M&Aで価格以外に比較すべき条件とは?手取りと売却後を左右する11の項目
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- M&Aの進め方
公開日:2026.10.27
2026.10.27
更新日:2026.10.27
2026.10.27
M&Aでは、提示額が同じでも、支払の方法や経営者保証、従業員の処遇などの条件で、手取りと売却後の安心が大きく変わります。比べるべき11の条件、比較の4つの手順、買い手候補を選ぶときの注意点を解説します。

2社から意向表明書が届いた。提示額はA社のほうが高いが、B社は従業員の雇用を守ると明言している。どちらを選べばよいのか。M&Aで買い手候補を選ぶとき、提示額だけで比べると、売却の後に思わぬ不利益を被ることがあります。支払の方法や経営者保証の扱い、従業員の処遇などの条件によって、手元に残る金額と売却後の安心は大きく変わるためです。本記事では、手取りを左右する条件、売却後の安心を左右する条件、取引が最後まで進むかを左右する条件の、合わせて11の項目を整理します。あわせて、条件を比較する手順と、買い手を選ぶときの注意点を示します。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。 また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。 まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
M&Aで価格以外に比べる条件とは
M&Aで価格以外に比べる条件とは、買い手が提示する金額のほかに、取引の中身を決める条件のことです。支払の方法、経営者保証の扱い、従業員の処遇、取引の進め方などが含まれます。
会社を売る経営者にとって、価格以外の条件は大きな関心事です。中小企業庁のPMIハンドブックが紹介する2021年版中小企業白書のデータによると、M&Aで売り手が重視することは、従業員の雇用の維持が82.7%で首位となり、売却価額の48.9%、会社や事業のさらなる発展の47.6%を上回っています。
本記事では、比べるべき条件を次のように分けて整理します。
| 分類 | 主な項目 |
|---|---|
| 手取りを左右する条件 | 支払の方法、退職慰労金の割合、補償の上限 |
| 売却後の安心を左右する条件 | 経営者保証、雇用、引継ぎ、競業避止、社名や拠点 |
| 取引が最後まで進むかを左右する条件 | 調査の範囲、前提条件、買い手の資金 |
買い手候補を選ぶ前に、自社にとって大切な条件がどれかを決めておきます。
提示額が同じでも手取りが変わる3つの条件
提示額が同じでも、条件によって売り手の手元に残る金額は変わります。提示額は、手取りを決める要素の一つにすぎません。手取りを左右する主な条件は以下の3つです。
- 譲渡対価の支払の時期と方法
- 役員退職慰労金とアーンアウトの割合
- 価格調整と表明保証の補償の上限
それぞれを順に解説します。
譲渡対価の支払の時期と方法
譲渡の代金を、いつ、どのように受け取るかは、手取りを大きく左右します。 クロージングの時点で一括で受け取るのか、分割や後払いで受け取るのかによって、回収できる確実さが異なるためです。
中小企業庁は2024年8月の注意喚起で、譲渡対価の分割払いや役員退職慰労金の後払いが契約の条件になっていたものの、履行されなかった事例を挙げています。株式を引き渡した後では、売り手が支払いを強制する手段は限られます。
代金はクロージングの時点で一括で受け取ることを原則に、各社の支払の条件を比べます。
分割払いの回収リスクについては、下記で詳しく解説しています。
M&Aの分割払いは売り手に未回収のリスクがある?代金を回収するための5つの備え
役員退職慰労金とアーンアウトの割合
提示額のうち、役員退職慰労金とアーンアウトが占める割合によっても、手取りは変わります。 受け取り方によって、税金のかかり方と、受け取れる確実さが異なるためです。
役員退職慰労金は、役員としての勤続年数が5年を超える場合、退職所得控除を差し引いた額の2分の1が課税の対象になるなど、株式の譲渡益とは税金の計算が異なります。一方で、売却後の業績に応じて代金を支払うアーンアウトは、目標に届かなければ受け取れません。
アーンアウトの部分は、受け取れない可能性を考えて評価します。退職金と株式の代金の組み合わせごとに、税引き後の手取りを試算して比べます。
役員退職慰労金とアーンアウトについては、下記もあわせてご覧ください。
役員退職慰労金はM&Aでいくらまで?功績倍率法と損金算入の3要件を解説
アーンアウト条項とは?税務・会計処理や契約上の注意点を売り手目線で解説
価格調整と表明保証の補償の上限
クロージングの後の価格調整の方法と、表明保証の補償の上限も、手取りに影響します。 売却の後に代金の一部を返すことになれば、実際の手取りは減るためです。
補償の上限が売却代金の全額に近い買い手と、一定の割合に抑えた買い手では、売り手が負うリスクの大きさが大きく異なります。補償を求められる期間の長さも、同じように比べる必要があります。
価格調整の計算方法と、補償の上限・期間を、買い手ごとに一覧にします。上限や期間が示されていない場合は、意向表明の段階で確認します。
表明保証の補償範囲については、下記で解説しています。
売却後の安心を左右する5つの条件
売却の後も、経営者や従業員の生活は続きます。売却後の安心を左右する主な条件は以下の5つです。
- 経営者保証の解除の方法と時期
- 従業員の雇用と待遇の維持
- 経営者の引継ぎ期間と処遇
- 競業避止義務の範囲と期間
- 社名や拠点、取引先の維持
それぞれを順に解説します。
経営者保証の解除の方法と時期
会社の借入金に対する経営者の個人保証を、いつ、どのように外すかを確認します。 中小企業庁の資料は、M&Aの成立と同時に経営者保証を解除することを、何より優先すべき対応としています。
買い手が借入金を借り換えるのか、金融機関に保証の変更を求めるのかで、解除の確実さが変わります。
解除の方法と時期が明記された買い手を優先します。成立後に外すとする買い手には、解除できる根拠を確認します。
経営者保証の解除の方法は、下記で詳しく解説しています。
M&Aにおける経営者保証とは?解除方法やガイドライン、トラブル対策も解説
従業員の雇用と待遇の維持
従業員の雇用と、給与などの待遇を維持するかを確認します。 多くの経営者が価格以上に重視する条件です。
「雇用を守る」という言葉だけでなく、維持する期間と、待遇の範囲が示されているかが大切です。
各社の意向表明書で、雇用と待遇についての記載を並べて比べます。最終契約で、どこまでを約束として書き込めるかも確認します。
経営者の引継ぎ期間と処遇
売却の後、経営者がどのくらいの期間、どの立場で会社に残るかを確認します。 引継ぎの期間が長すぎると、引退の予定が遅れます。
顧問や役員として残る場合は、報酬と勤務の条件も比べる必要があります。
引継ぎの期間、役割、報酬を、買い手ごとに一覧にします。自分の引退後の計画に合う条件かを確かめます。
競業避止義務の範囲と期間
売却の後に、同じ事業を行わない義務の範囲と期間を確認します。 範囲が広く期間が長いほど、売却後の仕事の選択肢は狭まります。
会社法第21条第1項は、事業譲渡について、特約がなければ同じ市町村と隣接する市町村で20年間、同じ事業を禁じています。
売却後に関わりたい仕事がある場合は、該当する分野を除外できるかを各社に確認します。
競業避止義務の定め方は、下記で解説しています。
社名や拠点、取引先の維持
会社の名前、事業所の場所、主要な取引先との取引を続けるかを確認します。 地域に根づいた会社ほど、社名や拠点の維持は従業員や取引先の安心につながります。
統合を急ぐ買い手は、社名の変更や拠点の集約を早い段階で進めることがあります。
各社の統合の方針を、意向表明の段階で聞いておきます。
取引が最後まで進むかを左右する3つの条件
条件が良くても、取引が途中で止まれば意味がありません。途中で破談になれば、時間と情報だけが失われます。取引の確実さを左右する主な条件は以下の3つです。
- デューデリジェンスの範囲と期間
- クロージングの前提条件と解除の事由
- 買い手の資金の裏付け
それぞれを順に解説します。
デューデリジェンスの範囲と期間
買い手が行う調査の範囲と期間を確認します。 調査が長引くほど、情報が漏れるおそれが高まり、取引が中止になる可能性も増えます。
調査の範囲が広すぎると、社内の負担も大きくなります。
調査の期間と対象を、意向表明書や基本合意書に明記するよう求めます。期間を区切っている買い手ほど、取引を進める意思が強いと考えられます。
意向表明書とデューデリジェンスについては、下記もあわせてご覧ください。
M&Aの意向表明書(LOI)とは?基本合意書との違いや記載内容、確認すべきポイントを紹介
M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは?目的や流れ、売り手側のポイントを解説
クロージングの前提条件と解除の事由
クロージングの前提となる条件と、契約を解除できる事由を確認します。 前提条件が多いほど、買い手が取引から離れる理由も増えます。
買い手の資金調達が完了することを前提条件にしている場合は、資金が集まらなければ取引は止まります。
前提条件と解除の事由を買い手ごとに並べ、売り手が自ら満たせない条件がないかを確認します。
買い手の資金の裏付け
買い手が代金を支払える資金を持っているかを確認します。 中小企業庁の資料は、仲介会社やFAが、買い手の預貯金の額や、借入をする場合の金融機関との調整の状況などを確認するよう求めています。
資金の裏付けがない買い手は、提示額が高くても、支払われない危険があります。
買い手の財務諸表や、金融機関の融資の証明を確認します。
価格以外の条件を比較する4つの手順
条件の数が多いと、どの買い手が良いかを判断しにくくなります。条件を比較する手順は以下の4つです。
- 譲れない条件と譲れる条件に順位をつける
- 意向表明書の記載をそろえて比較表を作る
- 条件をお金に置き換えて手取りで比べる
- 口頭の約束を最終契約の条文に落とし込む
それぞれを順に解説します。
譲れない条件と譲れる条件に順位をつける
最初に、自分にとって譲れない条件と、譲ってもよい条件に順位をつけます。 すべての条件で一番良い買い手は、まず見つからないためです。
例えば、経営者保証の解除と従業員の雇用は譲れないが、社名の維持は譲ってもよい、というように整理します。
順位を決めずに比べると、提示額の高さに引きずられやすくなります。
家族や役員の意見も聞きながら、譲れない条件を3つ程度に絞ります。絞った条件は、FAにも共有しておきます。
意向表明書の記載をそろえて比較表を作る
次に、各社の意向表明書の記載をそろえ、比較表を作ります。 買い手ごとに書き方が異なるため、受け取ったままでは比べにくいためです。
| 比べる項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 提示額 | 3億円 | 2億8,000万円 |
| 支払の方法 | 2億円は一括、1億円は2年の分割 | 全額を一括 |
| 経営者保証 | 成立後に解除を目指す | 借換えで成立と同時に解除 |
| 従業員の雇用 | 記載なし | 3年間の維持を明記 |
記載がない項目は、空欄のままにせず、買い手に確認して埋めます。
条件をお金に置き換えて手取りで比べる
比較表の条件を、できる限りお金に置き換え、手取りの額で比べます。 提示額の差だけでは、条件の違いを正しく比べられないためです。
例えば、分割で受け取る代金は、支払われない可能性を考えて割り引いて評価します。退職金と株式の代金の組み合わせが違えば、税引き後の手取りも変わります。
雇用の維持など、お金に置き換えにくい条件は、手取りの差と比べて重みを判断します。
FAに、買い手ごとの税引き後の手取りを試算してもらいます。
口頭の約束を最終契約の条文に落とし込む
最後に、交渉の中で買い手が口頭で約束したことを、最終契約の条文に落とし込みます。 契約書に書かれていない約束は、売却の後に守られる保証がないためです。
オーナーズ株式会社がM&Aを経験した経営者に行った調査では、売却の後に後悔した点として、契約書の内容をもっと丁寧に確認し、十分に交渉すればよかったという回答が34.0%で首位でした。
雇用の維持や保証の解除などの約束を一覧にし、契約書のどの条文に反映されたかを確認します。
最終契約で確認すべき項目は、弁護士監修のチェックリストにまとめています。
【無料資料】最終契約前に弁護士と共に確認するべき契約書の項目
価格以外の条件で買い手候補を選ぶときの3つの注意点
価格以外の条件で買い手候補を選ぶ際にも、落とし穴があります。注意したい点は以下の3つです。
- 高い提示額の裏で不利な条件が付いていないかを確かめる
- 条件を増やしすぎると買い手の候補が減る
- 仲介会社が買い手側の事情を優先していないかを確かめる
それぞれを順に解説します。
高い提示額の裏で不利な条件が付いていないかを確かめる
提示額が際立って高い買い手候補は、高さの裏に不利な条件が付いていないかを確かめます。 分割払いやアーンアウト、上限のない補償などで、実質の金額が下がることがあるためです。
意向表明の後の調査で、さまざまな理由をつけて減額を求める買い手もいます。
条件を増やしすぎると買い手の候補が減る
売り手が求める条件を増やしすぎると、応じられる買い手が減ります。 買い手にも、譲れない事情があるためです。
例えば、雇用の永続的な維持や、すべての拠点の維持を求めると、統合の効果を見込む買い手は離れていきます。
譲れない条件に絞って求め、ほかの条件は交渉の余地として残します。求める条件の数は、FAと相談して決めます。
仲介会社が買い手側の事情を優先していないかを確かめる
仲介会社が、買い手側の事情を優先して条件をまとめていないかを確かめます。 仲介会社は、売り手と買い手の双方から報酬を得る立場にあるためです。
中小企業庁のガイドラインは、2024年8月の第3版で、利益相反に関する禁止事項を具体化しました。
条件の説明に疑問があれば、売り手の側に立つ専門家の意見を聞くことをお勧めします。
仲介とFAの違いについては、下記で詳しく解説しています。
M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説
M&Aの価格以外の条件に関するよくある質問
価格以外の条件について、経営者から寄せられることの多い質問を3つ取り上げます。提示額が一番高い買い手を選ばない場合、意向表明書の条件の変化、提示額の決まり方の3点です。
提示額が一番高い買い手を選ばないのは損ですか?
必ずしも損ではありません。支払の方法や補償の条件によっては、提示額の低い買い手のほうが、税引き後の手取りが多くなることがあります。経営者保証の解除や従業員の雇用など、お金に換えられない価値も含めて判断します。
意向表明書の条件はあとから変わりますか?
変わることがあります。意向表明書は、一般に法的な拘束力を持たない書面であるためです。デューデリジェンスの結果を理由に、価格や条件の見直しを求められることもあります。条件が変わった場合は、変更の理由を具体的に確認します。
提示額そのものはどう決まりますか?
株価算定には様々な方法があり、また、買い手によっても算定方法は異なるため一概には言えませんが、中小企業庁のガイドラインによると、中小企業のM&Aでは、会社の資産と負債を時価で評価する時価純資産法などで算定した価値をもとに交渉するケースが多いとされています。
まとめ
M&Aでは、提示額が同じでも、価格以外の条件によって手取りと売却後の安心が大きく変わります。買い手候補は、価格と条件を合わせて比べて選ぶことが大切です。
要点は以下のとおりです。
- 支払の方法、退職金とアーンアウトの割合、補償の上限が手取りを左右する
- 経営者保証、雇用、引継ぎ、競業避止、社名や拠点が売却後の安心を左右する
- 調査の範囲、前提条件、買い手の資金が取引の確実さを左右する
- 譲れない条件に順位をつけ、比較表を作り、手取りで比べる
- 口頭の約束は、最終契約の条文に落とし込む
提示額の高さだけで買い手を決めると、売却の後に後悔することがあります。条件を一つずつ比べ、売り手の立場で交渉してくれる専門家と判断してください。
売却前に押さえておきたい注意点は、資料でも確認できます。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。 また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。 まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
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