バス会社業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

2026.11.04

公開日:2026.11.04

2026.11.04

2026.11.04

更新日:2026.11.04

2026.11.04

バス会社業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

バス会社業界は、決められた路線と時刻表で乗客を運ぶ路線バス(乗合バス)や、自治体から委託を受けて運行するコミュニティバス、観光・学校行事・企業送迎などで車両ごと貸し切る貸切バスを手がける事業領域です。地域に根ざした中小のバス会社の多くは、これらを組み合わせて事業を営み、地域の移動手段を支えています。

一方で、運転者の不足と高齢化、労働時間規制の強化、利用者の減少による路線収支の悪化、燃料費と車両価格の上昇、自治体の補助や委託への依存、経営者の高齢化と後継者不足など、複数の経営課題を抱えています。

こうした環境を背景に、運転者や車両の確保、営業エリアの拡大、地域交通の維持などを目的として、地域の交通グループや同業のバス会社、観光・旅行関連企業が中小のバス会社の取得を検討・実行するケースがあり、中小のバス会社にとっても、売却や事業承継は検討対象となり得る選択肢の一つです。

本記事では、バス会社業界のM&Aを行う際の相場の考え方をはじめ、業界の現状や代表的な売却手法、売り手が事前に整理すべき論点について解説します。

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バス会社業界の現状

バス会社業界は、鉄道会社系の大手から、特定の市町村で路線やコミュニティバスを担う中小事業者、観光や送迎を中心とする貸切専業の事業者まで、幅広い事業者で構成される事業領域です。同じバス会社でも、路線バスは運賃収入に加えて自治体の補助や委託料が収益を支え、貸切バスは観光や団体の需要に左右されるなど、収益の構造が異なります。

供給の面では、路線の縮小が続いています。国土交通省の資料によれば、2008年度から2024年度までに、乗合バスの路線は計27,080キロメートルが廃止され、乗合バスの運転者数は2019年度から2021年度にかけて約11%減少しました。人口減少と高齢化により移動手段の確保への不安が高まる一方で、担い手の不足によって減便・廃止が相次ぐという、需要と供給のずれが広がっています。

※参考:国土交通省 総合政策局地域交通課「地域交通課の施策について」

減便・廃止の要因は、利用者の減少に加えて運転者の不足の比重が高まっているとされます。交通経済研究所の調査によれば、一般路線バスを運行する事業者90社のうち、2023年4月以降に減便を実施したのは53社(58.9%)、休廃止を実施したのは34社(37.8%)にのぼりました。また、関東運輸局が管内の市区町村に行った調査では、路線バスの減便・廃止の要因として「運転者不足」を挙げる割合が、2024年4月以降(将来を含む)は85.4%に達しています。減便の理由としては、運転士不足や利用者減に加えて、労働時間等に関する改善基準告示の改正への対応も挙げられています。

※参考:一般財団法人交通経済研究所「乗合バス事業に関する現状調査[速報版]」、同「乗合バス事業の現状に関する調査 調査報告」、国土交通省 関東運輸局「関東運輸局管内におけるバス運転者不足問題を踏まえた地域公共交通の確保に関する調査」

貸切バスは、観光需要の回復やインバウンドの増加が追い風となる一方、車両と運転者を確保できなければ受注を増やしにくい点は路線バスと共通しています。燃料費や車両価格の上昇も、中小事業者の収益を圧迫する要因とされています。

こうした環境のなかで、地域の交通グループによる周辺事業者の取得、運転者と車両を確保するための同業間の統合、観光・旅行関連企業による貸切バス事業者の取得など、バス会社業界のM&Aは地域交通の維持と結びついて検討・実行されるケースが見られ、事業承継や経営基盤の強化を目的にM&Aが選択肢として検討される場面があります。

関連する業界の相場については、下記もご参照ください。

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バス会社業界でM&Aを行うのはなぜ?売却の理由を紹介

バス会社業界でM&Aが検討される理由は、主に「事業承継」と「運転者不足・路線収支の悪化など業界固有の経営課題への対応」の二つに整理できます。

まず、事業承継の観点では、帝国データバンクの調査によれば、2025年の全国の後継者不在率は50.1%と、なお半数の企業で後継者が決まっていない状況です。地域のバス会社でも、経営者の高齢化が進む一方で、自治体との関係や運行管理のノウハウを引き継げる後継者を確保できず、事業承継が課題となるケースがあるとみられます。

※参考:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」

事業承継の選択肢の比較については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

事業承継とM&Aの違いとは?3つの承継方法と後悔しない相談先の選び方を解説

次に、業界固有の経営課題への対応という観点では、運転者の採用と育成、労働時間規制に対応した運行計画の見直し、車両の更新、運行管理や安全管理の体制強化、自治体との補助・委託条件の協議などに、中小のバス会社が単独で取り組むには、人材面・資金面で負担が大きくなる場合があります。地域の交通グループや同業の傘下に入ることで、運転者の融通、車両の共同調達、整備体制、運行管理の仕組みなどについて、買い手候補の経営資源を活用できる可能性があります。

また、バス会社業界のM&Aでは、道路運送法に基づく許可と、承継の手続きが重要な確認事項となります。バス事業は事業の種類ごとに許可が必要な事業であり、乗合・貸切を問わず、事業を譲渡・譲受する場合や、合併・分割で事業を承継させる場合には、原則として道路運送法第36条に基づく国土交通大臣の認可を受ける必要があります。また、貸切バスの譲渡譲受認可の申請にあたっては、安全統括管理者・運行管理者・整備管理者について、資格要件を満たす者が就任することを証する書類を提出することとされています。そのため、有資格者を確保できるかどうかは、承継の認可を受けるうえで重要な確認事項になります。

※参考:国土交通省 関東運輸局「一般貸切旅客自動車運送事業 譲渡譲受認可申請について」

さらに、貸切バスの許可には更新制が設けられており、道路運送法第8条により5年ごとに更新を受けなければ許可の効力が失われます。株式譲渡で許可を維持する場合でも、直近の更新時期や更新の見通しは、買い手候補の確認の対象になりやすい論点です。

※参考:国土交通省 関東運輸局「バス事業を始めるには」

バス会社業界での企業売却方法は?3種類を紹介

バス会社業界のM&Aでは、売却対象(会社全体か、貸切部門など一部の事業か)、運転者・従業員との雇用関係、道路運送法上の許可と認可の手続き、自治体との補助・委託契約の扱いによって、適した手法が変わります。

代表的な手法は以下の3つです。

  • 株式譲渡
  • 会社分割
  • 事業譲渡

バス会社のM&Aでは、乗合・貸切それぞれの許可の維持・承継(事業の譲渡譲受や合併・分割における認可)、安全統括管理者・運行管理者・整備管理者の確保、貸切バスの許可の更新時期、自治体との運行委託契約や補助の交付条件の承継、営業所・車庫の権利関係、車両の所有・リースの別などが論点となるため、手法選択にあたっては、これらをどのように承継するかを慎重に検討する必要があります。

それぞれの手法について解説します。

株式譲渡とは?中小企業M&Aで最も選ばれる手法の仕組みと特徴

株式譲渡とは、企業の株主が保有する株式を他者に譲渡することで、経営権を移転するM&Aの手法のひとつです。中小企業のM&Aにおいては最も多く活用されており、後継者不在や事業承継を目的としたケースでよく採用されています。

株式譲渡のメリット

株式譲渡において、売却対象となるのはあくまで「株式」であり、会社そのものの法人格や契約関係、資産・負債はそのまま引き継がれます。

そのため、以下のようなメリットがあります。

  • 従業員や取引先との契約を維持したまま、スムーズな引き継ぎが可能
  • 許認可や契約の再取得が原則不要で、実務上の負担が少ない
  • 法人格が継続するため、営業活動を中断せずに承継できる

とくに、現経営者が引退を検討している場合でも、事業を止めることなくバトンタッチできるため、後継者問題への対応策の一つとなり得ます。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項による相手方同意や、業種許認可の変更届・再許可が必要となる場合があるため、事前確認が重要です。

株式譲渡の注意点・デメリット

一方で、株式とともに過去の負債や簿外債務(帳簿に載っていないリスク)も引き継がれるという側面もあるため、買い手候補は慎重に確認する傾向があります。

そのため、M&Aを進める際には、財務・法務・税務などに関するデューデリジェンス(詳細調査)を丁寧に実施し、リスクを洗い出すことが重要です。

会社分割とは?M&Aで活用される組織再編の手法と注意点

会社分割とは、企業が事業の一部を他の会社に移転することで、権利義務を承継させる法的な組織再編手続きです。M&Aにおいては、売却対象の事業を切り出してスムーズに移転させる手段として活用されています。

会社分割の主な種類

会社分割には、以下のような分類があります。

  • 新設分割:新たに設立した会社に事業を承継させる
  • 吸収分割:既存の他社に事業を承継させる

さらに、分割により得る対価の受け取り先によっても分類されます。

  • 分割型分割:対価を分割元会社の株主が受け取る
  • 分社型分割:対価を分割元会社自身が受け取る

会社分割のメリットと特徴

会社分割の特徴の一つは、契約・資産・負債などの権利義務を包括的に移転できる点です。これにより、個別契約ごとの承継手続きを省略でき、事業の引き継ぎが円滑に進められます。

ただし、バス事業の許可は、会社分割で事業を承継させる場合も道路運送法第36条第2項に基づく国土交通大臣の認可を受けなければ効力が生じないため、認可手続きのスケジュールをあらかじめ確認しておく必要があります。

また、分割によって整理された事業をその後に売却することで、M&Aの手続きも効率化されます。

税務上の注意点:適格分割と非適格分割の違い

会社分割には税務上の取り扱いに注意が必要です。「適格分割」であれば譲渡益の課税は繰り延べされますが、採用するスキームによっては「非適格分割」に該当します。

非適格分割では、資産が時価で評価され、譲渡益課税やみなし配当課税の対象となるため、税負担が発生します。

また、会社分割と株式譲渡をセットで行う場合、タイミングによって課税関係が変わる場合があるため、スキーム設計は専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。

事業譲渡とは?M&Aで活用される承継手法と税務上の注意点

事業譲渡は、企業が事業の一部または全部を、契約に基づいて他社へ売却するM&A手法のひとつです。

譲渡の対象となる資産・負債・契約関係を個別に指定して承継する点が特徴であり、柔軟性が高い一方で、手続きは煩雑になりやすいという側面もあります。

事業譲渡のメリット:簿外債務を回避しやすい

事業譲渡では、契約書に記載されたものだけが承継対象となるため、買い手企業にとっては、不要な債務やリスクを回避しやすくなります。

特に、簿外債務の存在が懸念されるケースでは、株式譲渡ではなく事業譲渡を希望する買い手候補が多い傾向にあります。

売り手側の税務上の扱い:事業譲渡益に課税

事業譲渡によって得た対価のうち、譲渡対象資産・負債の簿価純額との差額は「事業譲渡益」として、売り手側に法人税が課税されます。

また、事業譲渡には以下のような消費税に関する注意点もあります。

課税資産と非課税資産の両方をまとめて譲渡するため、資産ごとの課税・非課税を区分し課税対象資産部分の消費税を計算する必要があり、それぞれの対価を合理的に区分し、課税・非課税の計算を行う必要があります。

事業譲渡のデメリット:承継手続きが煩雑

個別承継であるため、以下のような実務負担が大きい点はデメリットと言えます。

  • すべての契約(従業員との雇用契約を含む)について、相手方の同意を得て個別に承継する必要がある
  • 許認可や届出が一から取得し直しとなる場合がある

バス事業の場合、事業譲渡では道路運送法第36条第1項に基づく国土交通大臣の認可を受けなければ譲渡の効力が生じないため、許可の扱いを含めて所管の運輸局に事前に確認しておく必要があります。

会社分割と事業譲渡の違いについては、下記で詳しく解説しています。

会社分割と事業譲渡の違い!メリットやデメリット、選択のポイントも解説

バス会社業界の売却の流れは?3つのステップを紹介

バス会社業界のM&Aを進める場合は、大きく3つのステップに分けて進められます。

  1. M&Aの準備と助言会社の選定
  2. 買い手候補先企業との接触、意向表明受領
  3. 詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

それぞれの段階で必要となる準備や手続きが異なるため、流れを把握しておきましょう。

Step1.M&Aの準備と助言会社の選定

はじめに、売却目的と希望条件を整理したうえで、M&AアドバイザーやFAなどの助言会社を選定します。

この段階で重要なのは、想定される売却価格だけでなく、どのような買い手候補に、運転者・従業員の体制、路線と自治体との関係、車両と営業所をどのように承継したいのかを明確にしておくことです。

バス会社の場合、買い手候補の評価や取引条件に影響し得る論点として、乗合・貸切それぞれの許可の内容と営業区域、貸切バスの許可の更新時期、安全統括管理者・運行管理者・整備管理者の選任状況と資格者の人数、運転者の在籍人数・年齢構成・大型二種免許の保有状況、労働時間の管理状況と改善基準告示への対応、車両の一覧(台数、車種、年式、所有・リースの別)と更新計画、営業所・車庫・整備工場の権利関係、運行している路線と系統別の収支、自治体からの補助金や運行委託契約の内容と期間、貸切バスの主要顧客(旅行会社、学校、企業送迎など)と稼働率、事故・行政処分の履歴などが挙げられます。

これらを事前に棚卸しし、資料として説明できる状態に整えておくことで、後工程での論点整理や条件交渉を進めやすくなる場合があります。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、助言会社を通じて買い手候補へ打診を行います。初期段階では概要資料を提示し、関心を示した企業と秘密保持契約を締結したうえで、財務・事業などに関する詳細情報を段階的に開示します。

買い手候補からは、譲渡価格のレンジ、取引方法、引き継ぎ条件、売却後の運営方針などをまとめた意向表明書が提出されます。

売り手は、提示金額だけでなく、運転者・従業員の処遇、路線の維持方針、自治体や地域との関係の継続方針なども含めて比較し、基本合意に進むかを判断します。路線の維持は地域の関心事でもあるため、買い手候補の運営方針は価格とあわせて確認したい判断材料の一つです。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

基本合意後は、買い手候補による詳細調査が行われます。

バス会社では、財務・税務・法務・労務・ビジネス面の確認に加えて、許可の維持と譲渡譲受などの認可手続きの要否、有資格者の確保と定着の見込み、運転者の労働時間管理と未払い残業の有無、事故・行政処分の履歴と安全管理体制、車両の状態と更新に要する費用、自治体の補助・委託契約の継続性と承継時の取り扱い、系統別収支の実態などが重視されやすい点が特徴です。

調査結果を踏まえて、譲渡価格、表明保証、補償条項、クロージング条件、認可の取得や自治体の了解を前提とする条件などを調整し、最終契約を締結します。

その後、対価の決済と引き渡しを行うクロージングをもって、取引が完了します。

M&Aの流れについてより詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

M&Aのプロセス

バス会社業界の売却の相場は?価値算定方法を解説

バス会社業界のM&Aにおける売却価格は、「〇〇円が相場」と一律に決まるものではありません。

実務では、運転者と車両の体制、許可と営業区域、路線や受託契約による収入の安定性、貸切の顧客基盤、収益力、負債、買い手候補の評価方針などを踏まえ、最終的には売り手と買い手候補の交渉によって価格が決まります。

バス会社は、運転者と車両という供給力の範囲でしか運行できない業態であり、運転者の不足が業界全体の制約になっているため、「何人の運転者を安定して確保できているか」と「自治体の補助・受託や継続的な貸切契約による収入がどれだけ見込めるか」が買い手候補の評価上重視されやすい点が特徴です。同規模の売上であっても、運転者の年齢構成や定着率、補助・委託契約の期間、車両の更新時期、事故歴の有無によって、買い手候補の評価に差が出る可能性があります。

特に、若手を含む運転者を確保できている事業者、自治体から長期の運行委託を受けている事業者、安全管理体制を整え事故の少ない事業者は、財務数値に加えて、人材の体制、収入の継続性、安全面の実績などが評価上考慮される場合があります。

こうした理由から、バス会社のM&Aでは、まず企業価値を算定し、そのうえで負債や現金などを考慮しながら、株式価値を算定するのが一般的です。

以下では、その基本的な考え方について解説します。

1.企業価値を算定する

バス会社業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらい点が難点です。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

  • 類似会社比較法
  • 類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値 (EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかによって、算定結果に差が出る場合があります。

2.株式価値を算定する

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。

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バス会社業界で企業を売却する3つのメリット

バス会社業界でM&Aを活用するメリットは、経営者個人の利益にとどまりません。

適切な承継は、運転者・従業員の雇用や、地域の移動手段の維持につながる可能性があります。

  • 運転者・従業員の雇用と運行ノウハウを維持しやすくなる
  • 経営者は売却対価を得られる可能性がある
  • 地域の移動手段を維持しやすくなる

ここでは、売り手にとって特に重要な3つのメリットを解説します。

運転者・従業員の雇用と運行ノウハウを維持しやすくなる

バス会社は、運転者に加えて、運行管理者、整備士、営業・事務の担当者によって支えられています。

廃業を選択した場合、従業員の雇用の継続が難しくなるほか、路線ごとの道路事情や乗客の特性を踏まえた運行のノウハウ、車両の整備記録の蓄積が失われる可能性があります。運転者不足が課題とされる業界では、熟練した運転者が地域から失われることが、地域交通の維持に影響する可能性があります。

M&Aにより事業が承継されれば、運転者・従業員の雇用を維持しながら運行を継続しやすくなる場合があります。売り手にとっては、人材や運行ノウハウを次の運営体制へ承継しやすくなる点がメリットです。

運行管理や自治体との調整が特定の人材に依存している場合、当該人材の継続関与の可否は、買い手候補の評価や譲渡後の運営に影響する可能性があります。

中核人材の処遇については、下記もあわせてご覧ください。

M&Aでキーマンの処遇はどうなる?経営者と従業員を守る5つのポイント

経営者は売却対価を得られる可能性がある

M&Aによる売却は、これまで築いてきた許可と営業区域、運転者と車両の体制、自治体や顧客との関係を含む事業価値を、譲渡対価として回収する手段の一つです。

売却対価を得られた場合、引退後の生活資金、資産承継、次の事業への投資などに活用できる可能性があります。

後継者不在のまま廃業する場合、路線の休廃止の手続き、自治体との委託契約の整理、貸切の予約への対応、車両の売却・処分、営業所や車庫の原状回復、従業員との契約整理などが必要になる可能性があります。また、取得に時間を要する許可や、自治体との信頼関係が事業として評価されないまま失われる場合があります。

M&Aでは、買い手候補は一般的には事業の継続性を前提に価値を評価するため、経営者は計画的に出口を設計しやすくなります。

地域の移動手段を維持しやすくなる

路線バスやコミュニティバスは、通学・通院・買い物など、自家用車を使えない住民にとって重要な移動手段の一つです。

バス会社の廃業は、路線の休廃止を通じて、高齢者や学生の移動手段の喪失につながる可能性があります。代わりの事業者を見つけることも、運転者不足のなかでは容易ではない場合があります。

M&Aによって承継されることで、運行体制を維持しながら地域の移動手段を確保しやすくなるため、住民や自治体への影響を抑えながら事業を引き継ぎやすくなる点は、売り手にとってメリットの一つです。

バス会社業界で企業を売却する際の3つのポイント

バス会社業界でM&Aを円滑に進めるには、売上規模だけでなく、買い手候補が重視する論点を整理しておく必要があります。

買い手候補は、許可と有資格者の体制、運転者の確保と労務管理、自治体の補助・委託の継続性を確認する傾向があります。

  • 許可・有資格者・運転者・車両・自治体契約を棚卸しする
  • 運行管理と自治体対応の属人性を下げる
  • 信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する

ここでは、バス会社の売却を検討する際に、特に重要な3つのポイントを解説します。

許可・有資格者・運転者・車両・自治体契約を棚卸しする

バス会社の買い手候補による評価は、財務数値に加えて、許可の状況、有資格者と運転者の体制、車両の状態、自治体や顧客との契約などに影響を受ける可能性があります。

買い手候補は、これらが譲渡後も維持・活用できるかを確認する傾向があります。

そのため、売却前に以下の点を棚卸しし、説明できる状態にしておくことが重要です。

  • 乗合・貸切それぞれの許可の内容と営業区域、貸切バスの許可の更新時期と直近の更新の状況
  • 安全統括管理者・運行管理者・整備管理者の選任状況、資格者の人数と後任候補
  • 運転者の在籍人数・年齢構成・大型二種免許の保有状況、採用と定着の状況、労働時間の記録と改善基準告示への対応
  • 車両の一覧(台数、車種、年式、走行距離、所有・リースの別)と更新計画、整備記録、営業所・車庫・整備工場の権利関係
  • 運行路線と系統別の収支、自治体からの補助金・運行委託契約の内容と期間、交付条件や契約上の承継の扱い
  • 貸切バスの主要顧客と稼働率、事故・行政処分の履歴、安全管理規程と安全への取り組みの記録

これらの整理が不十分だと、DDを経て価格見直し、追加条件の設定、交渉停止などにつながる可能性があります。

売却前の準備の進め方については、下記で詳しく解説しています。

M&Aの磨き上げとは?売却価格を高める5つの領域と進め方を解説

運行管理と自治体対応の属人性を下げる

バス会社で買い手候補の評価に影響しやすい要因の一つが、経営者や特定の従業員への過度な依存です。

経営者本人が運行管理者や安全統括管理者を兼ね、自治体との協議や貸切の営業まで担っている場合、買い手候補から、経営者が退いた時点で許可の要件や受託の継続に支障が生じかねない事業と判断される可能性があります。

属人性による懸念を抑えるためには、以下のような取り組みが重要です。

  • 運行管理者・整備管理者などの有資格者を複数名確保し、後任候補を育成する
  • 運行計画・点呼・乗務記録などの運行管理業務の手順化と記録の整備
  • 自治体や旅行会社との協議経緯・契約情報の組織的な管理と窓口の複線化
  • 若手運転者の採用と育成の仕組みづくり、二種免許の取得支援

属人性を下げることで、人員交代後も許可要件と運行を維持しやすい体制として評価される可能性があります。また、買い手候補が検討しやすくなる場合もあります。

信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する

バス会社のM&Aでは、道路運送法上の許可と認可の手続き、有資格者の確保、貸切バスの許可の更新、自治体の補助・委託契約の承継、運転者の労務の整理など、業種特有の論点が生じる場合があります。

準備やスキーム設計が不十分なまま進めると、譲渡条件の見直し、クロージング条件の追加、売却後の紛争などにつながる可能性があります。

そのため、以下のような専門家の支援を受けることが重要です。

  • 売り手側の立場で支援するFA・M&Aアドバイザー
  • 税務は税理士、契約・責任分担は弁護士、会計・財務DDは公認会計士、労務は社会保険労務士、運送事業の許認可手続きは行政書士などの専門家

売り手側のFAを活用することで、価格交渉や条件調整において、売り手の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすくなります。

仲介とFAの違いについては、下記で詳しく解説しています。

M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説

感情に左右された場当たり的な判断を避けるという観点でも、第三者による専門的な視点を取り入れることが望ましいです。

バス会社業界での企業売却にかかる税金とは?

企業を売却する際には、売却益に対して税金が発生します。この税金の仕組みは、「個人オーナーが売却する場合」と「法人が株式を譲渡する場合」で異なるため、正しく理解しておくことが重要です。個人・法人別にわかりやすく解説します。

会社売却にかかる税金の計算や手取りを増やす対策については、下記で詳しく解説しています。

会社売却後にかかる税金は?計算方法や確定申告、税引後手取りを増やす対策を解説

個人オーナーの場合

個人が自社株などの株式を譲渡し、譲渡益(売却益)が発生した場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。

課税の仕組み

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

この譲渡所得には、以下の税が課せられます。

  • 所得税(復興特別所得税含む)
  • 住民税

給与所得などとは分離して課税されるため、所得の合算は不要ですが、確定申告が必要です。

ただし、ミニマムタックスに該当する場合は給与所得等の他の所得と合算して算出する必要があるため、適切に節税するためには、事前に税理士などの専門家へ相談することが重要です。

法人の場合

法人が保有する株式を譲渡した場合、その売却益は法人の「益金(収益)」として扱われ、他の事業収益と合算されて法人税等が課税されます。

法人の場合の税務処理

  • 譲渡益は法人所得として計上され、通常の法人税率で課税
  • 譲渡損失が出た場合、他の所得と損益通算が可能
  • 所得と損失の調整により、税負担が変わる場合がある

評価差額にも注意

帳簿価額と時価の差(含み益)がある場合、譲渡時に課税対象となる可能性があります。

まとめ

バス会社業界は、地域の移動手段を支える公共性の高い事業領域である一方で、運転者の不足と高齢化、労働時間規制の強化、利用者の減少による路線収支の悪化、燃料費と車両価格の上昇、自治体の補助や委託への依存、経営者の高齢化と後継者不足など、複数の経営課題を抱えています。

バス事業の承継には、許可と認可の手続きに加えて、安全統括管理者や運行管理者といった有資格者の確保が重要です。経営者自身がその役割を担っている場合、準備が遅れると、選べる出口が限られる可能性があります。そのため、中小のバス会社にとって、M&Aは事業継続や従業員・地域への影響を踏まえた選択肢の一つになり得ます。

売却を円滑に進めるためには、許可・有資格者・運転者・車両・自治体契約の棚卸しに加えて、有資格者の複数名体制の確保や運行管理の手順化を含めた準備を、M&Aアドバイザー、弁護士、税理士、社会保険労務士、行政書士などの専門家に確認しながら早期に進めることが望ましいです。

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バス会社業界のM&Aでは、買い手目線で条件調整が進みやすい仲介型の支援の場合、価格や引き継ぎ条件が売り手に不利になるケースもあります。そのため、誰の利益を最優先に交渉するのかを明確にした支援体制が重要です。

また、売却前に押さえておきたい注意点を、資料でも確認できます。

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無料相談が可能です。実際にどの程度の価格で売却できるのか、また、どのようにすればより高く売却できるのかを、ぜひご確認ください。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ )

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売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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