持株会社を活用した事業承継・会社売却とは?メリットや注意点を解説
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- M&Aのスキーム
公開日:2026.06.02
2026.06.02
更新日:2026.06.02
2026.06.02
持株会社の活用は、中小企業のオーナー経営者が、事業承継や将来の会社売却を見据えて資本関係を整理する際に、有力な選択肢の一つです。株式の集約、グループ再編、相続・承継対策、売却前の事業整理など、目的に応じて活用されます。
特に現経営者にとっては、持株会社を活用するかどうかによって、承継後の資本関係、税務上の整理、最終的な手取り額、買い手からの見え方に影響が出る場合があります。
本記事では、現経営者が事業承継や会社売却を検討する際に押さえておきたい、持株会社の活用スキームと注意点を解説します。
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持株会社とは
持株会社は、ほかの会社の株式を保有し、グループ全体を統括する役割を担う会社の総称です。事業承継や会社売却の場面では、株式の集約、グループ再編、資産整理、承継・売却前の資本政策を検討する際に活用されることがあります。主な論点は以下の通りです。
- 持株会社の基本的な意味
- 純粋持株会社と事業持株会社の違い
それぞれを順に見ていきます。
持株会社の基本的な意味
持株会社とは、ほかの会社の株式を保有し、その会社を支配・管理する目的で設立される会社を指します。「ホールディングス会社」と呼ばれることもあり、グループ会社の株式保有会社として機能する形態です。
事業承継や売却の文脈では、現経営者が自社株式やグループ会社株式をどのように整理するかを検討する際に、持株会社が活用されます。株式を持株会社に集約することで、承継前後の資本関係を整理しやすくなる場合があります。
純粋持株会社と事業持株会社の違い
持株会社は、自社で事業を行うかどうかによって、純粋持株会社と事業持株会社に分けられます。純粋持株会社は、自社で事業を行わず、子会社の株式管理に専念する形態です。一方、事業持株会社は、自社でも事業を行いながら、ほかの会社の株式を保有する形態を指します。
中小企業の事業承継では、株式の集約や承継後の資本関係の整理を目的として、純粋持株会社を活用するケースがあります。スキーム設計次第で、税務上の取扱いや経営の柔軟性に違いが生じます。
持株会社を活用した承継・売却の主なスキーム
持株会社を活用した事業承継・会社売却には、複数のスキームがあります。現経営者の意向、株主構成、グループ会社の有無、売却対象によって、適したスキームは異なります。主なスキームは以下の通りです。
- 株式移転による持株会社化のスキーム
- 会社分割による事業整理のスキーム
- 持株会社を通じて株式を承継・売却するスキーム
それぞれの特徴を順に見ていきます。
株式移転による持株会社化のスキーム
株式移転は、既存の事業会社の株式を、新たに設立する持株会社に移転する手法です。既存の事業会社が完全子会社となり、持株会社が親会社として全株式を保有する構造になります。
このスキームでは、株主が新たに発行される持株会社の株式を受け取る形になるため、一定の要件のもとで株式構造を再編できる点が特徴です。グループ全体の組織再編を進める場面や将来の相続対策に備えて活用されることがあります。
会社分割による事業整理のスキーム
会社分割は、事業の全部または一部を切り出して別会社に承継する手法です。複数の事業を行っている会社では、特定の事業だけを売却したい場合や、事業ごとに経営判断を分けたい場合に活用されます。
事業承継の文脈では、不採算事業を切り離して中核事業のみを承継する設計や、複数の後継者に事業を分けて引き継がせる設計などが考えられます。会社分割を通じて持株会社化を進めることも可能で、柔軟な承継スキームを設計できる可能性もあります。
持株会社を通じて株式を承継・売却するスキーム
現経営者や親族が保有する事業会社株式を持株会社に集約し、その後の承継や売却に備えるスキームです。株式を個人で分散保有したままにするのではなく、持株会社を通じて保有することで、資本関係を整理しやすくなる場合があります。
将来的に会社売却を行う場合には、持株会社ごと売却するのか、持株会社が保有する事業会社株式を売却するのかによって、税務上の取扱いや手取り額が変わる可能性があります。実行前に、売却対象と税務影響を整理しておくことが重要です。
持株会社を活用した売却・承継のメリット
持株会社を活用することで、現経営者と後継者の双方にメリットが生じる場合があります。資金面、税務面、経営面で、直接株式を譲渡する場合とは異なる効果が期待できる点が特徴です。
- 株式を集約しやすくなる
- 承継・売却スキームに柔軟性が生まれる
- 税務上のメリットが得られる場合がある
- 現経営者が売却対価を受け取れる
それぞれを順に見ていきます。
株式を集約しやすくなる
中小企業では、相続や贈与を通じて株式が親族間に分散しているケースがあります。株主が分散していると、経営判断のスピードが落ちたり、株主同士の意見対立が生じたりするリスクが高まります。
持株会社に株式を集約することで、経営権を一本化しやすくなります。後継者が持株会社を通じて株式を保有する形にしておけば、その後の相続や贈与の場面でも分散を抑えやすくなり、長期的な経営の安定につながりやすくなります。
承継・売却スキームに柔軟性が生まれる
持株会社があることで、事業承継の株式売却スキームを柔軟に設計できるようになります。持ち株会社ごと譲渡して譲渡対価を個人で受け取ることも可能ですし、持ち株会社を手元に残して事業会社法人株式のみを譲渡することも可能です。
また、事業会社が保有する資産ですぐに譲渡したくないもの(不動産や車両、生命保険やゴルフ会員権等)がある場合には、持ち株会社に現物配当を行って事業承継実現後も手元に置いておくことも検討できます。
税務上のメリットが得られる場合がある
持株会社を活用することで、株式の相続税評価やグループ内の資産整理について、選択肢を検討しやすくなる場合があります。たとえば、グループ法人税制の適用関係を踏まえながら、事業承継後も継続保有したい資産の配置を検討するケースがあります。
税務上の効果は、スキーム設計や個社の財務状況によって大きく異なるため、すべてのケースで有利になるわけではありません。税理士などの専門家と連携して具体的な影響を試算したうえで判断することが重要です。
現経営者が売却対価を受け取れる
持株会社が現経営者から事業会社株式を買い取るスキームでは、現経営者は譲渡対価として現金を受け取れます。退職金とは別に譲渡対価を受け取れるため、リタイア後の生活資金や次の事業や生活設計のための原資として活用しやすくなります。
現経営者側も持株会社を通じて事業会社株式を保有していた場合には、富裕層に対する課税強化(ミニマム課税)の影響もあり、持株会社を手元に残して譲渡するケースが増えています。事業承継の対価を持株会社にて受け取ることで、譲渡対価を個人株主で分散させることなく持株会社にて一元管理することができるなどのメリットがあります。
持株会社を活用する際のデメリットや注意点
持株会社を活用したスキームには、追加コストや税務上のリスクが生じる場合があります。事前に把握しておくことで、設計段階での見落としを避けやすくなります。主な注意点は以下の通りです。
- 株式譲渡に伴う課税が発生する
- 税務上のスキームの合理性が問われるリスクがある
- 持株会社の管理コストが増える
- 株式等保有特定会社に該当するリスクがある
それぞれを順に見ていきます。
株式譲渡に伴う課税が発生する
持株会社が現経営者から事業会社株式を買い取る場合、現経営者には譲渡益に対する所得税が発生します。取得価額と譲渡価額の差額が課税対象となり、原則として申告分離課税の対象になります。なお、譲渡対価が極めて高い水準となる場合には、いわゆるミニマム課税の適用も含めて個別確認が必要です。
譲渡価額の設定によって税負担額が大きく変わるため、適正な株価評価と、譲渡価額の根拠を整理しておく必要があります。税負担を見越したうえで、手取り額を試算しておくことが重要です。
税務上のスキームの合理性が問われるリスクがある
過度な節税効果を狙ったスキーム設計は、税務当局から「租税回避行為」として指摘を受けるリスクがあります。実態を伴わない持株会社の設立や、形式的な株式移転は、課税要件の判断で問題になる可能性があります。
正当な事業承継の目的があり、実態を伴うスキームであれば問題になりにくいですが、税負担の軽減だけを優先した形式的な設計は避けるべきです。専門家と連携し、合理的なスキーム設計を進める姿勢が必要です。
持株会社の管理コストが増える
持株会社を設立・活用する場合、事業会社とは別に、決算、税務申告、株主総会、登記対応などの管理業務が発生します。グループ会社が増えることで、経理・税務・法務の管理負担が大きくなる場合があります。
管理コストを抑えるには、持株会社を活用する目的や期待できる効果を事前に整理し、運用負担に見合うメリットがあるかを確認することが重要です。
株式等保有特定会社に該当するリスクがある
持株会社の資産構成によっては、財産評価上「株式等保有特定会社」に該当する可能性があります。該当すると、株式評価の取扱いが変わり、想定より評価額が高くなることがあります。
該当するかどうかは、保有資産の構成によって変わります。スキーム設計の段階で資産構成を確認し、必要に応じて資産構成を見直すなど、事前に対策を検討することが重要です。
持株会社を活用した承継・売却の流れ
持株会社を活用した承継・売却は、目的の整理からスキーム設計、税務・法務確認、実行まで段階的に進める必要があります。基本的な流れは以下の通りです。
- 持株会社を活用する目的を明確にする
- 株主構成やグループ会社の状況を整理する
- 活用するスキームを検討する
- 税務・法務の影響を確認して実行する
持株会社を活用する目的を明確にする
最初に、持株会社を活用する目的を明確にします。
相続対策、株式の集約、グループ再編、将来の会社売却など、目的によって適したスキームは異なります。
株主構成やグループ会社の状況を整理する
次に、現経営者や親族の持株割合、グループ会社の有無、保有資産の内容を整理します。
株式が分散している場合や、複数の事業・資産を保有している場合は、売却前に整理が必要になることがあります。
活用するスキームを検討する
株式移転、会社分割、持株会社を通じた株式承継・売却など、目的に応じたスキームを検討します。
どの会社を残し、どの会社を売却対象にするかによって、税務上の取扱いや買い手からの評価が変わる可能性があります。
税務・法務の影響を確認して実行する
スキームが固まったら、税務・法務上の影響を確認したうえで実行します。
持株会社を活用する場合、譲渡益課税、株式評価、グループ法人税制、株式等保有特定会社への該当可能性など、複数の論点が関係します。実行前に専門家と確認することが重要です。
持株会社を活用した承継・売却を進めるためのポイント
持株会社を活用したスキームは、税務・法務・資金面の複数の論点が絡む取引です。準備の質と専門家との連携が、結果を大きく左右します。具体的に押さえたいポイントは以下の通りです。
- 早期から税理士や専門家と連携する
- 事業承継税制との適用関係を確認する
- 株式評価方法を整理しておく
- 経営者側の立場で助言できる専門家を選ぶ
それぞれを順に見ていきます。
早期から税理士や専門家と連携する
持株会社スキームは、税務面・法務面・資金面の複合的な論点が絡みます。設計段階から専門家を交えて検討することで、想定外のリスクや見落としを避けやすくなります。
特に税務面は、スキーム設計次第で税負担が大きく変わるため、早期に税理士と相談して試算を行うことが望ましい対応です。あとから修正するより、最初から整合性のある設計にしておく方が、結果として手戻りを抑えやすくなります。
事業承継税制との適用関係を確認する
事業承継税制は、一定の要件のもとで、後継者が取得した非上場株式に係る贈与税・相続税の納税猶予等を受けられる制度です。持株会社スキームを活用する場合、事業承継税制の適用要件との整合性を確認しておく必要があります。
要件やスキームによっては、持株会社を介した承継で事業承継税制の適用関係が複雑になる場合があります。活用を検討する場合は、税理士などの専門家と連携し、適用要件と持株会社スキームの整合性を事前に確認することが重要です。
株式評価方法を整理しておく
非上場株式の評価には、原則的評価方式と、一定の場合に用いられる配当還元方式があります。持株会社スキームで譲渡される株式は、評価方法によって価額が大きく変わります。
評価方法は、株主区分や持株割合、会社の財務状況など、複数の要素に左右されます。事前に複数の評価方法で試算を行い、譲渡価額の妥当性を整理しておくことで、後の税務上の説明もしやすくなります。
現経営者の立場に立てる専門家を選ぶ
M&Aの依頼先には、仲介とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)という2つの形態があります。仲介は売り手と買い手の双方と契約して間に立つ立場であり、FAは売り手または買い手のどちらか一方と契約して依頼者の利益を優先する立場です。報酬を依頼者側からのみ受け取るFAは、利益相反が構造的に起こりにくくなります。
現経営者としては、自社の状況に応じて、利益相反の構造を理解したうえで、現経営者側の立場で助言できる支援体制を検討することが、納得度の高い承継につながります。仲介とFAの違いや選び方は、以下の記事もご覧ください。
M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説
まとめ
持株会社を活用した事業承継・会社売却は、株式や資本関係を整理しながら、将来の承継や売却に備えるための手法です。スキーム設計次第で、税務面、資本政策等にさまざまな影響が生じます。
特に売り手にとっては、以下のような論点を踏まえたうえで進めることが重要です。
- スキームの種類ごとの特徴を理解し、自社に合う方法を選ぶこと
- 譲渡益課税や株式評価など、税務面・資金面の影響を事前に整理すること
- 税務上の合理性や実態を伴った設計にすること
- 現経営者側の立場で助言できる専門家と連携すること
持株会社の活用は、設計の質と専門家との連携によって、現経営者や関係者にとって納得感のある承継を実現しやすくする手段です。早い段階から計画を立て、信頼できる専門家と一緒に進めることで、長期的な経営の安定と現経営者の安心を両立しやすくなります。
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