2度のM&Aを経験したskyny川崎社長が語るガバナンス・人材ポートフォリオ・M&A支援業者選びのリアル
公開日:2026.01.13
2026.01.13
更新日:2026.01.13
2026.01.13
実行支援コンサルティングとSESを掛け合わせたモデルで、大手クライアントとの取引を拡大してきたskyny株式会社(以下:スカイニー)。
上流工程を担えるPM人材を軸に、事業を年商3億円規模まで成長させた同社は、社内承継案も検討する中で、クラウドワークスグループへのジョインという選択をしました。
40代半ばで「代表として残るM&A」を決断した背景には、事業の成長課題、人材ポートフォリオ、日本のIT人材不足を解消したいという原点、そしてファイナンシャルアドバイザー(以下:FA)選びの判断軸がありました。
本記事では、スカイニー代表取締役・川崎社長へ、意思決定プロセスとM&Aにおける実務的なポイントをインタビューします。

| 企業名 | skyny株式会社 |
| 事業内容 | エンタープライズソリューション事業(SES事業)、デジタルマーケティング支援事業を営むIT開発会社 |
| 売上高(※2024年11月期) | 315, 792, 061円 |
| オーナー様について | 川﨑 龍太様(46歳 2025年10月時点) |
事業モデルと成長の背景
スカイニーは「実行支援コンサル×SES」というモデルを採用されています。なぜこの形にされたのでしょうか。
一般的なSESは、エンジニアリソースを提供する側面が強いモデルだと思っています。
一方で、当社はクライアントのITや、ITにおける人材(HR)の課題をきちんと把握・理解したうえで、「クライアントのIT戦略やプロジェクトを成功させるところまで伴走する」というスタイルを重視してきました。
単なるリソース提供ではなく「実行支援コンサルティング」として位置づけることで、ITとHRの両面から課題に踏み込み、目的達成まで一緒に走ることを差別化要因にしています。
成長を支えた具体的なドライバーはどこにあったとお考えですか。
上流工程を担えるPMクラスのメンバーが多くジョインしてくれたことが大きかったです。
PMがしっかりしていると、技術力だけでなく「顧客からの信頼」にも直結します。その結果として、大手クライアントとの取引が増え、事業の成長につながったと考えています。
売上が数億円規模に伸びていく中で、案件の取り方などで意識されていた点はありますか。
当初から一貫してこだわってきたのは「プライム案件」です。
エンドクライアントや元請けと直接取引をすることを重視していました。そうすることで、当社のPM層の価値をきちんと評価してもらいやすくなりますし、上位のお客様なので課題を把握しやすい。課題がよく見える分、体制提案も含めてしっかりと価値を出せるので、受け入れの規模や単価も伸ばしやすくなりました。
M&Aを決断した背景と「代表として残る」という選択
まだお若いタイミングでM&Aを本気で考え始めたのは、いつ・どんなきっかけだったのでしょうか。
私は今、40代半ばですが、今でも新しいことに挑戦したい気持ちは強くあります。
一方で、スカイニーをさらに伸ばしていくうえでは「SEや中堅層の人材をもっと厚くしていく必要がある」と感じていました。これはスキル面でも、年齢構造の面でも課題でした。
その課題を補完し、相互にシナジーを出せる相手と組む手段としてM&Aを考え始めたのがきっかけです。
結果としてクラウドワークスグループにジョインし、代表にも引き続き残られています。その意思決定のポイントを教えてください。
今回、私は譲渡後もスカイニーの代表を続けています。
クラウドワークスが掲げているのが「DXコンサルの民主化」です。この方向性は、私自身の「日本のIT人材問題を解消したい」という創業時からの思いと非常に近いものでした。
単に会社を譲って退任するのではなく、スカイニーの成長と、グループ全体のDXサービスの拡大にチャレンジできる──そう感じられたことが大きかったです。
M&A交渉の中でも「私が代表として残る」という前提については、先方との間で合意をして進めました。
当初は社内承継案もあったと伺っています。今後の権限移譲や体制づくりはどのように考えていますか。
今後も私は、スカイニーの代表としてグループを牽引していきます。そして、私個人としては、クラウドワークスグループのDXコンサルの民主化というテーマの中で、自分の力が活かせる場があるのであれば、引き続き貢献していきたいと考えています。
一方で、M&Aにおいて重要なのは「社長が残りたいかどうか」よりも、その前提として「社長がいなくても会社が回る体制になっているかどうか」だと思っています。
体制や業務フロー構築、権限移譲ができていないと、M&Aはうまくいきません。実際、前回も今回も、買い手からは「社長がいなくても会社は回りますか」と聞かれています。
当社としては、社長不在でも回る体制は作れていると考えつつ、私自身は「権限移譲はできるが、まだ自分も頑張っていきたい」というスタンスですね。
買い手との交渉と評価ポイント
買い手にスカイニーの価値を理解してもらううえで、難しさを感じた点はありましたか。
当社は、エンジニアの人数としては決して大規模ではありません。
ただし、上流工程を担えるPMや要件定義ができるエンジニアがいること、大手クライアントとお付き合いしていることは、ぜひ評価してほしいと考えていました。
実際、これらの点は買い手の方からも評価いただけましたが、一方で「規模が小さい」というのはネックとして見られていたと思います。
そこは、規模だけでなく「スカイニーの本質的な強み」をどう理解してもらうかを意識して伝えました。
M&Aプロセスの途中でも採用を進めていたと伺いました。事業の拡張ストーリーは、どのように評価されましたか。
たとえば、特定のクラウドサービスを扱えるエンジニアを増やせば、より大規模なプロジェクトにも対応できるという構想がありました。
そうした当社側の事業計画については評価いただきましたし、グループイン後にどういう事業計画でいくかも、両社でしっかり擦り合わせました。
そのすり合わせがうまくいったことが、結果的に買収金額にもつながっていると感じています。
M&Aでは、買い手側が資本力を持っているケースが多いと思います。その資本やグループのリソースをどう活用し、どんなシナジーを生み出せるのか。ここをきちんと話し合っておくことが、評価にも交渉にも重要だと感じました。
すでに抱えられていた大型案件については、どのタイミングで「評価の武器になった」と感じましたか。
大規模な案件を受注できる体制がある、という点は評価していただけたと考えています。
大型案件を回すには、PMから、実装を担うエンジニアまで、一定規模の体制が必要です。その体制が組めている会社でないと、そもそも受注ができません。
そうした意味で、「技術力」と「体制力」の両方が備わっている点は、買い手から見ても価値があるポイントだったと思います。
交渉にあたって、「この条件だけは譲れない」と決めていた項目は何でしょうか。
率直に言うと、まずは価格です。
価格は、これまで私がやってきたことに対する評価、いわばオーナー経営者の成績表のようなものだと思っています。
そのうえで、次に重視していたのは、「社員がより成長できる環境があるかどうか」です。
SESの分野はニーズが非常に高いので、買い手が社員を大事にしないということはあまりないだろうと考えていましたが、単に「雇用が守られる」だけでなく「シナジーを出しながら、より成長できるプロジェクトやクライアントにアクセスできるか」を見ていました。
M&A支援業者選びとRISONAL M&Aへの評価
M&A支援会社の選定は、多くのオーナーにとって悩ましいポイントです。川崎さんは、どの軸で選んでいましたか。
私は今回が2回目のM&Aで、前回もFAを使っていました。
仲介会社が悪いということではありませんが、両手ビジネスである以上「売り手の価値をどこまで本気で理解し、高めてくれるのか」という点で疑問はありました。
そこで、基本的には前回の経験も踏まえてFAを使っていこうと考えていました。
その中で、RISONAL M&Aを運営するオーナーズを選んでいただいた決め手は何でしたか。
一つは「オーナー社長に寄り添う姿勢」を初期の段階から強く感じられたことです。
契約前の段階から、私が考えていることや悩んでいることを、すべてしっかり受け止めてもらいながらディスカッションできましたし、そのうえで具体的なアドバイスもいただきました。
「この人たちなら、売り手側の立場に立って進めてくれる」という安心感があり、それが決め手になりました。
「他のM&A支援会社ではなかなかできないのでは」と感じた支援内容はありますか。
他社FAのサービス内容を十分に把握しているわけではないので断定はできませんが、非常にきめ細かいサービスを提供いただいたと感じています。
具体的には、契約書レビューの場面です。一般的にFAは、売り手と売り手側の顧問弁護士に任せるケースも多いと思いますが、契約関連におけるタスクまで、オーナーズさん側でひな形を作っていただきました。
そのうえで、注意点や、買い手から突っ込まれそうなポイントを事前に共有してもらい、それをベースに私と顧問弁護士でブラッシュアップを進めることができました。
契約書以外のドキュメントについても、かなり主体的に動いていただき、大変ありがたかったです。
社員への説明と社内の反応
成約が近づく中で、社員への発表や社内コミュニケーションはどのように行われましたか。
成約後に、社内チャット上で「クラウドワークスグループに戦略的にジョインしました」と報告しました。
ただ、意外なことに、特段大きな反応はありませんでした(笑)。
私が引き続き会社に残ることや「親会社が変わる」という位置づけだったこともあり、社員からすると「良いこと」と捉えられた面が大きかったのだと思います。
クラウドワークスも、社内評価を適切に行っていくこと、スカイニーとしても拡大していくことを前提にしていたので、「事業規模拡大に近いM&A」という感覚でした。
2度のM&Aから学んだ「売れる会社の準備」とガバナンス
2度目のM&Aを振り返って、「もっと早く準備しておけばよかった」と感じた点や、学びがあれば教えてください。
私は2社目のM&Aだったこともあり、社内体制の整備については比較的意識していました。
たとえば、契約書を適切に保存・管理する、ガバナンスルールを定めて運用する、といった点です。
このように、重要なのは「中小企業であってもガバナンスが効いているかどうか」です。
ここを整えているからといって評価が一気に上がるわけではありませんが、整っていないと評価は確実に下がりますし、交渉に時間もかかります。経営という観点からも、非常に重要だと感じています。
さらに「強みとなるリソースの見える化」も大切です。
当社の場合、社員だけではなく、パートナー企業のエンジニアの方々にも協力いただいて提案をすることがあります。パートナーとのリレーションについてもデータベース化し、見える化を進めていました。
こうした情報を整理しておくことは、M&Aを進めるうえで重要なポイントだと思います。
成約後も続くキャリアと、日本を元気にしたいという原点
今回のご成約を経て、ご自身のキャリアをどのように描いていますか。
私は20代の頃から、いわゆる「失われた30年」と言われる期間の日本でビジネスをしてきましたが、日本という国が好きで、日本を元気にしたいという思いがあります。
スカイニーを立ち上げたのも、日本のIT人材不足の問題を解消したいという原点があったからです。
その意味で、今回のM&Aで会社に残るという選択は「キャリアの方向転換」というより、これまでの延長線上にあるものだと捉えています。
クラウドワークスグループが掲げる「DXコンサルの民主化」は、日本を活性化するうえで重要なテーマだと考えていますし、その一員として貢献していくことが、今後のキャリアだと考えています。

RISONAL編集部からの感想
本インタビューを通じて強く感じたのは、川崎氏が一貫して「事業構造」「組織体制」「ガバナンス」「人材ポートフォリオ」を、経営とM&Aの両面から論理的に捉えてこられた点です。
単なるEXITではなく、「事業成長に必要な補完関係」「ご自身の原点との整合性」「社員がより成長できる環境」の三つを軸に判断されているため、代表として残るという選択にも必然性があると感じました。
また、“スケールさせる組織とは何か”という問いに対し、抽象論ではなく、プライム案件へのこだわり、PMレイヤーの厚み、パートナーの可視化、ガバナンス運用といった実務的な要素が自然に語られている点に、積み上げ型の経営姿勢が表れていると感じます。
M&Aはゴールではなく、事業と組織を次の段階へ進めるための選択肢であること。その前提として、「社長がいなくても回る会社」を徹底して整えてこられたこと。そして、原点である「日本のIT人材課題の解消」に、EXIT後もコミットし続けていること。
これらは、承継を検討するオーナー経営者の皆さまにとって、実務的な示唆を多く含んでいると感じます。
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