旧知の相手でも“直接交渉”は危険−会社分割が絡むM&Aで調整が増える理由
-
#
- 成約実績
公開日:2026.03.05
2026.03.05
更新日:2026.06.24
2026.06.24
この記事の監修者
小野木幹人 Mikihito Onoki
ディレクター
みずほ銀行、みずほコーポレートアドバイザリー(2017年、みずほ銀行に吸収合併)にて、約15年間、主に国内企業同士のM&A案件にフィナンシャル・アドバイザーとして従事。
当社でご成約した東北地方の不動産サービス業(従業員約30名)のM&A事例です。
オーナー様は「今の事業から離れて別事業に取り組みたい」という意向のもと、条件次第での売却を検討されました。
一方で、検討・調整の過程では、従業員への説明や債権債務の承継範囲などの、手続き面の難所が顕在化しました。
担当アドバイザー・小野木幹人へのインタビューを通じて、実務の論点と意思決定に使える注意点を整理します。

案件について
Q(編集部): 今回の案件概要を、公開可能な範囲で教えてください。
A(小野木): 不動産サービス業で、所在地は東北地方、従業員は約30名の会社です。成約時期は2025年6月です。スキームは会社分割(事業の一部を一括で譲渡する吸収分割)です(※守秘義務のため詳細は一般化しています)。

「経営から離れて別事業へ」—M&A検討の背景
Q: オーナー様がM&Aを検討された背景は何でしたか?
A: 現在の事業の経営から離れて、別の事業を行いたいというご希望があり、M&Aを検討されていました。
編集部コメント(学び):
事業が大きな危機にあるからではなく、「次にやりたいことがある」「今の事業から距離を置きたい」という動機で検討が始まるケースもあります。この場合、“いくらなら売るか”だけでなく、売却後の運営・資金繰り・残る事業の整理まで含めて論点が増えやすいのが実務です。
初回面談で何をクリアしたのか:NDAと決算開示
Q: 初回面談時の印象・課題は?
A: 売り専属のFA(ファイナンシャルアドバイザリー)サービスであることをご評価いただき、次回面談時の株価算定資料のご提示に向けて、NDA締結後の決算書開示にご了承をいただきました。

成約に向けて意識したのは「資金繰りに支障を出さない」こと
Q: 案件成約において意識された点は?
A: 金融機関からの借入も一定規模あることから、譲渡後の資金繰りに支障をきたすことがないよう、譲渡価格については意識されていました。
編集部コメント(学び):
価格は借入・運転資金・キャッシュフローとの整合で判断するのが現実的です。
特に借入がある場合、譲渡後の資金繰りに無理が出ると、譲渡後の運営(残る事業を含む)に影響が出ます。今回も、そこが重要な判断軸でした。
会社分割(吸収分割)が絡むと、調整の主戦場が変わる
Q: 成約までに苦労した点と、どう乗り越えたか?
A: 会社分割(吸収分割)による一部事業の譲渡に関する論点があり、譲渡対象となる従業員への説明や、譲渡対象の特定(特に債権債務の承継範囲)には調整を要しました。
編集部コメント(注意点):
ここが実務の難所でした。会社分割が絡むと、交渉の焦点が単なる価格条件だけでなく、次のような論点に移ります。
• 誰が対象従業員か(説明のタイミング・範囲・合意形成)
• 何が対象資産/負債か(特に債権債務の承継範囲の線引き)
• 引き継ぎ後の運営に支障が出ないか(実務オペレーションの切り分け)
• 会社法等の法律の手続きに則った公告や従業員への説明、譲渡後の登記等の手続きが漏れなくできるか(細かい法律への対応)
この手の調整は、当事者の関係性だけで解けません。手続き・定義・整合の積み上げが必要で、時間と体制を要します。

成約後:オーナーは「次の選択肢」を見据えて動き出した
Q: 成約後のオーナー様のご様子は?
A: 譲渡代金の会社への入金でひと段落ついたあとは、譲渡対象外となった一部事業について、将来的なM&Aによる売却を見据え、運営の見直し等に注力されています。
編集部コメント(学び):
段階的に整理していく意思決定は現実的です。
一部を譲渡した後、残る事業の運営を見直し、将来の選択肢(追加の売却など)を広げる動きは、検討層にとって参考になります。
取引相手が旧知でも、専門家を入れるべき理由
Q: 今回のM&Aを通じて感じたこと・伝えたいことは?
A: 買い手となった会社は、売り手企業と関係性の深い人物が独立して設立した会社でした。旧知の仲であっても、M&A取引は複雑で、様々な手続きや調整が必要です。事前に専門家を立てて取引を進め、結果として「専門家を利用して良かった」と言っていただけました。
相手が取引先や旧知の間柄であっても、M&Aには双方の利害が絡みます。買収の話を持ち掛けられても、直接交渉を行わず、専門家を入れることを検討してほしいです。
編集部コメント(注意点):
“知っている相手”ほど、直接交渉で以下が起きやすいです。
• 論点の未整理のまま条件の話が進むと後で揉める可能性がある
• 言いにくいことが言えず、判断材料が欠ける
• 関係性を壊したくない心理で、手続きが曖昧になる
今回も、従業員説明や承継範囲の特定など実務論点が中心でした。専門家を挟む合理性が出やすい領域です。
もし、取引先・旧知の相手から買収提案を受けている/一部事業の切り出しが絡みそう、といった状況であれば、まずは論点整理だけでも専門家に相談しておくと、後工程の手戻りを減らしやすいです。
本案件の担当者より
小野木幹人 Mikihito Onoki
ディレクター
M&Aの相手先が親しい先であっても、M&Aのプロセスや実務は複雑かつ専門的で、
さらに双方の利害が対立する部分が必ずありますので、
是非、弊社のようなプロのM&Aアドバイザーのご起用をご検討頂ければ幸いです。
宜しくお願い致します。
関連記事
-
第三者への譲渡検討から役員によるMBOへ──専門商社オーナーが納得の価格で実現した社内承継の舞台裏
2026.07.17
2026.07.17
#成約実績
-
業界再編が進む中、なぜ今M&Aを決断したのか。アイセイ代表が語る承継判断の背景
2026.06.24
2026.06.24
#成約実績
-
後継者不在の印刷業が選んだ事業承継M&A──会社と従業員を託せる相手を見極めた成約の舞台裏
2026.04.24
2026.04.24
#成約実績
-
過去のM&A失敗を乗り越え、上場企業への承継へ。電気通信工事業オーナーがたどり着いた納得の成約
2026.04.22
2026.05.01
#成約実績
-
旧知の相手でも“直接交渉”は危険−会社分割が絡むM&Aで調整が増える理由
2026.03.05
2026.06.24
#成約実績