バイオテクノロジー業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

2026.09.29

公開日:2026.09.29

2026.09.29

2026.09.29

更新日:2026.09.29

2026.09.29

バイオテクノロジー業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

バイオテクノロジー業界は、生物の機能を利用した技術を事業に応用する幅広い領域を指します。医薬品や再生医療に関わる研究開発だけでなく、受託試験・受託分析・受託合成、試薬や研究用機器の製造・輸入販売、培地や細胞・微生物に関わる製品の供給、発酵技術を用いた素材や食品の製造など、多様な事業者がこの領域を構成しています。

一方で、研究開発に要する期間と資金の負担、研究者・技術者の確保、遺伝子組換えをはじめとする規制への対応、設備や実験環境の維持、顧客である製薬企業・研究機関の予算動向への依存、経営者の高齢化と後継者不足など、複数の経営課題を抱えています。

こうした環境を背景に、技術・人材の獲得、製品ラインアップや受託能力の補完、バイオ関連分野への参入などを目的として、製薬企業や化学メーカー、大手の研究支援企業、投資ファンドが中小のバイオ関連企業の買収を検討・実行するケースがあり、中小の事業者にとっても、売却や事業承継は検討対象となり得る選択肢の一つです。

本記事では、バイオテクノロジー業界のM&Aを行う際の相場の考え方をはじめ、業界の現状や代表的な売却手法について解説します。

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バイオテクノロジー業界の現状

バイオテクノロジー業界は、医療・ヘルスケア分野を中心に発展してきましたが、近年は素材、エネルギー、食品、環境といった工業分野への広がりが進んでいます。事業者の顔ぶれも、大手製薬・化学メーカーから、大学発のベンチャー、特定の分析や試薬に強みを持つ中小企業まで幅広く、規模も事業モデルも大きく異なります。

政策面では、明確な追い風が吹いています。政府は2019年に「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」することを目標とするバイオ戦略を策定し、2024年6月には名称を改めた「バイオエコノミー戦略」が統合イノベーション戦略推進会議で決定されました。同戦略では対象とする5つのバイオエコノミー市場ごとに2030年の市場規模目標が掲げられ、省庁横断で技術開発と事業環境の整備が進められています。

※参考:内閣府「バイオエコノミー戦略(令和6年6月3日 統合イノベーション戦略推進会議決定)」、経済産業省「バイオ」

一方で、規制対応は事業運営の前提条件です。遺伝子組換え生物等を扱う場合、カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)に基づき、施設外への拡散防止措置を執らずに行う「第一種使用等」では事前に使用規程を定めて主務大臣の承認を受ける必要があり、実験室内での実験や保管・運搬などの「第二種使用等」では、主務省令に定められた拡散防止措置を執るか、省令に定めのない場合はあらかじめ主務大臣の確認を受ける必要があります。取り扱う対象や事業内容によっては、このほか薬機法や食品衛生法など、複数の法令が関係します。

※参考:文部科学省「遺伝子組換え技術・ゲノム編集技術を用いた研究(カルタヘナ法関係)」

人材面では、研究者・技術者の確保が課題です。専門性が高く育成に時間がかかる一方、大手や大学との獲得競争があり、中小企業にとって採用と定着は容易ではありません。

こうした環境のなかで、製薬企業や化学メーカーによる技術・人材の獲得、大手研究支援企業による受託試験・試薬事業の取得、バイオ関連分野への参入を目的とした異業種からの買収など、バイオテクノロジー業界のM&Aは多様な目的で検討・実行されるケースが見られ、事業承継や経営基盤の強化を目的にM&Aが選択肢として検討される場面があります。なお、大学発の創薬ベンチャーなどは、ベンチャーキャピタルからの出資を受けて上場や大手への売却を前提に設計されていることも多く、オーナーが自ら株式の大半を保有する中小企業とは、株主構成も出口の考え方も異なります。

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バイオテクノロジー業界でM&Aを行うのはなぜ?売却の理由を紹介

バイオテクノロジー業界でM&Aが検討される理由は、主に「事業承継」と「研究開発投資・規制対応など業界固有の経営課題への対応」の二つに整理できます。

まず、事業承継の観点では、帝国データバンクの調査によれば、2025年の全国の後継者不在率は50.1%と、なお半数の企業で後継者が決まっていない状況です。バイオ関連の中小企業では、研究者出身の経営者が自ら技術の中核を担ってきたケースも多く、技術と経営の両方を引き継げる後継者を確保できず、事業承継が課題となるケースがあるとみられます。

※参考:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」

特に、実験手技のノウハウ、菌株や細胞株の扱い、顧客の研究者との技術的な折衝が経営者本人や一部の研究者に集中している企業では、キーパーソンの引退や離職が、そのまま受託能力や製品供給の継続性に影響する可能性があります。

次に、業界固有の経営課題への対応という観点では、研究開発や設備更新への継続的な投資、規制対応と品質管理体制の整備、研究者・技術者の採用と育成、分析機器や実験環境の維持、原材料や消耗品の調達などに、中小企業が単独で取り組むには、資金面・人材面で負担が大きくなる場合があります。製薬企業や化学メーカー、大手の研究支援企業の傘下に入ることで、研究資金、販売網、規制対応の体制、設備などについて、買い手候補の経営資源を活用できる可能性があります。

また、バイオテクノロジー業界のM&Aでは、技術資産と生物材料の権利関係が重要な確認事項となります。特許やノウハウに加えて、自社で樹立・維持してきた菌株や細胞株、微生物のライブラリーといった生物材料そのものが事業の中核資産となる点は、この業界の特徴です。これらの由来(自社樹立か、他機関から提供を受けたものか)、提供を受けた際の試料提供契約(MTA)に定められた使用範囲や第三者への移転の可否、寄託の状況などによって、譲渡後に活用できる範囲が変わる可能性があります。大学・研究機関との共同研究契約における成果物と知的財産の帰属、受託契約における成果物の権利の所在とあわせて、M&Aを検討するうえで重要な確認事項です。

バイオテクノロジー業界での企業売却方法は?3種類を紹介

バイオテクノロジー業界のM&Aでは、売却対象、研究者・技術者との雇用関係、カルタヘナ法などの規制対応や許認可の状況、知的財産と生物材料の扱いによって、適した手法が変わります。

代表的な手法は以下の3つです。

  • 株式譲渡
  • 会社分割
  • 事業譲渡

バイオ関連企業のM&Aでは、特許・ノウハウ・菌株や細胞株などの権利帰属、試料提供契約(MTA)や共同研究契約に定められた移転の制限、カルタヘナ法に基づく承認・確認の状況と施設の要件、薬機法など取扱品目に応じた許認可、顧客との受託契約や秘密保持義務の承継、研究者・技術者の雇用契約などが論点となるため、手法選択にあたっては、これらをどのように承継するかを慎重に検討する必要があります。特に事業譲渡の場合、契約の再締結や許認可の取得し直しに加えて、生物材料の移転が契約上認められるかの確認が必要になる場合があります。

それぞれの手法について解説します。

株式譲渡とは?中小企業M&Aで最も選ばれる手法の仕組みと特徴

株式譲渡とは、企業の株主が保有する株式を他者に譲渡することで、経営権を移転するM&Aの手法のひとつです。中小企業のM&Aにおいては最も多く活用されており、後継者不在や事業承継を目的としたケースでよく採用されています。

株式譲渡のメリット

株式譲渡において、売却対象となるのはあくまで「株式」であり、会社そのものの法人格や契約関係、資産・負債はそのまま引き継がれます。

そのため、以下のようなメリットがあります。

  • 従業員や取引先との契約を維持したまま、スムーズな引き継ぎが可能
  • 許認可や契約の再取得が原則不要で、実務上の負担が少ない
  • 法人格が継続するため、営業活動を中断せずに承継できる

とくに、現経営者が引退を検討している場合でも、事業を止めることなくバトンタッチできるため、後継者問題の有効な解決策となります。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項による相手方同意や、業種許認可の変更届・再許可が必要となる場合があるため、事前確認は不可欠です。

株式譲渡の注意点・デメリット

一方で、株式とともに過去の負債や簿外債務(帳簿に載っていないリスク)も引き継がれるという側面もあるため、買い手企業にとっては慎重な対応が必要です。

そのため、M&Aを進める際には、財務・法務・税務などに関するデューデリジェンス(詳細調査)を丁寧に実施し、リスクを洗い出すことが不可欠です。

会社分割とは?M&Aで活用される組織再編の手法と注意点

会社分割とは、企業が事業の一部を他の会社に移転することで、権利義務を承継させる法的な組織再編手続きです。M&Aにおいては、売却対象の事業を切り出してスムーズに移転させる手段として活用されています。

会社分割の主な種類

会社分割には、以下のような分類があります。

  • 新設分割:新たに設立した会社に事業を承継させる
  • 吸収分割:既存の他社に事業を承継させる

さらに、分割により得る対価の受け取り先によっても分類されます。

  • 分割型分割:対価を分割元会社の株主が受け取る
  • 分社型分割:対価を分割元会社自身が受け取る

会社分割のメリットと特徴

会社分割の最大の特徴は、契約・資産・負債などの権利義務を包括的に移転できる点です。これにより、個別契約ごとの承継手続きを省略でき、事業の引き継ぎが円滑に進められます。

また、分割によって整理された事業をその後に売却することで、M&Aの手続きも効率化されます。

税務上の注意点:適格分割と非適格分割の違い

会社分割には税務上の取り扱いに注意が必要です。「適格分割」であれば譲渡益の課税は繰り延べされますが、採用するスキームによっては「非適格分割」に該当します。

非適格分割では、資産が時価で評価され、譲渡益課税やみなし配当課税の対象となるため、税負担が発生します。

また、会社分割と株式譲渡をセットで行う場合、タイミングによって課税リスクが高まるため、スキーム設計は専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。

事業譲渡とは?M&Aで活用される承継手法と税務上の注意点

事業譲渡は、企業が事業の一部または全部を、契約に基づいて他社へ売却するM&A手法のひとつです。

譲渡の対象となる資産・負債・契約関係を個別に指定して承継する点が特徴であり、柔軟性が高い一方で、手続きは煩雑になりやすいという側面もあります。

事業譲渡のメリット:簿外債務を回避しやすい

事業譲渡では、契約書に記載されたものだけが承継対象となるため、買い手企業にとっては、不要な債務やリスクを回避しやすくなります。

特に、簿外債務の存在が懸念されるケースでは、株式譲渡ではなく事業譲渡を希望する買い手企業が多い傾向にあります。

売り手側の税務上の扱い:事業譲渡益に課税

事業譲渡によって得た対価のうち、譲渡対象資産・負債の簿価純額との差額は「事業譲渡益」として、売り手側に法人税が課税されます。

また、事業譲渡には以下のような消費税に関する注意点もあります。

課税資産と非課税資産の両方をまとめて譲渡するため、資産ごとの課税・非課税を区分し課税対象資産部分の消費税を計算する必要があり、それぞれの対価を合理的に区分し、課税・非課税の計算を行う必要があります。

事業譲渡のデメリット:承継手続きが煩雑

個別承継であるため、以下のような実務負担が大きい点はデメリットと言えます。

  • すべての契約(従業員との雇用契約含めて)を再締結する必要がある
  • 許認可や届出が一から取得し直しとなる場合がある

バイオテクノロジー業界の売却の流れは?3つのステップを紹介

バイオテクノロジー業界のM&Aを進める場合は、大きく3つのステップに分けて進められます。

  1. M&Aの準備と助言会社の選定
  2. 買い手候補先企業との接触、意向表明受領
  3. 詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

それぞれの段階で必要となる準備や手続きが異なるため、流れを把握しておきましょう。

Step1.M&Aの準備と助言会社の選定

はじめに、売却目的と希望条件を整理したうえで、M&AアドバイザーやFAなどの助言会社を選定します。

この段階で重要なのは、想定される売却価格だけでなく、どのような買い手候補に、研究者・技術者の体制、技術資産と生物材料、顧客・共同研究先との関係をどのように承継したいのかを明確にしておくことです。

バイオ関連企業の場合、買い手候補の評価や取引条件に影響し得る論点として、事業構成(受託試験・分析、製品販売、輸入代理、共同研究などの別と売上比率)、特許・ノウハウの一覧と権利帰属・存続期間、保有する菌株・細胞株・微生物ライブラリーの由来と管理状況、試料提供契約(MTA)や共同研究契約に定められた使用範囲・第三者移転の可否、大学・研究機関との契約における成果物と知財の帰属、顧客の一覧(製薬企業、研究機関、大学、食品・化学メーカーなどの別、取引年数、売上依存度)、受託契約の内容と秘密保持義務、カルタヘナ法に基づく承認・確認の状況と施設の要件、薬機法など取扱品目に応じた許認可、実験設備・分析機器の状態と更新計画、研究者・技術者の在籍状況と専門分野、進行中の研究プロジェクトと外部資金(補助金・助成金)の受給状況などが挙げられます。

これらを事前に棚卸しし、資料として説明できる状態に整えておくことで、後工程での論点整理や条件交渉を進めやすくなる場合があります。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、助言会社を通じて買い手候補へ打診を行います。初期段階では概要資料を提示し、関心を示した企業と秘密保持契約を締結したうえで、財務・事業などに関する詳細情報を段階的に開示します。研究の内容や菌株に関する情報は競争上の中核となるため、開示の範囲と段階には特に注意が必要です。

買い手候補からは、譲渡価格のレンジ、取引方法、引き継ぎ条件、売却後の運営方針などをまとめた意向表明書が提出されます。

売り手は、提示金額だけでなく、研究者・技術者の処遇、顧客・共同研究先との関係の継続方針、研究テーマや設備の運営方針なども含めて比較し、基本合意に進むかを判断します。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

基本合意後は、買い手による詳細調査が行われます。

バイオ関連企業では、財務・税務・法務・労務・ビジネス面の確認に加えて、特許・ノウハウの権利関係と第三者の権利を侵害していないかの確認、菌株・細胞株の由来と移転の可否、共同研究契約・MTAの制限条項、カルタヘナ法をはじめとする規制対応の適正性と記録の整備状況、キーパーソンとなる研究者の定着見込み、受託収益の継続性(単発の研究委託にとどまっていないか)、補助金の交付条件と事業承継時の取扱いなどが重視されやすい点が特徴です。

調査結果を踏まえて、譲渡価格、表明保証、補償条項、クロージング条件、キーパーソンの処遇・残留条件、進行中プロジェクトの取扱いなどを調整し、最終契約を締結します。

その後、対価の決済と引き渡しを行うクロージングをもって、取引が完了します。

M&Aの流れについてより詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

M&Aのプロセス

バイオテクノロジー業界の売却の相場は?価値算定方法を解説

バイオテクノロジー業界のM&Aにおける売却価格は、「〇〇円が相場」と一律に決まるものではありません。

実務では、収益の再現性、技術資産の独自性と権利の確かさ、顧客基盤、研究者の体制、設備、収益力、負債、買い手候補の評価方針などを踏まえ、最終的には売り手と買い手候補の交渉によって価格が決まります。

バイオ関連企業は、毎期繰り返し発生する受託や製品販売による収益があるか、それとも研究段階で収益化していないかによって、評価の考え方が大きく変わる業態です。安定した受託収益や製品売上がある事業は、他業種と同様に収益力をもとに評価されやすい一方、研究開発段階の事業は、技術の将来性や人材そのものが評価対象となり、評価の幅が大きくなりやすい傾向があります。同規模の売上であっても、受託の反復性、顧客の分散度合い、特許の有効性と残存期間、菌株や独自技術の代替困難性によって、買い手候補の評価に差が出る可能性があります。

特に、他社が容易に再現できない技術や生物材料を、権利関係を整えたうえで保有している事業者、特定分野で継続的な受託実績を積み上げている事業者、規制対応と品質管理の記録を整備している事業者は、財務数値に加えて、技術資産、顧客基盤、人材の体制などが評価上考慮される場合があります。

こうした理由から、バイオ関連企業のM&Aでは、まず企業価値を算定し、そのうえで負債や現金などを考慮しながら、評価の全体像を整理するのが一般的です。

以下では、その基本的な考え方について解説します。

1.企業価値を算定する

バイオテクノロジー業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

  • 類似会社比較法
  • 類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値 (EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかによって、算定結果は大きく左右されます。

2.株式価値を算定する

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。

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バイオテクノロジー業界で企業を売却する3つのメリット

バイオテクノロジー業界でM&Aを活用するメリットは、経営者個人の利益にとどまりません。

適切な承継は、研究者・技術者の雇用や、顧客の研究・生産活動の継続につながる可能性があります。

  • 研究者・技術者の雇用と技術を維持しやすくなる
  • 経営者は売却対価を得られる可能性がある
  • 顧客の研究・生産活動を継続しやすくなる

ここでは、売り手にとって特に重要な3つのメリットを解説します。

研究者・技術者の雇用と技術を維持しやすくなる

バイオ関連企業は、研究者・技術者の専門性と、長年かけて確立した実験手技や生物材料の扱いが事業の中核です。

廃業を選択した場合、研究者・技術者の雇用の継続が難しくなるほか、実験のノウハウ、菌株・細胞株の維持管理の知見、分析条件の作り込みなどが、事業として承継されにくくなる可能性があります。適切に維持されなければ失われてしまう生物材料もあり、いったん途絶えた技術の再現には長い時間がかかります。

M&Aにより事業が承継されれば、研究者・技術者の雇用を維持しながら技術を継続しやすくなる場合があります。買い手候補の資金力のもとで、より大きな研究テーマや設備に取り組める可能性もあり、売り手にとっては、人材と技術を次の体制へ承継しやすくなる点がメリットです。

技術の中核が特定の研究者に蓄積されている場合、当該人材の継続関与の可否は、買い手候補の評価や譲渡後の運営に影響する可能性があります。

キーパーソンの処遇と引き継ぎについては、下記もあわせてご覧ください。

M&Aでキーマンの処遇はどうなる?経営者と従業員を守る5つのポイント

経営者は売却対価を得られる可能性がある

M&Aによる売却は、これまで築いてきた特許・ノウハウ、菌株などの生物材料、顧客・共同研究先との関係、研究者の体制を含む事業価値を、譲渡対価として回収する手段の一つです。

売却対価を得られた場合、引退後の生活資金、資産承継、次の事業への投資などに活用できる可能性があります。

後継者不在のまま廃業した場合、進行中の受託・共同研究の引き継ぎ、顧客・研究機関への説明、生物材料や試薬・廃棄物の適正な処分、実験設備の撤去、補助金の交付条件に関する整理、従業員との契約整理などが必要になる可能性があります。また、技術資産が事業として評価されにくくなる場合があります。

M&Aでは、買い手候補は一般的には事業の継続性を前提に価値を評価するため、経営者は計画的に出口を設計しやすくなります。

顧客の研究・生産活動を継続しやすくなる

バイオ関連企業は、製薬企業や研究機関、メーカーの研究・生産活動を、受託試験や特定の試薬・材料の供給を通じて支えているケースが少なくありません。

突然の廃業は、顧客にとって代替の委託先や供給元の確保、試験条件の再構築、データの連続性の断絶などの負担につながる可能性があります。特に、特定の菌株や独自の分析法に依存している場合、代替は容易ではありません。

M&Aによって承継されることで、研究・供給の体制を維持しながら対応を継続しやすくなるため、顧客への影響を抑えながら事業を引き継ぎやすくなる点は、売り手にとってメリットの一つです。

バイオテクノロジー業界で企業を売却する際の3つのポイント

バイオテクノロジー業界でM&Aを円滑に進めるには、売上規模だけでなく、買い手候補が重視する論点を整理しておく必要があります。

買い手候補は、技術資産の権利の確かさ、生物材料の移転可否、規制対応の適正性、研究者の定着を慎重に確認します。

  • 知財・生物材料・契約・規制対応を棚卸しする
  • 研究と技術の属人性を下げる
  • 信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する

ここでは、バイオ関連企業の売却を検討する際に、特に重要な3つのポイントを解説します。

知財・生物材料・契約・規制対応を棚卸しする

バイオ関連企業の買い手候補による評価は、財務数値に加えて、知的財産の権利関係、生物材料の由来と移転可否、契約上の制限、規制対応の状況などに影響を受ける可能性があります。

買い手候補は、これらが譲渡後も適法かつ有効に活用できるかを慎重に確認します。

そのため、売却前に以下の点を棚卸しし、説明できる状態にしておくことが重要です。

  • 特許・実用新案・商標の一覧と権利帰属・存続期間・維持年金の納付状況、職務発明に関する社内規程と対価の取扱い
  • ノウハウ・実験手順・分析条件の文書化の状況と、営業秘密としての管理状況
  • 保有する菌株・細胞株・微生物ライブラリーの一覧、由来(自社樹立か外部提供か)、寄託の状況、保管・維持の方法
  • 試料提供契約(MTA)、共同研究契約、受託契約における成果物・知財の帰属、第三者移転の可否、秘密保持義務、競業避止条項
  • カルタヘナ法に基づく承認・確認の状況、施設の要件と記録、薬機法・食品衛生法など取扱品目に応じた許認可、廃棄物処理の適正性
  • 研究者・技術者の在籍状況と専門分野・年齢構成、実験設備・分析機器の状態と更新計画、補助金・助成金の交付条件と承継時の取扱い

これらの整理が不十分だと、DDを経て価格見直し、追加条件の設定、交渉停止などにつながる可能性があります。

研究と技術の属人性を下げる

バイオ関連企業で買い手候補の評価に影響しやすい要因の一つが、経営者や特定の研究者への過度な依存です。

実験手技、菌株や細胞株の維持管理、分析条件の設定、顧客の研究者との技術的な折衝が一部のキーパーソンに集中している場合、買い手候補から、その人物が離れれば技術も収益も維持できない事業と判断される可能性があります。手順が文書化されず、担当者の経験と勘に依存している状態は、大きな懸念材料になります。

属人性による懸念を抑えるためには、以下のような取り組みが重要です。

  • 実験手順書(SOP)・分析条件・品質管理基準の整備と、記録の体系的な保存
  • 菌株・細胞株の管理台帳の整備、保管の複数拠点化やバックアップの確保
  • 研究データ・試験報告書の組織的な管理と、担当の複数化
  • 若手研究者・技術者の育成と、技術移転の計画的な実施

属人性を下げることで、人員交代後も技術と事業を維持しやすい体制として評価される可能性が高くなり、買い手候補が検討しやすくなるというプラスの効果があります。

売却前の準備全般と、知的財産の相談先については、下記で解説しています。

M&Aの磨き上げとは?売却価格を高める5つの領域と進め方を解説

M&A・事業承継に強い弁理士事務所5選!対応領域や強みを紹介

信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する

バイオ関連企業のM&Aでは、知的財産と生物材料の権利関係の整理、共同研究契約やMTAに定められた制限の確認、カルタヘナ法など規制対応の適正性、補助金の取扱いなど、業種特有の論点が生じる場合があります。

準備やスキーム設計が不十分なまま進めると、譲渡条件の見直し、クロージング条件の追加、売却後の紛争などにつながる可能性があります。

そのため、以下のような専門家の支援を受けることが重要です。

  • 売り手側の立場で支援するFA・M&Aアドバイザー
  • 税務は税理士、契約・知的財産は弁護士、会計・財務DDは公認会計士、労務は社会保険労務士、特許は弁理士などの専門家

売り手側のFAを活用することで、価格交渉や条件調整において、売り手の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすくなります。

感情に左右された場当たり的な判断を避けるという観点でも、第三者による専門的な視点を取り入れることが望ましいです。

バイオテクノロジー業界での企業売却にかかる税金とは?

企業を売却する際には、売却益に対して税金が発生します。この税金の仕組みは、「個人オーナーが売却する場合」と「法人が株式を譲渡する場合」で異なるため、正しく理解しておくことが重要です。個人・法人別にわかりやすく解説します。

個人オーナーの場合

個人が自社株などの株式を譲渡し、譲渡益(売却益)が発生した場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。

課税の仕組み

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

この譲渡所得には、以下の税が課せられます。

  • 所得税(復興特別所得税含む)
  • 住民税

給与所得などとは分離して課税されるため、所得の合算は不要ですが、確定申告が必要です。

ただし、ミニマムタックスに該当する場合は給与所得等の他の所得と合算して算出する必要があるため、適切に節税するためには、事前に税理士など専門家への相談が欠かせません。

法人の場合

法人が保有する株式を譲渡した場合、その売却益は法人の「益金(収益)」として扱われ、他の事業収益と合算されて法人税等が課税されます。

法人の場合の税務処理

  • 譲渡益は法人所得として計上され、通常の法人税率で課税
  • 譲渡損失が出た場合、他の所得と損益通算が可能
  • 所得と損失の調整により、柔軟な節税が可能

評価差額にも注意

帳簿価額と時価の差(含み益)がある場合、譲渡時に課税対象となる可能性があります。

まとめ

バイオテクノロジー業界は、政府がバイオエコノミー戦略を掲げて市場の拡大を後押しする成長分野である一方で、研究開発に要する期間と資金の負担、研究者・技術者の確保、規制対応と品質管理の体制整備、設備の維持、経営者の高齢化と後継者不足など、複数の経営課題を抱えています。

技術と生物材料は、維持されなければ失われ、いったん途絶えれば再現に長い時間がかかります。そのため、中小のバイオ関連企業にとって、M&Aは技術の存続や顧客・従業員への影響を踏まえた選択肢の一つになり得ます。

売却を円滑に進めるためには、知財・生物材料・契約・規制対応の棚卸しに加えて、実験手順の文書化や菌株管理台帳の整備による属人性の低減を含めた準備を、M&Aアドバイザー、弁護士、税理士、弁理士などの専門家に確認しながら早期に進めることが望ましいです。

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バイオテクノロジー業界のM&Aでは、買い手目線で条件調整が進みやすい仲介型の支援の場合、価格や引き継ぎ条件が売り手に不利になるケースも少なくありません。そのため、誰の利益を最優先に交渉するのかを明確にした支援体制が重要です。

また、売却前に押さえておきたい注意点を、資料でも確認できます。

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無料相談が可能です。実際にどの程度の価格で売却できるのか、また、どのようにすればより高く売却できるのかを、ぜひご確認ください。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ )

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売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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