業界再編が進む中、なぜ今M&Aを決断したのか。アイセイ代表が語る承継判断の背景
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- 成約実績
公開日:2026.06.24
2026.06.24
更新日:2026.06.24
2026.06.24
この記事の監修者
吉田 一陽 Kazuaki Yoshida
パートナー・執行役員
クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部にて、M&Aエキスパートとして主にオーナー経営者を対象にM&Aアドバイザリーサービスを提供。
| 企業名 | 株式会社アイセイ |
| 事業内容 | コンタクトレンズ及びケア用品の卸販売 オリジナルコンタクトレンズの企画発売 コンタクトレンズ販売促進に関する企画立案およびコンサルティング業務 ネット通販ルート向けコンタクトレンズ卸販売および商品企画開発・販売 販促商材の企画、販売 コンタクトレンズネット通販に関するコンサルティング業 コスメ事業の展開 |
| ホームページ | https://www.aiseis.jp/ |
カラーコンタクトレンズの卸売を主力とする株式会社アイセイは、後継者不在という事情だけでなく、業界再編の加速や単独成長の限界を見据え、M&Aを決断しました。
背景にあったのは、会社の強みをどう次につなぐか、そして従業員が今後もより良い環境で働ける体制をどうつくるかという経営判断です。
今回は、M&Aを考え始めた背景、社内承継との比較、相手先に求めた条件、そして売り手専属FAの支援で何が安心材料になったのかについて、株式会社アイセイの五島社長に伺いました。
ブランド力と商品開発力を強みに、卸売事業を展開
――まず、御社がどのような会社で、どのような強みを持つ事業なのか教えてください。
五島社長:株式会社アイセイは、カラーコンタクトレンズの卸売をメインにやっている会社です。主な販売先は、インターネットでコンタクトレンズを販売している会社や、ドン・キホーテ、ドラッグストアなどです。
強みとしては、一つは強いブランドを持っていることです。もう一つは商品開発力です。そこは当社の大きな強みだったと思っています。
また、事業面だけではなく、バックオフィスがしっかりしていることも強みでした。人事や経理財務など、管理部門については、同じ規模の会社の中でもかなり整っている方だと思います。そういうところは、一緒になる相手先に対しても力を発揮できる部分だと考えていました。
経営で大切にしてきたのは、従業員が働きやすい環境づくり
――長年経営される中で、特にどのような点に力を入れてこられたのでしょうか。
五島社長:一番は、従業員がいかに働きやすい環境をつくるかというところです。
グループ全体で従業員は120名くらいで、そのうち20名ほどがパートなどの正社員以外の形態です。そうした中で、会社としてどう働きやすい環境を整えるかは、常に意識していました。
M&Aは突然の決断ではなく、以前から見据えていた選択肢
――事業承継や資本提携を意識し始めたのは、どのような背景からだったのでしょうか。
五島社長:選択肢として考えていた、という意味では、事業をやり始めた時からですね。親族内承継は考えていないので、いずれは誰かに継いでもらうしかない。そういう意味で、事業売却というのは常に選択肢としてありました。
業界再編が進む中、単独での成長に限界を感じるように
――今回、具体的に動き出したのは、どのような変化を感じたからでしょうか。
五島社長:ここ数年で、業界再編がかなり進んでいたんです。M&Aを通じて、大きなまとまりがいくつかできてきて、市場の変化を見ても、将来的には規模がないと立ち打ちできないだろうなという思いが強くなっていきました。
当然、規模があった方が物流の効率化も図れますし、販路の面でも有利になります。そういう意味で、単独でやっていくことの限界は意識していました。
社内承継も理想だったが、業界の変化スピードとは合わなかった
――M&A以外の選択肢も検討されていましたか。
五島社長:もちろん、基本としては社内で継いでくれる人がいれば一番いいとは思っていました。優秀な人材もいましたし、今後成長していく可能性もあったと思います。
ただ、経営を任せるレベルまで育つのを待てるかというと、そこは難しかったです。業界再編のスピードを考えると、後継者候補の成長を待つ時間とは合致しないなと判断しました。
相手先に求めたのは、補完関係と従業員の将来
――最終的に、相手先に求めていた条件は何だったのでしょうか。
五島社長:一つは、一緒になって意味がある会社であることです。もう一つは、従業員が今までどおり、もしくは今まで以上に良い環境で働けるかどうか。この二つが基本でした。
――「一緒になる意味」について、具体的にはどのような点を見ていましたか。
五島社長:今回資本業務提携を締結したエース社は、非常に販売力が強い会社です。我々はどちらかというとBtoBが多いのですが、エース社はBtoCに強い会社です。販売力に関しては、周りのライバルと比べると少し負けているなと感じていたので、その部分はかなりプラスになると考えていました。
逆に、エース社は勢いよく成長されてきた分、これから組織を整えていかないといけない部分もありました。そこに対して、我々が整備してきたバックオフィスのノウハウは活かせるだろうと考えていました。
物流面についても、それぞれの強みを活かせば、今まで以上に効率的な体制をつくれると思っていました。
長年続いた取引関係を見直すことも、承継判断の一部だった
――成約に向けて、迷いや躊躇があった場面はありましたか。
五島社長:一つは、既存の取引関係が変わっていく可能性があることです。特に仕入れの面では、今後の体制次第で見直しが必要になる場面もあると感じていました。
ただ、将来の競争環境を考えると、会社としてより良い形を目指すために、取引や体制のあり方も含めて見直していく必要があると感じていました。
将来を見据えて会社をより良い形にしていくには、経営の枠組み自体を変えることが一つの選択肢になる、という意識はありました。
全員の納得を待たず、経営判断としてスピードを優先した
――社員や幹部の反応はいかがでしたか。
五島社長:特に幹部に関しては、不安しかなかったと思いますね。やり方も違いますし、今回はこちらが下の立場になるように見える部分もある。そういった面での不安はあったと思います。
――そうした不安は、どのように整理していったのでしょうか。
五島社長:正直、まだ完全に払拭されているかというと、そうではないと思います。ただ、丁寧に話していくことはもちろんですし、それ以上に大事なのは実績を出していくことだと思っていました。
2025年10月に資本業務提携を締結してから、すでに利益面ではかなり成果が出ています。そういう数字が見えてくれば、徐々に「一緒になって良かった」と感じてもらえるんじゃないかなと思っています。
全員が完全に納得するのを待っていたら、決断はできません。業界再編のスピードを考えると、経営判断としてはスピードを優先する必要もありました。
――「今なのか、もう少し単独で頑張るべきか」と悩んだことはありましたか。
五島社長:多少はありましたけど、早ければ早いほど生き残っていける確率は上がると思っていたので、そこまで迷ってはいないですね。
デューデリジェンスや成約準備がスムーズに進んだ背景
――成約前のデューデリジェンスやクロージング準備で印象に残っていることはありますか。
五島社長:非常にスムーズにやっていただけたかなと思います。
やはり、デューデリジェンスの時に必要な資料がきっちり揃っていることが大事です。そこがしっかりしていたから、相手方もあまり疑問を持たずに判断していただけたのかなと思います。
売り手専属FAだったからこそ、安心して意思決定できた
――オーナーズと接点を持ったきっかけは何だったのでしょうか。
五島社長:知人の紹介です。
――他社ではなく、オーナーズに期待した理由は何だったのでしょうか。
五島社長:エースの山下社長が信頼している人であれば問題ない、という判断です。
――実際に案件を進める中で、オーナーズの支援で良かった点はどこでしょうか。
五島社長:当然、我々サイドに立ってやっていただいていたので、向こうと利益が反するところがあっても、ちゃんと私の立場に立って対応していただけたところです。そこは非常に良かったです。
また、契約交渉の過程では資本提携先との意向や条件がぶつかる場面もありましたが、その都度間に入って話をしていただいて、最終的には納得いく形にできた。本当に、間に入っていただいたおかげだと思っています。
――成約までの中で、特に役に立ったと感じる場面はありましたか。
五島社長:本当に段階段階で、担当者であった吉田さんから都度丁寧に説明していただきました。私の話をちゃんと聞いていただいて、最終的には僕の思っていることを優先して進めていただけた。そこは非常にありがたかったです。
――M&Aは支援会社の違いによって、結果は変わると感じる場面はありましたか。
五島社長:かなりあると思います。やっぱり両方からお金をもらっている形だと、「お互いの利益が反する場面はどうするんですか」という話になるので。
今回は明確に我々側に立ってくれていると分かっていたので、そこは安心してお任せできました。
――オーナーズでは、成約後の生活設計やライフプランのサポートも行っていますが、その点はいかがでしたか。
五島社長:M&Aの話をしている段階から、「これぐらいの利益になれば、今後こういう生活をつくっていけますよ」という話を一緒にしていけたので、そこは非常に安心感がありました。
実際に成立した後も、いろいろ相談にのっていただいているので、非常にありがたいですね。
成約後も大きなズレはなく、社員の仕事の幅も広がっている
――成約から半年ほど経過して、当初感じていた不安はどう変わりましたか。
五島社長:あんまり思っていたのと違うな、ということは基本的には感じていないですね。
――社員の皆さんにも、前向きな変化は見えていますか。
五島社長:今までよりも、やれる仕事は増えています。特にバックオフィスのチームは、今後、両社の人事総務や経理部門を当社側でやろうかという話も出ています。
ポジションが維持されるというだけではなくて、今まで以上に仕事の幅が広がるし、報酬面も含めて成長につながると感じている人はいるんじゃないかなと思います。
実際、今出ている数字を見ても、利益はしっかり出ています。今はうまくいっていることが見えてきているし、これまでとは違うやり方もいろいろ教えてもらっているところです。ここからは、どこにコストをかけていくかという新しい段階に入っていくので、ますますいろいろなことができるようになると思っています。
同じ悩みを持つオーナー経営者へ――“早い相談”が選択肢を残す
――最後に、同じように事業承継やM&Aを悩んでいるオーナー経営者へ、メッセージをお願いします。
五島社長:ケースバイケースだとは思いますが、遅くなればなるほど選択肢は狭まると思うんです。だから、順調な時からそういう話はしておいた方がいいと思います。
その時点ですぐ売る必要はなくても、どういう買い手候補がいるのかを知っておくだけでも全然違います。なるべく早い段階で相談しておくことが大事なんじゃないかなと思います。
編集後記
今回のお話で印象的だったのは、M&Aが単なる「後継者不在への対応」ではなく、業界再編の進展や単独成長の限界を見据えた、極めて現実的な経営判断として語られていた点です。株式会社アイセイでは、会社の強みをどう次につなぐかという視点に加え、従業員が今後もより良い環境で働けるかどうかを重視しながら、相手先との補完関係や承継後の体制まで含めて検討されていました。
また、社内承継も理想ではありながら、業界の変化スピードとは時間軸が合わないと判断された点も、多くのオーナー経営者にとって示唆のある話ではないでしょうか。事業承継では、理想論だけでなく、「いつまで待てるのか」「何を優先するのか」という現実的な見極めが必要になる場面があります。
すぐに譲渡を決める必要がなくても、早い段階から選択肢を整理し、比較検討しておくことは、納得のいく承継判断につながります。今回の事例は、M&Aを成功談として捉えるのではなく、経営環境の変化にどう向き合い、何を基準に決断するかを考えるうえで、参考になるケースといえそうです。
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