個人M&Aとは?個人の買い手に事業を売る売り手の注意点3つを解説
公開日:2026.07.30
2026.07.30
更新日:2026.07.30
2026.07.30
後継者がいない会社を譲りたいと考える売り手のもとに、個人の買い手候補から打診が届くことがあります。個人M&Aは、個人が買い手候補として会社や事業を引き継ぐM&Aで、副業や独立を目的に事業を買う個人も見られます。
ただし、個人の買い手候補に売る場合、相手の資金力や経営の経験、経営者保証の引き継ぎなど、売り手が確認すべき点があります。
本記事では、個人M&Aが増えている背景、個人が事業を買う理由、個人の買い手候補に売る売り手が確認すべきこと、進め方と注意点まで解説します。個人への売却を検討している売り手経営者の方に、判断の材料になる内容です。
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個人M&Aとは
個人M&Aとは、個人が買い手候補として、会社や事業を引き継ぐM&Aです。会社同士が行うM&Aと異なり、買い手が個人である点が特徴です。後継者がいない会社にとっては、社外の第三者へ事業を承継する相手の一つとして、個人の買い手候補が挙げられます。
中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、後継者不在の企業が第三者へ承継する方法が示されており、その相手には個人も含まれます。
売り手から見ると、これまで会社が相手だと考えていたM&Aで、個人が買い手候補になる場合があります。副業や独立を目的に、小規模な事業を引き継ぎたいと考える個人も見られます。買い手が個人である場合、会社が買い手の場合とは異なる確認点があるため、相手の見極めが重要になります。
個人M&Aが増えている背景
個人M&Aが取り上げられる機会が増えている背景には、いくつかの要因があります。主に次の3つを確認します。
- 後継者不足で会社を譲りたい売り手が増えている
- マッチングサイトの普及で個人が案件を探しやすくなった
- 会社員の独立志向が高まっている
それぞれを順に解説します。
後継者不足で会社を譲りたい売り手が増えている
背景の一つは、後継者不足で会社を譲りたい売り手が増えていることです。親族や社内に後継者がいない場合、社外の第三者へ事業を承継する方法が検討されます。
中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、後継者不在の企業が第三者へ承継する動きが示されています。譲りたい売り手が増えることで、個人の買い手候補が引き継ぐ案件も見られるようになっています。
マッチングサイトの普及で個人が案件を探しやすくなった
マッチングサイトの普及で、個人が案件を探しやすくなったことも背景です。インターネット上のマッチングサービスに、小規模な事業の案件が掲載されるようになり、個人が買い手候補として案件を検索できるようになっています。
これにより、これまで会社同士が中心だったM&Aに、個人が参加しやすくなっています。
会社員の独立志向が高まっている
会社員の独立志向が高まっていることも、背景の一つです。終身雇用を前提としない働き方が取り上げられる機会が増え、会社員が独立や副業の手段として事業を買うケースが見られます。ゼロから起業するのではなく、既存の事業を引き継いで始めたいと考える個人もいます。
個人が買い手として事業を買う理由
個人が買い手候補として事業を買うのには、いくつかの理由があります。売り手として相手の動機を理解する手がかりになります。主に次の3つを確認します。
- ゼロからの起業より低いリスクで始められる
- 既存の顧客や従業員をそのまま引き継げる
- 副業や独立の手段として選ばれている
それぞれを順に解説します。
ゼロからの起業より低いリスクで始められる
個人が事業を買う理由の一つは、ゼロからの起業より低いリスクで始められることです。すでに顧客や売上のある事業を引き継ぐため、事業を一から立ち上げる場合に比べて、軌道に乗せるまでの負担を抑えやすくなります。
買い手候補にとっては、実績のある事業を引き継ぐことで、始めやすさを感じる面があります。
売り手として、買い手候補が実績のある事業を求めている点を理解しておくと、自社の強みを伝えやすくなります。
既存の顧客や従業員をそのまま引き継げる
既存の顧客や従業員をそのまま引き継げることも、個人が事業を買う理由です。事業を引き継ぐことで、これまでの顧客との取引や、働いている従業員、蓄積されたノウハウを活用できます。
買い手候補にとっては、事業の基盤を引き継げる点が、事業を買う動機になります。
副業や独立の手段として選ばれている
副業や独立の手段として選ばれていることも、個人が事業を買う理由の一つです。
会社員が本業を持ちながら副業として事業を買うケースや、独立して事業を営むために買うケースが見られます。買い手候補の目的によって、承継後の関わり方や、事業にかけられる時間が異なります。
個人の買い手候補に事業を売る売り手が確認すべきこと
個人の買い手候補に事業を売る場合、会社が買い手の場合とは異なる確認点があります。主に次の4つを確認します。
- 買い手候補の資金力と資金調達の裏付けを見極める
- 経営者保証を引き継げるかを見極める
- 経営の経験と承継後の運営力を見極める
- 従業員や取引先が受け入れられるかを見極める
それぞれを順に解説します。
買い手候補の資金力と資金調達の裏付けを見極める
個人の買い手候補に売る際は、まず資金力と資金調達の裏付けを見極めます。個人は自己資金に加えて融資を利用することが多く、支払い能力の裏付けを確認する必要があるためです。
具体的には、自己資金の額、融資の内諾の有無、資金証明、融資の条件などを確認します。買い手候補が資金を用意できないと、交渉が進んでも契約に至らない場合があります。適切な範囲で、相手の資金の状況を確認しておきます。
経営者保証を引き継げるかを見極める
個人の買い手候補が、経営者保証を引き継げるかを見極めることも重要です。会社の借入に経営者個人の連帯保証が付いている場合、その扱いが承継の論点になるためです。
経営者個人による連帯保証は、会社自体の債務とは分けて考えるべき論点です。個人の買い手候補が保証を引き受けられない場合、売り手の保証が外れないまま残ることがあります。金融機関との間で、保証の解除や差し替えができるかを確認します。
M&Aで個人保証を解除する方法については、以下の記事でも解説しています。
M&Aで個人保証を解除するには?3つの判断要素や解除の流れ、最新動向を解説
経営の経験と承継後の運営力を見極める
個人の買い手候補の経営の経験と、承継後の運営力を見極めることも大切です。買い手候補の経営の経験が、承継後の事業の継続に影響するためです。
会社員として働いてきた個人が買い手候補の場合、経営の判断や従業員の管理の経験が十分でないことがあります。承継後に事業を運営できるかを、これまでの経歴や事業への理解から見極めます。
売り手として、こうした論点を押さえておくことで、承継後の運営を任せられる相手かを判断しやすくなります。
買い手候補の類型ごとの傾向については、以下の記事でも解説しています。
【事業売却の予備知識】「買い手の類型」からわかる”提示される売却条件”の傾向
従業員や取引先が受け入れられるかを見極める
従業員や取引先が、個人の買い手候補を受け入れられるかを見極めることも重要です。承継後も、従業員の雇用や取引先との関係が続くためです。
会社ではなく個人が事業を引き継ぐことに、従業員や取引先が不安を抱く場合があります。買い手候補の人柄や事業への考え方が、従業員や取引先に受け入れられるかを見極めます。適切なタイミングで承継の方針を伝えることで、不安の軽減につながる場合があります。
売り手は、従業員や取引先が承継を受け入れられるかを、相手の見極めとあわせて確認しておく必要があります。
個人M&Aの主な手法
個人M&Aでは、事業をどう引き継ぐかによって手法が異なります。主に次の2つの手法を確認します。
- 事業単位で譲渡する事業譲渡
- 会社ごと引き継ぐ株式譲渡
それぞれを順に解説します。
事業単位で譲渡する事業譲渡
事業譲渡は、事業単位で譲渡する手法です。会社が持つ事業のうち、譲渡する範囲を決めて、資産や契約を個別に移します。個人M&Aでは、小規模な事業を引き継ぐ場合に、事業譲渡が用いられることがあります。
買い手候補は、必要な事業だけを引き継げる一方、取引先との契約や許認可は個別に移す手続きが必要になります。許認可のなかには、個別に再取得が必要になるものもあります。
小規模なM&Aの進め方については、以下の記事でも解説しています。
会社ごと引き継ぐ株式譲渡
株式譲渡は、会社ごと引き継ぐ手法です。売り手が保有する株式を買い手候補へ譲渡し、会社の経営権を移します。
対象会社の法人格は変わらないため、契約や許認可は原則として会社に残り、そのまま継続します。ただし、契約によってはチェンジオブコントロール条項により、承継の際に相手方への通知や承諾が必要になる場合があります。個人事業主が売り手の場合は、株式がないため事業譲渡で承継します。
個人M&Aの進め方
個人M&Aは、いくつかの段階を経て進めます。相談から引き継ぎまでの流れを確認します。
- Step1. 相談先を決めて準備する
- Step2. 買い手候補を探して打診を受ける
- Step3. 面談と条件交渉を進める
- Step4. 基本合意とデューデリジェンスを行う
- Step5. 最終契約を結び事業を引き継ぐ
それぞれを順に解説します。
Step1. 相談先を決めて準備する
最初に、相談先を決めて準備します。売却の目的や希望する条件を整理し、マッチングサイトや支援機関、FAなどの相談先を選びます。あわせて、財務の状況や事業の内容など、買い手候補へ伝える情報を準備します。自社の強みや、承継で引き継ぐ範囲を確認しておきます。
Step2. 買い手候補を探して打診を受ける
次に、買い手候補を探して打診を受けます。マッチングサイトへの掲載や、支援機関の紹介を通じて、買い手候補を探します。個人の買い手候補から打診が届いたら、秘密保持契約を結んだうえで、詳しい情報を開示します。打診の内容や相手の目的を確認し、話を進める相手を選びます。
Step3. 面談と条件交渉を進める
話を進める相手が決まったら、面談と条件交渉を進めます。面談で相手の考え方を確認し、条件を交渉します。
交渉では、譲渡価格、支払方法、従業員の処遇、引き継ぎの時期、経営者保証の扱いなどを取り決めます。個人の買い手候補の場合、資金力や経営の経験もあわせて確認しながら進めます。
Step4. 基本合意とデューデリジェンスを行う
条件の方向性がまとまったら、基本合意を結び、デューデリジェンスを行います。基本合意では、譲渡の条件や進め方の大枠を確認します。その後、買い手候補による財務・法務・労務・税務のデューデリジェンスが行われます。
売り手は、求められた資料を準備し、対応します。個人の買い手候補の場合、調査を専門家に依頼するかどうかで、進め方が変わることがあります。
Step5. 最終契約を結び事業を引き継ぐ
最後に、最終契約を結び事業を引き継ぎます。最終契約を締結し、株式や事業用の資産を買い手へ移します。
契約後は、従業員や取引先への説明、引き継ぎの作業を進めます。経営者保証の解除や、代表者の変更などの手続きもあわせて進めます。
個人M&Aで売り手が注意したいリスク
個人M&Aでは、売り手が注意しておきたいリスクがあります。主に次の3つを確認します。
- 掲載や交渉で情報が漏れる場合がある
- 経営者保証が売り手に残る場合がある
- 承継後に事業の運営が悪化する場合がある
それぞれを順に解説します。
掲載や交渉で情報が漏れる場合がある
個人M&Aのリスクの一つは、掲載や交渉で情報が漏れる場合があることです。マッチングサイトへの掲載や、複数の個人の買い手候補との交渉のなかで、社名や事業の情報が広く伝わることがあります。
承継を検討している事実が従業員や取引先に伝わると、不安につながる場合があります。掲載する情報の範囲や、開示のタイミングを確認しておく必要があります。
売り手は、情報を開示する範囲とタイミングを、適切に管理することが重要です。
経営者保証が売り手に残る場合がある
経営者保証が売り手に残る場合があることも、注意したいリスクです。個人の買い手候補が、経営者個人の連帯保証を引き受けられない場合、売り手の保証が外れないまま残ることがあります。保証が残ると、承継後も会社の借入について売り手が責任を負い続けることになります。金融機関との間で、保証の解除や差し替えができるかを、交渉の段階で確認します。
承継後に事業の運営が悪化する場合がある
承継後に事業の運営が悪化する場合があることも、リスクの一つです。経営の経験が十分でない個人の買い手候補のもとで、事業の売上や従業員の雇用に影響が生じることがあります。
承継後の運営がうまくいかないと、これまで築いてきた事業や、従業員の雇用に影響する場合があります。買い手候補の経営の経験や、承継後の計画を確認して相手を見極めます。
個人M&Aの相談先とサービス
個人M&Aは、相談先やサービスを利用しながら進められます。主に次の3つを確認します。
- マッチングサイトで買い手候補を探す
- 公的な支援機関に相談する
- 売り手専属のFAに相談する
それぞれを順に解説します。
マッチングサイトで買い手候補を探す
マッチングサイトで買い手候補を探す方法があります。インターネット上で案件を掲載し、個人を含む買い手候補から打診を受けます。
小規模な事業の案件も掲載でき、幅広い買い手候補に情報を届けられます。一方で、交渉や契約を売り手自身で進める場合があり、情報の管理にも注意が必要です。掲載する情報の範囲を確認しながら利用します。
公的な支援機関に相談する
公的な支援機関に相談する方法もあります。事業承継・引継ぎ支援センターや、日本政策金融公庫などが、承継の相談を受け付けています。
公的な支援機関は、無料で相談できる場合が多く、承継の進め方や相手探しについて助言を受けられます。中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、支援機関の活用が示されています。
売り手専属のFAに相談する
売り手専属のFAに相談する方法もあります。FAは、依頼者である売り手のみを支援する立場で、相手の見極めや条件の交渉を支援します。
M&Aの支援には、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る仲介と、依頼者側のみを支援するFAがあり、立場が異なります。個人の買い手候補との交渉では、資金力や経営者保証の確認など論点が多いため、売り手として、自身の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすくなります。
FAサービスの内容については、以下の記事でも解説しています。
「FAサービス」の売却アプローチとは?事業承継M&Aを有利に進めるための知識
個人M&Aに関するよくある質問
個人M&Aについて、よく寄せられる質問を確認します。
個人M&Aにかかる費用はどのくらいですか?
個人M&Aにかかる費用は、利用するサービスによって異なります。マッチングサイトは売り手が無料で使える場合があり、公的な支援機関の相談は無料のことが多いです。FAや仲介に依頼する場合は、手数料がかかります。費用は各サービスで異なるため、利用の前に手数料の条件を確認しておくことが望ましいです。
小規模な事業や個人事業はいくらくらいで売れますか?
小規模な事業や個人事業の売却価格は、案件によって大きく異なります。事業の収益力、資産の内容、取引先との関係、業種などによって変わります。買い手候補が評価する要素は案件ごとに異なるため、断定的な相場を示すことは難しいです。売却価格の見込みは、専門家に相談して確認することが望ましいです。
個人への売却はやめたほうがよいですか?
個人への売却が合うかどうかは、相手の見極めと支援者によって変わります。個人の買い手候補は経営の経験が十分でない場合もある一方、事業への熱意を持つ相手もいます。資金力や経営の経験、経営者保証の扱いを確認し、承継後の運営を任せられる相手かを見極めることが重要です。判断に迷う場合は、売り手側に立つ専門家に相談する方法もあります。
まとめ
個人M&Aは、個人が買い手候補として会社や事業を引き継ぐM&Aです。後継者不足やマッチングサイトの普及、会社員の独立志向を背景に、個人が事業を買うケースが見られます。
個人の買い手候補に事業を売る場合、会社が買い手の場合とは異なる確認点があります。買い手候補の資金力と資金調達の裏付け、経営者保証を引き継げるか、経営の経験と承継後の運営力、従業員や取引先が受け入れられるかを見極めます。
また、情報が漏れるリスクや、経営者保証が売り手に残るリスク、承継後の運営が悪化するリスクにも注意が必要です。
個人M&Aは、マッチングサイトや公的な支援機関、売り手専属のFAを利用しながら進められます。相手を見極め、自社の状況に合う進め方を検討することが、納得度の高い承継につながりやすくなります。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
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