化学メーカー業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

2026.05.27

公開日:2026.05.27

2026.05.27

2026.05.27

更新日:2026.05.27

2026.05.27

化学メーカー業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

化学メーカー業界は、基礎化学品からファインケミカル、機能性化学品まで、幅広い製品を手がける製造業です。経済産業省の工業統計によると、化学工業の製造品出荷額は年間45兆円規模に達しており、自動車・電機・半導体・医療など幅広い産業を支える基幹産業の一つとなっています(※)。

一方で、原料価格の高騰、化学物質規制の強化、カーボンニュートラル対応に伴う投資負担、海外勢との競争激化、研究開発人材の不足といった構造的な課題を抱えています。こうした環境下で、技術人材の確保や設備投資負担の分散、研究開発体制の強化を目的としたM&Aが活発化しており、中堅・中小の化学メーカーにおいても、売却や事業承継が現実的な選択肢の一つとなっています。

本記事では、化学メーカー業界のM&Aを行う際の相場の考え方をはじめ、業界の現状や代表的な売却手法について解説します。

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※参考:経済産業省「工業統計調査

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化学メーカー業界の現状

化学メーカー業界は、原料となる化学品の製造から、加工・調合・販売までを担う産業です。化学産業は石油化学(基礎化学品)、誘導品(プラスチック、合成繊維、合成ゴム等)、機能性化学品(電子材料、医薬品中間体等)、ファインケミカルなどに分類され、製品の用途や顧客業界が幅広いことが特徴です。

経済産業省の工業統計によると、化学工業の製造品出荷額は年間45兆円規模で、製造業全体の約13%を占めています。事業所数は約5,500、従業員数は約87万人とされており、製造業の中でも大きな規模を持つ基幹産業の一つです(※)。

一方で、化学メーカー業界は構造的な課題を抱えています。原料となるナフサや天然ガスの価格変動、欧州REACHや国内化審法に代表される化学物質規制の強化、2050年カーボンニュートラル目標に向けたCO2排出削減投資など、対応コストが重く、特に中小規模の事業者ほど経営への影響が大きくなりやすい構造です。さらに、研究開発人材の確保が難しくなっており、技術競争で後れを取るリスクも高まっています。

こうした構造的課題を背景に、大手化学メーカーや異業種大手による中小事業者の買収や、グループ傘下での経営統合が進み、化学メーカー業界全体でM&Aへの関心が高まっています。

※参考:経済産業省「工業統計調査

化学メーカー業界でM&Aを行うのはなぜ?売却の理由を紹介

化学メーカー業界でM&Aが選ばれる理由は、大きく「事業承継」と「経営基盤の強化・技術投資の分散」の二つに整理できます。

まず、事業承継の観点では、化学メーカーは経営者本人や限られた研究開発人材に技術ノウハウや配合レシピが集中しているケースが多く、後継者不在やキーパーソンの引退が、事業継続上のリスクに直結します。特に中小のファインケミカル・機能性化学品メーカーでは、特定顧客との配合調整や製造プロセスのノウハウが個人に紐づいている場合も多く、後継者がいなければ事業価値そのものが損なわれやすい構造にあります。

次に、経営基盤の強化や技術投資の分散という観点では、化学物質規制への対応、カーボンニュートラル対応への設備投資、研究開発投資の継続といった事業環境の変化に、中小事業者単独で対応するのは難しい場面が増えています。大手化学メーカーや異業種大手の傘下に入ることで、研究開発体制の強化、原料調達の効率化、海外展開の足がかりを得る狙いがあります。

また、化学メーカー業界では、高圧ガス保安法、消防法、毒物及び劇物取締法など、複数の法令への対応が求められるため、規制対応負担を軽減する観点からもM&Aを検討する事業者が増えています。

化学メーカー業界での企業売却方法は?3種類を紹介

化学メーカー業界のM&Aでは、売却対象や研究開発資産、製造プラント、取引先との関係の引き継ぎ方針によって、選ぶべき方法が変わります。代表的な手法は以下の3つです。

  • 株式譲渡
  • 会社分割
  • 事業譲渡

化学メーカーは、特許や配合ノウハウ、許認可の取り扱いが重要になるケースが多いため、手法選択にあたっては慎重な検討が必要です。それぞれの手法について解説します。

株式譲渡とは?中小企業M&Aで最も選ばれる手法の仕組みと特徴

株式譲渡とは、企業の株主が保有する株式を他者に譲渡することで、経営権を移転するM&Aの手法のひとつです。中小企業のM&Aにおいては最も多く活用されており、後継者不在や事業承継を目的としたケースでよく採用されています。

株式譲渡のメリット

株式譲渡において、売却対象となるのはあくまで「株式」であり、会社そのものの法人格や契約関係、資産・負債はそのまま引き継がれます。

そのため、以下のようなメリットがあります。

  • 従業員や取引先との契約を維持したまま、スムーズな引き継ぎが可能
  • 許認可や契約の再取得が原則不要で、実務上の負担が少ない
  • 法人格が継続するため、営業活動を中断せずに承継できる

とくに、現経営者が引退を検討している場合でも、事業を止めることなくバトンタッチできるため、後継者問題の有効な解決策となります。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項による相手方同意や、業種許認可の変更届・再許可が必要となる場合があるため、事前確認は不可欠です。

株式譲渡の注意点・デメリット

一方で、株式とともに過去の負債や簿外債務(帳簿に載っていないリスク)も引き継がれるという側面もあるため、買い手企業にとっては慎重な対応が必要です。

そのため、M&Aを進める際には、財務・法務・税務などに関するデューデリジェンス(詳細調査)を丁寧に実施し、リスクを洗い出すことが不可欠です。

会社分割とは?M&Aで活用される組織再編の手法と注意点

会社分割とは、企業が事業の一部を他の会社に移転することで、権利義務を承継させる法的な組織再編手続きです。M&Aにおいては、売却対象の事業を切り出してスムーズに移転させる手段として活用されています。

会社分割の主な種類

会社分割には、以下のような分類があります。

  • 新設分割:新たに設立した会社に事業を承継させる
  • 吸収分割:既存の他社に事業を承継させる

さらに、分割により得る対価の受け取り先によっても分類されます。

  • 分割型分割:対価を分割元会社の株主が受け取る
  • 分社型分割:対価を分割元会社自身が受け取る

会社分割のメリットと特徴

会社分割の最大の特徴は、契約・資産・負債などの権利義務を包括的に移転できる点です。これにより、個別契約ごとの承継手続きを省略でき、事業の引き継ぎが円滑に進められます。

また、分割によって整理された事業をその後に売却することで、M&Aの手続きも効率化されます。

税務上の注意点:適格分割と非適格分割の違い

会社分割には税務上の取り扱いに注意が必要です。「適格分割」であれば譲渡益の課税は繰り延べされますが、採用するスキームによっては「非適格分割」に該当します。

非適格分割では、資産が時価で評価され、譲渡益課税やみなし配当課税の対象となるため、税負担が発生します。

また、会社分割と株式譲渡をセットで行う場合、タイミングによって課税リスクが高まるため、スキーム設計は専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。

事業譲渡とは?M&Aで活用される承継手法と税務上の注意点

事業譲渡は、企業が事業の一部または全部を、契約に基づいて他社へ売却するM&A手法のひとつです。

譲渡の対象となる資産・負債・契約関係を個別に指定して承継する点が特徴であり、柔軟性が高い一方で、手続きは煩雑になりやすいという側面もあります。

事業譲渡のメリット:簿外債務を回避しやすい

事業譲渡では、契約書に記載されたものだけが承継対象となるため、買い手企業にとっては、不要な債務やリスクを回避しやすくなります。

特に、簿外債務の存在が懸念されるケースでは、株式譲渡ではなく事業譲渡を希望する買い手企業が多い傾向にあります。

売り手側の税務上の扱い:事業譲渡益に課税

事業譲渡によって得た対価のうち、譲渡対象資産・負債の簿価純額との差額は「事業譲渡益」として、売り手側に法人税が課税されます。

また、事業譲渡には以下のような消費税に関する注意点もあります。

課税資産と非課税資産の両方をまとめて譲渡するため、資産ごとの課税・非課税を区分し課税対象資産部分の消費税を計算する必要があり、それぞれの対価を合理的に区分し、課税・非課税の計算を行う必要があります。

事業譲渡のデメリット:承継手続きが煩雑

個別承継であるため、以下のような実務負担が大きい点はデメリットと言えます。

  • すべての契約(従業員との雇用契約含めて)を再締結する必要がある
  • 許認可や届出が一から取得し直しとなる場合がある

化学メーカー業界の売却の流れは?3つのステップを紹介

化学メーカー業界のM&Aを進める場合は、大きく3つのステップに分けて進められます。

  • M&Aの準備と助言会社の選定
  • 買い手候補先企業との接触、意向表明受領
  • 詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

それぞれの段階で必要となる準備や手続きが異なるため、流れを把握しておきましょう。

Step1.M&Aの準備と助言会社の選定

はじめに、売却目的と希望条件を整理したうえで、M&A助言会社を選定します。この段階で重要なのは、いくらで売れるかだけでなく、どのような買い手に、どのような形で技術資産・取引先との関係・製造体制を引き継ぎたいのかを明確にしておくことです。

化学メーカーの場合、評価や条件に影響しやすい論点として、保有する特許や配合技術の内容と独自性、主要取引先との取引関係、製造プラントの稼働状況と環境対応投資の見通し、人材体制と定着状況、化審法や高圧ガス保安法等への対応状況などが挙げられます。これらを事前に棚卸しし、資料として説明できる状態に整えておくことで、後工程での条件修正を抑えやすくなります。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、助言会社を通じて買い手候補へ打診を行います。初期段階では概要資料を提示し、関心を示した企業と秘密保持契約を締結したうえで、財務・事業に関する詳細情報を開示します。

買い手候補は、譲渡価格のレンジ、取引方法、引き継ぎ条件、売却後の運営方針などをまとめた意向表明書を提出します。売り手は、提示金額だけでなく、人材の処遇、技術ノウハウの維持方針、主要取引先との取引継続、製造プラントの運営方針なども含めて比較したうえで、基本合意に進むかを判断するのが一般的です。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

基本合意後は、買い手による詳細調査が行われます。化学メーカーでは、財務・税務・契約関係に加えて、技術面・知的財産面・規制対応面の確認が重視されやすい点が特徴です。

特に確認されやすいのは、保有特許や配合技術の有効性と権利関係、主要取引先との契約条件や継続性、製造プラントの稼働状況と維持コスト、研究開発人材の雇用契約や引き継ぎ期間、化審法や高圧ガス保安法等への対応状況、廃棄物処理や環境関連の対応履歴などです。調査結果を踏まえて最終条件を調整し、最終契約を締結します。その後、対価の決済と引き渡しを行うクロージングをもって、取引が完了します。

M&Aの流れについてより詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

M&Aの流れとは?準備からクロージング・PMIまで全ステップを売り手目線で解説

化学メーカー業界の売却の相場は?価値算定方法を解説

化学メーカー業界のM&Aにおける売却価格は、「〇〇円が相場」と一律に決まるものではありません。実務では、保有する技術や特許、製造プラントの価値、主要取引先との取引関係、収益力を総合的に評価したうえで、最終的に売り手と買い手の交渉によって価格が決まります。

化学メーカーは、保有する特許や配合ノウハウ、製造プラントの状態、主要取引先との取引継続性が評価に加味されるため、同規模の売上であっても、技術の独自性や成長分野(電子材料・医薬品中間体・環境対応素材など)への適合度によって評価額が大きく変わりやすい業態です。

特に、電子材料・医薬品中間体・環境対応素材といった成長分野向けの技術を持つメーカーや、特定顧客との長期取引契約を持つメーカー、環境対応投資が進んだ製造プラントを保有するメーカーは、財務数値だけでは測れない評価が得られるケースもあります。

こうした理由から、化学メーカーのM&Aでは、まず企業価値を算定し、そのうえで負債や現金などを考慮しながら、評価の全体像を整理するのが一般的です。

以下では、その基本的な考え方について解説します。

1.企業価値を算定する

化学メーカー業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

  • 類似会社比較法
  • 類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかによって、算定結果は大きく左右されます。

2.株式価値を算定する

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。

[株価算定シミュレーター]

化学メーカー業界で企業を売却する3つのメリット

化学メーカーでM&Aを活用するメリットは、経営者個人の利益にとどまりません。適切な承継は、人材の雇用や取引先への安定供給を守る手段にもなります。

  • 人材と技術ノウハウを守れる
  • 経営者は売却益を得られる
  • 取引先への安定供給体制を維持できる

ここでは、売り手にとって特に重要な3つのメリットを解説します。

重要な人材と技術ノウハウを守れる

化学メーカーは、研究開発人材、製造プラントの運転員、品質管理担当者など、専門知識を持つ人材によって事業が成り立っています。廃業を選択した場合、これらの人材は職場を失うだけでなく、長年にわたって蓄積された配合ノウハウや製造プロセスの知見も失われやすくなります。

M&Aにより事業が承継されれば、研究開発人材の雇用を維持しながら事業を継続しやすくなり、売り手にとっては、人材と技術ノウハウを守りながら事業を引き継げる点が大きなメリットです。特に、特定の配合や製造プロセスに関するノウハウは人に紐づいている場合も多く、雇用の維持がそのまま事業価値の維持にもつながります。

経営者は売却益を得られる

M&Aによる売却は、これまで築いてきた技術力、取引先基盤、製造プラントを含む事業価値を資金化する手段です。得られた売却益は、引退後の生活資金や資産承継、次の事業への投資などに活用できます。

後継者不在のまま廃業した場合、製造プラントの解体費用や原状回復コスト、土壌汚染対策費用が先行し、技術や取引先基盤の価値を十分に回収できないことがあります。M&Aであれば、事業の継続性を前提に価値が評価されるため、経営者はより合理的に出口を設計しやすくなります。

取引先への安定供給体制を維持できる

化学メーカーは、自動車、電機、半導体、医療といった主要産業のサプライチェーンの一翼を担っているケースが少なくありません。突然の廃業は、取引先にとって代替供給先の確保や品質認証のやり直しといった大きな負担につながります。

M&Aによって承継されることで、製造体制や品質管理を維持しながら事業を継続しやすくなるため、取引先に対する供給責任を果たしながら事業を引き継げる点も、売り手にとって大きなメリットといえます。

化学メーカー業界で企業を売却する際の3つのポイント

化学メーカーでM&Aを成功させるには、単に売上があるだけでは不十分です。買い手は、技術の独自性と再現性、人材体制の継続性、知的財産や規制対応の状況を慎重に確認します。

  • 技術資産と許認可・規制対応を棚卸しする
  • 事業の属人性を下げる
  • 信頼できる専門家を活用する

ここでは、化学メーカーの売却を検討する際に、特に重要な3つのポイントを解説します。

技術資産と許認可・規制対応を棚卸しする

化学メーカーの価値は、財務数値だけでなく、保有する技術・特許・配合ノウハウ、製造プラントの状態、規制対応の状況に大きく左右されます。買い手は、これらが引き継ぎ後も維持・活用できるかを慎重に確認します。

そのため、売却前に以下の点を棚卸しし、説明できる状態にしておくことが重要です。

  • 保有特許・実用新案の一覧と有効期限
  • 配合レシピ・製造プロセスの文書化状況
  • 製造プラントの稼働状況と更新投資の見通し
  • 化学物質審査規制法(化審法)・高圧ガス保安法・消防法等の許認可状況
  • PRTR制度や環境関連法令への対応履歴

この整理が不十分だと、DDを経て価格が下がる、取引自体が止まる等の要因になります。

事業の属人性を下げる

化学メーカーの評価を下げやすい要因の一つが、特定の研究者や経営者個人への過度な依存です。配合調整や製造プロセスの判断がキーパーソンに集中している場合、買い手からは引き継ぎにくい事業と判断されやすくなります。

属人性の観点で評価を高めるためには、以下のような取り組みが重要です。

  • 配合レシピや製造プロセスの標準化・文書化
  • 研究開発人材間でのナレッジ共有と教育体制の整備
  • 品質管理基準の体系的な管理
  • キーパーソン不在時のバックアップ体制の構築

属人性を下げることで、人が変わっても事業を維持しやすい事業者として評価されやすくなり、買い手の選択肢の幅も広がります。

信頼できる専門家を活用する

化学メーカーのM&Aは、一般的な事業売却に比べて、特許の取り扱い、配合ノウハウの保護、化審法をはじめとする化学物質規制への対応、土壌汚染や産業廃棄物に関する責任分担といった論点が複雑になりやすい領域です。準備や設計が不十分なまま進めると、売却後にトラブルが生じるリスクもあります。

そのため、以下のような専門家の支援を受けることが重要です。

  • FAをはじめとした売り手側に立つM&A助言会社
  • 税理士・弁護士などの専門家

売り手専属のFAを活用すれば、価格交渉や条件調整においても、売り手の利益を優先した交渉を進めやすくなります。

感情に左右された場当たり的な判断を避けるという観点でも、第三者による専門的な視点は不可欠といえるでしょう。

化学メーカー業界での企業売却にかかる税金とは?

企業を売却する際には、売却益に対して税金が発生します。この税金の仕組みは、「個人オーナーが売却する場合」と「法人が株式を譲渡する場合」で異なるため、正しく理解しておくことが重要です。個人・法人別にわかりやすく解説します。

個人オーナーの場合

個人が自社株などの株式を譲渡し、譲渡益(売却益)が発生した場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。

課税の仕組み

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

この譲渡所得には、以下の税が課せられます。

  • 所得税(復興特別所得税含む)
  • 住民税

給与所得などとは分離して課税されるため、所得の合算は不要ですが、確定申告が必要です。

ただし、ミニマムタックスに該当する場合は給与所得等の他の所得との合算して算出する必要があるため、適切に節税するためには、事前に税理士など専門家への相談が欠かせません。

法人の場合

法人が保有する株式を譲渡した場合、その売却益は法人の「益金(収益)」として扱われ、他の事業収益と合算されて法人税等が課税されます。

法人の場合の税務処理

  • 譲渡益は法人所得として計上され、通常の法人税率で課税
  • 譲渡損失が出た場合、他の所得と損益通算が可能
  • 所得と損失の調整により、柔軟な節税が可能

評価差額にも注意

帳簿価額と時価の差(含み益)がある場合、譲渡時に課税対象となる可能性があります。

まとめ

化学メーカー業界は、自動車、電機、半導体、医療など幅広い産業を支える基幹産業である一方で、原料価格の変動、化学物質規制への対応、カーボンニュートラル対応投資、研究開発人材の不足といった構造的な課題を抱えています。中堅・中小の化学メーカーにとっては、単独でこれらに対応し続けるのが難しくなっており、M&Aは事業の継続と関係者の利益を守るための現実的な選択肢の一つとなっています。

売却を成功させるためには、技術資産や規制対応の棚卸しに加えて、属人性の低減や取引先との関係維持を含めた準備を、専門家の支援を受けながら早期から進めることが欠かせません。

RISONALでは、売り手に特化したFAサービスを提供しています。専属のエージェントがお客様の希望に沿った取引を実現するため、最適なサポートを行います。より高い評価額での売却を目指したアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を抑えた成約も可能です。

化学メーカー業界のM&Aでは、買い手目線で条件調整が進みやすい仲介型の支援の場合、価格や引き継ぎ条件が売り手に不利になるケースも少なくありません。そのため、誰の利益を最優先に交渉するのかを明確にした支援体制が重要です。

無料相談が可能です。実際にどの程度の価格で売却できるのか、また、どのようにすればより高く売却できるのかを、ぜひご確認ください。

株価算定シミュレーター

この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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