M&AにおけるOSSライセンスとは?調査で見られる3つのポイントと売り手の準備

2026.09.03

公開日:2026.09.03

2026.09.03

2026.09.03

更新日:2026.09.03

2026.09.03

M&AにおけるOSSライセンスとは?調査で見られる3つのポイントと売り手の準備

自社の製品やシステムにOSSを使ってきたが、会社の売却で問題にならないか、と不安を感じていないでしょうか。買い手候補やFAから「OSSの利用状況を確認したい」と言われ、何をどう準備すればよいか分からない売り手の方もいるはずです。

結論から言えば、OSSの利用自体は現代のソフトウェア開発で標準的であり、使っていること自体が売却で不利になるわけではありません。問われるのは、何をどう使っているかを管理し、説明できる状態かどうかです。

本記事では、M&AでOSSライセンスが問題になる理由、デューデリジェンスで確認される3つのポイント、売却条件への影響、そして売り手が売却前にできる4つの準備を解説します。

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M&AでOSSライセンスが問題になる理由

M&AでOSSライセンスが問題になるのは、OSSが無償で利用できる一方、利用条件を定めたライセンスが付いており、条件に反した利用は権利侵害の問題になり得るためです。無償であることと、自由に使えることは同じではありません。

自社製品やシステムに組み込まれたOSSの利用状況は、IT企業のM&Aにおいて、買い手候補が実施する法務デューデリジェンスやITデューデリジェンスの定番の調査項目になっています。ソフトウェアが事業価値の中核である会社ほど、その中身が第三者の権利を侵害していないかは、買い手候補にとって確認を省けない論点だからです。

注意したいのは、OSSの利用そのものは問題視されないという点です。買い手候補の評価に影響するのは、「どの製品に何を使っているか説明できない」という管理の状態であり、ここが売り手の準備で変えられる部分になります。

OSSライセンスの基本

OSSライセンスには多くの種類がありますが、売り手の経営判断としては、大きく2系統に分けて捉えれば議論についていけます。

分類代表的なライセンス主な条件M&Aでの見られ方
パーミッシブ型MIT License、Apache License著作権表示やライセンス文の同梱といった条件を満たせば、比較的自由に利用できる表示等の形式的な条件を満たしているかの確認が中心
コピーレフト型GPL系組み込み方や配布の仕方によっては、自社のソースコードにも同じ条件での開示・提供の義務が及ぶ場合があるどの製品にどう組み込んでいるか、開示義務の範囲がどこまで及ぶかを重点的に確認される

個別のライセンスの解釈は専門性の高い論点であり、経営者がすべてを理解する必要はありません。「条件が緩やかなパーミッシブ型」と「組み込み方次第で自社コードに義務が及び得るコピーレフト型」の違いを押さえておけば、買い手候補や専門家との協議の土俵に立てます。

なお、OSSの管理手法については、経済産業省が企業の取り組みをまとめた事例集を公表しており、自社の管理体制を検討する際の参考になります。

※参考:経済産業省「オープンソースソフトウェアの利活用及びそのセキュリティ確保に向けた管理手法に関する事例集

デューデリジェンスで確認される3つのポイント

OSSの調査は、法務・ITデューデリジェンスの一部として行われます。売り手として、どこを見られるかを先に知っておくと、準備の優先順位を付けやすくなります。

デューデリジェンスの手続き全体は、以下の記事で解説しています。OSS以外の調査項目もあわせて把握しておくと、開示資料の準備を進めやすくなります。

M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは?目的や流れ、売り手側のポイントを解説

OSSについて確認されるのは主に以下の3つです。

  • 自社製品に組み込まれたOSSの一覧と利用状況
  • ライセンス条件と組み込み方の整合性
  • 違反が発覚した場合の影響範囲

それぞれを順に解説します。

自社製品に組み込まれたOSSの一覧と利用状況

デューデリジェンスでまず求められるのは、どの製品・システムに、どのOSSが、どのバージョンで使われているかの一覧です。調査はこの一覧を出発点に進むため、最初に開示を求められる資料と考えて差し支えありません。

実際には、こうした一覧が存在しない会社の方が多いのが実情です。一覧がない場合、調査ツールによるソースコードの解析や、開発担当者へのヒアリングで補うことになり、その分だけ調査に時間がかかります。売却の日程に余裕がない局面で一覧作成から始めると、交渉全体の進行にも影響しやすくなります。

ライセンス条件と組み込み方の整合性

一覧の次に確認されるのが、各OSSのライセンス条件と、実際の組み込み方が整合しているかです。

特に見られるのはコピーレフト型のOSSです。自社製品への組み込み方や配布の形態によって、自社のソースコードに開示義務が及ぶかどうかの判断が変わるため、「どう組み込んでいるか」が確認の中心になります。あわせて、著作権表示やライセンス文の同梱といった形式的な条件を満たしているかも確認の対象です。形式面の不備は軽視されがちですが、条件違反であることに変わりはないため、指摘事項として記録されます。

違反が発覚した場合の影響範囲

違反やその疑いが見つかった場合、買い手候補は影響の範囲を試算します。具体的には、該当するOSSを含む製品の売上規模、是正に要する開発工数、顧客のシステムへの影響の有無です。

小さな違反であれば表示の追加などで是正できる一方、主力製品の中核部分に関わる場合は、事業への影響が大きいと判断されます。そして影響が大きいほど、指摘は技術の問題にとどまらず、価格や契約条件の議論へと波及していきます。

ライセンス違反が売却条件に与える影響

違反の指摘は、技術の問題で終わらず、契約条件に形を変えて残ります。売り手として、どの条件にどう表れるかを知っておくと、指摘を受けた場面でも交渉の見通しを立てやすくなります。

影響の表れ方は、主に以下の3つです。

  • 買い手候補の評価や価格に影響する可能性がある
  • 表明保証や特別補償の対象になる可能性がある
  • 是正が完了するまでクロージングが待たされる場合がある

それぞれを順に解説します。

買い手候補の評価や価格に影響する可能性がある

OSSライセンスの違反やその疑いは、是正に要する費用と事業リスクとして買い手候補の評価に織り込まれ、価格調整の材料になる場合があります。

是正のためのコードの書き換え費用、顧客対応の費用、権利者から請求を受けた場合の負担の可能性が、評価から差し引く方向で検討されるためです。ソフトウェアが事業価値の中核であるIT企業ほど、この影響は大きくなります。逆に言えば、売却前に是正を済ませておくか、影響範囲を資料で説明できる状態にしておくほど、評価の目減りを抑えやすくなります。

業界全体の評価の考え方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

システム開発業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

表明保証や特別補償の対象になる可能性がある

最終契約では、「対象会社の事業が第三者の知的財産権を侵害していない」といった趣旨の表明保証が売り手に求められるのが通常であり、OSSの利用状況もその対象に含まれ得ます。表明した内容と事実が異なれば、売却後に補償責任を問われる可能性がある条項です。

また、デューデリジェンスで発見された具体的な懸念については、表明保証とは別に、特別補償として個別の手当てが定められる場合があります。売却後まで続く責任の枠組みに直結するため、対象範囲の書きぶりは慎重に確認する必要があります。

表明保証の仕組みは、以下の記事で詳しく解説しています。責任の範囲を見極める前提知識としてお読みください。

M&Aにおける表明保証条項とは?重要性や内容、注意点を解説

是正が完了するまでクロージングが待たされる場合がある

重大な懸念が見つかった場合、その是正の完了がクロージングの前提条件とされることがあります。契約は締結できても、是正が終わるまで取引の実行に進めない形です。

OSSの是正には、コードの書き換えや代替ライブラリへの置き換えといった開発作業が伴い、相応の期間を要します。その間、売却対価の受領も延び、事業環境の変化による条件見直しのリスクも増えるため、取引全体の日程に影響する論点として軽視できません。

過去にはライセンス違反をめぐる紛争も起きている

買い手候補がOSSの調査に力を入れる背景には、実際に紛争へ発展した経緯があります。

コピーレフト型ライセンスの条件をめぐっては、海外で権利者側が訴訟を提起し、争いに発展した事例が公表されています。ライセンスの条件が法的な効力を持つ約束として扱われ、違反が現実の請求につながることは、すでに示されている領域です。

国内でも、権利者やコミュニティから利用状況について指摘や問い合わせを受ける例はあり、「指摘されなければ問題ない」という前提は成り立たなくなっています。買い手候補が売却の場面で慎重に調査するのは、承継後に対象会社がこうした請求を受ければ、経済的な負担を負うのは買い手側になるためです。売り手として、調査の厳しさを不信の表れと受け取らず、リスクの引き受け手が替わる取引に伴う確認と理解しておくと、対応の姿勢を保ちやすくなります。

売り手が売却前にできる4つの準備

OSSライセンスに関する売り手の準備は、「管理と説明ができる状態」をつくることに集約されます。売却検討の初期から動くほど選択肢が残る領域です。

  • 利用しているOSSを棚卸しして一覧にする
  • ライセンスの種類と組み込み方を確認する
  • 問題のある利用は代替や隔離で是正しておく
  • 開発担当者の知見を文書に残しておく

それぞれを順に解説します。

利用しているOSSを棚卸しして一覧にする

売却前の準備としてまず有効なのは、製品・システムごとに、OSS名、バージョン、ライセンスの種類、組み込み方を一覧化しておくことです。

この一覧は、ソフトウェアの部品表を意味するSBOM(Software Bill of Materials)と呼ばれる資料に相当し、デューデリジェンスの開示資料としてそのまま使えます。調査の起点となる資料を先に用意しておくことで、調査期間の短縮と、管理体制への評価の両方につながりやすくなります。

自社の人員だけで棚卸しが難しい場合は、ソースコードを解析する調査ツールや、専門の調査会社の利用も検討できます。規模や開発体制に応じて、無理のない方法を選んでください。

ライセンスの種類と組み込み方を確認する

棚卸しの次に進めたいのが、一覧に挙がったOSSの仕分けです。パーミッシブ型とコピーレフト型に分類し、条件の緩やかなパーミッシブ型は表示等の形式面を、コピーレフト型は自社製品への組み込み方を重点的に確認します。

コピーレフト型の開示義務が及ぶ範囲の判断は、組み込みの技術的な形態と配布の仕方の両方に関わるため、社内だけで結論を出しにくい場合があります。判断が難しいものを無理に自己判定せず、IT法務に対応できる弁護士へ確認する対象として印を付けておくだけでも、後の対応が進めやすくなります。

問題のある利用は代替や隔離で是正しておく

確認の結果、条件に抵触する疑いのある利用が見つかった場合は、売却交渉が始まる前の是正が有効です。方法としては、代替ライブラリへの置き換え、義務が及ばない形へのシステム構成の分離、著作権表示の追加といった条件の充足があり、抵触の内容に応じて選びます。

交渉開始後に是正を始めると、開発に要した期間がそのぶん取引日程の遅れになり、クロージングの前提条件として扱われる可能性もあります。売却検討の初期に着手するほど、費用と日程の両面で選択肢が残ります。

開発担当者の知見を文書に残しておく

見落とされがちな準備が、開発担当者の知見の文書化です。どのOSSを、なぜ採用し、どう組み込んだのかという経緯は、担当したエンジニアの記憶にしかない場合が多いためです。

中小のIT企業では、開発の中心人物が退職すると、デューデリジェンスでの質問に誰も答えられなくなる事態が起こり得ます。調査で回答が滞れば、管理体制そのものへの懸念として買い手候補の評価に影響しやすくなります。在籍しているうちにヒアリングを行い、採用経緯と組み込みの構成を記録に残しておくことは、費用をかけずに進められる準備です。

M&AとOSSライセンスでよくある質問

OSSライセンスとM&Aについて、売り手からよく寄せられる疑問に回答します。

OSSを使っていること自体が売却で不利になるのですか?

不利にはなりません。OSSの利用は現代のソフトウェア開発では標準的であり、買い手候補もそれを前提として調査に臨んでいます。

評価が分かれるのは、利用の有無ではなく、何をどう使っているかを管理し、説明できる状態かどうかです。一覧があり、組み込み方を説明でき、懸念には是正の方針が示せる会社であれば、OSSを広く使っていても管理体制への評価はむしろ保たれます。

受託開発の会社でもOSSライセンスは問題になるのですか?

問題になり得ます。納品したシステムにOSSを組み込んでいる場合、OSSのライセンス条件と、顧客との契約で定めた著作権の帰属や利用条件との整合が論点になるためです。

自社製品を持たない会社でも、過去の納品物にどのOSSを使ったか、顧客との契約との間に不整合がないかは、デューデリジェンスの確認対象になります。受託中心の会社も、納品実績と契約内容の照合という形で同じ準備が要ると考えてください。

自社で判断できない場合は誰に相談すればよいのですか?

論点ごとに相談先が分かれます。ライセンス条件の法的な判断はIT法務に対応できる弁護士、ソースコード内の利用状況の調査は専門の調査会社や調査ツール、そして売却条件への影響の見立てと交渉方針はFAという分担です。

それぞれに個別に依頼することもできますが、OSSの論点は売却スケジュールや価格交渉と絡み合うため、売却の相談と一体で進める方が手戻りを避けやすくなります。売却を視野に入れている段階であれば、まず売り手側の支援者に全体の段取りから相談する進め方が現実的です。

まとめ

M&AにおけるOSSライセンスは、「使っているかどうか」ではなく「管理し、説明できるか」が問われる論点です。違反の指摘は技術の問題で終わらず、価格、表明保証や特別補償、クロージングの前提条件という形で売却条件に波及します。

一方で、棚卸し、ライセンスの仕分け、代替や隔離による是正、開発担当者の知見の文書化という4つの準備は、いずれも売り手が売却検討の初期から進められるものです。着手が早いほど、費用と日程の選択肢が残ります。

OSSに限らず、デューデリジェンス全体への備え方は以下の記事で解説しています。開示資料の準備を体系立てて進める参考になります。

事業売却で失敗しないための「デュー・デリジェンス(DD)」への対応

自社のOSS管理の状態に不安がある場合は、売却の進め方とあわせて、早めに売り手側の専門家へ相談することが、納得度の高い売却につながりやすくなります。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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