中小企業オーナーが知るべき「中小M&A業界」の裏事情…「仲介サービス」と「FA」の“人材の採用基準”
公開日:2024.11.18
2024.11.18
更新日:2024.11.18
2024.11.18
同じ「M&A支援サービス」でも、仲介とFAの“人材特性”は違う
FAサービスは供給が少なく、これまで大・中規模案件(百億円~数千億超)を対象にサービスが提供されてきました。他方、M&A仲介サービスは、FAサービスが供給されない中・小規模のマッチングニーズの受け皿として提供され、1ケタ億円から20-30億円規模のディールを主な対象としています。
このような違いがあるため、M&A仲介サービスとFAでは、採用対象となる人材のペルソナも異なります。実際、両業界の間で人材が行き来することは多くありません。それぞれの業界では一般的にどのような人材が求められるのかを見ていきましょう。
未経験者歓迎 早々に「営業力」を求める仲介業界
M&A仲介業界は、保険や証券リテール、不動産のセールスなどで活躍している営業キャリアの方が目指す印象がありますが、そこで重視されるのはやはり営業力でしょう。業界として未経験者を大量に採用している点にも大きな特徴があります。
一般的にM&A仲介業界の給与体系は、成約実績に基づく大きな成約ボーナスが設計されており、未経験者であっても早期に仕事を取ってきて成約実績を上げることが求められます。営業力に自信があり、成功報酬型の給与体系で仕事がしたい営業経験者にとっては、非常に魅力的な転職先になっています。
人材を採用する仲介会社の立場からすると、基本給を抑える反面、大きな成功報酬インセンティブを設計することで、未経験層の大量採用がしやすい仕組みを取っているといえるでしょう。業界の人材の流動性が高い大きな要因の一つとしては、このような給与体系が挙げられそうです。
仲介会社を卒業した後のキャリアとしては、ポテンシャル採用でコンサルティング業界などに転じるケースも一定数あるようですが、営業力を活かして引き続き営業職に就くケースが多いようです。
基本的にはキャリア採用 ポテンシャル重視のFA業界
一方のFAに関しては大きく状況が異なり、業界として未経験者の採用はそれほど多くはありません。未経験者の採用基準も仲介サービスとは異なります。
ジュニアロールであるアナリストやアソシエイトであっても、FA業務においては資料作成やバリュエーションなどに関連して、ファイナンスや法規制、会計税務に関する知識の活用が多分に求められます。
そのためFAの未経験者採用においては、論理的思考や頭の回転の速さ、専門領域のトピックについても貪欲に調べ、理解しようとする探究心などが重視されます。クライアントワーク(ここでは特定の顧客の利益のために支援を提供するという意味)において、全力を尽くせるタイプかどうかも評価のポイントでしょう。ベースとなる財務会計・ファイナンスの知識を持っていることがアドバンテージになることから、MBAホルダーや公認会計士などの資格が歓迎されます。
FA業務においては、M&Aの取引相手とのマッチングのみならず、M&Aの全プロセスにおいて顧客の利益を守り、追求するために最善を尽くすことが役割であり義務であるため、それを前提とした採用ペルソナとなっています。
一般的にFAの実務においては複数名でチームを組んで案件対応を進めます。関与人数は案件規模によって異なるものの、一つのチームの中にMD(マネジングディレクター)やD(ディレクター)、VP(ヴァイスプレジデント)、アソシエイト、アナリストと複数階層が関与します(各ファームで呼称や役割は多少異なります)。
特に大型の案件では、仕事を取ってくる役割は主にMD、Dなど上層の職階が担うことが一般的で、アソシエイトやアナリストなどのジュニア層に求められることはありません。ジュニア層については、売上ノルマの達成状況などの定量評価よりも、日頃の業務に取り組む姿勢やファームが求める役割期待を果たしているかという定性評価に重きが置かれることが一般的です。未経験者であっても早々に営業結果が求められる仲介サービスとは大きく異なるポイントです。
FAの基本給は仲介サービスと比較して高く設定されているケースが一般的で、逆に、直接的な成約インセンティブは仲介サービスほど激しく設計されることはありません。これは、顧客の利益を守り、追求する役割を果たすためです。激しい成約インセンティブ設計が原因で顧客の利益とFAの利益が相反することを避ける意図があります。
FA業務を卒業したあとのキャリアは、PEファンドにおける投資担当や、スタートアップのCFO、事業会社の経営企画系ポジション、コンサルティング会社など多岐にわたります。そのため、こうしたキャリアにつながる登竜門的な仕事としてFAを志す人も一定数存在します。FA業界の人材流動性が高くなる背景としては、こうした事情もありそうです。
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