不動産仲介業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
公開日:2026.09.29
2026.09.29
更新日:2026.09.29
2026.09.29

不動産仲介業界は、土地・戸建・マンションなどの売買の媒介や、賃貸物件の入居者募集・契約の媒介を手がける事業領域です。売買仲介と賃貸仲介を軸に、賃貸管理やリフォーム、買取再販などを組み合わせて収益を確保している事業者も多く、地域に密着した中小企業が業界の大半を占めています。
一方で、事業者数の増加による競合の激化、人口減少に伴う地域ごとの需要の縮小、ポータルサイトへの広告費負担の増大、営業担当者の採用・定着、不動産テックへの対応、経営者の高齢化と後継者不足など、複数の経営課題を抱えています。
こうした環境を背景に、営業エリアの拡大、地域の顧客基盤や物件情報網の獲得、管理戸数の積み増しなどを目的として、大手仲介会社や不動産管理会社、デベロッパー、不動産テック企業が中小の仲介会社の買収を検討・実行するケースがあり、中小の不動産仲介会社にとっても、売却や事業承継は検討対象となり得る選択肢の一つです。
本記事では、不動産仲介業界のM&Aを行う際の相場の考え方をはじめ、業界の現状や代表的な売却手法について解説します。
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不動産仲介業界の現状
不動産仲介業界は、宅地建物取引業の免許を受けた事業者が、売主・買主や貸主・借主の間に立って取引を成立させる事業領域です。全国展開する大手仲介会社やフランチャイズ加盟店から、一つの店舗で地域の売買・賃貸を扱う小規模事業者まで、幅広い事業者が存在します。
業界構造の特徴は、事業者数の多さと分散です。国土交通省の調査によれば、令和6年度末(2025年3月末)現在の宅地建物取引業者数は132,291業者(大臣免許3,158業者、知事免許129,133業者)で、前年度から1,708業者増加し、11年連続の増加となりました。宅地建物取引士の総登録者数も1,211,760人に達しています。参入障壁が比較的低く、小規模事業者が多数を占めるため、地域ごとの競争は厳しくなりやすい構造です。
※参考:国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について」
収益面では、媒介報酬(仲介手数料)の上限が法令に基づく告示で定められているため、取扱物件の価格帯と成約件数が業績を直接左右します。近年は、ポータルサイトへの広告掲載費が集客コストとして重くなる一方、成約に至らなければ報酬が発生しない成功報酬型のモデルであるため、反響の質と成約率の管理が収益を分ける要素となっています。
制度面では、低価格帯物件の採算を改善する見直しも行われました。2024年7月1日施行の報酬告示の改正により、価格800万円以下の宅地・建物(低廉な空家等)の売買・交換の媒介については、依頼者から受ける報酬の上限が30万円の1.1倍(税込33万円)に引き上げられ、従来必要とされた現地調査等の費用の要件も見直されています。空き家の流通促進を狙った改正であり、地方や低価格帯を扱う事業者にとっては収益機会の広がりにつながる可能性があります。
※参考:東京都住宅政策本部「宅地建物取引業法等の改正について(空き家対策推進のための報酬告示改正等)」
こうした環境のなかで、大手仲介会社や管理会社による地域仲介会社の取得、賃貸管理戸数の獲得を目的とした買収、不動産テック企業による店舗網・顧客基盤の取得など、不動産仲介業界のM&Aは多様な目的で検討・実行されるケースが見られ、事業承継や経営基盤の強化を目的にM&Aが選択肢として検討される場面があります。
関連する業界の相場については、下記もご参照ください。
不動産賃貸業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介
不動産仲介業界でM&Aを行うのはなぜ?売却の理由を紹介
不動産仲介業界でM&Aが検討される理由は、主に「事業承継」と「競争激化・人材確保など業界固有の経営課題への対応」の二つに整理できます。
まず、事業承継の観点では、帝国データバンクの調査によれば、2025年の全国の後継者不在率は50.1%と、なお半数の企業で後継者が決まっていない状況です。地域の仲介会社でも、経営者の高齢化が進む一方で、地元での信頼や物件情報網、オーナーとの関係を引き継げる後継者を確保できず、事業承継が課題となるケースがあるとみられます。
※参考:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」
特に、地主や賃貸オーナーとの関係、地元金融機関や同業者からの物件情報が経営者本人に集中している企業では、キーパーソンの引退が受注の流れそのものに直結する可能性があります。
次に、業界固有の経営課題への対応という観点では、ポータルサイトへの広告費の増大、営業担当者の採用・定着、電子契約や物件管理システムなどのIT投資、賃貸管理や買取再販への事業領域の拡大などに、中小企業が単独で取り組むには、資金面・人材面で負担が大きくなる場合があります。大手仲介会社や管理会社の傘下に入ることで、集客基盤、ブランド、システム、人材の融通などについて、買い手候補の経営資源を活用できる可能性があります。
また、不動産仲介業界のM&Aでは、免許と人員要件の取扱いが重要な確認事項です。宅地建物取引業の免許は、株式譲渡であれば法人格が継続するため原則として維持されます(役員等の変更届は必要)が、事業譲渡の場合には買い手側での新規取得が原則となります。免許には事務所ごとに専任の宅地建物取引士を置くことなどの要件があり、営業保証金の供託または保証協会への加入も事業開始の前提となるため、譲渡後にこれらの要件を満たせるかは、スキーム選択と一体で確認する必要があります。あわせて、賃貸管理を併営している場合の管理受託契約の承継や、フランチャイズ加盟契約の譲渡制限条項も、M&Aを検討するうえで重要な確認事項です。
※参考:国土交通省 関東地方整備局「宅地建物取引業の免許申請・変更届等」
不動産仲介業界での企業売却方法は?3種類を紹介
不動産仲介業界のM&Aでは、売却対象(会社全体か、店舗・管理事業などの一部か)、宅建業免許の取扱い、営業担当者・宅地建物取引士との雇用関係、管理受託契約や加盟契約の扱いによって、適した手法が変わります。
代表的な手法は以下の3つです。
- 株式譲渡
- 会社分割
- 事業譲渡
不動産仲介会社のM&Aでは、宅建業免許の維持・再取得と専任の宅地建物取引士の確保、営業保証金・保証協会加入の取扱い、賃貸管理の受託契約とオーナーからの同意、フランチャイズ加盟契約の譲渡制限条項、進行中の媒介契約・預り金や敷金の管理などが論点となるため、手法選択にあたっては、これらをどのように承継するかを慎重に検討する必要があります。
それぞれの手法について解説します。
株式譲渡とは?中小企業M&Aで最も選ばれる手法の仕組みと特徴
株式譲渡とは、企業の株主が保有する株式を他者に譲渡することで、経営権を移転するM&Aの手法のひとつです。中小企業のM&Aにおいては最も多く活用されており、後継者不在や事業承継を目的としたケースでよく採用されています。
株式譲渡のメリット
株式譲渡において、売却対象となるのはあくまで「株式」であり、会社そのものの法人格や契約関係、資産・負債はそのまま引き継がれます。
そのため、以下のようなメリットがあります。
- 従業員や取引先との契約を維持したまま、スムーズな引き継ぎが可能
- 許認可や契約の再取得が原則不要で、実務上の負担が少ない
- 法人格が継続するため、営業活動を中断せずに承継できる
とくに、現経営者が引退を検討している場合でも、事業を止めることなくバトンタッチできるため、後継者問題の有効な解決策となります。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項による相手方同意や、業種許認可の変更届・再許可が必要となる場合があるため、事前確認は不可欠です。
株式譲渡の注意点・デメリット
一方で、株式とともに過去の負債や簿外債務(帳簿に載っていないリスク)も引き継がれるという側面もあるため、買い手企業にとっては慎重な対応が必要です。
そのため、M&Aを進める際には、財務・法務・税務などに関するデューデリジェンス(詳細調査)を丁寧に実施し、リスクを洗い出すことが不可欠です。
会社分割とは?M&Aで活用される組織再編の手法と注意点
会社分割とは、企業が事業の一部を他の会社に移転することで、権利義務を承継させる法的な組織再編手続きです。M&Aにおいては、売却対象の事業を切り出してスムーズに移転させる手段として活用されています。
会社分割の主な種類
会社分割には、以下のような分類があります。
- 新設分割:新たに設立した会社に事業を承継させる
- 吸収分割:既存の他社に事業を承継させる
さらに、分割により得る対価の受け取り先によっても分類されます。
- 分割型分割:対価を分割元会社の株主が受け取る
- 分社型分割:対価を分割元会社自身が受け取る
会社分割のメリットと特徴
会社分割の最大の特徴は、契約・資産・負債などの権利義務を包括的に移転できる点です。これにより、個別契約ごとの承継手続きを省略でき、事業の引き継ぎが円滑に進められます。
また、分割によって整理された事業をその後に売却することで、M&Aの手続きも効率化されます。
税務上の注意点:適格分割と非適格分割の違い
会社分割には税務上の取り扱いに注意が必要です。「適格分割」であれば譲渡益の課税は繰り延べされますが、採用するスキームによっては「非適格分割」に該当します。
非適格分割では、資産が時価で評価され、譲渡益課税やみなし配当課税の対象となるため、税負担が発生します。
また、会社分割と株式譲渡をセットで行う場合、タイミングによって課税リスクが高まるため、スキーム設計は専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。
事業譲渡とは?M&Aで活用される承継手法と税務上の注意点
事業譲渡は、企業が事業の一部または全部を、契約に基づいて他社へ売却するM&A手法のひとつです。
譲渡の対象となる資産・負債・契約関係を個別に指定して承継する点が特徴であり、柔軟性が高い一方で、手続きは煩雑になりやすいという側面もあります。
事業譲渡のメリット:簿外債務を回避しやすい
事業譲渡では、契約書に記載されたものだけが承継対象となるため、買い手企業にとっては、不要な債務やリスクを回避しやすくなります。
特に、簿外債務の存在が懸念されるケースでは、株式譲渡ではなく事業譲渡を希望する買い手企業が多い傾向にあります。
売り手側の税務上の扱い:事業譲渡益に課税
事業譲渡によって得た対価のうち、譲渡対象資産・負債の簿価純額との差額は「事業譲渡益」として、売り手側に法人税が課税されます。
また、事業譲渡には以下のような消費税に関する注意点もあります。
課税資産と非課税資産の両方をまとめて譲渡するため、資産ごとの課税・非課税を区分し課税対象資産部分の消費税を計算する必要があり、それぞれの対価を合理的に区分し、課税・非課税の計算を行う必要があります。
事業譲渡のデメリット:承継手続きが煩雑
個別承継であるため、以下のような実務負担が大きい点はデメリットと言えます。
- すべての契約(従業員との雇用契約含めて)を再締結する必要がある
- 許認可や届出が一から取得し直しとなる場合がある
不動産仲介業界の売却の流れは?3つのステップを紹介
不動産仲介業界のM&Aを進める場合は、大きく3つのステップに分けて進められます。
- M&Aの準備と助言会社の選定
- 買い手候補先企業との接触、意向表明受領
- 詳細調査(DD)、最終契約とクロージング
それぞれの段階で必要となる準備や手続きが異なるため、流れを把握しておきましょう。
Step1.M&Aの準備と助言会社の選定
はじめに、売却目的と希望条件を整理したうえで、M&AアドバイザーやFAなどの助言会社を選定します。
この段階で重要なのは、想定される売却価格だけでなく、どのような買い手候補に、営業担当者、顧客・オーナーとの関係、管理受託物件をどのように承継したいのかを明確にしておくことです。
不動産仲介会社の場合、買い手候補の評価や取引条件に影響し得る論点として、売上の内訳(売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理・買取再販などの別)と粗利率の推移、成約件数と平均単価、反響チャネル別の実績(ポータルサイト、自社サイト、紹介、来店)と広告費、賃貸管理の受託戸数・管理料率・解約率、オーナーとの管理受託契約の内容、宅建業免許の区分・有効期限と専任の宅地建物取引士の在籍状況、営業保証金の供託または保証協会への加入状況、フランチャイズ加盟の有無と契約条件、店舗の賃貸借契約、営業担当者の在籍状況・歩合体系・定着率、レインズ登録や重要事項説明などの業務体制、預り金・敷金の管理状況、過去の行政処分・苦情の履歴などが挙げられます。
これらを事前に棚卸しし、資料として説明できる状態に整えておくことで、後工程での論点整理や条件交渉を進めやすくなる場合があります。
Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
次に、助言会社を通じて買い手候補へ打診を行います。初期段階では概要資料を提示し、関心を示した企業と秘密保持契約を締結したうえで、財務・事業などに関する詳細情報を段階的に開示します。
買い手候補からは、譲渡価格のレンジ、取引方法、引き継ぎ条件、売却後の運営方針などをまとめた意向表明書が提出されます。
売り手は、提示金額だけでなく、営業担当者の処遇、オーナー・顧客との関係継続方針、店舗や屋号・ブランドの運営方針なども含めて比較し、基本合意に進むかを判断します。
Step3.詳細調査(DD)、最終契約とクロージング
基本合意後は、買い手による詳細調査が行われます。
不動産仲介会社では、財務・税務・法務・労務・ビジネス面の確認に加えて、営業担当者の定着見込み(顧客が担当者に帰属していないか)、管理受託契約の承継可否とオーナーの意向、免許要件と専任の宅地建物取引士の体制、預り金・敷金の分別管理、重要事項説明などの業務品質と苦情・行政処分の履歴、反響チャネルの持続性などが重視されやすい点が特徴です。
調査結果を踏まえて、譲渡価格、表明保証、補償条項、クロージング条件、進行中の媒介契約・決済予定案件の取扱いなどを調整し、最終契約を締結します。
その後、対価の決済と引き渡しを行うクロージングをもって、取引が完了します。
M&Aの流れについてより詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
不動産仲介業界の売却の相場は?価値算定方法を解説
不動産仲介業界のM&Aにおける売却価格は、「〇〇円が相場」と一律に決まるものではありません。
実務では、収益の構成(フロー収益とストック収益の比率)、営業担当者の体制、顧客・オーナーとの関係、エリアの市場性、収益力、負債、買い手候補の評価方針などを踏まえ、最終的には売り手と買い手候補の交渉によって価格が決まります。
不動産仲介会社は、成約ごとに報酬が発生する成功報酬型のフロー収益が中心であるため、賃貸管理の受託戸数など継続的な収益基盤を持つかどうかが買い手候補の評価上重視されやすい業態です。同規模の売上であっても、管理戸数と解約率、反響チャネルの分散度合い、営業担当者の定着、エリアの人口動態によって、買い手候補の評価に差が出る可能性があります。
特に、賃貸管理を一定の規模で受託している事業者、地元のオーナーや地主との長期的な関係を持つ事業者、紹介・リピートによる反響の比率が高い事業者は、財務数値に加えて、ストック収益、顧客・オーナー基盤、人材の体制などが評価上考慮される場合があります。
こうした理由から、不動産仲介会社のM&Aでは、まず企業価値を算定し、そのうえで負債や現金などを考慮しながら、評価の全体像を整理するのが一般的です。
以下では、その基本的な考え方について解説します。
1.企業価値を算定する
不動産仲介業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。
理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。
本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。
マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。
- 類似会社比較法
- 類似取引比較法
類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。
具体的には、以下のように算定します。
EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値 (EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)
EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。
また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかによって、算定結果は大きく左右されます。
2.株式価値を算定する
企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。
企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値
第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。
なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。
しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。
M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~
また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
売却の進め方や仲介会社から提案を受けた際の注意点を、弁護士監修のガイドにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
不動産仲介業界で企業を売却する3つのメリット
不動産仲介業界でM&Aを活用するメリットは、経営者個人の利益にとどまりません。
適切な承継は、従業員の雇用や、顧客・オーナーへの対応の継続につながる可能性があります。
- 従業員の雇用と営業ノウハウを維持しやすくなる
- 経営者は売却対価を得られる可能性がある
- 顧客・オーナーへの対応を継続しやすくなる
ここでは、売り手にとって特に重要な3つのメリットを解説します。
従業員の雇用と営業ノウハウを維持しやすくなる
不動産仲介会社は、物件の提案から契約手続きまでを担う営業担当者と、重要事項説明などを担う宅地建物取引士の存在が事業の中核です。
廃業を選択した場合、従業員の雇用の継続が難しくなるほか、地域の物件情報網、顧客対応の履歴、契約実務のノウハウが、事業として承継されにくくなる可能性があります。
M&Aにより事業が承継されれば、従業員の雇用を維持しながら営業を継続しやすくなる場合があります。売り手にとっては、人材や営業ノウハウを次の運営体制へ承継しやすくなる点がメリットです。
顧客やオーナーとの関係が特定の営業担当者に蓄積されている場合、当該人材の継続関与の可否は、買い手候補の評価や譲渡後の運営に大きく影響する可能性があります。
キーパーソンの処遇と引き継ぎについては、下記もあわせてご覧ください。
M&Aでキーマンの処遇はどうなる?経営者と従業員を守る5つのポイント
経営者は売却対価を得られる可能性がある
M&Aによる売却は、これまで築いてきた地域での信頼、顧客・オーナー基盤、管理受託、営業体制を含む事業価値を、譲渡対価として回収する手段の一つです。
売却対価を得られた場合、引退後の生活資金、資産承継、次の事業への投資などに活用できる可能性があります。
後継者不在のまま廃業した場合、進行中の媒介契約・決済予定案件への対応、管理受託物件のオーナーへの説明と引き継ぎ、預り金・敷金の精算、従業員との契約整理、店舗の原状回復などが必要になる可能性があります。また、顧客基盤や管理受託が事業として評価されにくくなる場合があります。
M&Aでは、買い手候補は一般的には事業の継続性を前提に価値を評価するため、経営者は計画的に出口を設計しやすくなります。
顧客・オーナーへの対応を継続しやすくなる
不動産仲介会社は、売買の取引後のアフター対応や、賃貸管理を通じたオーナー・入居者への継続的な対応を担っているケースが少なくありません。
突然の廃業は、売買の当事者にとって相談窓口の喪失、賃貸オーナーにとって管理業務の引き継ぎ先の確保、入居者にとって修繕・更新対応の遅れなどの負担につながる可能性があります。
M&Aによって承継されることで、営業・管理の体制を維持しながら対応を継続しやすくなるため、顧客・オーナー・入居者への影響を抑えながら事業を引き継ぎやすくなる点は、売り手にとってメリットの一つです。
不動産仲介業界で企業を売却する際の3つのポイント
不動産仲介業界でM&Aを円滑に進めるには、売上規模だけでなく、買い手候補が重視する論点を整理しておく必要があります。
買い手候補は、収益の継続性、営業担当者の定着、免許要件と業務品質を慎重に確認します。
- 収益構成・管理受託・免許・人材を棚卸しする
- 営業の属人性を下げる
- 信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する
ここでは、不動産仲介会社の売却を検討する際に、特に重要な3つのポイントを解説します。
収益構成・管理受託・免許・人材を棚卸しする
不動産仲介会社の買い手候補による評価は、財務数値に加えて、収益の構成、管理受託の状況、免許・人材の体制、業務品質などに影響を受ける可能性があります。
買い手候補は、これらが譲渡後も維持・活用できるかを慎重に確認します。
そのため、売却前に以下の点を棚卸しし、説明できる状態にしておくことが重要です。
- 売上・粗利の内訳(売買仲介、賃貸仲介、賃貸管理、買取再販など)と成約件数・平均単価の推移
- 賃貸管理の受託戸数、管理料率、解約率、オーナーの一覧と管理受託契約の内容・期間
- 反響チャネル別の実績(ポータル、自社サイト、紹介、来店)と広告費、成約率
- 宅建業免許の区分・有効期限、専任の宅地建物取引士の在籍状況と後任候補、営業保証金の供託または保証協会への加入状況
- 営業担当者の在籍状況、歩合体系、定着率、顧客の帰属状況、フランチャイズ加盟契約と店舗の賃貸借契約
- 預り金・敷金の分別管理、重要事項説明などの書類整備、苦情・行政処分の履歴
これらの整理が不十分だと、DDを経て価格見直し、追加条件の設定、交渉停止などにつながる可能性があります。
営業の属人性を下げる
不動産仲介会社で買い手候補の評価に影響しやすい要因の一つが、経営者や特定の営業担当者への過度な依存です。
顧客・オーナーとの関係や物件情報の入手ルートが一部のキーパーソンに集中している場合、買い手候補から、その人物が退職すれば売上が失われる事業と判断される可能性があります。仲介業では顧客が会社ではなく担当者に付きやすいため、この点は特に重視されます。
属人性による懸念を抑えるためには、以下のような取り組みが重要です。
- 顧客・オーナー情報、追客履歴、物件情報の顧客管理システムでの一元管理(担当の複数化など)
- 査定・提案・契約手続きの手順の標準化と文書化
- 反響チャネルの分散と、紹介・リピートを生む仕組みづくり
- 若手営業担当者の育成と、宅地建物取引士資格の取得支援
属人性を下げることで、人員交代後も売上を維持しやすい体制として評価される可能性が高くなり、買い手候補が検討しやすくなるというプラスの効果があります。
売却前の準備全般については、下記で詳しく解説しています。
M&Aの磨き上げとは?売却価格を高める5つの領域と進め方を解説
信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する
不動産仲介会社のM&Aでは、宅建業免許の取扱い、専任の宅地建物取引士や営業保証金など免許要件の維持、管理受託契約やフランチャイズ加盟契約の承継、預り金の取扱いなど、業種特有の論点が生じる場合があります。
準備やスキーム設計が不十分なまま進めると、譲渡条件の見直し、クロージング条件の追加、売却後の紛争などにつながる可能性があります。
そのため、以下のような専門家の支援を受けることが重要です。
- 売り手側の立場で支援するFA・M&Aアドバイザー
- 税務は税理士、契約・責任分担は弁護士、会計・財務DDは公認会計士、労務は社会保険労務士、免許の手続きは行政書士などの専門家
売り手側のFAを活用することで、価格交渉や条件調整において、売り手の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすくなります。
感情に左右された場当たり的な判断を避けるという観点でも、第三者による専門的な視点を取り入れることが望ましいです。
不動産仲介業界での企業売却にかかる税金とは?
企業を売却する際には、売却益に対して税金が発生します。この税金の仕組みは、「個人オーナーが売却する場合」と「法人が株式を譲渡する場合」で異なるため、正しく理解しておくことが重要です。個人・法人別にわかりやすく解説します。
個人オーナーの場合
個人が自社株などの株式を譲渡し、譲渡益(売却益)が発生した場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。
課税の仕組み
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
この譲渡所得には、以下の税が課せられます。
- 所得税(復興特別所得税含む)
- 住民税
給与所得などとは分離して課税されるため、所得の合算は不要ですが、確定申告が必要です。
ただし、ミニマムタックスに該当する場合は給与所得等の他の所得と合算して算出する必要があるため、適切に節税するためには、事前に税理士など専門家への相談が欠かせません。
法人の場合
法人が保有する株式を譲渡した場合、その売却益は法人の「益金(収益)」として扱われ、他の事業収益と合算されて法人税等が課税されます。
法人の場合の税務処理
- 譲渡益は法人所得として計上され、通常の法人税率で課税
- 譲渡損失が出た場合、他の所得と損益通算が可能
- 所得と損失の調整により、柔軟な節税が可能
評価差額にも注意
帳簿価額と時価の差(含み益)がある場合、譲渡時に課税対象となる可能性があります。
まとめ
不動産仲介業界は、13万を超える事業者がひしめく分散した競争環境のなかで、地域ごとの需要の縮小、広告費の負担、営業担当者の採用・定着、IT投資、経営者の高齢化と後継者不足など、複数の経営課題を抱えています。
成功報酬型のフロー収益が中心で、顧客が担当者に付きやすい仲介業では、経営者や主力担当者の引退がそのまま売上の消失につながりかねません。そのため、中小の仲介会社にとって、M&Aは事業継続や顧客・従業員への影響を踏まえた選択肢の一つになり得ます。
売却を円滑に進めるためには、収益構成・管理受託・免許・人材の棚卸しに加えて、営業の属人性の低減や顧客情報の一元管理を含めた準備を、M&Aアドバイザー、弁護士、税理士、行政書士などの専門家に確認しながら早期に進めることが望ましいです。
RISONALでは、売り手に特化したFAサービスを提供しています。専属のエージェントがお客様の希望に沿った取引を実現するため、最適なサポートを行います。より高い評価額での売却を目指したアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を抑えた成約も可能です。
不動産仲介業界のM&Aでは、買い手目線で条件調整が進みやすい仲介型の支援の場合、価格や引き継ぎ条件が売り手に不利になるケースも少なくありません。そのため、誰の利益を最優先に交渉するのかを明確にした支援体制が重要です。
また、売却前に押さえておきたい注意点を、資料でも確認できます。
無料相談が可能です。実際にどの程度の価格で売却できるのか、また、どのようにすればより高く売却できるのかを、ぜひご確認ください。
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