株式集約で少数株主の株式を買い取る進め方と3つの注意点を解説
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- M&Aの進め方
公開日:2026.08.05
2026.08.05
更新日:2026.08.05
2026.08.05
相続や名義株で株式が分散し、事業承継やM&Aを前に少数株主の株式を集約したいと考える経営者もいます。少数株主からの株式集約は、相手と合意して買い取る任意の交渉から始めるのが一般的です。ただし、誰からどう声をかけ、いくらで買い取るかを誤ると、少数株主とのトラブルにつながる場合があります。
本記事では、少数株主からの任意買取とは何か、集約する理由、交渉の順序と買取価格の決め方、買取の主体、応じない場合の対応まで解説します。株式の集約を検討している経営者の方に、進め方の材料になる内容です。
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少数株主からの株式の任意買取とは
少数株主からの株式の任意買取とは、経営者や会社が少数株主と合意して株式を買い取り、株式を集約する方法です。相手の同意を前提に進める点が特徴です。
株式が相続や名義株、役員や従業員の退職などで分散すると、少数株主が生じます。任意買取は、こうした少数株主と売買の条件を協議し、譲渡対価を支払って株式を買い取る方法です。手続きが比較的簡素な一方、相手に売却の意思があることが前提になります。少数株主の同意を得ずに集約する強制的な手法もありますが、まずは任意買取から検討するのが一般的です。
株式集約の手法の全体像については、以下の記事で解説しています。
M&Aや事業承継の前に少数株主の株式を集約する理由
少数株主の株式を集約するのは、M&Aや事業承継を円滑に進めるためです。株式が分散したままだと、承継や売却の場面で支障が出る場合があります。次の3つの主な理由を確認します。
- 買い手候補が株式の100%取得を求めるため
- 株式が分散すると評価や売却に影響するため
- 意思決定や株主対応に支障が出るため
それぞれを順に解説します。
買い手候補が株式の100%取得を求めるため
少数株主の株式を集約する理由の一つは、買い手候補が株式の100%取得を求めるためです。少数株主が一部でも残ると、買い手候補が経営や手続きの負担を懸念する場合があるためです。
少数株主が残ると、買い手候補は、株主総会の運営や、株主による権利行使のリスクを負うことになります。売り手として、買い手候補が100%の取得を求める理由を理解しておくことで、事前の集約の必要性を把握しやすくなります。
株式が分散すると評価や売却に影響するため
株式が分散していると、会社の評価や売却に影響する場合があります。株式が分散した会社は、買い手候補から、権利関係が整理されていないと見られることがあるためです。
株式の分散は、権利関係の確認や集約の手間となり、買い手候補の評価に影響しやすくなります。売却そのものが進みにくくなる場合もあります。分散を解消しておくことで、売却の手続きを進めやすくなります。
意思決定や株主対応に支障が出るため
株式が分散すると、日頃の意思決定や株主対応に支障が出る場合があります。株主総会の運営や、株主への通知、権利行使への対応に手間がかかるためです。
少数株主が多いと、株主総会の招集や決議、株主名簿の管理、配当の支払いなどの対応が増えます。所在が分からない株主がいると、手続きが滞ることもあります。集約によって、こうした株主対応の負担を抑えられる場合があります。
少数株主への買取交渉を進める順序
少数株主から株式を買い取る際は、交渉を進める順序を考えます。順序を誤ると、交渉が難航したり、条件がまとまりにくくなったりする場合があります。次の3つの順序を確認します。
- 株式保有の経緯がわかる相手から声をかける
- 協力が得られやすい株主から先に進める
- 対立のある相手は進め方を慎重に検討する
それぞれを順に解説します。
株式保有の経緯がわかる相手から声をかける
最初に、株式保有の経緯がわかる相手から声をかけます。名義株や相続など、どのような経緯で株式を持っているかを把握してから交渉を始めるためです。
株主名簿や過去の経緯を確認し、名義だけを貸した名義株か、相続で取得した株式か、当初からの出資者かを把握します。経緯によって、買取の進め方や価格の考え方が変わります。誰が、どのような経緯で株式を持っているかを確認してから声をかける必要があります。
協力が得られやすい株主から先に進める
次に、協力が得られやすい株主から先に進めます。合意できる株主から買取を進めることで、集約の見通しを立てやすくなるためです。
経営者と関係が良好な株主や、売却の意向がある株主から交渉を進めます。先に一定の株式を集約できると、その後の交渉の見通しが立ちやすくなります。協力が得られやすい相手から順に進めることが望ましいです。
対立のある相手は進め方を慎重に検討する
経営者と対立のある相手には、進め方を慎重に検討します。過去の経緯から感情的な対立がある場合、直接の交渉が難航することがあるためです。
対立のある株主には、誰が交渉の窓口となるか、どのような順序で話すかを検討します。経営者が直接話すと感情的になる場合は、専門家や第三者を交えて進める方法もあります。相手との関係を踏まえ、進め方を慎重に検討する必要があります。
少数株主からの買取価格の決め方
少数株主から株式を買い取る際は、買取価格の決め方を押さえておきます。非上場株式の価格は一律に決まらず、価格をめぐって争いが生じる場合があります。次の3つを確認します。
- 払込金額や当初の取得価額との違いを理解する
- 相続税評価額との乖離に注意する
- M&Aの売却価格との差から生じる争いを避ける
それぞれを順に解説します。
払込金額や当初の取得価額との違いを理解する
買取価格を決める際は、かつての額面(券面額)や当初の払込金額と、実際の株式の価値は異なることを理解しておきます。額面株式の制度は現在の会社法にはなく、株式の価値は、会社の資産や収益力によって決まるためです。
非上場株式の評価には、会社の純資産をもとにする方法や、収益力をもとにする方法など、複数の方法があります。
相続税評価額との乖離に注意する
買取価格と相続税評価額との乖離に注意します。買取価格が相続税評価額と大きく異なると、みなし贈与などの税務上の論点が生じる場合があるためです。
相続税評価額は、財産評価の基準として算定される価格で、実際の買取価格とは異なる場合があります。買取価格が著しく低いと、少数株主から経営者への贈与とみなされることがあります。なお、税務上の適正な価額の考え方は、買い取るのが経営者個人か会社かによって異なります。特に会社が自己株式として取得する場合は、相続税評価額をそのまま用いると否認されるおそれがあるため、価格の設定は事前に税理士へ確認する必要があります。
※参考:国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」
M&Aの売却価格との差から生じる争いを避ける
M&Aの売却価格との差から生じる争いを避けます。少数株主から買い取った後に、会社を高い価格で売却し、価格差が大きいと、少数株主との争いにつながる場合があるためです。
少数株主から買い取った金額と、その後のM&Aの売却金額に大きな差があると、廉価で売却させられたとして紛争に発展することがあります。M&Aの検討中の情報は、秘密保持の観点から扱う範囲を限定します。買取の時期や価格の説明を、適切な範囲とタイミングで進めることが望ましいです。
買取の主体を経営者と会社のどちらにするか
少数株主から株式を買い取る主体には、経営者個人と会社の2つがあります。資金や税務の面から、どちらが買い取るかを検討します。次の2つを確認します。
- 経営者個人が買い取る
- 会社が自己株式として買い取る
それぞれを順に解説します。
経営者個人が買い取る
経営者個人が買い取る方法は、手続きが比較的簡素です。少数株主と経営者の間で売買の条件を協議し、譲渡対価を支払って株式を買い取ります。
経営者が買い取ると、株式を経営者に集約できます。一方、買取に必要な資金を経営者個人が用意する必要があり、株式の数が多い場合は資金の負担が大きくなります。資金の準備ができるかを踏まえて検討する必要があります。
会社が自己株式として買い取る
会社が自己株式として買い取る方法は、経営者個人に資金がない場合に検討します。会社が株主から自社の株式を取得し、自己株式として保有します。
特定の株主から自己株式を取得する場合、原則として株主総会の特別決議が必要になり、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が求められます。取得できる金額は、分配可能額の範囲に限られます。また、買取価格によっては、株主にみなし配当などの税務上の論点が生じる場合があります。
少数株主が買取に応じない場合の対応
少数株主が買取に応じない場合の対応も、あらかじめ考えておきます。任意の買取は相手の同意が前提のため、応じない株主が出る場合があります。次の3つの対応を確認します。
- 応じない理由を確認する
- 条件を見直して再交渉する
- 強制的な手法の検討に切り替える
それぞれを順に解説します。
応じない理由を確認する
まず、少数株主が買取に応じない理由を確認します。価格への不満、感情的な対立、情報の不足など、応じない理由によって対応が変わるためです。
株主が何を懸念しているかを確認し、価格の問題か、会社への不信か、説明の不足かを見極めます。理由が分からないまま交渉を続けると、対立が深まることがあります。応じない理由を確認したうえで、次の対応を検討する必要があります。
条件を見直して再交渉する
応じない理由を踏まえ、条件を見直して再交渉します。価格や支払方法などの条件を調整することで、合意に近づく場合があるためです。
買取価格や支払いの時期、分割での支払いなど、株主が懸念する点に応じて条件を見直します。株式保有の経緯や株主の事情を踏まえて、双方が納得しやすい条件を探ります。再交渉でも合意に至らない場合は、次の手段を検討します。
強制的な手法の検討に切り替える
任意の交渉で合意に至らない場合は、強制的な手法の検討に切り替えます。会社法には、一定の要件を満たせば少数株主の同意なく株式を取得できる制度があるためです。
総株主の議決権の10分の9(90%)以上を保有する場合に利用できる特別支配株主の株式等売渡請求、株主総会の特別決議による株式併合、全部取得条項付種類株式の活用など、要件を満たす場合に検討できる手法があります。ただし、少数株主の対抗手段もあるため、手続きの適正さが必要になります。強制的な手法の詳細は、以下の記事で解説しています。
少数株主の株式集約は売り手目線の専門家に相談する
少数株主の株式集約は、売り手目線の専門家に相談する方法があります。交渉の進め方や価格の見立て、税務の判断が関わるためです。次の2つを確認します。
- 交渉の計画と価格の見立てを専門家と立てる
- 売り手の立場でFAに相談する
それぞれを順に解説します。
交渉の計画と価格の見立てを専門家と立てる
交渉の計画と価格の見立てを、専門家とともに立てます。誰から、どのような順序で、いくらの予算で買い取るかを、あらかじめ計画しておくためです。
株式保有の経緯の確認、価格の算定、交渉の順序、資金の準備などを、専門家とともに計画します。税務は税理士、株式の評価や契約は弁護士など、論点に応じた専門家に相談します。計画を立てて進めることで、集約を進めやすくなります。
売り手の立場でFAに相談する
M&Aを前提に株式を集約するなら、売り手の立場で支援するFAに相談する方法があります。株式の集約から売却までを見据えて進めたい場合に適しています。
M&Aの支援には、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る仲介と、依頼者側のみを支援するFAがあり、立場が異なります。FAは依頼者である売り手のみを支援するため、売り手の意向を踏まえた進め方を整理しやすくなります。FAサービスの内容は、以下の記事で解説しています。
「FAサービス」の売却アプローチとは?事業承継M&Aを有利に進めるための知識
株式集約と少数株主に関するよくある質問
株式集約と少数株主について、よく寄せられる質問を確認します。
少数株主から株式を買い取ると税金はかかりますか?
少数株主から株式を買い取ると、税金がかかる場合があります。株式を売却する少数株主には、株式の譲渡による所得として課税される場合があります。また、会社が自己株式として買い取る場合は、売却する株主にみなし配当が生じることがあります。買取価格が相続税評価額と大きく異なると、みなし贈与が問題になる場合もあります。税務の取り扱いは、専門家に確認しながら進めることが望ましいです。
名義株が残っている場合はどのように集約しますか?
名義株が残っている場合は、実質的な権利者を確認したうえで集約します。名義株は、名義上の株主と実際に出資した株主が一致していない株式です。名義を貸した株主に、実質的な権利者を確認する書面に署名や押印を求め、株主名簿の名義を書き換えます。
ただし、名義人本人が既に亡くなっている場合や、相続人が実質的な権利者の存在を認めない場合には、書面による確認では解決しません。この場合は、出資の原資を負担したのは誰か、配当を受領していたのは誰か、株主総会で議決権を行使していたのは誰かといった事実関係を積み上げて主張する必要があり、最終的には訴訟で確認を求めることもあります。名義株はM&Aの買い手による調査でも必ず確認される項目であり、早い段階で弁護士へ相談することが重要です。
所在がわからない少数株主がいる場合はどうすればよいですか?
所在がわからない少数株主がいる場合は、会社法に定められた制度を利用できる場合があります。5年間継続して通知が到達せず、かつ配当も受領されていない場合には、その株主の株式を競売または売却できる制度があります(産業競争力強化法の特例により、1年に短縮される場合があります)。要件や手続きは細かく定められているため、専門家や会社法の規定を確認しながら進める必要があります。連絡が取れない株主がいる場合は、早めに対応を検討します。
M&Aの前にどこまで株式を集約する必要がありますか?
M&Aの前にどこまで集約が必要かは、買い手候補の意向によって異なります。買い手候補は、株主総会の運営や権利行使のリスクを避けるため、原則として株式の100%取得を求めることが多いです。すべての集約が難しい場合は、会社分割や事業譲渡により対象事業を切り出して譲渡し、少数株主が残る会社を存続させる方法もあります。ただし、いずれも株主総会の決議や債権者保護手続などが必要になるため、実行可能性は個別に検討が必要です。買い手候補と相談しながら、必要な集約の範囲を確認します。
まとめ
少数株主からの株式集約は、相手と合意して株式を買い取る任意の交渉から始めるのが一般的です。相続や名義株で分散した株式を集約することで、M&Aや事業承継を進めやすくなります。
買取交渉は、株式保有の経緯がわかる相手から声をかけ、協力が得られやすい株主から進め、対立のある相手は進め方を慎重に検討します。買取価格は、払込金額や取得価額、相続税評価額との違いを踏まえて決め、M&Aの売却価格との差から生じる争いに注意します。買取の主体は経営者個人か会社かを、資金や税務の面から検討します。
少数株主が応じない場合は、理由の確認や条件の見直しを行い、合意に至らないときは強制的な手法の検討に切り替えます。株式集約は、交渉や価格、税務の判断が関わるため、売り手の立場に立つ専門家への相談が、円滑な集約につながりやすくなります。
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