造園業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
公開日:2026.07.08
2026.07.08
更新日:2026.07.08
2026.07.08
造園業は、庭園、公園、街路樹、企業の緑地などの設計・施工・維持管理を担う事業領域です。
個人邸の庭づくりから、公共の公園や街路樹の整備・管理、企業緑地や屋上・壁面緑化まで、幅広い緑地・植栽関連の業務を手がけています。
一方で、剪定や庭づくりを担う職人の高齢化と後継者不足、技能の承継、公共工事や入札案件における価格競争、繁忙期の偏りなど、複数の経営課題を抱えています。
こうした環境を背景に、担い手の確保、受注基盤の拡大、緑化需要への対応などを目的として、M&Aが検討されるケースがあり、中堅・中小の造園事業者にとっても、売却や事業承継は検討対象となり得る選択肢の一つです。
本記事では、造園業界のM&Aを行う際の相場の考え方をはじめ、業界の現状や代表的な売却手法について解説します。
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造園業界の現状
造園業界は、緑地・植栽に関わる空間の設計、施工、維持管理を担う事業領域です。
仕事の内容によって、個人邸や企業の庭をつくる造園工事、公園や街路樹、道路緑地などを整備・管理する公共・民間の緑地管理、屋上緑化や壁面緑化などの緑化工事、樹木の剪定や除草・芝の管理といった維持管理などに大別されます。
官公庁から受注する公共工事・維持管理業務と、企業・個人から受注する民間案件の両方を手がける事業者も見られます。
建設業のなかで造園工事業に区分され、国土交通省の建設工事施工統計によると、造園工事業の完成工事高は数千億円規模を保っています(※)。
造園業には中小規模の事業者も多く、職人の技能に支えられた地域密着型の事業者も見られます。
一方で、造園業界では、人材確保、技能承継、公共工事・維持管理案件の受注環境、価格競争、繁忙期の偏りなど、複数の経営課題が指摘されています。
剪定や庭づくりの技術が特定の職人の経験に依存している場合、職人の高齢化や若手人材の確保が、技能承継上の課題となることがあります。
また、公共工事・公共施設の維持管理業務への依存度が高い事業者では、発注量や入札条件、価格競争の影響を受け、収益確保が課題となる場合があります。一方で、屋上・壁面緑化、防災・減災に資する緑地整備、グリーンインフラなどへの関心が高まっているとされる領域もあります。
こうした構造的課題を背景に、大手造園・緑化会社、建設・土木会社、不動産管理会社、PEファンドなどが、中堅・中小事業者の買収や同業同士の経営統合を検討・実行するケースも見られ、造園業界でも、事業承継、人材確保、受注基盤の拡大、緑化需要への対応などを目的に、M&Aが選択肢として検討される場面があります。
※参考:国土交通省「建設工事施工統計調査」
造園業界でM&Aを行うのはなぜ?売却の理由を紹介
造園業界でM&Aが検討される理由は、主に「事業承継」と「経営基盤の強化・担い手確保や受注基盤の拡大」の二つに整理できます。
まず、事業承継の観点では、造園事業者では、経営者本人や限られた職人に、剪定・植栽管理・庭づくりの技術、顧客との関係、有資格者を含む人員体制が集中しているケースがあり、後継者不在やキーパーソンの引退が、事業継続に影響する可能性があります。
特に地域に密着した中小事業者では、長年の顧客との関係、職人の技能、建設業許可の要件に関わる人員体制が、オーナーや少数の職人に集中している場合もあり、後継者や技能・管理体制の承継が不十分な場合、買い手候補の評価や譲渡後の事業継続に影響する可能性があります。
次に、経営基盤の強化・担い手確保や受注基盤の拡大という観点では、職人の確保や育成、公共工事の減少への対応、緑化需要への対応といった事業環境の変化に、中小事業者が単独で対応するには、人材面・資金面・営業面で負担が大きくなる場合があります。
大手造園・緑化会社や建設会社の傘下に入ることで、職人の採用、受注基盤の拡大、緑化分野への展開などについて、買い手候補の経営資源を活用できる可能性があります。
また、造園業界では、請け負う工事の内容・規模によっては、建設業許可(造園工事業)、経営事項審査、発注者ごとの入札参加資格、造園施工管理技士などの有資格者の確保が重要な確認事項となるため、これらの許可・資格者体制・入札参加資格・顧客契約をどのように維持・承継できるかは、M&Aを検討するうえで重要な確認事項です。
造園業界での企業売却方法は?3種類を紹介
造園業界のM&Aでは、売却対象、職人との雇用関係、顧客との契約関係、建設業許可や有資格者の扱いによって、適した手法が変わります。
代表的な手法は以下の3つです。
- 株式譲渡
- 会社分割
- 事業譲渡
造園事業者のM&Aでは、建設業許可(造園工事業)の扱い、経営事項審査や発注者ごとの入札参加資格への影響、有資格者の配置、職人の雇用関係、顧客との契約承継などが論点となるため、手法選択にあたっては、これらをどのように承継するかを慎重に検討する必要があります。
それぞれの手法について解説します。
株式譲渡とは?中小企業M&Aで最も選ばれる手法の仕組みと特徴
株式譲渡とは、企業の株主が保有する株式を他者に譲渡することで、経営権を移転するM&Aの手法のひとつです。中小企業のM&Aにおいては最も多く活用されており、後継者不在や事業承継を目的としたケースでよく採用されています。
株式譲渡のメリット
株式譲渡において、売却対象となるのはあくまで「株式」であり、会社そのものの法人格や契約関係、資産・負債はそのまま引き継がれます。
そのため、以下のようなメリットがあります。
- 従業員や取引先との契約を維持したまま、スムーズな引き継ぎが可能
- 許認可や契約の再取得が原則不要で、実務上の負担が少ない
- 法人格が継続するため、営業活動を中断せずに承継できる
とくに、現経営者が引退を検討している場合でも、事業を止めることなくバトンタッチできるため、後継者問題の有効な解決策となります。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項による相手方同意や、業種許認可の変更届・再許可が必要となる場合があるため、事前確認は不可欠です。
株式譲渡の注意点・デメリット
一方で、株式とともに過去の負債や簿外債務(帳簿に載っていないリスク)も引き継がれるという側面もあるため、買い手企業にとっては慎重な対応が必要です。
そのため、M&Aを進める際には、財務・法務・税務などに関するデューデリジェンス(詳細調査)を丁寧に実施し、リスクを洗い出すことが不可欠です。
会社分割とは?M&Aで活用される組織再編の手法と注意点
会社分割とは、企業が事業の一部を他の会社に移転することで、権利義務を承継させる法的な組織再編手続きです。M&Aにおいては、売却対象の事業を切り出してスムーズに移転させる手段として活用されています。
会社分割の主な種類
会社分割には、以下のような分類があります。
- 新設分割:新たに設立した会社に事業を承継させる
- 吸収分割:既存の他社に事業を承継させる
さらに、分割により得る対価の受け取り先によっても分類されます。
- 分割型分割:対価を分割元会社の株主が受け取る
- 分社型分割:対価を分割元会社自身が受け取る
会社分割のメリットと特徴
会社分割の最大の特徴は、契約・資産・負債などの権利義務を包括的に移転できる点です。これにより、個別契約ごとの承継手続きを省略でき、事業の引き継ぎが円滑に進められます。
また、分割によって整理された事業をその後に売却することで、M&Aの手続きも効率化されます。
税務上の注意点:適格分割と非適格分割の違い
会社分割には税務上の取り扱いに注意が必要です。「適格分割」であれば譲渡益の課税は繰り延べされますが、採用するスキームによっては「非適格分割」に該当します。
非適格分割では、資産が時価で評価され、譲渡益課税やみなし配当課税の対象となるため、税負担が発生します。
また、会社分割と株式譲渡をセットで行う場合、タイミングによって課税リスクが高まるため、スキーム設計は専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。
事業譲渡とは?M&Aで活用される承継手法と税務上の注意点
事業譲渡は、企業が事業の一部または全部を、契約に基づいて他社へ売却するM&A手法のひとつです。
譲渡の対象となる資産・負債・契約関係を個別に指定して承継する点が特徴であり、柔軟性が高い一方で、手続きは煩雑になりやすいという側面もあります。
事業譲渡のメリット:簿外債務を回避しやすい
事業譲渡では、契約書に記載されたものだけが承継対象となるため、買い手企業にとっては、不要な債務やリスクを回避しやすくなります。
特に、簿外債務の存在が懸念されるケースでは、株式譲渡ではなく事業譲渡を希望する買い手企業が多い傾向にあります。
売り手側の税務上の扱い:事業譲渡益に課税
事業譲渡によって得た対価のうち、譲渡対象資産・負債の簿価純額との差額は「事業譲渡益」として、売り手側に法人税が課税されます。
また、事業譲渡には以下のような消費税に関する注意点もあります。
課税資産と非課税資産の両方をまとめて譲渡するため、資産ごとの課税・非課税を区分し課税対象資産部分の消費税を計算する必要があり、それぞれの対価を合理的に区分し、課税・非課税の計算を行う必要があります。
事業譲渡のデメリット:承継手続きが煩雑
個別承継であるため、以下のような実務負担が大きい点はデメリットと言えます。
- すべての契約(従業員との雇用契約含めて)を再締結する必要がある
- 許認可や届出が一から取得し直しとなる場合がある
造園業界の売却の流れは?3つのステップを紹介

造園業界のM&Aを進める場合は、大きく3つのステップに分けて進められます。
- M&Aの準備と助言会社の選定
- 買い手候補先企業との接触、意向表明受領
- 詳細調査(DD)、最終契約とクロージング
それぞれの段階で必要となる準備や手続きが異なるため、流れを把握しておきましょう。
Step1.M&Aの準備と助言会社の選定
はじめに、売却目的と希望条件を整理したうえで、M&AアドバイザーやFAなどの助言会社を選定します。
この段階で重要なのは、想定される売却価格だけでなく、どのような買い手候補に、職人の体制、建設業許可・有資格者、顧客との関係をどのように承継したいのかを明確にしておくことです。
造園業の場合、買い手候補の評価や取引条件に影響し得る論点として、建設業許可(造園工事業)の有無、許可要件の充足状況、経営事項審査の結果・評点、造園施工管理技士、造園技能士、土木施工管理技士など、対象業務に応じて必要となる有資格者の在籍状況、公共工事・公共維持管理案件と民間案件の受注構成、契約期間、更新実績、受注継続の見込み、年間維持管理契約の有無、契約条件、契約期間、更新実績、保有する機械・車両・工具類の内容、状態、所有・リースの区分、職人の定着状況などが挙げられます。
これらを事前に棚卸しし、資料として説明できる状態に整えておくことで、後工程での論点整理や条件交渉を進めやすくなる場合があります。
Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
次に、助言会社を通じて買い手候補へ打診を行います。初期段階では概要資料を提示し、関心を示した企業と秘密保持契約を締結したうえで、財務・事業などに関する詳細情報を段階的に開示します。
買い手候補から、譲渡価格のレンジ、取引方法、承継条件、売却後の運営方針などをまとめた意向表明書が提出されます。
売り手は、提示金額だけでなく、職人の処遇、有資格者の在籍継続の見込み、官公庁・民間顧客との取引継続方針、現場の運営方針なども含めて比較し、基本合意に進むかを判断します。
Step3.詳細調査(DD)、最終契約とクロージング
基本合意後は、買い手による詳細調査が行われます。
造園業では、財務・税務・法務・労務・ビジネス面の確認に加えて、建設業許可、有資格者、入札参加資格、受注継続性に関する確認が重視されやすい点が特徴です。
特に確認されやすいのは、建設業許可の有無・許可要件の充足状況、経営事項審査の結果、発注者ごとの入札参加資格への影響、造園施工管理技士、造園技能士、土木施工管理技士などの有資格者の在籍状況、配置状況、在籍継続の見込み、公共工事・公共維持管理案件と民間案件の受注実績、契約条件、受注継続の見込み、年間維持管理契約の条件、契約期間、更新実績、解約条項、職人・従業員の雇用契約、勤務実態、労働時間管理、社会保険、労務管理の状況、保有する機械・車両・工具類の状態、所有・リースの区分、更新投資の必要性などです。
調査結果を踏まえて、譲渡価格、表明保証、補償条項、クロージング条件などを調整し、最終契約を締結します。その後、対価の決済と引き渡しを行うクロージングをもって、取引が完了します。
M&Aの流れについてより詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
M&Aの流れとは?準備からクロージング・PMIまで全ステップを売り手目線で解説
造園業界の売却の相場は?価値算定方法を解説
造園業界のM&Aにおける売却価格は、「〇〇円が相場」と一律に決まるものではありません。
実務では、建設業許可の扱い、経営事項審査や入札参加資格への影響、有資格者を含む職人の体制、受注継続の見込み、収益力、負債、買い手候補の評価方針などを踏まえ、最終的には売り手と買い手候補の交渉によって価格が決まります。
造園事業者は、建設業許可の扱い、入札参加資格への影響、有資格者を含む人員体制、公共工事・維持管理契約の受注継続の見込みなどが買い手候補の評価上重視されやすく、同規模の売上であっても、契約期間、更新実績、公共・民間の受注構成、職人の技能・施工管理体制によって、買い手候補の評価に差が出る可能性がある業態です。
特に、経営事項審査の結果や入札参加資格、公共工事の受注実績を持つ事業者や、企業緑地、公園、マンション植栽などの年間維持管理契約について更新実績を持つ事業者、職人や有資格者を含む人員体制が整っている事業者は、財務数値に加えて、施工管理体制、受注継続性、保有機材、顧客基盤などが評価上考慮される場合があります。
こうした理由から、造園事業者のM&Aでは、まず企業価値を算定し、そのうえで負債や現金などを考慮しながら、評価の全体像を整理するのが一般的です。
以下では、その基本的な考え方について解説します。
1.企業価値を算定する
造園業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。
理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。
本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。
マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。
- 類似会社比較法
- 類似取引比較法
類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。
具体的には、以下のように算定します。
EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)
EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。
また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかによって、算定結果は大きく左右されます。
2.株式価値を算定する
企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。
企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値
第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。
なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。
しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。
M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~
また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
造園業界で企業を売却する3つのメリット
造園業でM&Aを活用するメリットは、経営者個人の利益にとどまりません。
適切に承継できれば、職人の雇用や、顧客に対する緑地の維持管理の継続につながる可能性があります。
- 職人の雇用と技術・技能を維持しやすくなる
- 経営者は売却対価を得られる可能性がある
- 顧客への緑地管理を継続しやすくなる
ここでは、売り手にとって特に重要な3つのメリットを解説します。
職人の雇用と技術・技能を維持しやすくなる
造園事業者では、剪定や庭づくり、緑地の維持管理を担う職人の存在が重要です。
廃業を選択した場合、職人の雇用継続が難しくなるほか、長年にわたって培われた造園の技術・技能や顧客対応に関する知見が事業として承継されにくくなる可能性があります。
M&Aにより事業が承継されれば、職人の雇用を維持しながら事業を継続しやすくなり、売り手にとっては、人材と技術・技能を次の運営体制へ承継しやすくなる点がメリットです。
剪定や庭づくりの技能が特定の職人に蓄積されている場合、職人の継続雇用の可否は、買い手候補の評価や譲渡後の運営に影響する可能性があります。
経営者は売却対価を得られる可能性がある
M&Aによる売却は、これまで築いてきた受注基盤、顧客との関係、職人・有資格者を含む人員体制、機械・車両などを含む事業の価値を、譲渡対価として回収する手段の一つです。
売却対価を得られた場合、引退後の生活資金、資産承継、次の事業への投資などに活用できる可能性があります。
後継者不在のまま廃業した場合、建設業許可や入札参加資格を維持できなくなるほか、機械・車両の処分費用や従業員への退職金などが発生する可能性があります。また、受注基盤や顧客基盤が事業として評価されにくくなる場合があります。
M&Aでは、事業の継続性を前提に買い手候補が評価する場合があるため、経営者は計画的に出口を設計しやすくなります。
顧客への緑地管理を継続しやすくなる
造園事業者は、公園や街路樹、企業の緑地などの維持管理を継続的に担うことで、地域の景観や緑地環境の維持に関わっているケースがあります。
突然の廃業は、官公庁や民間顧客にとって、新たな委託先の確保や業務引き継ぎなどの負担につながる可能性があります。
M&Aによって承継されることで、施工・管理体制を維持しながらサービスを継続しやすくなるため、顧客への影響を抑えながら事業を引き継ぎやすくなる点は、売り手にとってメリットの一つです。
造園業界で企業を売却する際の3つのポイント
造園業でM&Aを円滑に進めるには、売上規模だけでなく、買い手候補が重視する論点を整理しておく必要があります。
買い手候補は、建設業許可の扱い、有資格者の在籍継続の見込み、職人の技能、受注継続の見込みなどを慎重に確認します。
- 許可・有資格者と受注基盤を棚卸しする
- 事業の属人性を下げる
- 信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する
ここでは、造園事業者の売却を検討する際に、特に重要な3つのポイントを解説します。
許可・有資格者と受注基盤を棚卸しする
造園事業者の買い手候補による評価は、財務数値に加えて、建設業許可の扱い、経営事項審査や入札参加資格への影響、有資格者の在籍状況、受注基盤、職人の技能などに影響を受ける可能性があります。
買い手候補は、これらが譲渡後も維持・活用できるかを慎重に確認します。
そのため、売却前に以下の点を棚卸しし、説明できる状態にしておくことが重要です。
- 建設業許可(造園工事業)の有無・許可要件の充足状況、経営事項審査の結果、発注者ごとの入札参加資格への影響
- 造園施工管理技士、造園技能士、土木施工管理技士など、対象業務に応じて必要となる有資格者の在籍状況・配置状況
- 公共工事・公共維持管理案件と民間案件の受注実績、契約条件、受注継続の見込み、年間維持管理契約の状況
- 保有する機械・車両・工具類の状態、所有・リースの区分、更新投資の見通し
- 職人・従業員の雇用契約、勤務実態、労働時間管理、社会保険、年齢構成、定着状況
これらの整理が不十分だと、DDを経て価格見直し、追加条件の設定、交渉停止などにつながる可能性があります。
事業の属人性を下げる
造園事業者で買い手候補の評価に影響しやすい要因の一つが、経営者個人や特定の職人への過度な依存です。
剪定や庭づくりの技能、顧客との関係、有資格者としての業務がごく一部のキーパーソンに集中している場合、買い手候補から、譲渡後の運営リスクが高い事業と判断される可能性があります。
属人性による懸念を抑えるためには、以下のような取り組みが重要です。
- 剪定・植栽管理・施工管理の作業手順、品質管理基準、安全管理手順の標準化と文書化
- 職人間でのナレッジ共有と技能の教育体制の整備
- 顧客対応の組織的な管理(担当の複数化など)
- 有資格者の計画的な育成と確保
属人性を下げることで、人員交代後も事業を維持しやすい体制として評価される可能性があります。また、買い手候補が検討しやすくなる場合もあります。
信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する
造園事業者のM&Aでは、建設業許可や経営事項審査の扱い、発注者ごとの入札参加資格への影響、有資格者の配置、官公庁・民間顧客との契約承継、機械・車両の取り扱いなど、業種特有の論点が生じる場合があります。
準備やスキーム設計が不十分なまま進めると、譲渡条件の見直し、クロージング条件の追加、売却後の紛争などにつながる可能性があります。
そのため、以下のような専門家の支援を受けることが重要です。
- 売り手側の立場で支援するFA・M&Aアドバイザー
- 税務は税理士、契約・責任分担は弁護士、会計・財務DDは公認会計士、労務は社会保険労務士、建設業許可・経審・入札参加資格は行政書士などの専門家
売り手側のFAを活用することで、価格交渉や条件調整において、売り手の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすくなります。
感情に左右された場当たり的な判断を避けるという観点でも、第三者による専門的な視点を取り入れることが望ましいです。
造園業界での企業売却にかかる税金とは?
企業を売却する際には、売却益に対して税金が発生します。この税金の仕組みは、「個人オーナーが売却する場合」と「法人が株式を譲渡する場合」で異なるため、正しく理解しておくことが重要です。個人・法人別にわかりやすく解説します。
個人オーナーの場合
個人が自社株などの株式を譲渡し、譲渡益(売却益)が発生した場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。
課税の仕組み
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
この譲渡所得には、以下の税が課せられます。
- 所得税(復興特別所得税含む)
- 住民税
給与所得などとは分離して課税されるため、所得の合算は不要ですが、確定申告が必要です。
ただし、ミニマムタックスに該当する場合は給与所得等の他の所得との合算して算出する必要があるため、適切に節税するためには、事前に税理士など専門家への相談が欠かせません。
法人の場合
法人が保有する株式を譲渡した場合、その売却益は法人の「益金(収益)」として扱われ、他の事業収益と合算されて法人税等が課税されます。
法人の場合の税務処理
- 譲渡益は法人所得として計上され、通常の法人税率で課税
- 譲渡損失が出た場合、他の所得と損益通算が可能
- 所得と損失の調整により、柔軟な節税が可能
評価差額にも注意
帳簿価額と時価の差(含み益)がある場合、譲渡時に課税対象となる可能性があります。
まとめ
造園業界は、庭園や公園、企業の緑地などの施工・維持管理を通じて、地域の景観や緑地環境に関わる事業領域である一方で、職人の高齢化と後継者不足、技能承継、公共工事・維持管理案件の受注環境、価格競争など、複数の経営課題を抱えています。
中堅・中小の造園事業者にとっては、単独でこれらに対応する負担が大きくなる場合があります。そのため、M&Aは事業継続や関係者への影響を踏まえた選択肢の一つになり得ます。
売却を円滑に進めるためには、建設業許可、有資格者、受注基盤の棚卸しに加えて、属人性の低減や顧客との関係維持を含めた準備を、M&Aアドバイザー、弁護士、税理士、行政書士などの専門家に確認しながら早期に進めることが望ましいです。
RISONALでは、売り手に特化したFAサービスを提供しています。専属のエージェントがお客様の希望に沿った取引を実現するため、最適なサポートを行います。より高い評価額での売却を目指したアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を抑えた成約も可能です。
造園業界のM&Aでは、買い手目線で条件調整が進みやすい仲介型の支援の場合、価格や引き継ぎ条件が売り手に不利になるケースも少なくありません。そのため、誰の利益を最優先に交渉するのかを明確にした支援体制が重要です。
無料相談が可能です。実際にどの程度の価格で売却できるのか、また、どのようにすればより高く売却できるのかを、ぜひご確認ください。
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