ノンネームシートとは?記載項目や企業概要書(IM)との違いを売り手目線で解説

2026.06.26

公開日:2026.06.26

2026.06.26

2026.06.26

更新日:2026.06.26

2026.06.26

ノンネームシートとは?記載項目や企業概要書(IM)との違いを売り手目線で解説

会社の売却を考え始めたとき、買い手候補にどの段階で、どこまで情報を開示するかは、慎重な判断が求められます。ノンネームシートとは、M&Aの初期段階で、会社が特定されない形で、対象企業の概要を買い手候補に伝える初期資料です。業種、地域、事業規模、財務概要などを匿名・概数でまとめ、買い手の関心を確かめるために使われます。

特に売り手にとっては、ノンネームシートの作り方は、その後の買い手候補からの反応に影響します。情報を出しすぎれば会社が特定されるリスクがあり、情報が少なすぎれば、買い手が初期検討しにくくなります。匿名性の確保と事業魅力の訴求のバランスが重要になります。

本記事では、ノンネームシートの記載項目と企業概要書(IM)との違いに加え、作成時の注意点まで解説します。

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ノンネームシートとは

ノンネームシートとは、M&Aの初期段階で、対象となる会社が特定されにくいように、その概要を買い手候補に伝える資料です。ティーザーとも呼ばれ、業種、地域、事業規模、財務概要、譲渡理由の概要といった情報を、会社名や詳細な所在地、具体的な取引先名などを伏せた形でまとめます。買い手候補が関心を持つかどうかを、最初に確かめるための資料です。

会社名、詳細な所在地、取引先名、詳細な財務情報などを載せないのは、情報が漏れることで取引先、従業員、金融機関、競合などに売却検討の事実が伝わるリスクを抑えるためです。売却を検討している事実が早い段階で知られると、事業に影響が及ぶことがあります。そのため、まずは匿名のノンネームシートで関心の有無を確認し、関心を示した買い手候補と秘密保持契約を結んだうえで、段階的に詳しい情報を開示する流れが一般的です。

ノンネームシートは、売り手本人ではなく、M&A仲介会社やFAなどが作成を支援することが多い資料です。仲介会社とFAでは立場や支援内容が異なるため、依頼前に業務範囲、報酬、利益相反の有無を確認することが重要です。

両者の違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説

ノンネームシートの主な記載項目

ノンネームシートには、会社を特定させない範囲で、買い手候補が初期検討できる情報を記載します。何を載せるかは業種、地域、買い手候補の属性、匿名性の必要度によって異なりますが、基本となる項目があります。

主な記載項目は以下の通りです。

  • 業種と所在地
  • 事業規模と財務概要
  • 譲渡理由と希望条件

それぞれを順に解説します。

業種と所在地

業種と所在地は、買い手が関心の有無を判断するもとになる情報です。業種は「製造業」「小売業」などの大分類、または特定されない範囲の中分類で、地域は「関東地方」「東海地方」といった広いエリアで示します。市区町村、駅名、主要取引先、特徴的な商品名など、特定につながる細かい記載は避けます。

売り手としては、業種や地域を具体的に書きすぎると、取引先や同業者から会社を推測されることに注意が必要です。事業の特色を伝えつつ、特定リスクを抑えられる粒度に調整することが重要です。

事業規模と財務概要

事業規模と財務概要は、買い手候補が事業の大きさや収益性を初期的に判断するための情報です。売上高や従業員数は、正確な数値ではなく「売上高5億円程度」「従業員50名程度」など、特定につながらない範囲の概数で示すことがあります。営業利益、EBITDA、黒字・赤字の傾向などを、必要に応じて簡潔に添えることもあります。

売り手としては、財務の数値を細かく出しすぎると、会社の特定や交渉上の不利につながることがある点に注意が必要です。買い手候補が初期判断できる範囲にとどめ、詳細は後の段階で開示することが重要です。

譲渡理由の概要と希望条件

譲渡理由の概要と希望条件は、買い手が取引の背景や売り手の意向を理解するための情報です。譲渡理由は「後継者不在」「事業の選択と集中」など、会社が特定されにくく、かつ買い手候補に誤解を与えにくい表現で示します。希望条件には、譲渡の希望時期や、従業員の雇用継続、取引先との関係維持などの要望を簡潔に記載します。

売り手としては、譲渡理由の書き方によって、買い手が受ける印象が変わることに注意が必要です。事実と異なる印象を与えない範囲で、買い手候補が検討しやすい表現に整えることが重要です。

※参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)

ノンネームシートと企業概要書(IM)の違い

ノンネームシートと混同されやすい資料に、企業概要書(IM)があります。どちらもM&Aで使われる資料ですが、開示する情報の量やタイミングが異なります。主な違いは以下の通りです。

  • 開示する情報量の違い
  • 開示するタイミングの違い
  • 匿名情報か実名・詳細情報かの違い

それぞれを順に解説します。

開示する情報量の違い

ノンネームシートは、会社を特定されにくい範囲の概要を記載した、1枚程度の簡潔な初期資料として作成されることが多い資料です。これに対して企業概要書(IM)は、事業内容、財務状況、組織体制、取引先、成長性、リスクなどを詳しくまとめた詳細資料です。ページ数は案件によって異なります。IMは、買い手候補が具体的な検討を進めるための情報を、ノンネームシートより詳しく整理した資料です。

売り手としては、それぞれの資料で開示する情報の範囲を分けて考えることが重要です。初期はノンネームシートで関心を確かめ、踏み込んだ情報はIMで開示するという段階を踏むことで、情報管理をしやすくなります。

開示するタイミングの違い

ノンネームシートは、買い手候補を探す最初の段階で、複数の買い手候補に提示されることがあります。一方、企業概要書(IM)は、ノンネームシートで関心を示し、秘密保持契約を結んだ買い手候補に開示されるのが一般的です。情報の深さに応じて、開示する相手の範囲が絞られていきます。

売り手としては、どの資料をどの段階で出すかを意識することが重要です。秘密保持契約を結ぶ前に会社名や詳細情報を渡すと、情報漏えい時のリスクが高まります。開示段階を分けることが、情報管理上重要です。

匿名情報か実名・詳細情報かの違い

ノンネームシートは、会社名や所在地の詳細、取引先名などを伏せ、会社が特定されないように作られます。これに対して企業概要書(IM)は、通常、秘密保持契約後に会社名や詳細情報を含めて開示される資料です。匿名性を保つ初期資料か、実名・詳細情報を含む検討資料かが、両者の大きな違いです。

売り手としては、匿名の段階と実名の段階を明確に区切ることが重要です。実名で情報を開示するのは、信頼できる相手に絞ったうえで、秘密保持契約を結んだ後にすることが望ましいです。

ノンネームシートを作成する際の注意点

ノンネームシートは、作り方によって買い手候補の反応や情報管理に影響する資料です。情報の出し方を誤ると、会社が特定されるリスクが高まったり、買い手候補が初期検討しにくくなったりします。主な注意点は以下の通りです。

  • 会社が特定されにくい粒度にする
  • 事業の魅力と検討材料が伝わるようにする
  • 売り手の立場で情報管理と買い手探索を支援できる専門家に相談する

それぞれを順に解説します。

会社が特定されにくい粒度にする

ノンネームシートで特に重視されるのは、会社が特定されにくい形に情報を調整することです。業種や地域を細かく書いたり、特徴的な商品名、取引先名、地域、許認可、受賞歴などをそのまま載せたりすると、限られた情報からでも会社を推測されることがあります。情報の粒度を抽象化し、特定につながる固有情報を避けて記載することが求められます。

売り手としては、自社では問題ないと思える情報でも、同業者から見れば会社を特定する手がかりになることに注意が必要です。買い手候補や同業者の視点で、特定につながる記載がないかを確認することが重要です。

事業の魅力と検討材料が伝わるようにする

ノンネームシートは、匿名性を保ちながらも、買い手候補が初期検討できる内容にする必要があります。安定した取引先を持つ、独自の技術があるといった事業の強みを、特定につながらない範囲で簡潔に伝えます。関心を持ってもらえなければ、秘密保持契約やIM開示の段階に進みにくくなります。

売り手としては、匿名性の確保と事業魅力の訴求のどちらかに偏らないよう、バランスを取ることが重要です。情報を絞りつつ、自社の強みや買収メリットが伝わる表現を選ぶことが、買い手探索の初期反応を得るうえで重要です。

売り手の立場で情報管理と買い手探索を支援できる専門家に相談する

ノンネームシートの作成には、どこまで情報を出すかの見極め、匿名化の設計、買い手候補が検討しやすい表現の工夫が求められます。こうした判断は、M&Aの実務に通じた専門家の支援を受けることで進めやすくなります。M&Aの支援者には、売り手・買い手の間に立つ仲介会社と、売り手または買い手の一方に助言するFA(ファイナンシャル・アドバイザー)があります。

売り手としては、自社の意向や情報管理方針を踏まえて資料を作り、買い手候補を探索できる支援者を選ぶことが重要です。FAは依頼者側に助言する立場のため、売り手側の観点から情報開示や買い手探索の方針を検討しやすい場合があります。

売り手専属のFAの役割については、以下の記事でも詳しく解説しています。

M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説

ノンネームシートから詳細検討までの流れ

ノンネームシートは、M&Aの買い手探索から詳細情報の開示へ進む流れの中で使われます。どの段階で何が行われるかを理解しておくと、自社の情報をどの段階で開示すべきかを把握しやすくなります。主な流れは以下の通りです。

  • ノンネームシートで買い手候補に初期打診する
  • 関心を示した買い手と秘密保持契約を結ぶ
  • 企業概要書(IM)で詳細を開示する

それぞれを順に解説します。

ノンネームシートで買い手候補に初期打診する

買い手探索では、ノンネームシートを買い手候補に提示して初期的な関心を確認することがあります。FAなどのM&A支援会社が持つネットワークを通じて、事業親和性や買収ニーズがありそうな相手に、匿名性を保った形で打診します。会社が特定されにくい形で、買い手候補の関心を確かめる段階です。

売り手としては、どの範囲の買い手候補に、どの粒度の情報で打診するかを、支援者と相談しながら決めることが重要です。

M&A全体の流れについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

M&Aの流れとは?準備からクロージング・PMIまで全ステップを売り手目線で解説

関心を示した買い手と秘密保持契約を結ぶ

ノンネームシートを見た買い手候補が関心を示した場合、次に秘密保持契約(NDA)を結びます。秘密保持契約とは、開示する情報を外部に漏らさないことを約束する契約です。この契約を結ぶことで、より詳しい情報を開示する前提を整えます。ただし、情報漏えいリスクが完全になくなるわけではありません。

売り手としては、秘密保持契約を結ぶ前に、会社名や詳細な情報を渡さないことが重要です。契約の内容については、情報の取り扱いや有効期間を確認し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。

企業概要書(IM)で詳細を開示する

秘密保持契約を結んだ買い手には、企業概要書(IM)を開示し、より具体的な検討に進んでもらいます。IMには、事業内容や財務状況、組織体制などが詳しく記載されます。買い手はこの資料をもとに、買収検討を進めるかどうかや、初期的な条件を検討します。

売り手としては、IMに記載する情報の正確さに注意することが重要です。事実と異なる内容や誇張した表現があると、後のデューデリジェンス、交渉、契約で問題になることがあります。正確な情報を、魅力が伝わる形でまとめることが求められます。

まとめ

ノンネームシートは、M&Aの初期段階で、会社が特定されにくい形で、対象企業の概要を買い手候補に伝える初期資料です。業種、地域、事業規模、財務概要、譲渡理由の概要などを匿名・概数でまとめ、買い手の関心を確かめるために使われます。企業概要書(IM)とは、開示する情報の量やタイミング、匿名か実名かという点で異なります。

特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。

  • 会社が特定されにくい粒度で情報をまとめること
  • 匿名性を保ちつつ、事業の魅力が伝わる内容にすること
  • ノンネームシート、秘密保持契約、IMという段階に応じて開示範囲を管理すること
  • 売り手の立場で情報管理と買い手探索を支援できる専門家に相談すること

ノンネームシートは、自社の情報を守りながら、自社に合う買い手候補を探すための入口になる資料です。匿名性と魅力の訴求のバランスをどう取るかは、支援者の経験や方針によって差が出る場合があります。売却を検討する際は、早い段階から売り手の立場に立てる専門家に相談することで、情報を守りながら、自社に合った買い手探索を進めやすくなります。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

RISONAL編集部

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