非上場株式の評価とは?相続税・M&Aでの評価方法と違いをオーナー目線で解説
公開日:2026.07.02
2026.07.02
更新日:2026.07.02
2026.07.02
非上場株式は、上場株式のように市場で形成された株価がないため、目的に応じてどのように評価するかが論点になります。相続や贈与で株式を引き継ぐ場合や、M&Aで会社を売却する場合など、評価が必要になる場面はさまざまです。非上場株式の評価とは、市場で形成された株価のない株式の価値を、目的に応じた方法で算定することを指します。
特にオーナー経営者にとって重要なのは、評価額が「何のための評価か」によって変わるという点です。相続税や贈与税を計算するための評価額と、M&Aで売却価格を検討するときの評価額は、別の考え方で算定されます。
本記事では、相続税・贈与税における評価方法と、M&A・売却における評価方法、そして両者がなぜ異なるのかを解説します。
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非上場株式の評価とは
非上場株式とは、証券取引所に上場していない株式を指します。相続税・贈与税の評価では、国税庁が「取引相場のない株式」として整理しています。上場株式のように市場で売買されないため、市場で形成された株価がなく、価値を知るには一定の方法で評価する必要があります。
非上場株式の評価が必要になる代表的な場面は、大きく2つに分かれます。1つは、相続や贈与によって株式を引き継ぐ際に、相続税や贈与税を計算するための評価です。もう1つは、M&Aで会社を売却する際に、売却価格を検討するための評価です。
この2つは、評価の目的が異なるため、用いる方法も算定される金額も変わります。相続税・贈与税の評価は、国税庁の財産評価基本通達などのルールに基づいて行われ、M&Aの評価は、将来の収益力、市場環境、資産・負債の状況、買い手との交渉などを踏まえて検討されます。オーナーとしては、自分が知りたい評価がどの目的の評価なのかを、まず整理しておくことが重要です。
相続税・贈与税における評価方法
相続や贈与で取引相場のない株式を引き継ぐ際の評価は、国税庁の財産評価基本通達に基づいて行われます。評価方法は1つではなく、株式を取得する株主の区分や会社の規模などに応じて使い分けられます。主な評価方法は以下の通りです。
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 配当還元方式
それぞれを順に解説します。
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、類似業種の株価をもとに、評価会社の配当金額、年利益金額、純資産価額を比準して株式の価額を算定する方法です。配当金額、年利益金額、純資産価額という3つの比準要素を用いて評価します。大会社では、原則として類似業種比準方式により評価されます(特例的な評価を行う場合を除く)。
オーナーとしては、この方式が会社の利益や配当の水準によって評価額が変わる点を理解しておくことが重要です。利益金額は評価に影響する要素の一つであるため、事業承継を見据える場合は、評価のタイミングも論点になります。
純資産価額方式
純資産価額方式とは、会社の総資産や負債を原則として相続税評価額に洗い替え、評価差額に対する法人税等相当額を差し引いて株式の価額を算定する方法です。会社が保有する資産の価値を基礎にするため、小会社では、原則として純資産価額方式により評価されます(特例的な評価を行う場合を除く)。資産構成によっては評価額に大きく影響する場合があります。
オーナーとしては、含み益のある不動産などを保有していると、純資産価額方式では評価額が高くなる可能性がある点を理解しておくことが重要です。資産の構成によって評価額が変わるため、事前に把握しておくことが望ましいです。
配当還元方式
配当還元方式とは、株式を所有することによって受け取る1年間の配当金額を一定の利率で還元し、株式の価額を評価する方法です。同族株主以外の株主などが取得した株式について、原則的評価方式に代えて用いられることがあり、原則的評価方式より評価額が低くなる場合があります。
オーナーとしては、誰が株式を引き継ぐかによって、適用される評価方式が変わる点を理解しておくことが重要です。同族株主等か、それ以外の株主かによって、同じ会社の株式でも評価方式が異なる場合があります。
評価方式を判定する基準
相続税・贈与税の評価では、どの方式を用いるかが、会社の規模や株主の立場によって決まります。判定の基準を理解しておくと、自社がどの方式で評価されるかを把握しやすくなります。主な基準は以下の通りです。
- 会社の規模による判定
- 株主の区分による判定
- 特定の評価会社の判定
それぞれを順に解説します。
会社の規模による判定
会社は、総資産価額、従業員数、取引金額などをもとに、大会社・中会社・小会社に区分されます。大会社は原則として類似業種比準方式、小会社は原則として純資産価額方式、中会社は両者を組み合わせて評価します。会社の規模が、用いる方式を左右します。
オーナーとしては、自社がどの規模区分に当たるかによって、評価額が変わる点を理解しておくことが重要です。区分の判定は基準が細かいため、税理士などの専門家に確認することが望ましいです。
株主の区分による判定
株式を取得する人が、発行会社の経営支配力を持つ同族株主等に該当するかどうかによって、評価方式が変わります。同族株主が取得する場合は、原則的評価方式が用いられ、同族株主以外の株主等が取得する場合は、特例的な評価方式である配当還元方式が用いられます。
オーナーとしては、株式を誰に引き継ぐかによって評価額が変わる点を理解しておくことが重要です。後継者に引き継ぐ場合と、同族株主以外の株主等が取得する場合とでは、評価方式や税負担が異なる可能性があります。
特定の評価会社の判定
会社の資産構成や事業状況などが一定の要件に該当する場合、特定の評価会社として、通常の原則的評価方式とは異なる評価が行われます。たとえば、総資産に占める株式の割合が高い株式等保有特定会社や、土地の割合が高い土地保有特定会社などが該当し、原則として純資産価額方式などにより評価されます。
オーナーとしては、自社の資産構成によっては特定の評価会社に該当し、評価額が高くなることがある点を理解しておくことが重要です。該当するかどうかは判定が複雑なため、専門家と確認しておくことが望ましいです。
M&A・売却における非上場株式の評価
M&Aで会社を売却する際の非上場株式の評価は、相続税・贈与税の評価とは異なり、将来の収益力、市場環境、資産・負債の状況、買い手との交渉などを踏まえて検討されます。代表的な評価方法は、大きく3つのアプローチに分かれます。主な方法は以下の通りです。
- 類似会社比較法(マーケットアプローチ)
- DCF法(インカムアプローチ)
- 時価純資産法(コストアプローチ)
それぞれを順に解説します。
類似会社比較法(マーケットアプローチ)
類似会社比較法とは、事業内容や収益構造が近い上場企業の株価指標を参考に、企業価値や株式価値を算定する方法で、マーケットアプローチに分類されます。市場での評価を利用するため業界の状況を価格に織り込める点や、計算が分かりやすいという特徴から、中小企業のM&Aで用いられる代表的な手法の一つです。
売り手としては、自社が評価の高い業界にいる場合、類似会社比較法で市場の評価を反映しやすい点を理解しておくことが重要です。類似会社比較法の詳しい仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
類似会社比較法とは?計算方法やマルチプル、注意点を売り手目線で解説
DCF法(インカムアプローチ)
DCF法とは、会社が将来生み出すフリーキャッシュフローを予測し、現在価値に割り引いて企業価値を算定する方法で、インカムアプローチに分類されます。将来の収益力を反映しやすいため、成長性のある企業の評価に利用されることがあります。
売り手としては、自社に成長性がある場合、DCF法で将来性を価格に反映しやすい点を理解しておくことが重要です。
※参考:J-Net21(中小企業基盤整備機構)「M&Aにおける企業価値の試算方法について教えてください。」
時価純資産法(コストアプローチ)
時価純資産法とは、会社の時価純資産を基準に株式価値を算定する方法で、コストアプローチに分類されます。資産と負債を時価評価し、資産から負債を差し引いた時価純資産をもとにするため、計算が分かりやすい点が特徴です。ただし、事業を継続する企業の評価方法としては一般的にあまり適しておらず、清算や事業の停止を前提とする評価や、保有資産に大きな含み益がある場合などに利用されることが多いです。
売り手としては、時価純資産法は将来の収益力が反映されにくい点を理解しておくことが重要です。純資産法の詳しい内容については、以下の記事でも詳しく解説しています。
純資産法とは?M&Aでの種類や計算方法、注意点を売り手目線で解説
相続税評価額とM&Aにおける評価額が異なる理由
相続税・贈与税の評価額と、M&Aで売却価格を検討するときの評価額は、同じ非上場株式であっても一致しないことがあります。この違いを理解しておくことが、評価をめぐる誤解を防ぐうえで重要です。主な理由は以下の通りです。
- 評価の目的が異なる
- 反映される価値が異なる
- 算定される金額が異なる
それぞれを順に解説します。
評価の目的が異なる
相続税・贈与税の評価は、税金を公平に計算するために、国税庁の決まったルールに基づいて行われます。一方、M&Aの評価は、実際の取引価格を検討するために、将来の収益力、市場環境、資産・負債の状況、買い手の評価などを踏まえて行われます。目的が違うため、用いる方法も変わります。
オーナーとしては、相続税評価額が、そのまま売却できる金額を意味するわけではない点を理解しておくことが重要です。税金計算上の評価額と、実際の売買価格を検討する評価額は、別のものと押さえておく必要があります。
反映される価値が異なる
相続税・贈与税の評価は、決まったルールにもとづくため、会社の将来性やブランド力といった価値が、M&A評価と同じ形で反映されるわけではありません。一方、M&Aの評価では、将来の収益力や営業権(のれん)などが価格に反映される場合があります。
オーナーとしては、自社に成長性や独自の強みがある場合、M&Aの評価ではそれらを価格に反映できる可能性がある点を理解しておくことが重要です。相続税評価額だけでは、自社の売却時の価値が見えにくいことがあります。
算定される金額が異なる
評価の目的と反映される価値が異なるため、算定される金額も変わります。一般に、収益力や将来性が高い会社では、M&Aの評価額が相続税評価額を上回ることがあります。逆に、資産構成や収益性によっては、相続税評価額のほうが高くなる場合もあります。
オーナーとしては、どちらの評価額も把握したうえで、相続・贈与で引き継ぐのか、M&Aで売却するのかを、目的別の評価額を踏まえて検討することが重要です。
自社がM&Aでどの程度の価値になるかは、以下の記事も参考になります。
うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~
非上場株式の評価でオーナーが押さえるべきこと
非上場株式の評価は、目的によって方法も金額も変わるため、オーナーが事前に押さえておくべき論点があります。当社の調査では、富裕層への課税強化をきっかけに、事業承継M&Aの前倒しを意識する経営者が約半数にのぼりました。評価の仕組みを理解し、早めに準備することが、納得できる承継や売却につながります。
※参考:PR TIMES「富裕層課税強化をきっかけに、事業承継M&Aの前倒しを意識する層が約半数」
評価を踏まえてオーナーが取り組みたいことは以下の通りです。
- 目的に応じた評価方法を理解する
- 評価額を踏まえた対策は専門家とともに進める
- 売却を見据えるならM&Aでの株式価値評価を把握する
それぞれを順に解説します。
目的に応じた評価方法を理解する
最初に押さえておきたいのは、自分が知りたい評価が、相続税・贈与税のためのものか、M&Aのためのものかを区別することです。目的によって用いる方法が異なるため、混同すると、評価額の見通しを誤ることになります。
オーナーとしては、相続や贈与を考えるなら国税庁のルールにもとづく評価を、売却を考えるならM&Aにおける株式価値の評価を確認すると整理しておくことが重要です。目的を明確にすることが、適切な判断につながります。
評価額を踏まえた対策は専門家とともに進める
相続税・贈与税の評価では、会社の規模区分や資産の構成によって評価額が変わり、判定の基準も細かく定められています。評価額を見据えた事業承継の対策には、税務の専門的な知識が欠かせません。
オーナーとしては、自己判断で進めるのではなく、税理士などの専門家とともに評価額や対策を検討することが望ましいです。誤った評価や手続きは、後の税務上の指摘やトラブルにつながることがあります。
売却を見据えるならM&Aでの株式価値評価を把握する
事業承継の選択肢としてM&Aによる売却を考える場合は、相続税評価額だけでなく、実際に売却するときの株式価値評価を把握しておくことが重要です。M&Aの評価では、相続税評価額には表れにくい将来性や営業権が価格に反映されることがあります。
売り手としては、買い手候補から提示された自社の評価額が妥当かを売り手の立場で検証できる専門家がいるかどうかは、結果に影響します。売り手専属のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)であれば、売り手側の観点から評価前提を確認しやすくなります。売り手専属のFAの役割については、以下の記事でも詳しく解説しています。
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
まとめ
非上場株式の評価は、市場価格のない株式の価値を一定の方法で算定するもので、相続税・贈与税のための評価と、M&A・売却のための評価では、方法も金額も異なります。相続税・贈与税では国税庁のルールに基づく方式が、M&Aでは将来の収益力、市場環境、資産・負債の状況などを踏まえた評価が用いられます。
特にオーナーにとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。
- 評価の目的(相続税・贈与税かM&Aか)を区別すること
- 会社の規模や株主の立場で評価方式が変わることを理解すること
- 相続税評価額が売却価格と一致するとは限らないことを押さえること
- 売却を見据えるならM&Aにおける株式価値評価を把握し、売り手の立場で検証すること
非上場株式の評価は、目的によって考え方が変わるため、自社の状況に応じた理解が欠かせません。早い段階から、税務は税理士、売却は売り手の立場に立てる専門家とともに準備を進めることで、納得できる承継や売却につなげやすくなります。
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