M&A契約書の種類とは?主な条項や作成時の注意点も解説
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- M&Aの進め方
公開日:2026.05.30
2026.05.30
更新日:2026.05.30
2026.05.30
M&Aを進める際には、秘密保持契約書から最終契約書まで、複数の契約書・書面を段階的に取り交わしていきます。それぞれの契約書・書面には異なる役割があり、記載事項や法的拘束力の有無や範囲も異なります。
特に売り手にとっては、契約書の内容を十分に理解しないまま署名することで、想定外の責任や制約を負うリスクがあります。
本記事では、M&Aで使われる主な契約書の種類と、最終契約書の主要条項や作成時の注意点を解説します。
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M&A契約書とは
M&A契約書は、M&Aの各工程で当事者間の合意内容や取引条件を書面化したものです。秘密保持や条件交渉、最終的な譲渡に至るまでの複数の段階で、それぞれ異なる契約書・書面が交わされます。主な論点は以下の通りです。
- M&A契約書の定義
- 契約書がM&Aで果たす役割
それぞれを順に見ていきます。
M&A契約書の定義
M&A契約書とは、M&Aの取引に関係する当事者の合意内容や条件を書面で取り交わす文書の総称です。秘密保持の合意、初期段階の意向表明、基本合意、最終契約まで、M&Aの進行に応じて複数の契約書・書面が用いられます。
各契約書は法的拘束力や記載事項が異なり、適切な書面を適切なタイミングで取り交わすことで、当事者間のトラブルを抑えながら取引を進めやすくなります。
契約書がM&Aで果たす役割
M&A契約書は、当事者間の合意内容を客観的な形で残し、後日のトラブルを防ぐ役割を担います。口頭での合意だけでは、解釈の食い違いや認識のずれが生じやすく、譲渡後の責任関係や条件をめぐる争いの原因になります。
書面で合意内容や条件を明確にしておくことで、譲渡対価、表明保証、補償の範囲、競業避止義務などの重要な論点について、双方の認識を一致させた状態で取引を進められます。
M&Aで使われる主な契約書の種類
M&Aの進行に応じて、複数の契約書・書面を段階的に取り交わします。それぞれの契約書には、交わすタイミングや法的拘束力に違いがあるため、特徴を把握しておくことが大切です。主な契約書・書面は以下の通りです。
- 秘密保持契約書(NDA)
- 意向表明書(LOI)
- 基本合意書(MOU)
- 最終契約書
それぞれを順に見ていきます。
秘密保持契約書(NDA)
秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement、NDA)は、M&Aの初期段階で当事者間の情報を保護するために取り交わす契約書です。M&Aの検討情報や開示される財務データ、顧客情報などが外部に漏れないよう、当事者に守秘義務を課す内容です。
NDAは、買い手候補と具体的な情報開示を行う前に締結されるのが一般的です。違反した場合の損害賠償責任や、契約終了後の守秘義務の継続期間なども明記します。秘密保持契約の詳細は、以下の記事もご覧ください。
意向表明書(LOI)
意向表明書(Letter of Intent、LOI)は、買い手が売り手に対してM&Aを進める意向を示すために提出する書面です。提示する取得価額や買収スキーム、希望するスケジュールなどを記載します。
LOIは主要な取引条件について法的拘束力を持たない形で作成されることが多い一方、両当事者がM&Aの方向性を確認し、その後の交渉の出発点としての役割を果たします。複数の買い手候補がいる場合、売り手はLOIを比較したうえで交渉相手を絞り込みます。
基本合意書(MOU)
基本合意書(Memorandum of Understanding、MOU)は、初期協議を経て大枠の条件が固まった段階で取り交わす書面です。想定取引価額、買収スキーム、独占交渉権、デューデリジェンスの実施、最終契約までのスケジュールなどを記載することが一般的です。
MOUは主要な取引条件について法的拘束力を限定することが多い一方、独占交渉権や秘密保持などの一部条項には拘束力が認められる場合があります。基本合意書の詳細は、以下の記事もご覧ください。
なお、買い手間における競争環境維持のため、この段階で特定の買い手候補に限定せず、複数の買い手候補からのデューディリジェンスを受け入れる場合もあり、その場合はMOUは締結せず進めることとなります。
M&Aの基本合意書(MOU)とは?記載内容・法的拘束力・独占交渉権と売り手の注意点を解説
最終契約書
最終契約書は、M&Aの取引内容を最終的に定める契約書です。株式譲渡の場合は株式譲渡契約書(SPA)、事業譲渡の場合は事業譲渡契約書と呼ばれます。
最終契約書には、譲渡対象、譲渡対価、表明保証、補償条項、競業避止義務、クロージング条件など、M&Aの実行に必要な事項が盛り込まれます。法的拘束力を持つ、取引の根幹となる書面であり、内容の精査が欠かせません。
最終契約書の主な条項
最終契約書には、譲渡条件や当事者の責任を定める複数の条項が含まれます。各条項の内容が、譲渡後のリスクや手取り額に直結するため、内容を理解しておくことが重要です。主な条項は以下の通りです。
- 譲渡対象や対価に関する条項
- 表明保証に関する条項
- 補償に関する条項
- 競業避止義務に関する条項
- クロージングに関する条項
それぞれを順に見ていきます。
譲渡対象や対価に関する条項
譲渡対象となる株式や事業の範囲と、譲渡対価の金額、支払い方法、支払い時期を明記します。株式譲渡では譲渡する株式数と1株あたりの単価、事業譲渡では譲渡対象資産・負債のリストと評価額を詳細に記載します。
譲渡対象が曖昧だと、クロージング後に承継範囲をめぐる争いが生じる場合があります。資産・負債の一覧や、引き継ぎ対象となる契約・許認可も明確に定めることが重要です。
表明保証に関する条項
表明保証条項は、売り手が買い手に対して、譲渡対象の状態や事実関係について一定時点で真実かつ正確であることを表明し、保証する条項です。財務諸表の正確性、簿外債務の不存在、係争中の訴訟の有無、許認可の取得状況などが対象になる場合があります。
表明保証の範囲が広いほど、売り手の責任が重くなる可能性があります。買い手から提示された表明保証条項を慎重に検討し、自社が保証できる範囲に絞り込むことが重要です。表明保証条項の詳細は、以下の記事もご覧ください。なお、契約上は、買い手から売り手に対する表明保証も盛り込まれますが、基本的に売買対象物に対する保証責任は売り手に帰属するものであり、買い手による保証は一般的な内容に限定されます。
補償に関する条項
補償条項は、クロージング後の特定事象が発生した場合に、売り手が買い手に補償する範囲と限度額を定める条項です。補償の上限額(キャップ)、補償請求が可能な期間、補償の最低額(バスケット)などが定められます。
補償条項は、売り手の譲渡後の責任範囲を定める重要な仕組みです。上限額や請求期間を売り手にとって不利にならないよう、契約交渉の段階で慎重に詰めることが欠かせません。
競業避止義務に関する条項
競業避止義務に関する条項は、譲渡後の一定期間、売り手が同一・類似の事業を行うことを制限する条項です。地理的範囲(日本国内・特定地域など)、対象事業の範囲、義務の継続期間などが定められます。
範囲や期間が広すぎると、売り手の譲渡後のキャリアや事業の自由度が大きく制限される場合があります。譲渡後のキャリアプランを踏まえて、競業避止義務の範囲を交渉することが大切です。
クロージングに関する条項
クロージング条項は、譲渡の効力発生に必要な前提条件と、当日に行う手続きを定める条項です。表明保証の正確性の維持継続に加え、株主総会の承認や許認可の取得などが、クロージングの前提条件として設定される場合があります。
前提条件が満たされない場合、契約内容によっては買い手側が取引を実行しない判断をできる場合があります。売り手としては、前提条件の内容を理解し、クロージング日までに条件を充足できる体制を整えることが重要です。
M&A契約書を作成する際の注意点
M&A契約書は、内容の精査と専門家との連携が、譲渡後のリスク管理を左右します。準備の質と確認の徹底が、譲渡条件の適正化につながります。具体的に押さえたい注意点は以下の通りです。
- 印紙税の取扱いを把握する
- ひな形を活用する際の留意点を確認する
- 表明保証の範囲を慎重に検討する
- 売り手の立場に立てる専門家とともに進める
それぞれを順に見ていきます。
印紙税の取扱いを把握する
M&Aで取り交わす契約書のうち、株式譲渡契約書は、契約書の記載内容によっては印紙税の課税対象外となる場合があります。一方、事業譲渡契約書は、契約書に記載された内容によって課税文書に該当する場合があり、記載金額等に応じて印紙税が発生する場合があります。
印紙税の取扱いは、契約書の種類と記載内容によって変わります。事業譲渡で大規模な取引を行う場合は、印紙税の負担額を事前に試算しておくことが大切です。
ひな形を活用する際の留意点を確認する
M&A契約書のひな形は、書籍やインターネット上で無料・有料で提供されています。標準的な条項を効率的に整える出発点として活用できる一方、すべての案件にそのまま当てはまるわけではありません。通常は、売却プロセスがある程度進んだ段階で、売り手側よりM&Aに精通した弁護士に依頼し、個別事情が反映されたM&A契約書を作成すべきです。
表明保証の範囲を慎重に検討する
表明保証は、売り手の譲渡後の責任を決める重要な条項です。買い手側は範囲を広く設定したい意向を持つ一方、売り手は自社が責任を負える範囲に絞り込みたい立場になります。
表明保証の対象、補償の上限額、補償請求が可能な期間など、複数の論点を組み合わせて条件を設計する必要があります。譲渡対価、補償上限、請求期間などとのバランスを踏まえて、慎重に交渉することが欠かせません。
売り手の立場に立てる専門家とともに進める
M&A契約書の作成や交渉へ関与する専門家には、仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)という2つの形態があります。仲介は売り手と買い手の双方と契約して間に立つ立場であり、FAは売り手または買い手のいずれか一方と契約して依頼者の利益を優先する立場です。報酬を依頼者側からのみ受け取るFAは、一般に利益相反が構造的に起こりにくいといえます。
売り手としては、自社の状況に応じて、利益相反が生じにくい支援者を選ぶ選択肢を持つことが、納得度の高い取引につながりやすくなります。仲介とFAの違いや選び方は、以下の記事もご覧ください。
M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説
まとめ
M&A契約書は、各工程で取り交わす契約書・書面の総称であり、秘密保持から最終契約まで、複数の契約書・書面が段階的に用いられます。各書面の役割と記載事項を把握することで、取引を安定的に進めやすくなります。
特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。
- 各契約書の役割と法的拘束力の違いを把握すること
- 最終契約書の主要条項を理解し、自社に不利な条件が入らないよう交渉すること
- 表明保証や補償条項の範囲を慎重に検討すること
- 売り手の立場に立てる専門家とともに進めること
M&A契約書の作成は、準備の質と専門家との連携によって、譲渡後のリスクを抑えながら取引を進めやすくする取り組みです。早い段階から契約書の論点を把握し、信頼できる専門家とともに進めることで、納得度の高い取引につながりやすくなります。
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