M&Aでソースコードの著作権は誰のもの?帰属の3パターンと売却前に整える契約を解説
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- M&Aの進め方
公開日:2026.09.29
2026.09.29
更新日:2026.09.29
2026.09.29
ソースコードの著作権は、作成した人によって帰属が変わることがあります。3つの帰属パターン、譲渡契約で抜けやすい3つの条項、オープンソースと生成AIの確認事項、価格への反映、売却前に権利を整えるステップを解説します。

自社システムのソースコードは、当然に会社のものだと考えていた。ところが調査で、外注先に権利が残っていると指摘される。ソフトウェアを保有する会社の売却では、起こることがある事態です。著作権は作成した人に発生するため、契約で移していなければ会社のものになりません。
本記事では、帰属の3パターンと譲渡契約で抜けやすい条項を示したうえで、オープンソースと生成AIの論点を解説します。あわせて、価格への反映と売却前に権利を整えるステップを示します。
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M&Aではソースコードの著作権が会社に帰属しているかを買い手候補が確認する
プログラムは、著作権法上の著作物です(著作権法第10条第1項第9号)。著作権は創作した時点で発生し、作成した人に帰属します。
買い手候補が確認するのは、会社が自由に使い、改変し、第三者へ提供できる状態かどうかです。権利が外部に残っていれば、事業の継続が他者の意向に左右されます。
ソフトウェアが事業の中核であれば、権利関係は価格を左右します。改修も第三者への提供もできない状態であれば、事業価値が下がるためです。
開発から年月が経っているほど、経緯を知る人も減ります。まずは自社が使用しているソフトウェアを列挙し、誰が作成したかを書き出します。
ソフトウェア・システム開発会社のM&A相場については、下記もご参照ください。
システム開発業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
ソースコードの著作権が誰に帰属するかの3つのパターン
帰属は、作成した人によって分かれます。パターンは以下の3つです。
- 従業員が業務で作成したコードは職務著作として会社に帰属する
- 外注や業務委託で作成したコードは譲渡の契約がなければ開発者に残る
- 創業者や役員が会社の設立前に個人で作成したコードは個人に帰属する
それぞれを順に解説します。
従業員が業務で作成したコードは職務著作として会社に帰属する
雇用関係にある従業員の成果は、会社に帰属します。 著作権法第15条第2項は、法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物について、一定の要件を満たす場合に法人等を著作者とする定めを置いています。
要件を満たすかは、契約や勤務規則の定めにも左右されます。就業規則に知的財産の帰属に関する条項があるかを確認します。
外注や業務委託で作成したコードは譲渡の契約がなければ開発者に残る
扱いが分かれるのが、外注したコードです。 委託先は雇用関係にないため、職務著作の規定は及びません。
開発を依頼して代金を支払っただけでは、著作権は移りません。譲渡の合意が契約書にあって初めて、会社のものになります。
過去の開発委託契約を集め、著作権の帰属に関する条項の有無を確認します。
創業者や役員が会社の設立前に個人で作成したコードは個人に帰属する
設立前のコードも、論点になります。 創業者が個人で作ったプログラムを、会社が使い続けている例があります。
会社との雇用関係がない時点の成果であれば、権利は個人に残ります。代表者個人が権利を持ったまま退任すれば、会社は使用の根拠を失いかねません。
設立前後の開発の経緯を確認し、必要であれば会社へ譲渡する契約を締結します。
著作権の譲渡契約で抜けやすい3つの条項
契約があっても、内容が不十分な場合があります。抜けやすい条項は以下の3つです。
- 第27条と第28条の権利を明記しないと改変の権利が外注先に残ると推定される
- 著作者人格権の不行使を定めないと改変に異議を受けるおそれがある
- 外注先が汎用部品やライブラリの著作権を手元に残している
それぞれを順に解説します。
第27条と第28条の権利を明記しないと改変の権利が外注先に残ると推定される
見落とされやすいのが、条文の特掲です。 文化庁は、著作権の全部を譲渡する場合には「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」と明記する必要があるとしています。
明記しなければ、二次的著作物に関する権利は譲渡した側に留保されたものと推定されます(同法第61条第2項)。
改変に関わる権利が外注先に残れば、システムの改修に支障が生じます。契約書の文言を確認します。
著作者人格権の不行使を定めないと改変に異議を受けるおそれがある
人格権は、譲渡できません。 著作者人格権は著作者に専属する権利とされており(同法第59条)、契約で移すことができません。
実務では、著作者が人格権を行使しない旨の条項を置きます。定めがなければ、改変に対して異議を受ける可能性が残ります。
契約書に不行使の条項があるかを確認します。なければ、覚書での追加を検討します。
外注先が汎用部品やライブラリの著作権を手元に残している
すべてが譲渡されているとは限りません。 委託先が従前から保有していた汎用の部品やライブラリは、納品物に含まれていても譲渡の対象から除かれる場合があります。
契約書に除外の定めがあれば、該当部分の権利は委託先に残ります。除外されている範囲と利用できる条件を確認します。
IPAが公表するモデル契約も、条項を検討する際の参考になります。
オープンソースと生成AIのコードで確認されること
自社で作ったコード以外も、確認の対象です。押さえる点は以下の3つです。
- GPLなどのライセンス条件によってはソースコードの公開義務が生じる
- ライセンス表示や著作権表示の欠落が指摘される
- 生成AIで作成したコードは権利の有無と他者の権利侵害を確認される
それぞれを順に解説します。
GPLなどのライセンス条件によってはソースコードの公開義務が生じる
オープンソースにも条件があります。 無償で利用できても、利用の仕方によっては義務が生じるライセンスがあります。
条件の例は次のとおりです。
- 改変したソースコードの公開を求めるもの
- 同じライセンスでの配布を求めるもの
- 著作権表示の保持を求めるもの
自社製品に組み込んでいれば、公開義務の有無が論点になります。利用しているオープンソースとライセンスの種類を一覧化します。
OSSライセンスの確認ポイントについては、下記で詳しく解説しています。
M&AにおけるOSSライセンスとは?調査で見られる3つのポイントと売り手の準備
ライセンス表示や著作権表示の欠落が指摘される
表示の義務を怠っている例も見られます。 多くのライセンスは、著作権表示やライセンス文の保持を条件としています。
欠落していれば、ライセンス違反として指摘されます。買い手候補にとっては、取得後に是正が必要な事項です。
製品に同梱している表示ファイルを確認し、利用中のライセンスと突き合わせます。
生成AIで作成したコードは権利の有無と他者の権利侵害を確認される
生成AIの利用状況も問われます。 出力されたコードに著作権が発生するかは、創作的な関与の程度によって判断が分かれます。
あわせて、出力が他者の著作物に類似していないかも論点です。既存のコードと同一または類似であれば、権利侵害となる可能性があります。
利用したサービスと利用範囲を記録し、買い手候補からの質問に答えられるようにします。
ソースコードの著作権の不備が価格と契約に反映される形
不備は、3つの経路で条件に表れます。押さえる点は以下のとおりです。
- 知的財産の表明保証と特別補償の対象になる
- 外注先や創業者からの権利の取得をクロージングの前提条件にされる
- 再開発や権利の買取にかかる費用が価格から差し引かれる
それぞれを順に解説します。
知的財産の表明保証と特別補償の対象になる
契約条項で処理されるのが基本です。 最終契約では、知的財産権が会社に帰属し、第三者の権利を侵害していない旨の表明保証が求められます。
違反が判明すれば、補償の義務が生じます。特定の論点については、個別の補償条項が置かれる場合もあります。
保証できる範囲を把握したうえで、弁護士などの専門家と条項を確認します。
表明保証条項の内容については、下記で解説しています。
最終契約で確認したい項目は、弁護士監修のチェックリストにまとめています。無料でダウンロードできます。
【無料資料】最終契約前に弁護士と共に確認するべき契約書の項目
外注先や創業者からの権利の取得をクロージングの前提条件にされる
取得が条件とされる場合もあります。 権利が外部に残ったままでは、買い手候補は事業を安定して運営できないためです。
前提条件とされれば、権利を取得できなければ取引は実行されません。外注先や創業者の協力が得られるかが、取引の成立に影響します。
該当する相手方を特定し、交渉の可否を早い段階で見極めます。
再開発や権利の買取にかかる費用が価格から差し引かれる
費用が見込まれれば、価格に反映されます。 権利を取得できなければ、買い手候補は作り直すか、使用料を払い続けることになります。
再開発の費用は、規模によって大きく変わります。買い手候補は保守的に見積もるため、差し引かれる金額も大きくなりがちです。
自社で概算を取り、根拠とともに示します。
売却前にソースコードの権利を整えるステップ
準備は、交渉の前に進めます。ステップは以下の4つです。
- ソフトウェアごとに作成者と契約書を対応付けた一覧を作る
- 権利が外注先や個人に残っているコードは遡って譲渡契約を結ぶ
- 譲渡を受けられない部分は利用許諾の範囲と期間を契約で確保する
- OSSの利用状況を確認してライセンスの一覧を作る
それぞれを順に解説します。
ソフトウェアごとに作成者と契約書を対応付けた一覧を作る
出発点は、現状の把握です。 どのコードを誰が作ったかが分からなければ、対応も決められません。
一覧に記載する項目は次のとおりです。
- ソフトウェア名と用途
- 作成者(自社の従業員か、外注先か、個人か)
- 開発時期と契約書の有無
- 著作権の帰属に関する条項の内容
契約書が見つからない部分も記録します。不明であること自体が、把握しておきたい事実です。
売却前の準備全般(磨き上げ)と、知的財産の相談先については、下記で解説しています。
M&Aの磨き上げとは?売却価格を高める5つの領域と進め方を解説
M&A・事業承継に強い弁理士事務所5選!対応領域や強みを紹介
デューデリジェンス前に押さえておきたい注意点は、資料でも確認できます。
権利が外注先や個人に残っているコードは遡って譲渡契約を結ぶ
過去の分も、契約で整えられます。 開発から年月が経っていても、譲渡の合意は可能です。
進め方は次のとおりです。
- 対象となるソフトウェアと範囲を特定する
- 第27条と第28条の権利を含める文言を入れる
- 著作者人格権の不行使を定める
- 対価の有無と金額を決める
相手方に費用を求められる場合もあります。交渉の前に、優先度の高いものから着手します。
譲渡を受けられない部分は利用許諾の範囲と期間を契約で確保する
譲渡が難しい場合の代替も用意します。 汎用部品など、委託先が他の案件でも使うものは譲渡に応じてもらえません。
確保する条件は次のとおりです。
- 利用できる範囲(改変、再頒布の可否)
- 期間と、更新の条件
- 第三者へ承継できるか
M&Aで会社の支配が変わっても利用を続けられるかが要点です。承継に関する条項を確認します。
OSSの利用状況を確認してライセンスの一覧を作る
オープンソースも棚卸しします。 開発者が個別に導入していれば、経営者は把握していません。
一覧に記載する項目は次のとおりです。
- 利用しているソフトウェア名とバージョン
- ライセンスの種類
- 組み込んでいる製品と利用の形態
専用の検出ツールを使う方法もあります。開発の担当者へ、利用状況の洗い出しを依頼します。
M&Aの手法で変わるソースコードの著作権の移り方
手法によって、権利の移り方は変わります。押さえる点は以下の3つです。
- 株式譲渡では会社が持つ著作権がそのまま残る
- 事業譲渡では著作権を譲渡し登録すれば第三者に対抗できる
- 他社から利用許諾を受けているソフトウェアは契約の承継に相手方の承諾が要る
それぞれを順に解説します。
株式譲渡では会社が持つ著作権がそのまま残る
株式譲渡では、権利は移転しません。 会社が保有する著作権は、会社に帰属したまま存続します。
手続きが不要である一方、権利が会社に帰属していない部分は解決しません。株主が替わっても、外注先に残った権利は外注先のままです。
権利関係の確認は、スキームにかかわらず必要になります。
事業譲渡では著作権を譲渡し登録すれば第三者に対抗できる
事業譲渡では、著作権も個別に移します。 譲渡の合意に加えて、登録という手段も用意されています。
プログラムの著作物については、SOFTICが登録の業務を行っています。著作権の移転について登録すれば、第三者に対して権利を主張できます(同法第77条)。
登録には、譲渡証書など登録の原因を証明する書面が必要です。手続きの要否を弁護士などの専門家と検討します。
他社から利用許諾を受けているソフトウェアは契約の承継に相手方の承諾が要る
許諾を受けて使っているものは、別の扱いです。 ライセンス契約上の地位を移すには、相手方の承諾が要ります。
市販のソフトウェアやクラウドサービスも同様です。契約書に譲渡を制限する定めがあるかを確認します。
承諾が得られなければ、買い手候補が新規に契約し直すことになります。対象を一覧化し、承諾の可否を照会します。
システムとデータを切り分けて引き渡す際の進め方は、下記で解説しています。
カーブアウトのシステム分離とは?3つの進め方と売り手の注意点を解説
M&Aとソースコードの著作権に関するよくある質問
M&Aとソースコードの著作権について、相談の現場で多く寄せられる質問を3つ取り上げます。退職した社員が在職中に作ったコードの扱い、著作権登録の要否、買い手候補へどこまで開示するかの3点です。
退職した社員が在職中に作ったコードも会社のものですか?
職務著作の要件を満たしていれば、会社が著作者となります。退職後も帰属は変わりません。ただし要件を満たすかは、勤務規則や契約の定めにも左右されます。就業規則に知的財産の帰属に関する条項があるかを確認し、判断に迷う場合は弁護士などの専門家へ相談します。
著作権を登録していないと権利を主張できませんか?
著作権は登録しなくても発生します。創作した時点で権利が生じるためです。ただし著作権を譲り受けた場合、登録をしなければ第三者に対して権利を主張できない場面があります。事業譲渡で著作権を取得する場合は、登録の要否を検討します。
買い手候補からソースコードの開示を求められたら全部見せる必要がありますか?
段階を踏んで対応します。秘密保持契約を締結したうえで、開示の範囲と方法を取り決めます。技術的な中核部分については、専門家のみが閲覧する形や、成立後に開示する形も選択肢です。開示の条件を、FAと買い手候補で事前に合意します。
開示資料の管理に使うデータルームの運用は、下記で解説しています。
M&Aにおけるデータルームとは?VDRの活用方法や注意点も解説
まとめ
ソースコードの著作権は、作成した人に発生します。代金を支払って開発を依頼しても、譲渡の契約がなければ会社のものになりません。
要点は以下のとおりです。
- 従業員の成果は職務著作として会社に帰属するが、外注先の成果は契約次第
- 譲渡契約には、第27条と第28条の権利を含める文言が要る
- 明記がなければ、改変に関わる権利は譲渡した側に留保されたと推定される
- オープンソースと生成AIの利用状況も、調査の対象になる
- 権利が外部に残っていれば、前提条件や価格の減額につながる
準備の出発点は、一覧を作ることです。まずはソフトウェアごとに作成者と契約書を対応付けてください。
売却前の準備と契約の確認点は、こちらの資料でも確認できます。
【無料資料】オーナー経営者がM&A仲介会社から事業売却の提案を受けたら、弁護士と一緒に最初に読むべき 事業承継・M&A完全ガイド
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