M&Aにおける失敗とは?売り手オーナーが損をする原因と3つの対策を解説
公開日:2026.07.30
2026.07.30
更新日:2026.07.30
2026.07.30
M&A支援会社から会社売却の打診を受け、安く売られないか不安を抱く売り手もいます。M&Aの失敗事例の多くは、のれんの減損など買い手側の視点で語られますが、売り手オーナーには売り手特有の失敗があります。支援会社に任せきりで安く売ってしまう、退職金やロックアップでもめる、といった失敗です。
本記事では、売り手が失敗するとはどういう状態か、交渉中と契約後の失敗事例、失敗しやすい原因と対策までを売り手目線で解説します。会社売却を検討している売り手経営者の方に、失敗を避けるための材料になる内容です。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
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M&Aで売り手が失敗するとはどういう状態か
M&Aで売り手が失敗するとは、相場より安く売却する、条件交渉が難航する、売却後に後悔するなど、売り手が不利益を被る状態を指します。買い手側の失敗とは分けて考えるべき論点です。
M&Aの失敗事例では、買い手側の、のれんの減損やデューデリジェンス不足、統合の失敗が語られることが多くあります。一方、売り手の失敗は、価格や条件、情報管理、売却後の生活に関わる点で生じます。M&A支援会社に任せきりで安く売る、退職金や手取りでもめる、情報漏洩で従業員が動揺するといった失敗です。
大企業や海外を含むM&Aの失敗事例の全体像については、以下の記事で解説しています。
M&Aの失敗事例11選|失敗の原因や成功させるポイントを紹介
交渉中に起きる売り手オーナーの失敗事例
M&Aの交渉中には、売り手オーナーに起きやすい失敗があります。価格や情報の管理に関わる失敗です。
主な3つの事例を確認します。
- M&A支援会社に任せきりで相場より安く売ってしまう
- 相見積もりを取らず相手の言い値で決めてしまう
- 情報漏洩で従業員や取引先が動揺する
それぞれを順に解説します。
M&A支援会社に任せきりで相場より安く売ってしまう
交渉中の失敗の一つは、支援会社に任せきりで相場より安く売ってしまうことです。M&Aの経験がない売り手が、支援会社に判断を委ねきると、価格の妥当性を確認しないまま条件が決まる場合があるためです。
M&Aの支援には、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る仲介と、依頼者側のみを支援するFAがあり、立場が異なります。仲介は双方の間に立つため、売り手だけの立場に立つとは限りません。売り手が価格の根拠を確認せず、提示された条件をそのまま受け入れると、本来の価値より低い価格で売却する場合があります。譲渡価格の算定方法や、他の買い手候補の可能性を確認しながら進めることが望ましいです。
仲介とFAの違いについては、以下の記事で解説しています。
【保存版】M&A売却で失敗しない!FAと仲介を徹底比較検証!
相見積もりを取らず相手の言い値で決めてしまう
相見積もりを取らず、相手の言い値で決めてしまうことも失敗の一つです。1社の買い手候補とだけ交渉を進めると、条件を比べる相手がなく、不利な条件に気づきにくいためです。
複数の買い手候補に打診し、譲渡価格、支払方法、従業員の処遇、経営者保証の扱いなどの条件を比べることで、条件の妥当性を確認しやすくなります。1社だけで進めると、価格の水準や条件の良し悪しを判断する基準がないまま、相手の提示に沿って決めることになります。複数の買い手候補を検討する余地があるかを、早い段階で確認しておくことが重要です。
情報漏洩で従業員や取引先が動揺する
情報漏洩で従業員や取引先が動揺することも、交渉中の失敗です。交渉が確定する前に売却の情報が広がると、従業員の離職や取引先との関係への影響につながる場合があるためです。
M&Aの検討は、秘密保持契約を結び、情報を扱う範囲を限定して進めます。書類やデータの管理、社内で共有する範囲に配慮しないと、意図しない形で情報が伝わることがあります。承継を検討している事実が従業員に伝わると、動揺や離職につながり、事業の価値や買い手候補の評価に影響する場合があります。情報を、適切な範囲とタイミングで扱うことが望ましいです。
契約後に起きる売り手オーナーの失敗事例
M&Aの契約後にも、売り手オーナーに起きやすい失敗があります。金銭面や契約条件に関わる失敗です。主な3つの事例を確認します。
- 役員退職慰労金や手取りの見込みが狂う
- ロックアップやアーンアウトで長く縛られる
- 簿外債務や表明保証違反で責任を問われる
それぞれを順に解説します。
役員退職慰労金や手取りの見込みが狂う
契約後の失敗の一つは、役員退職慰労金や手取りの見込みが狂うことです。譲渡対価と退職金の配分や、税金の計算を確認しないまま進めると、想定した手取りと差が生じる場合があるためです。
会社売却では、譲渡対価の一部を役員退職慰労金として受け取る設計が用いられることがあります。退職金の金額や損金算入の要件、支払いの原資を確認しないと、支給できなかったり、税務上の負担が生じたりします。譲渡対価にかかる税金と、退職金にかかる税金を踏まえて、税引後の手取りを確認しておく必要があります。退職金の設計は、税理士などの専門家とともに進めることが望ましいです。
ロックアップやアーンアウトで長く縛られる
ロックアップやアーンアウトで長く縛られることも、契約後の失敗です。売却後の残留や、成果に応じた対価の条件を確認しないまま契約すると、想定より長く拘束される場合があるためです。
ロックアップは、売却後も一定期間、売り手が会社に残って経営や引き継ぎに関わる取り決めです。アーンアウトは、売却後の業績に応じて対価の一部が後から支払われる仕組みです。残留する期間や、対価が支払われる条件を確認しないと、退任の時期が遅れたり、想定した対価を受け取れなかったりします。拘束される期間と条件を、契約の前に確認しておくことが重要です。
簿外債務や表明保証違反で責任を問われる
簿外債務や表明保証違反で責任を問われることも、契約後の失敗です。売却前に把握していなかった債務や、表明保証で示した内容と異なる事実が判明すると、売り手が補償を求められる場合があるためです。
表明保証は、売り手が会社の財務や法務などについて、一定の事実が正しいことを買い手に対して表明し保証するものです。売却後に、帳簿に表れていなかった簿外債務や、表明保証に反する事実が判明すると、補償の対象になることがあります。簿外債務と偶発債務は、重なる場合もありますが同じ概念ではありません。補償の範囲、上限、期間、免責、既知事項の除外などを、契約の前に確認しておく必要があります。
なぜ売り手オーナーはM&Aで失敗しやすいのか
売り手オーナーがM&Aで失敗しやすいのには、いくつかの背景があります。売り手が置かれた状況に関わる要因です。主な3つの要因を確認します。
- M&Aが一度きりで経験を積みにくい
- M&A支援会社と売り手で情報や立場に差がある
- 売却後の生活や従業員まで見通せていない
それぞれを順に解説します。
M&Aが一度きりで経験を積みにくい
売り手が失敗しやすい背景の一つは、M&Aが一度きりで経験を積みにくいことです。売り手にとって会社売却は生涯に一度のことが多く、経験から学ぶ機会が少ないためです。
一方、買い手候補や支援会社は、M&Aを繰り返し手がけていることがあります。経験の差があるなかで交渉を進めると、論点の見落としや条件の判断で不利になる場合があります。経験の差を、専門家の支援で補うことが望ましいです。
M&A支援会社と売り手で情報や立場に差がある
支援会社と売り手で、情報や立場に差があることも背景です。売り手はM&Aの相場や手続きの情報を持ちにくく、支援会社との間に情報の差があるためです。
M&Aの支援には、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る仲介があり、双方の間に立ちます。売り手は、価格の相場や交渉の進め方の情報を持ちにくいため、提示された条件の妥当性を判断しにくい場合があります。情報の差を踏まえ、売り手の立場で助言を受けられる相手を持つことが重要です。
売却後の生活や従業員まで見通せていない
売却後の生活や従業員まで見通せていないことも、失敗しやすい背景です。価格の交渉に意識が向き、売却後の自分や従業員のことまで検討が及びにくいためです。
譲渡価格に目が向くと、税引後の手取り、経営者保証の解除、売却後の役割、従業員の処遇といった点の確認が後回しになることがあります。これらを見通さないまま契約すると、売却後に想定と異なる状況になる場合があります。価格だけでなく、売却後の生活や従業員の処遇まで見通して進める必要があります。
売り手がM&Aの失敗を避けるための対策
売り手がM&Aの失敗を避けるには、事前の準備と支援者の選び方が関わります。次の3つの対策を確認します。
- 売却の目的と譲れない条件を先に決める
- 売り手の立場に立つFAに相談する
- 早めに準備して時間の余裕をもつ
それぞれを順に解説します。
売却の目的と譲れない条件を先に決める
失敗を避けるには、売却の目的と譲れない条件を先に決めておきます。目的や条件が定まらないまま交渉に入ると、相手の提示に流されやすくなるためです。
なぜ売却するのか、譲渡価格、従業員の処遇、役員退職慰労金、売却後の関わり方など、譲れない条件を先に決めます。条件の優先順位を決めておくことで、交渉で何を守り、何を譲るかを判断しやすくなります。目的と条件を、交渉の前に決めておくことが重要です。
売り手の立場に立つFAに相談する
売り手の立場に立つFAに相談することも、失敗を避ける対策です。売り手の意向を踏まえて、価格や条件の交渉を進めたい場合に適しています。
M&Aの支援には、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る仲介と、依頼者側のみを支援するFAがあり、立場が異なります。FAは依頼者である売り手のみを支援するため、売り手の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすくなります。FAサービスの内容は、以下の記事で解説しています。
「FAサービス」の売却アプローチとは?事業承継M&Aを有利に進めるための知識
早めに準備して時間の余裕をもつ
早めに準備して、時間の余裕をもつことも対策です。期限に追われた交渉は、条件を十分に確認しないまま進みやすいためです。
株式の集約や資料の準備、財務や労務の状況の確認には時間がかかります。準備が整わないまま交渉を急ぐと、不利な条件に気づかず進めることがあります。株式が分散している場合は、集約にも時間を要します。早めに準備を始め、余裕をもって進めることが望ましいです。
株式の集約については、以下の記事で解説しています。
M&Aの失敗事例に関するよくある質問
M&Aの失敗事例について、よく寄せられる質問を確認します。
中小企業のM&Aに多い失敗は何ですか?
中小企業のM&Aでは、株式の分散や簿外債務、着手の遅れに関わる失敗が見られます。株式が親族や役員に分散していると、集約に手間がかかり交渉が滞ることがあります。帳簿に表れていない簿外債務が売却後に判明する場合もあります。また、後継者がいないまま着手が遅れ、条件が不利になることもあります。早めの準備と専門家への相談で、こうした失敗を抑えやすくなります。
個人が買い手のM&Aで売り手が注意すべき失敗は何ですか?
個人が買い手候補の場合は、資金力や経営の経験を見極めないことが失敗につながります。個人の買い手候補は、資金調達の裏付けや経営の経験が十分でない場合があります。資金が用意できず契約に至らなかったり、承継後に事業の運営がうまくいかなかったりする場合があります。買い手候補の資金力や経営の経験を確認し、承継後の運営を任せられるかを見極めることが重要です。
M&Aが失敗する確率はどのくらいですか?
M&Aが失敗する確率は、成功の定義によって異なり、一律の数値では示せません。M&Aの成功や失敗の捉え方は、価格、統合後の成果、売却後の満足度など、立場や基準によって変わります。出典の定まらない数値を前提にするより、自社にとっての失敗を具体的に想定し、対策を講じることが望ましいです。
M&Aで成功する売り手と失敗する売り手の違いは何ですか?
M&Aで結果に差が出る売り手の違いは、準備の早さと支援者の選び方にあらわれます。目的と譲れない条件を早めに決め、余裕をもって準備を進める売り手は、条件を確認しながら交渉を進めやすくなります。また、売り手の立場に立つ支援者を持つことで、情報や経験の差を補いやすくなります。準備と支援者の選び方が、結果の違いにつながる場合があります。
まとめ
M&Aで売り手が失敗するとは、相場より安く売る、条件でもめる、売却後に後悔するなど、売り手が不利益を被る状態を指します。買い手側の失敗とは分けて考えるべき論点です。
交渉中には、M&A支援会社に任せきりで安く売る、相見積もりを取らず言い値で決める、情報漏洩で従業員が動揺するといった失敗が起きます。契約後には、役員退職慰労金や手取りの見込みが狂う、ロックアップやアーンアウトで長く縛られる、簿外債務や表明保証違反で責任を問われるといった失敗があります。売り手は、M&Aの経験や情報の差から失敗しやすい面があります。
失敗を避けるには、売却の目的と譲れない条件を先に決め、早めに準備を進めることが重要です。売り手の立場に立つFAへの相談が、納得度の高い売却につながりやすくなります。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
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