会社清算で不動産を処分するには?3つの方法と流れ、税金、売却という選択肢を解説
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公開日:2026.09.29
2026.09.29
更新日:2026.09.29
2026.09.29
会社清算では、保有する不動産を換価して債務の弁済に充てることがあります。
抵当権の扱いと3つの処分方法、解散から清算結了までの流れ、売却益にかかる法人税やみなし配当などの税金、売れない場合の対処と会社ごと売る選択肢を売り手視点で解説します。

会社を清算すると決めたものの、社屋や工場の土地をどう処分するか決まらない。不動産は換価に時間がかかり、価格も読みにくいため、清算全体の進行を左右します。抵当権が残っていれば金融機関との調整も必要です。
本記事では、清算中に不動産を売却できる条件と3つの処分方法を示し、手続きの流れと税金を解説します。あわせて、売れない場合の対処と、清算せずに会社ごと売る選択肢を示します。
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会社清算中でも不動産は売却できる
解散した後でも、会社は不動産を売却できます。清算のために財産を換価する行為は、清算手続きに含まれるためです。押さえる点は以下の3つです。
- 抵当権が設定されていなければそのまま売却できる
- 抵当権が設定されていれば金融機関の承諾と抹消が必要になる
- 清算中の会社は清算の目的の範囲内で売却などの行為ができる
それぞれを順に解説します。
抵当権が設定されていなければそのまま売却できる
担保が付いていない不動産は、通常の売買と同じ手順で処分できます。 売買契約を締結し、決済と同時に所有権移転登記を行う流れです。
確認しておく項目は次のとおりです。
- 登記記録上の所有者が会社名義になっているか
- 抵当権や根抵当権、差押えの登記が残っていないか
- 借地権や賃借人の有無
登記簿に古い担保が残っている場合もあります。法務局で登記事項証明書を取得し、権利部乙区の記載を確認します。
抵当権が設定されていれば金融機関の承諾と抹消が必要になる
担保が付いている不動産は、金融機関との調整が必要になります。 抵当権が残ったままでは、買い手は購入に応じにくくなります。
進め方は次のとおりです。
- 売却予定価格と残債の額を金融機関へ提示する
- 売却代金で残債を完済し、抵当権抹消登記に必要な書類を受領する
- 決済と同時に抹消登記と所有権移転登記を申請する
売却代金が残債に届かない場合は、不足額の扱いを協議します。金融機関へ早い段階で売却の方針を伝え、抹消の条件を確認します。
清算中の会社は清算の目的の範囲内で売却などの行為ができる
清算に入った会社の活動には、法律上の枠があります。 会社法第476条は、解散した株式会社が清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなすと定めています。
財産の換価は清算事務に含まれるため、不動産の売却は枠内の行為です。一方、新たな事業のための取得や投資は想定されていません。判断に迷う行為は、実行前に弁護士などの専門家へ確認します。
会社清算で不動産を処分する3つの方法
売却できることを確認したら、処分の形を選びます。現金化するか、関係者へ渡すか、不動産のまま分配するかで税負担も手続きも変わります。方法は以下の3つです。
- 第三者に売却して現金化する
- 経営者や親族が時価で買い取る
- 株主に現物のまま分配する
それぞれを順に解説します。
第三者に売却して現金化する
清算で基本となるのが、第三者への売却です。 現金化すれば債務の弁済に充てられ、残余財産の分配も金銭で行えます。
進め方の選択肢は次のとおりです。
- 仲介会社を通じて市場で買い手を探す
- 不動産会社へ直接買い取りを依頼する
- 入札方式で複数の候補から条件を比較する
市場での売却は価格が高くなりやすい一方、時間がかかります。清算の完了希望時期から逆算し、仲介と買取のどちらを選ぶかを決めます。
不動産を切り離す方法と課税の違いについては、下記で詳しく解説しています。
M&Aで不動産を切り離すと税金はどうなる?3つの方法と課税の注意点を解説
経営者や親族が時価で買い取る
経営者や親族が買い取る方法もあります。 社屋や土地を個人で使い続けたい場合や、売却先が見つからない場合に選ばれます。
注意したいのは価格です。時価から離れた金額で取引すると、会社側で寄附金や受贈益の問題が生じ、個人側にも課税関係が生じる場合があります。
不動産鑑定士の評価書や複数の査定書をそろえ、時価の根拠を残します。取引前に税理士へ課税関係を確認します。
株主に現物のまま分配する
売却せず、不動産のまま株主へ渡す方法もあります。 会社法第505条は、残余財産が金銭以外の財産である場合の定めを置いており、株主には金銭分配請求権が認められています。
現物分配では時価で評価されるため、会社側に譲渡損益が生じます。所有権移転登記も必要です。換価してから分配する場合と、税負担と手続きの両面で比較します。
会社清算で不動産を処分する流れ
処分方法が決まれば、清算手続きに沿って進めます。流れは以下の5段階です。
- 株主総会で解散を決議して清算人を選任する
- 債権者への公告と催告を行い2か月以上の申出期間を設ける
- 不動産を売却して債務を弁済する
- 残余財産を株主に分配して決算報告の承認を受ける
- 清算結了の登記を申請する
それぞれを順に解説します。
株主総会で解散を決議して清算人を選任する
清算は、株主総会の解散決議から始まります。 決議は特別決議(会社法第471条第3号・第309条第2項)によるため、原則として議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
解散の登記と清算人の登記を申請し、清算人が会社を代表します。株主構成を確認し、決議に必要な賛成を確保できるかを事前に点検します。
債権者への公告と催告を行い2か月以上の申出期間を設ける
清算では、債権者を保護する期間を設けます。 会社法第499条は、債権者に対し一定の期間内に債権を申し出るべき旨を官報に公告し、知れている債権者には各別に催告しなければならないと定めています。期間は2か月を下ることができません。
公告の掲載手配を早めに行い、不動産の売却活動と並行して進めます。
不動産を売却して債務を弁済する
申出期間と並行して、不動産の換価を進めます。 売却代金は債務の弁済原資になるため、清算全体の進行を左右します。
買い手が決まらなければ、清算は完了しません。売却活動の開始時期と価格の見直し時期をあらかじめ決め、仲介会社と共有します。
残余財産を株主に分配して決算報告の承認を受ける
債務の弁済が終わったら、残った財産を分配します。 会社法第507条は、清算事務を終了したときに決算報告を作成し、株主総会の承認を受けなければならないと定めています。
承認を受けた時点で清算は結了します。分配額が確定したら、税理士へ源泉徴収の要否を確認します。
清算結了の登記を申請する
最後の手続きが、清算結了の登記です。 会社法第929条は、決算報告の承認の日から2週間以内に、本店の所在地において清算結了の登記をしなければならないと定めています。
期限が短いため、承認の前に書類をそろえます。司法書士へ申請を依頼し、承認予定日を共有します。
会社の廃業手続き全体の流れと費用については、下記で解説しています。
会社の廃業手続きと必要な費用は?手続きの全体像や廃業を検討すべきケースを紹介
廃業と倒産の違いとは?解散・破産・休業との比較と経営者が取るべき選択肢を解説
清算で不動産を処分するときにかかる税金
不動産の処分には、複数の税金が関わります。押さえる論点は以下の4つです。
- 売却益には清算中の事業年度でも法人税がかかる
- 残余財産の分配は資本金等を超える部分がみなし配当として課税される
- 債務超過で残余財産がない場合は期限切れ欠損金を損金にできる
- 固定資産税は1月1日時点の所有者に課される
それぞれを順に解説します。
売却益には清算中の事業年度でも法人税がかかる
清算中でも、不動産の売却益には法人税が課されます。 解散後も事業年度ごとに所得を計算し、申告と納税を行うためです。
長年にわたり含み益を抱えていた土地を売れば、最後の事業年度に大きな利益が計上されます。赤字続きだった会社でも、清算の年だけ多額の納税が生じる場合があります。帳簿価額と売却見込額の差を算出し、課税見込額を試算します。
法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)の趣旨説明|国税庁
残余財産の分配は資本金等を超える部分がみなし配当として課税される
株主が受け取る残余財産は、2つの区分に分かれて課税されます。 資本金等の額に対応する部分と、超える部分で扱いが異なるためです。
国税庁は、解散による残余財産の分配として交付を受ける金銭等の合計額について、株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合を示しています。
No.1536 株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合|国税庁
超える部分はみなし配当として配当所得の扱いです。分配前に、区分ごとの税額を税理士へ試算依頼します。
みなし配当の仕組みについては、下記で解説しています。
M&Aでみなし配当は発生する?課税の仕組みや手取りへの影響を売り手目線で解説
債務超過で残余財産がない場合は期限切れ欠損金を損金にできる
売却益が出ても、債務超過であれば税負担を抑えられる場合があります。 残余財産がないと見込まれるときに、期限切れ欠損金を損金算入できる制度があるためです。
国税庁は、事業年度終了の時に債務超過の状態にあるときが該当し、実態貸借対照表によって判断するとしています。
国税庁 質疑応答事例「残余財産がないと見込まれるとき」の判定について
判定は事業年度ごとに行われます。実態貸借対照表を作成し、適用の可否を税理士と確認します。
固定資産税は1月1日時点の所有者に課される
不動産を持ち続ける限り、固定資産税は発生します。 賦課期日である1月1日時点の所有者に対し、当該年度分が課される仕組みです。
年をまたげば、翌年度分の納税義務が生じます。清算が長引くほど納税も積み上がる構造です。売却の完了時期を年内にできるかで負担が変わるため、決済予定日から逆算して売却活動を始めます。
売れない不動産があるときの3つの対処
換価できなければ清算は終わりません。保有を続けるほど税金と管理費がかさむため、早い段階で手を打ちます。対処法は以下の3つです。
- 価格を下げて買い手の範囲を広げる
- 隣地所有者や自治体への譲渡や寄付を打診する
- 引き取り業者に費用を払って処分を依頼する
それぞれを順に解説します。
価格を下げて買い手の範囲を広げる
基本の対処は、価格の見直しです。 売り出し価格が市場の水準から離れていれば、問い合わせは入りにくくなります。
見直しの目安は次のとおりです。
- 3か月間で内見や問い合わせがない
- 同一地域の類似物件より単価が高い
- 仲介会社から価格改定の提案が出ている
保有を続けた場合の年間費用と値下げ幅を比べて判断します。
隣地所有者や自治体への譲渡や寄付を打診する
市場で売れない土地は、打診先を変える方法があります。 隣地の所有者にとっては、土地の形状が整うため価値が生まれる場合があります。
打診先の候補は次のとおりです。
- 隣接地の所有者
- 地元の法人や農業者
- 所在地の自治体や公益団体
自治体への寄付は受入基準を満たす場合に限られます。隣地所有者へ仲介会社を通じて打診します。
引き取り業者に費用を払って処分を依頼する
どうしても引き取り手がない場合、費用を払って手放す方法もあります。 負動産と呼ばれる物件を引き取る事業者が存在します。
依頼前に確認する点は次のとおりです。
- 引き取り費用の総額と内訳
- 登記手続きを誰が行うか
- 引き取り後の管理責任の所在
複数の事業者から見積を取り、清算費用に計上できるかを税理士と確認します。
清算せずに不動産ごと会社を売却する選択肢
不動産を切り離して売るほかに、会社ごと譲る道もあります。比較する点は以下の3つです。
- 株式譲渡なら不動産の名義変更が不要で移転コストがかからない
- 売却対価は株式の譲渡所得として申告分離課税になる
- 廃業を決める前に売り手専属のFAに手取りの比較を相談する
それぞれを順に解説します。
株式譲渡なら不動産の名義変更が不要で移転コストがかからない
会社ごと譲れば、不動産の所有者は変わりません。 株式譲渡では株主が入れ替わるだけで、不動産の名義は会社のままです。
結果として、次の負担が生じません。
- 所有権移転登記に伴う登録免許税と司法書士報酬
- 不動産取得税
- 不動産の譲渡に関する契約書に係る印紙税
不動産の譲渡に関する契約書は印紙税の課税文書に該当し、記載された契約金額によって税額が変わります。移転コストの総額を試算し、株式譲渡と比較します。
No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
売却対価は株式の譲渡所得として申告分離課税になる
会社を売却した場合、課税の区分も変わります。 国税庁は、株式等の譲渡による所得について、他の所得と区分して税金を計算する申告分離課税になるとしています。
No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
清算ではみなし配当部分が総合課税となるのに対し、株式譲渡では全額が分離課税です。同じ手取り総額でも税負担が変わるため、両方を試算して比べます。
会社売却にかかる税金の計算と手取りについては、下記で詳しく解説しています。
会社売却後にかかる税金は?計算方法や確定申告、税引後手取りを増やす対策を解説
廃業を決める前に売り手専属のFAに手取りの比較を相談する
判断の前に、両方の手取りを並べます。 清算では換価額から債務と費用を引いた額が、売却では対価から税金を引いた額が手元に残ります。
不動産を保有する会社は、買い手候補から見て資産価値のある対象です。売り手のみと契約するFAは、売り手側の手取りを重視した条件設計に専念できる立場にあります。
解散を決議すると、事業継続を前提とした売却は難しくなります。株主総会の開催時期を決める前に、支援機関へ相談します。
廃業と会社売却の比較、売り手専属のFAの役割については、下記で解説しています。
会社売却のメリット5選|廃業を避けて創業者利益を最大化する戦略的ガイド
休眠と廃業の違いとは?費用・手続き・3つの判断基準をわかりやすく解説
M&AにおけるセルサイドFAとは?業務内容や仲介との違いも解説
会社売却を検討する際の注意点は、資料でも確認できます。無料でダウンロードできます。
会社清算と不動産の処分に関するよくある質問
会社清算と不動産の処分について、相談の現場で多く寄せられる質問を3つ取り上げます。清算結了後に不動産が見つかった場合、売却時期による違い、残債を下回る価格でしか売れない場合の3点です。
清算結了の登記をした後に会社名義の不動産が見つかったらどうなりますか?
清算は終わっていないものとして扱われます。未処理の財産が残っていれば法人格は消滅していないと解されるためです。追加の清算手続きと登記、税務申告が必要になります。清算結了の前に、登記情報と固定資産税の課税明細書を突き合わせ、会社名義の不動産をすべて洗い出します。
解散前に不動産を売却するのと清算中に売るのとで違いはありますか?
課税の枠組みが変わります。清算中は、残余財産がないと見込まれる場合に期限切れ欠損金を損金算入できる制度の対象になりうるためです。適用は事業年度ごとの判定によるため、売却の時期によって税負担が変わります。売却時期を決める前に、税理士へ両方の試算を依頼します。
抵当権の残債より安くしか売れない場合でも清算できますか?
金融機関の同意が必要になります。売却代金で残債を完済できなければ、抵当権の抹消に応じてもらえないためです。不足額の扱いを協議し、合意できなければ任意売却や法的整理の検討に移ります。残債額と売却見込額の差を早い段階で把握し、金融機関へ相談します。
まとめ
会社清算では、保有する不動産を換価して債務の弁済に充てます。抵当権の有無で進め方が変わり、売却益には清算中でも法人税が課されます。
要点は以下のとおりです。
- 清算中の会社も、清算の目的の範囲内で不動産を売却できる
- 処分方法は、第三者への売却・経営者や親族による買取・現物分配の3つ
- 債務超過であれば、期限切れ欠損金の損金算入により税負担を抑えられる場合がある
- 固定資産税は1月1日時点の所有者に課されるため、売却時期が負担を左右する
- 株式譲渡なら不動産の名義変更が不要で、移転コストが生じない
不動産を持つ会社は、買い手候補から見れば資産価値のある対象です。解散を決議する前に、清算と売却の手取りを並べて検討してください。
廃業と売却の比較と、売却の進め方は、こちらの資料でも確認できます。
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