
買収後の経営方針・PMI方針
買収後の経営方針を、あらかじめすり合わせておくことも重要です。サーチャーが、既存事業、従業員、取引先、ブランド、拠点、オーナーの引継ぎ期間等をどう扱う方針なのかを、確認しておきます。方針が大きく異なると、買収後に従業員や取引先との認識齟齬が生じることがあります。
売り手としては、自社の事業や従業員への思いを、サーチャーに伝えておくことが重要です。互いの考えをすり合わせておくことで、引き継ぎが円滑に進みやすくなります。
サーチファンドへの売却を検討しやすいケース
サーチファンドへの売却は、すべての会社に適しているわけではありません。どのような会社に向いているかを知っておくと、自社に合うかを判断できます。主なケースは以下の通りです。
- 後継者不在で第三者承継を検討している会社
- 事業継続を重視する経営者
- 従業員の雇用維持を重視する会社
それぞれを順に解説します。
後継者不在で第三者承継を検討している会社
後継者が見つからない会社は、サーチファンドへの売却を検討しやすいケースです。社内や親族に会社を継ぐ人がいない場合、サーチャーが新しい経営者として引き継ぐ可能性があります。廃業以外の第三者承継を検討している会社に合う場合があります。
売り手としては、後継者不在の課題を抱えている場合に、サーチファンドを検討する価値がある点を理解しておくことが重要です。早めに選択肢を知っておくと、準備を進めやすくなります。
事業継続を重視する経営者
事業の継続を望む経営者にも、サーチファンドが合う場合があります。サーチャーは、買収した会社を自ら経営し、事業を続けることを目指すためです。会社をたたむのではなく、事業継続を重視したい経営者に合う場合があります。
売り手としては、事業を残したいという思いがある場合に、サーチファンドが合う点を理解しておくことが重要です。事業の継続を重視する姿勢が、相手選びの軸になります。
従業員の雇用維持を重視する会社
従業員の雇用維持を重視したい会社も、サーチファンドへの売却を検討しやすい場合があります。事業継続を前提とする場合、従業員の雇用維持について協議しやすいためです。長く働いてきた従業員の雇用を重視したい会社に適しています。
売り手としては、従業員の雇用を守ることを重視する場合に、サーチファンドが選択肢になる点を理解しておくことが重要です。雇用への配慮は、売り手が気にかける論点の一つです。
サーチファンドを含め、自社に合った買い手候補を見極め、価格・雇用・引継ぎ条件を交渉するには、売り手の立場で支援できる専門家がいると進めやすくなります。売り手専属のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の役割については、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
まとめ
サーチファンドとは、経営者を志す個人であるサーチャーが、投資家等の支援を受けて会社を探索・買収し、自ら経営を担う仕組みです。後継者がいない中小企業にとって、経営を引き継ぎ、従業員の雇用維持や事業継続を目指せる買い手候補の一つになります。
特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで検討することが重要です。
- 後継者不在でも、サーチャーに事業を引き継いでもらえる可能性があること
- サーチャーの経験や資質を、慎重に見極めること
- 投資家が経営にどう関わるかを、確認しておくこと
- 自社の事業、従業員、取引先、ブランドへの考えを、相手とすり合わせること
サーチファンドは、後継者がいない会社にとって、事業と雇用を引き継ぐ選択肢の一つになり得ます。会社を託せる相手かどうかを見極めることが、納得のいく事業承継につながる可能性があります。理想の引き継ぎを実現するためには、早い段階から売り手の立場で支援できる専門家と連携し、買い手の見極めから条件の交渉までを一緒に進めていくことが、よりよい結果につながりやすくなります。
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