医療法人業界のM&A|医療法人業界の動向やM&Aのポイントも解説!

2025.02.05

公開日:2025.02.05

2025.02.05

2025.02.05

更新日:2025.02.05

2025.02.05

医療法人業界のM&A|医療法人業界の動向やM&Aのポイントも解説!

昨今、医療法人業界は高齢化などによって需要が高まっており、M&A取引が活発に行われるようになっています。

医療法人業界では、人材不足や後継者不足が深刻な問題となっており、M&Aが有効な解決の手段として注目されています。

では、具体的に医療法人業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の医療法人業界のM&A事情を解説します。さらに、医療法人業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、医療法人業界でM&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。

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医療法人業界の動向

医療法人業界の動向

厚生労働省の「令和5年度 医療費の動向」によると、2023年の医療費は47.3兆円となっています。前年と比較すると2.9%増です。

医療費および医療施設数の推移

参照:厚生労働省「令和5年度 医療費の動向

2020年度に一度下降しているものの、その後は回復傾向にあります。これは、高齢化が原因となり、医療費が増加していることによるものだと考えられます。

2022年には団塊世代が後期高齢者となり、さらなる高齢化が予想されていました。それにともない、医療費の増加も今まで以上にスピードアップしています。

一方で、病院数は減少傾向にあります。2022年の病院数は8,156施設となっており、前年比0.6%減です。病院数が減少しているのは、後継者不足や経営破綻、病院の統合や再編が原因と考えられます。

少子高齢化の進行により、医療や介護に関わる人材が今後はさらに減少すると考えられています。医療法人には特別な資格が必要なケースも多いため、人材不足はさらに深刻化するでしょう。

また、施設や設備の老朽化も深刻な問題のひとつです。特に経営状態が苦しい中小規模医療法人は、老朽化した施設や設備に対応できる資金的な余裕がなく、建替えできないケースも増加しています。

医療法人業界のM&A動向

医療法人業界のM&A動向

医療法人業界では、医師の高齢化にも悩まされており、今後も同じ数の患者に対応することは難しいと考えられています。さらに、高齢化による後継者不足も深刻な問題です。そのため、人材不足や後継者不足の解消を目的としたM&Aを実施する医療法人が増加しています。

医療報酬等の引き下げによって経営が難しくなった医療法人が、経営の安定を求めてM&Aを実施し、大手企業の傘下となるケースも増加しています。

大手病院や医療法人は、経営が苦しい中小規模の医療法人を吸収し、事業規模やエリアの拡大を目指してM&Aを実施していますが、そこにはさまざまな制限が定められています。そのため、業界再編が十分に進んでいるわけではありません。

その中で、異業種の医療法人業界への参入も増加しています。M&Aを実施すれば新規開設よりも短期間で病院や医療に関する資格を持った人材を確保でき、素早く医療サービス事業への参入が可能となるためです。

医療法人業界のM&Aの流れ

医療法人業界のM&Aの流れ

医療法人業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2..買い手候補先企業との接触、意向表明書受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、情報受領者に対してその情報を秘密に保持することを約束する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業をリストアップしたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。特に医療法人の場合は、持分の有無によって譲渡ストラクチャーが異なるため、事前に確認することが重要です。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2..買い手候補先企業との接触、意向表明書受領

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]

医療法人業界のM&Aのメリット

医療法人業界のM&Aのメリット

医療法人業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・お客様への影響を最小限に抑えられる
・人材不足を解消できる

それぞれ詳しくみていきましょう。

医療法人業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。

一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。

医療法人業界のM&Aのメリット②:仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる

事業承継において、廃業を選択した場合には、仕入先や取引先との契約を終了させる必要が出てきます。債権債務の整理など、さまざまな影響が自社および取引先に波及します。

一方で、M&Aを実施する場合、一般的には既存取引先との契約関係は引き継ぐことが多く、廃業による影響を最小限に抑えられます。

医療法人業界のM&Aのメリット③:人材不足を解消できる

医療法人で人材不足や後継者不足に悩まされている場合、解消するのは他の業種と比較して難しくなっています。医療法人で必要とされている人材は、医師免許などの特別な資格が必要となるケースが多いためです。

しかし、M&Aを実施できれば、すでに資格を持っている人材を確保できるようになります。それにともない、後継者不足も解消できるでしょう。

医療法人業界のM&Aのポイント

医療法人業界のM&Aのポイント

医療法人業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・持分のありなしに注意する

それぞれ詳しく解説します。

医療法人業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。

医療法人業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する

売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。

税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。

医療法人業界のM&Aのポイント③:持分のありなしに注意する

医療法人がM&Aを実施する場合、出資持分ありとなしに分れており、それぞれM&Aの手段が異なることに注意しなければなりません。

出資持分がある医療法人の場合、主に出資持分譲渡が採用されます。出資持分譲渡は株式譲渡と同じく、病院や医療法人を丸ごと引き継ぐため、資産だけでなく負債も引き継ぎ、従業員の再雇用手続きが必要ありません。

一方で出資持分がない場合、出資持分譲渡を採用できないため、地位の譲渡や事業譲渡など他の手段を採用しなければなりません。

医療法人業界のM&A売却事例

医療法人業界のM&A売却事例

ここでは、医療法人業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の3つの事例を紹介します。

・CHCP(地域ヘルスケア連携基盤)×医療法人社団新緑会
・医療法人社団萌彰会×医療法人友愛会
・医療法人渡部会×ららら歯科医院

実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。

医療法人業界のM&A売却事例①:CHCP(地域ヘルスケア連携基盤)×医療法人社団新緑会

CHCP(地域ヘルスケア連携基盤)は、歯科医院を運営する医療法人社団新緑会を買収し、持ち分を取得したことを2024年3月26日に発表しました。

CHCPはユニゾン・キャピタルの投資先でヘルスケア分野での経営支援を実施しています。ヘルスケア分野に強みを持っている医療法人です。

医療法人社団新緑会は、2000年より「もも歯科」を運営しています。予防歯科を中心とした診療方針を展開しており、小さな子どもから高齢者まで幅広い層の患者が通っている歯科医院です。

本件M&Aによって、CHCPは地域のニーズに対応できる医療体制の拡充を図っており、持続的な地域ケアモデルの構築を目指しています。医療法人社団新緑会は、「スタッフを大切にしたい」「質の高い治療を提供し続けたい」という想いの実現を目指しています。

医療法人業界のM&A売却事例②:医療法人社団萌彰会×医療法人友愛会

医療法人社団萌彰会は、同業の医療法人友愛会から松本医院の事業を2022年3月1日付で譲り受けました。

医療法人社団萌彰会は那須北病院を運営しており、脳疾患を専門とした地域の中核病院のひとつとして発展しています。地域医療を目指した病院機能の再編をすすめており、幅広い疾患への対応や診療体制の構築を進めています。

医療法人友愛会は、地域の中核的病院として友愛医療センターや豊見城中央病院、老人保健施設友愛園を中心に法人内各施設が包括的に医療介護サービスを提供している医療法人です。地域住民の健康と福祉の向上に貢献することを目指しています。

本M&Aによって、医療法人社団萌彰会は地域の医療機関と密接に連携し、地域住民へ良質な医療の提供を目指しています。また、救急医療の充実にも取り組んでいます。

医療法人業界のM&A売却事例③:医療法人渡部会×ららら歯科医院

医療法人渡部会が運営する、ららら歯科医院の荒木健太朗院長は、同医院をEBOにより2021年12月15日付で譲り受けました。

医療法人渡部会は歯科医院を展開しており、一箕歯科医院も運営しています。真に心の底から十分に満足してもらうために「良質」と「高度」な医療を両輪として大切にしている医療法人です。

ららら歯科医院は2003年に開設された歯科医院です。痛みが少なく、できるだけ削らず、可能な限り歯を残す治療に取り組んでおり、「⼀⼈でも多くの患者様に納得できる治療をお届けする」をモットーに、⼟⽇祝⽇も休みなく診療をしています。

本M&Aは荒木院長が設立した医療法人に経営および運営を移転しており、従来通りの院長やスタッフがそのまま診療を引き継いでいます。

医療法人業界のM&Aに関するよくある質問

医療法人業界のM&Aに関するよくある質問

医療法人業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

最適な取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

医療法人業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

医療法人業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

まとめ

まとめ

医療法人業界では、高齢化によって需要が高まっているのにも関わらず人材が不足しており、深刻な問題です。

医療法人業界でM&Aを進められれば、人材不足の解消が期待でき、後継者問題の解決にもつながるでしょう。

M&Aを実施する際には、適切な助言会社の選定や自社の収益力・財務状況の把握、持ち分ありなしの把握が重要です。特に持ち分の把握は医療法人ならではのポイントとなるため、事前に把握しておきましょう。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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