株式譲渡で贈与税はかかる?課税ケースや計算方法、事業承継での注意点も解説

2026.05.29

公開日:2026.05.29

2026.05.29

2026.05.29

更新日:2026.05.29

2026.05.29

株式譲渡で贈与税はかかる?課税ケースや計算方法、事業承継での注意点も解説

株式譲渡は、売買契約による有償譲渡が一般的ですが、価格設定や譲渡相手によっては、贈与税の対象になる場合があります。家族間や同族会社の株式譲渡では、贈与税の論点を踏まえた設計は、手取り額や承継後の経営に影響します。

特に売り手にとっては、贈与税が発生するケースを事前に把握しておくことで、想定外の課税リスクを避けやすくなります。

本記事では、株式譲渡で贈与税が発生するケースと、贈与税の計算方法や注意点を解説します。

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株式譲渡と贈与の関係

株式譲渡は、契約に基づいて株式を移転する取引です。譲渡の対価や相手によっては、贈与税の対象として課税される場合があります。両者の関係を把握しておくことで、課税リスクを抑えやすくなります。主な論点は以下の通りです。

  • 株式譲渡の基本
  • 贈与税が発生する仕組み

それぞれを順に見ていきます。

株式譲渡の基本

株式譲渡とは、株主が保有する株式を、他の個人や法人に譲り渡す取引です。中小企業のM&Aで多く活用される手法であり、有償譲渡(売買)と無償譲渡(贈与)の2つの形態があります。

有償譲渡の場合は、譲渡対価が株式の時価と妥当であれば、譲渡益が所得税・住民税の課税対象となります。無償譲渡や著しく低い価額での譲渡では、贈与税の論点が出てきます。M&Aにおける株式譲渡の詳細は、以下の記事もご覧ください。

M&Aにおける株式譲渡とは?メリットや注意点、手続きの流れを解説

贈与税が発生する仕組み

贈与税は、個人から個人へ財産が無償または著しく低い価額で移転した際に、財産を受け取った側に課税される税金です。株式譲渡の場面では、譲渡価額が時価より著しく低い場合や、無償で譲渡された場合に、贈与とみなされて課税の対象になります。

時価と譲渡価額の差額が「みなし贈与」として扱われ、受贈者に贈与税が課されます。譲渡価額の設定が、課税関係を左右します。

株式譲渡で贈与税などの課税が問題になる主なケース

株式譲渡では、譲渡相手や譲渡価額によって、贈与税や所得税・法人税の課税が問題になる場合があります。事前にケースを把握しておくことで、想定外の課税を避けやすくなります。主なケースは以下の通りです。

  • 無償で株式を譲渡する場合
  • 時価より著しく低い価額で譲渡する場合
  • 個人から個人へ譲渡する場合
  • 個人から法人へ譲渡する場合

それぞれを順に見ていきます。

無償で株式を譲渡する場合

親族や知人などの個人に対して株式を無償で譲渡する場合、株式を受け取った側に贈与税が課されます。対価がない場合でも、株式の時価が課税対象となるため、想定以上の納税が発生する場合があります。

家族間で経営権を引き継ぐ場面で見られる形態ですが、無償譲渡を選ぶ場合は事前に株式の時価を評価し、贈与税の負担額を試算しておくことが重要です。

時価より著しく低い価額で譲渡する場合

株式の譲渡価額が時価より著しく低い場合、時価と譲渡価額の差額が「みなし贈与」として扱われ、贈与税の課税対象になります。たとえば、時価1,000万円の株式を100万円で譲渡した場合、差額900万円が贈与とみなされる仕組みです。

著しく低い価額に該当するかどうかは、個々の具体的な事案に基づいて判断されます。譲渡価額の設定には、客観的な株価評価が欠かせません。

個人から個人へ譲渡する場合

個人から個人へ株式を譲渡する場合、譲渡価額と時価の関係によって課税の取り扱いが変わります。時価で売買された場合は、譲渡側に所得税(譲渡所得課税)が発生し、贈与税は発生しません。

一方、無償や著しく低額での譲渡では、受贈者に贈与税が発生します。家族間の譲渡では、株式の時価評価を適切に行ったうえで、譲渡価額を決めることが重要です。

個人から法人へ譲渡する場合

個人から法人へ株式を低額や無償で譲渡した場合、譲渡側の個人にはみなし譲渡所得課税が発生します。時価で譲渡したものとみなされ、譲渡側に所得税が課される取り扱いです。

加えて、法人側でも受贈益として法人税の課税対象になります。個人から法人への譲渡では、贈与税ではなく所得税と法人税の論点が中心になるため、譲渡先の属性ごとに課税関係が変わる点を把握しておくことが重要です。株式譲渡の手続きに必要な書類は、以下の記事もご覧ください。

株式譲渡の必要書類とは?手続きの流れや税金、失敗しないための注意点を徹底解説

株式譲渡と贈与の違い

株式譲渡(有償)と贈与(無償)では、課税される税金の種類や税率、特例制度の取り扱いが異なります。事業承継の場面で両者を使い分けるためには、違いを把握しておく必要があります。主な違いは以下の通りです。

  • 課税される税金の種類
  • 税率の違い
  • 取得費の扱い
  • 適用される特例制度

それぞれを順に見ていきます。

課税される税金の種類

株式譲渡(有償)では、譲渡側に所得税・住民税が課されます。譲渡対価から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡益が、課税の対象です。

一方、贈与(無償)では、受贈者に「贈与税」が課されます。受け取った財産の評価額に応じて税額が決まる仕組みです。譲渡と贈与では、課税される側(譲渡側と受贈者側)も税金の種類も異なります。

税率の違い

株式の譲渡所得税は、申告分離課税で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の一律税率が適用されます。譲渡益の金額にかかわらず、税率が原則として一定である点が特徴です。

一方、贈与税は累進課税で、贈与額が大きくなるほど税率が上がります。最高税率は55%に達するため、高額な株式を一度に贈与すると、有償譲渡よりも税負担が重くなる場合があります。

取得費の扱い

有償譲渡では、取得した側の取得費は譲渡価額(実際に支払った金額)になります。後日、その株式を売却した際の譲渡所得計算では、譲渡価額を取得費として用います。

贈与の場合は、贈与者の取得費がそのまま受贈者に引き継がれます。元の取得費が低いと、受贈者が後日譲渡した際の譲渡益が大きくなり、所得税の負担が増える点に注意が必要です。

適用される特例制度

事業承継の場面では、贈与に関する特例制度の活用可否も重要な論点になります。贈与の場合は、暦年課税の基礎控除(年110万円)や、相続時精算課税の基礎控除(年110万円)・特別控除(累計2,500万円)を活用できる場合があります。

加えて、一定の要件を満たして事業承継税制を活用すると、後継者が承継した自社株式に対する贈与税・相続税の納税が猶予される場合があります。譲渡と贈与のどちらが有利かは、特例制度の活用可能性も含めて検討する必要があります。

贈与税の計算方法

贈与税の計算では、まず贈与財産の評価額を確認します。非上場株式の場合は、株式の評価方法によって贈与税額が変わるため、計算の流れを把握しておくことが欠かせません。主な論点は以下の通りです。

  • 非上場株式の評価方法
  • 暦年課税と相続時精算課税の違い
  • 贈与税の計算例

それぞれを順に見ていきます。

非上場株式の評価方法

非上場株式の評価には、原則的評価方式と特例的評価方式(配当還元方式)の2つがあります。原則的評価方式では、類似業種比準方式や純資産価額方式により評価額が算出され、企業の業績や財産状況を反映します。

特例的評価方式は、同族株主以外の株主などに適用される評価方式で、配当実績をもとに算出されます。適用される評価方式によって、贈与税額が変わる場合があります。

暦年課税と相続時精算課税の違い

贈与税には、暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方式があります。暦年課税では、年間110万円までの基礎控除が適用され、超過分に累進税率で課税されます。

相続時精算課税は、年110万円の基礎控除と累計2,500万円までの特別控除が適用され、特別控除を超える部分に一律20%の税率で課税される方式です。相続時には、相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与財産のうち、基礎控除後の金額が相続税の課税価格に加算されます。どちらが有利かは、贈与の規模、相続財産の状況、相続発生時期などによって変わります。

贈与税の計算例

たとえば、評価額3,000万円の非上場株式を暦年課税で贈与した場合、基礎控除110万円を差し引いた2,890万円が課税価格になります。一般贈与財産の税率表に当てはめると、税額は約1,195万円になります。

相続時精算課税を選択した場合は、基礎控除110万円と特別控除2,500万円を差し引いた390万円に対して20%の税率が適用され、税額は78万円になります。同じ評価額でも、選ぶ課税方式によって税負担が変わります。M&Aにかかる税金の全体像は、以下の記事もご覧ください。

M&Aにかかる税金はいくら?手法別の金額や節税方法も紹介

株式譲渡と贈与を進める際の注意点

株式譲渡と贈与は、税務面や法務面の論点が複雑に関係する取引です。準備の質と専門家との連携が、取引後の結果を左右します。具体的に押さえたい注意点は以下の通りです。

  • 株価評価を適切に行う
  • 税務上の論点を確認する
  • 譲渡承認手続きを忘れない
  • 売り手の立場に立てる専門家とともに進める

それぞれを順に見ていきます。

株価評価を適切に行う

非上場株式の評価額は、贈与税や所得税の課税基礎になります。原則的評価方式と特例的評価方式のいずれを使うかで評価額が変わるため、自社に合った評価方式を選ぶ必要があります。

評価額が時価に比べて低すぎると、税務上「みなし贈与」と判断される場合があります。客観的な根拠を持って評価額を決めることで、後日の税務調査でも説明しやすくなります。

税務上の論点を確認する

株式譲渡と贈与には、所得税、贈与税、相続税、法人税など複数の税金が関係します。譲渡側と受贈者、または個人と法人の関係によって、適用される税金が変わります。

スキーム設計の段階で、各税金の負担額を試算し、複数のパターンを比較したうえで方針を決めることが重要です。特例制度の活用可能性も含めて、税務面の全体像を把握しておくことが欠かせません。

譲渡承認手続きを忘れない

非公開会社の株式譲渡や贈与では、定款で株式の譲渡制限が設けられているケースが多くあります。株式を移転するには、取締役会または株主総会での譲渡承認手続きが必要です。

譲渡承認を経ずに株式を移転した場合、会社に対して株主としての地位を主張できない場合があります。家族間や同族会社の譲渡でも、定款の定めに沿った手続きを忘れずに進めることが重要です。

売り手の立場に立てる専門家とともに進める

株式譲渡と贈与を含むM&Aの依頼先には、仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)という2つの形態があります。仲介は売り手と買い手の双方と契約して間に立つ立場であり、FAは売り手または買い手のいずれか一方と契約して依頼者の利益を優先する立場です。報酬を依頼者側からのみ受け取るFAは、一般に利益相反が構造的に起こりにくいといえます。

売り手としては、自社の状況に応じて、利益相反が生じにくい支援者を選ぶ選択肢を持つことが、納得度の高い取引につながります。仲介とFAの違いや選び方は、以下の記事もご覧ください。

M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説

まとめ

株式譲渡では、譲渡価額や譲渡相手によって、贈与税が発生する場合があります。事業承継や家族間での株式移転を進める際は、譲渡と贈与の違いと、それぞれの税務面の取り扱いを把握しておくことが重要です。

特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。

  • 無償や著しい低額での譲渡では、贈与税の対象になる可能性があること
  • 株式の時価評価が、課税額を左右すること
  • 暦年課税と相続時精算課税の違いを把握しておくこと
  • 売り手の立場に立てる専門家とともに進めること

株式譲渡と贈与は、税務面の設計と専門家との連携によって、納得度の高い形で進めやすくなる取引です。早い段階から株価評価と特例制度を比較し、信頼できる専門家とともに進めることで、納得度の高い承継につながりやすくなります。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

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