「M&A仲介サービス」の売却アプローチとは?事業承継M&Aを有利に進めるための知識
公開日:2024.11.18
2024.11.18
更新日:2024.11.18
2024.11.18
M&A仲介は「買いニーズとマッチングしていく」アプローチ
M&A仲介は中立の立場で売り手と買い手をマッチングするサービスです。
これまでの連載で、M&A仲介サービスは主に買いニーズを起点に成約案件を作っていく営業スタイルであることをお話ししました。つまり、「貴社に関心のある買い手がいるので一度会ってみてほしい」という営業です。
このような営業をきっかけにオーナー経営者が事業売却に臨む場合には、当然、その特定の買い手との交渉が1対1で進められていくことになります。オーナー経営者が事業売却を検討し、M&A仲介会社に相談するケースにおいては、主にM&A仲介会社が買いニーズを把握している企業へ打診していきます。いずれのケースにおいても買いニーズとマッチングしていくアプローチである点に特徴があります。
「最短3ヵ月で成約」など、マッチングスピードがM&A仲介サービスの差別化ポイントとしてアピールされるケースがあるように、短期間での成約を可能にするマッチング力はM&A仲介サービスの魅力の一つです。各社は実際に、全国の企業から買いニーズを収集することで短期間での案件を成約させることを可能とするマッチング力を実現しているといえます。
ただし、「最善の買い手候補」を判断しにくいという難点も
一方で、M&A仲介会社にとっては、手数料を払ってくれる買い手に十分な投資案件機会を提供することも重要な仕事です。そのため、売り手と買い手が1対1の交渉を進めていくケースがよく見られ、買い手を1社紹介して、進まなければもう1社紹介するといったアプローチになりがちです。売り手オーナーからするとその候補先が最善の相手であるとは納得しづらく、意思決定がしにくい側面があります。
紹介された買い手候補の1社目で決まれば、最短3ヵ月といった短期間での事業売却も可能ですが、1社目がダメでもう1社、またダメでもう1社…という形でマッチング回数が増えるほど、全体の事業売却プロセスとして時間を要してしまうというデメリットもあります。
なお、仲介サービスのなかには買い手の競争環境を作るアプローチを採用するケースも存在しますが、こうした行為は、顧客である「安く買いたい買い手」の利益と相反する行動であるとも言えます。当然、買い手からの圧力もあるでしょう。仲介サービスが情報操作を行い、当事者よりも業者の利益を追求してしまうトラブル事例なども取り沙汰されているなか、どこまで売り手の利益に寄り添うことができるかは疑問が残るところです。
M&A仲介が向いているケース、あまり向かないケース
売却アプローチについては、早く成約させたいM&A支援業者と、納得のいく過程を経て納得のいく相手と進めたい売り手オーナーとの間で利益が相反するリスクが高いところです。成約スピードを優先させた場合には、当然、条件面(価格のみならずその他の契約条件を含む)で妥協せざるを得ないケースが増えていきます。こうした仲介サービスの売却アプローチは、事情があってとにかく早く事業売却を実現したいというケースでは、魅力的な側面があると思います。他方で、できるだけ良い相手や条件で売却を望むケースでは、デメリットが大きいアプローチであるといえるでしょう。
こうした特定の買い手の提案に応じる形でM&Aを進める場合には、売り手にとって重大なリスクも生じます。詳細は、過去記事『M&A仲介会社「弊社クライアントに、貴社との資本提携に関心のある企業がいます」←この誘いに乗った「オーナー経営者」の末路』をご覧ください。
次回は、FAの事業売却アプローチの違いについて解説します。
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