事業承継で生命保険を活用する方法とは?5つの資金対策と注意点を解説
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- 事業承継の基礎
公開日:2026.08.05
2026.08.05
更新日:2026.08.05
2026.08.05
事業承継を考えるとき、相続税の納税資金や自社株の扱い、他の相続人への配慮に不安を感じる経営者もいます。生命保険は、こうした承継に伴う資金の準備に活用できる手段の一つです。
ただし、保険には種類が多く、保険料の負担や解約の時期、税制の取り扱いなど、確認すべき点もあります。
本記事では、事業承継で生命保険が活用される理由、備えられる資金需要、保険の種類、メリットと注意点、選び方に加え、承継方法による使い方の違いまで解説します。生命保険の活用を検討している経営者の方に、判断の材料になる内容です。
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事業承継で生命保険が活用される理由
事業承継では、生命保険が資金の準備に活用されることがあります。
その理由を主な3つの点から確認します。
- 承継には多額の資金が必要になる
- 現金化しにくい自社株が資産の中心になる
- 経営者に万一があると承継が滞る
それぞれを順に解説します。
承継には多額の資金が必要になる
生命保険が活用される理由の一つは、承継には多額の資金が必要になるためです。
株式や事業用の資産を後継者へ移す際には、相続税や贈与税の納税資金、後継者が株式を買い取る資金、経営者の退職金などで、まとまった資金が必要になることがあります。
中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、承継にはさまざまな場面で資金が必要になるとされています。
経営者は、承継に必要な資金の見込みを、早めに把握しておく必要があります。
現金化しにくい自社株が資産の中心になる
現金化しにくい自社株が資産の中心になることも、理由の一つです。
中小企業の経営者では、資産の多くを自社株が占めていることがあります。自社株は、上場株式のように市場で売却できないため、相続税の納税資金を別に用意する必要が生じます。相続財産に占める自社株の割合が高いほど、納税資金の準備が課題になります。
経営者に万一があると承継が滞る
経営者に万一があると、承継が滞ることも理由の一つです。
経営者が突然亡くなると、後継者が決まっていない場合や、納税資金が準備できていない場合に、事業の継続に支障が生じることがあります。相続の手続きや、自社株の分け方をめぐって、時間がかかることもあります。
生命保険で備える事業承継の資金需要
生命保険は、事業承継に伴うさまざまな資金需要に備えられます。
- 相続税や贈与税の納税資金を準備する
- 後継者による自社株の買取資金を準備する
- 経営者の死亡退職金や勇退退職金を準備する
- 後継者以外の相続人への代償金を準備する
それぞれを順に解説します。
相続税や贈与税の納税資金を準備する
生命保険は、相続税や贈与税の納税資金に活用できます。保険金を受け取ることで、納税に充てる現金を用意しやすくなります。
経営者が亡くなったときに、後継者が受け取る保険金を、自社株にかかる相続税の納税に充てる方法があります。国税庁によると、相続人が受け取った死亡保険金には、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの非課税限度額があります。この非課税の扱いは、受取人が相続人である場合などに適用されます。
相続税対策の考え方については、以下の記事でも解説しています。
後継者による自社株の買取資金を準備する
後継者が自社株を買い取る資金の準備にも、生命保険を活用できます。
後継者が現経営者や他の株主から自社株を買い取る場合、まとまった資金が必要になります。保険金や解約返戻金を、この買取資金に充てる方法があります。分散した自社株を後継者が集約する際に、資金の準備が課題になります。
自社株の集約の方法については、以下の記事でも解説しています。
経営者の死亡退職金や勇退退職金を準備する
経営者の死亡退職金や勇退退職金の準備にも、生命保険を活用できます。
経営者が亡くなったときの死亡退職金や、引退時の勇退退職金の原資として、保険金や解約返戻金を充てる方法があります。退職金を支給することで、会社の純資産が減り、自社株の評価に影響する場合もあります。
退職金を活用した承継の手法については、以下の記事でも解説しています。
売却対価の「手取り」を増やすには?売り手オーナー経営者が知るべき「退職金を活用した譲渡手法」
後継者以外の相続人への代償金を準備する
後継者以外の相続人へ支払う代償金の準備にも、生命保険を活用できます。
自社株を後継者へ集中させると、後継者以外の相続人の取り分が少なくなることがあります。後継者が受け取った保険金を、他の相続人へ支払う代償金に充てることで、相続財産の分け方の調整に役立つ場合があります。これにより、相続をめぐる争いを抑えられる場合があります。
経営者は、後継者以外の相続人への配慮を含めて、資金の準備を検討しておくことが望ましいです。
※参考:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
事業承継で活用される生命保険の種類
事業承継では、目的に応じて活用される生命保険の種類が異なります。
主な3つの種類を確認します。
- 保障が一生続く終身保険
- 一定期間を保障する定期保険
- 長期の保障と解約返戻金を備える長期平準定期保険
それぞれを順に解説します。
保障が一生続く終身保険
終身保険は、保障が一生涯続く生命保険です。
被保険者が亡くなったときに、保険金が支払われます。保障の期間に定めがないため、相続税の納税資金や、死亡退職金の準備に活用されることがあります。保険料は定期保険に比べて高くなる傾向があります。
一定期間を保障する定期保険
定期保険は、一定の期間を保障する生命保険です。
保障の期間があらかじめ定められており、その期間内に被保険者が亡くなったときに保険金が支払われます。保険料は終身保険に比べて抑えられる傾向がありますが、期間が過ぎると保障は終了します。承継までの一定期間の保障を確保する目的で、活用されることがあります。
長期の保障と解約返戻金を備える長期平準定期保険
長期平準定期保険は、長期の保障と解約返戻金を備える定期保険です。
保障の期間が長く、期間の途中で解約したときに戻る解約返戻金があるのが特徴です。この解約返戻金を、経営者の勇退退職金の原資などに活用する方法があります。ただし、解約の時期によって、戻る金額が変わります。
生命保険を活用するメリット
生命保険を活用すると、事業承継の資金の準備にいくつかのメリットがあります。
主なメリットを確認します。
- 必要なときに現金をすぐ用意できる
- 受取人を指定して特定の人へ残せる
- 自社株の評価に影響する場合がある
それぞれを順に解説します。
必要なときに現金をすぐ用意できる
生命保険のメリットは、必要なときに現金をすぐ用意しやすいことです。
被保険者が亡くなったときに、受取人が保険金の請求を行うと、比較的早く現金を受け取れます。不動産や自社株のように売却に時間がかかる資産と異なり、納税資金などに充てやすくなります。相続の直後に資金が必要になる場面で役立つ場合があります。
経営者は、保険金が現金として受け取れる点を、資金計画のなかで確認しておくことが望ましいです。
受取人を指定して特定の人へ残せる
受取人を指定して、特定の人へ資金を残せることもメリットです。
生命保険では、保険金の受取人をあらかじめ指定できます。後継者を受取人にしておくことで、承継に必要な資金を後継者へ直接残せます。相続財産の分け方とは別に、特定の人へ資金を渡せる点が特徴です。
自社株の評価に影響する場合がある
生命保険の活用が、自社株の評価に影響する場合があります。
法人が契約する保険で、保険料の一部が費用として扱われる場合、会社の利益や純資産に影響し、自社株の評価に関わることがあります。また、退職金の支給によって純資産が減り、株式の評価に影響する場合もあります。ただし、影響の有無や程度は、保険の種類や契約の内容によって異なります。
生命保険を活用する際の注意点
生命保険の活用には、確認しておきたい注意点もあります。
主な注意点を確認します。
- 保険料の負担がキャッシュフローに影響する
- 解約の時期によっては返戻金が払込額を下回る
- 節税だけを目的とした活用はリスクが高い
それぞれを順に解説します。
保険料の負担がキャッシュフローに影響する
生命保険の注意点の一つは、保険料の負担が会社の資金繰りに影響することです。
保障の内容によっては、保険料の負担が大きくなり、会社の日々の資金繰りを圧迫することがあります。承継までの期間、保険料を払い続けられるかを確認しておく必要があります。無理のある保険料の設定は、会社の経営に影響する場合があります。
解約の時期によっては返戻金が払込額を下回る
解約の時期によっては、解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回ることも注意点です。
解約返戻金の額は、契約からの経過期間によって変わります。早い時期に解約すると、戻る金額が払込額を下回ることがあります。退職金の原資などに解約返戻金を充てる場合は、想定する時期に返戻率がどうなるかを確認しておきます。
節税だけを目的とした活用はリスクが高い
節税だけを目的とした生命保険の活用は、リスクが高いことも注意点です。
かつては、保険料の損金算入による節税を目的とした法人保険の活用が見られました。国税庁によると、令和元年の改正で、定期保険などの保険料の取り扱いが見直され、解約返戻率の水準に応じて、資産に計上する扱いが定められました。このため、節税だけを目的とした活用は、想定した効果が得られない場合があります。
事業承継に適した生命保険の選び方
事業承継に適した生命保険を選ぶには、目的や資金繰りを踏まえて検討します。選び方として3つの点を確認します。
- 備えたい資金需要から必要な保障額を決める
- 保険料の負担と会社の資金繰りを確認する
- 解約や受け取りの時期を承継計画に合わせる
それぞれを順に解説します。
備えたい資金需要から必要な保障額を決める
生命保険を選ぶには、備えたい資金需要から必要な保障額を決めることが重要です。
相続税の納税資金、自社株の買取資金、退職金、代償金など、どの資金に備えたいのかによって、必要な保障額が変わります。
まず、承継に必要な資金の見込みを把握し、そのうえで保障額を決めます。目的が定まらないまま保障額を決めると、過大な保険料の負担につながることがあります。
保険料の負担と会社の資金繰りを確認する
保険料の負担が、会社の資金繰りに見合うかを確認することも重要です。
保障額を大きくすると、保険料の負担も増えます。承継までの期間、無理なく保険料を払い続けられるかを、会社の資金繰りと照らして確認します。資金繰りに見合わない保険料は、経営に影響することがあります。
解約や受け取りの時期を承継計画に合わせる
解約や受け取りの時期を、承継の計画に合わせることも大切です。
退職金の原資に解約返戻金を充てる場合は、引退の想定時期に返戻率がどうなるかを確認します。相続税の納税資金に備える場合は、いつ資金が必要になるかを踏まえて、保障の内容を選びます。時期が合わないと、必要なときに資金を用意できないことがあります。
承継方法によって変わる生命保険の使い方
生命保険の使い方は、承継の方法によって変わります。主に次の3つの承継方法ごとに確認します。
- 親族内承継では納税資金と代償金に備える
- 従業員承継では後継者の株式取得資金に備える
- M&Aを選ぶ場合は保険以外の選択肢も検討する
それぞれを順に解説します。
親族内承継では納税資金と代償金に備える
親族内承継では、相続税や贈与税の納税資金と、他の相続人への代償金に備える使い方があります。
子など親族へ自社株を承継する場合、後継者に相続税や贈与税がかかり、納税資金が必要になります。また、後継者へ自社株を集中させると、他の相続人への配慮として代償金が必要になることがあります。保険金を、これらの資金に充てる方法があります。
親族内承継では、納税資金と代償金の準備に、生命保険を活用しやすくなります。
従業員承継では後継者の株式取得資金に備える
従業員承継では、後継者となる従業員や役員の株式取得資金に備える使い方があります。
社内の従業員や役員へ承継する場合、後継者が自社株を買い取る資金を用意することが課題になりやすくなります。保険金や解約返戻金を、後継者の株式取得資金の一部に充てる方法が検討されます。
従業員承継を実現するために必要なことについては、以下の記事でも解説しています。
後継者不在時代の事業承継、「社内承継」を実現するために必要なこと
M&Aを選ぶ場合は保険以外の選択肢も検討する
M&Aを選ぶ場合は、生命保険以外の選択肢も検討します。第三者へのM&Aでは、株式を譲渡して対価を得るため、承継の資金の考え方が親族内承継や従業員承継と異なるためです。
M&Aでは、売り手が売却対価を得られるため、納税資金を保険で準備する必要性は下がる場合があります。一方で、売却後の資産の管理や、相続への備えとして生命保険を活用する方法もあります。
売り手の立場でのM&Aの進め方については、以下の記事でも解説しています。
「FAサービス」の売却アプローチとは?事業承継M&Aを有利に進めるための知識
生命保険の提案を鵜呑みにせず専門家に相談する
生命保険の活用は、提案を鵜呑みにせず、専門家に相談しながら検討します。相談の進め方を3つの点から確認します。
- 保険会社や銀行の提案は目的を確認する
- 税理士や第三者の視点で見直す
- 承継全体の設計を専門家とともに進める
それぞれを順に解説します。
保険会社や銀行の提案は目的を確認する
保険会社や銀行から提案を受けた場合は、その目的を確認することが重要です。
生命保険の提案を受ける際は、その保険がどの資金需要に備えるためのものかを確認します。承継の目的に合わない保険に加入すると、過大な保険料の負担につながることがあります。提案の内容が、自社の承継の課題に沿っているかを見極めます。
税理士や第三者の視点で見直す
税理士や第三者の視点で、提案を見直すことも大切です。
保険の提案は、契約を勧める立場からのものである場合があります。税務や承継に詳しい税理士など、第三者の視点で内容を確認することで、自社に合うかを見極めやすくなります。すでに加入している保険が、承継に役立つかを見直す方法もあります。
承継全体の設計を専門家とともに進める
生命保険は、承継全体の設計のなかで活用を検討することが重要です。生命保険は、承継の資金対策の手段の一つであり、それだけで承継の課題がすべて解決するわけではないためです。
株式の承継の方法、税負担の対策、遺留分への配慮、M&Aという選択肢など、承継全体の設計のなかで、生命保険をどう位置づけるかを検討します。税務は税理士、承継やM&Aの進め方はFAをはじめとするM&A支援会社、役割に応じて専門家に相談すると進めやすくなります。
事業承継の生命保険に関するよくある質問
事業承継の生命保険について、よく寄せられる質問を確認します。
事業承継の生命保険は法人契約と個人契約のどちらがよいですか?
法人契約と個人契約のどちらがよいかは、備えたい資金需要や目的によって変わります。
会社が保険金を受け取り、退職金や自社株の買取資金に充てる場合は法人契約、経営者個人が相続税の納税資金や代償金に備える場合は個人契約が検討されます。
契約の形によって、税務の取り扱いも異なります。どちらが自社に合うかは、目的を踏まえて専門家とともに確認することが望ましいです。
生命保険だけで事業承継対策は十分ですか?
生命保険だけで、事業承継の対策が十分になるわけではありません。生命保険は、承継に伴う資金の準備に役立つ手段の一つですが、株式の承継の方法や、税負担の対策、遺留分への配慮など、承継には他にも検討すべき論点があります。
生命保険を、承継全体の対策の一部として位置づけ、他の対策とあわせて進めることが望ましいです。
すでに加入している法人保険は事業承継に活用できますか?
すでに加入している法人保険が、事業承継に活用できる場合があります。加入している保険の保障額や解約返戻金が、退職金の原資や納税資金に充てられることがあります。
ただし、令和元年の改正で保険料の取り扱いが見直されているため、現在の契約が承継の目的に合っているかを、専門家とともに見直すことが望ましいです。
生命保険の保険料は損金に算入できますか?
生命保険の保険料が損金に算入できるかは、保険の種類や契約の内容によって異なります。
国税庁によると、令和元年の改正で、定期保険などの保険料の取り扱いが見直され、解約返戻率の水準に応じて、資産に計上する扱いが定められました。損金に算入できるかどうかは、個別の契約によって変わるため、税理士など専門家に確認することが望ましいです。
※参考:国税庁「No.5364 定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い」
まとめ
事業承継では、相続税や贈与税の納税資金、後継者による自社株の買取資金、経営者の退職金、他の相続人への代償金など、まとまった資金が必要になります。生命保険は、こうした資金の準備に活用できる手段の一つです。
活用する保険には、終身保険、定期保険、長期平準定期保険などがあり、備えたい資金需要から必要な保障額を決めます。保険料の負担や解約の時期、税制の取り扱いに注意し、節税だけを目的とした活用は避けることが望ましいです。令和元年の改正で、保険料の取り扱いが見直されている点も確認しておきます。
生命保険は、承継全体の設計のなかで活用を検討する手段の一つです。保険会社や銀行の提案を鵜呑みにせず、税理士やFAなどの専門家とともに、承継全体の設計を進めることが、納得度の高い選択につながりやすくなります。
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また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
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