保険代理店業界のM&A事情とは?業界動向やM&Aのポイントを解説!

2025.05.30

公開日:2025.05.30

2025.05.30

2026.03.11

更新日:2026.03.11

2026.03.11

保険代理店業界のM&A事情とは?業界動向やM&Aのポイントを解説!

昨今、保険代理店業界では乗合代理店の増加や業界再編の進行により、M&Aが活発に行われるようになっています。経営者の高齢化や後継者不足、さらには営業体制の維持といった課題を背景に、M&Aが有効な解決手段として注目されています。

では、具体的に保険代理店業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の保険代理店業界のM&A事情を解説します。さらに、保険代理店業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、M&Aを検討している方はぜひ参考にしてください。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。

保険代理店業界の概要

保険代理店業界の構造を正しく理解することは、保険代理店の売却を検討するうえでの前提となります。そこで、はじめに業界の基本である「定義」と「保険代理店の種類」について整理します。

保険代理店は単なる販売窓口ではなく、保険会社との契約形態や取扱商品によって役割が大きく異なります。以下では、保険代理店の定義と分類を明確にし、その違いがM&Aにどのような影響を与えるかを解説します。

保険代理店の定義

保険代理店とは、保険会社と代理店委託契約を締結し、保険商品の募集や契約締結の媒介を行う事業者を指します。保険業法第2条において、保険募集人は保険会社のために保険契約の締結の代理または媒介を行う者と定義されています。

保険代理店は契約手続きだけでなく、契約後の保全業務や更新対応も担います。そのため、保険代理店のM&Aにおいては、単なる売上規模だけでなく、契約継続率や顧客管理体制も評価対象になります。

※参考:出典:e-Gov法令検索「保険業法

保険代理店の種類

保険代理店は、保険会社との契約形態や取扱商品の範囲によって大きく分類されます。主な形態は以下の3種類です。

・乗合代理店
・専属代理店
・独立系ファイナンシャルプランナー

それぞれ収益構造や組織体制が異なり、M&Aにおける論点も変わります。

乗合代理店

乗合代理店は、複数の保険会社の商品を取り扱う形態です。生命保険と損害保険の双方を扱うケースも多く、顧客の比較検討ニーズに対応できます。近年は来店型店舗を展開する企業の再編が進んでおり、規模拡大型のM&Aも見られます。

複数社と契約しているため、譲渡時には各保険会社との契約条件や承継可否の確認が重要になります。これが売却価格に直接影響します。

専属代理店

専属代理店は、特定の1社の保険会社のみと契約し、その商品のみを扱う形態です。地域密着型の個人代理店に多く見られます。支援体制や手数料体系が安定している一方で、収益源が限定されやすい特徴があります。

M&Aでは、専属契約の承継条件や代理店コードの継続可否が主要な検討事項となります。契約が引き継げない場合、事業価値は大きく減少します。

独立系ファイナンシャルプランナー

独立系ファイナンシャルプランナーは、保険募集に加え、資産形成や相続対策などの助言業務を行う形態です。法人化している事例も多く、顧客単価が比較的高い傾向があります。

一方で、代表者個人への依存度が高い場合は属人性リスクが評価上の減額要因になります。業務の標準化や顧客情報の整理状況が、譲渡時の評価を左右します。

保険代理店業界の現状と動向

生命保険協会の『生命保険の動向 2025年版』によると、2024年度の収入保険料は36兆8,037億円(前年度比98.1%)となり、4年ぶりの減少となりました。また、2024年度末時点の法人代理店数は3万1,339店、個人代理店数は4万3,959店となり、いずれも減少傾向が続いています。

保険種類別収入と登録保険代理店数の推移

生命保険協会「生命保険の動向

代理店数の推移を見ると、法人代理店数は9年連続、個人代理店数は10年連続で減少しており、小規模代理店の統合や廃業、大手代理店への集約が進む状況がうかがえます。登録営業職員数は2024年度に24万1,507名となり、2年ぶりに増加しました。一方で、代理店使用人数は減少が続いています。

保険市場自体は一定の規模を維持しているものの、代理店構造は再編が進んでいることが読み取れます。特に複数社の商品を扱う乗合代理店を中心に規模拡大と集約が進み、選別の動きが強まっています。

加えて、保険業法や各種ガイドラインの整備により、顧客への説明義務や情報管理体制の強化が求められています。コンプライアンス体制や内部管理体制を十分に構築できない小規模代理店にとっては、経営負担が増しているのが実情です。

このように、代理店数の減少と経営環境の高度化が同時に進むなか、保険代理店業界では再編圧力が継続しています。経営の持続性を確保するための選択肢として、M&Aは引き続き重要な戦略の一つといえるでしょう。

保険代理店業界のM&A動向

保険代理店業界では、事業承継や販売チャネルの再構築を目的としたM&Aが活発になっています。経営者の高齢化による後継者不在に加え、営業体制やコンプライアンス強化の対応への負担から、第三者への譲渡を選ぶケースが増えています。

契約者との信頼関係や保険会社との委託契約が重要な資産となるため、円滑な引き継ぎを重視したM&Aが多いのが特徴です。

近年は競争の激化により、営業エリアや取扱商品の拡充を目的に、同業間での買収も活発化しています。また、商社や通信、金融など異業種からの参入も相次ぎ、業界再編が進んでいる傾向にあります。

こうした背景から、M&Aは事業承継だけでなく成長戦略としても重要性を増しています。

保険代理店M&Aの主なスキーム

保険代理店のM&Aでは、どの手法を選択するかによって手続きや税務、引継ぎ方法が大きく変わります。主なスキームは以下の通りです。

・株式譲渡
・事業譲渡
・合併

それぞれに特徴があり、代理店の規模や契約形態によって適切な方法が異なります。ここでは、各スキームの概要と保険代理店における注意点を解説します。

株式譲渡

株式譲渡は、会社の株式を第三者へ譲渡することで経営権を移転する方法です。法人形態の保険代理店に多く用いられます。資産や負債、契約関係を包括的に引き継ぐため、顧客契約や従業員との雇用関係を個別に再締結する必要がない点が特徴です。

一方で、過去の債務や潜在的なリスクも引き継がれるため、財務状況やコンプライアンス体制の確認が不可欠です。保険会社との代理店契約についても、株主変更時の承認条件を事前に確認しておく必要があります。

株式譲渡についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【保存版】「株式譲渡」の手続きガイド──流れと必要書類を徹底解説

事業譲渡

事業譲渡は、会社の一部または全部の事業を切り出して譲渡する方法です。個人事業主の代理店や、特定拠点のみを売却する場合に用いられることがあります。譲渡対象を限定できるため、不要な負債を引き継がずに済む点がメリットです。

ただし、契約や従業員の移転は個別同意が原則となります。保険会社との契約や募集人登録の扱いも慎重に整理する必要があり、顧客への説明や同意取得が円滑に進まない場合は、契約継続率に影響が出る可能性があります。

合併

合併は、複数の会社を統合して1社にまとめる方法です。拠点統合や人材集約を目的とした再編で選択されることがあります。シナジー効果が見込めることに加え、株式の交付で実施できるため資金調達が不要となるケースが多い点が、合併のメリットです。

合併では会社自体が統合されるため、組織文化や業務体制の統一が重要です。顧客対応の質を維持するためには、統合後の運営体制を事前に設計しておく必要があります。

保険代理店業界のM&Aの流れ

保険代理店業界のM&Aの流れ

保険代理店業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]

保険代理店業界のM&Aのメリット

保険代理店業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・事業規模の拡大と専門性の強化につながる
・個人保証を解除できる

それぞれ詳しくみていきましょう。

事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。

特に地域密着型の保険代理店では、長年にわたり顧客との信頼関係が築かれているため、事業の継続は大きな意味を持ちます。

M&Aの実施により、営業体制や顧客対応を維持したまま事業を引き継ぐことができ、従業員の雇用も守ることが可能です。

事業規模の拡大と専門性の強化につながる

M&Aにより複数の代理店が統合されると、拠点数や契約件数の拡大が見込まれます。また、異なる保険商品の取り扱いやノウハウの融合で専門性が高まり、営業効率の向上にもつながるでしょう。

乗合代理店間での統合では商品ラインナップが充実し、多様な顧客ニーズにも対応できる体制が整います。さらにはシステムや業務フローの一本化で、管理コストや事務作業の削減も期待できます。

このように、保険代理店にとってM&Aは事業の成長と効率化の両面で多くのメリットをもたらす有効な手段です。

個人保証を解除できる

中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていないのが現状です。

M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。

保険代理店業界のM&Aの相場

保険代理店業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。

これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。

その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。

保険代理店業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

・類似会社比較法
・類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]

保険代理店業界のM&Aを成功させるポイント・注意点

保険代理店業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の4つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・顧客情報の統合と管理体制を確立する
・既存の保険会社と取引条件・継続可否を確認しておく

それぞれ詳しく解説します。

適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。

自社の正当な収益力・財務状況を把握する

売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。

税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。

顧客情報の統合と管理体制を確立する

保険代理店のM&Aでは、契約者情報や営業履歴などの顧客情報が重要な資産のひとつです。 そのため、統合後に顧客情報を正確かつ安全に引き継ぐための準備が欠かせません。

複数の代理店が統合される場合、それぞれの代理店で使用していた管理システムが異なることも多く、データの統一や運用ルールの整備が必要です。万が一、情報の不整合や漏洩が起これば、顧客との信頼関係に大きな悪影響を及ぼすおそれもあります。

そのため、M&Aを進める際には事前に情報管理体制の見直しと再設計を行い、円滑な事業の移行と継続的な顧客対応を実現する仕組みづくりが重要です。

既存の保険会社と取引条件・継続可否を確認しておく

保険代理店を売却する場合は、現在取引している保険会社との代理店契約を継続できるかどうかも確認しておきましょう。株主変更や事業譲渡が発生した際に、事前承認が必要となる契約条項が定められていることがあります。この承認が得られない場合、売却後に主力商品の取扱いが停止され、事業価値が大きく毀損する可能性があるためです。

売り手としては、契約内容を事前に精査し、承認条件や通知義務の有無を把握しておくことが重要です。また、現在の手数料体系や評価制度が売却後も維持される見込みがあるかについても、確認しておく必要があります。条件変更の可能性がある場合は、その影響を想定したうえで交渉を進めるべきです。

加えて、募集人登録の扱いや教育体制の継続条件も整理しておくことで、買い手からの確認事項に迅速に対応できます。契約関係を事前に可視化しておくことが、価格交渉を有利に進めるための前提となります。

保険代理店業界のM&A売却事例

ここでは、保険代理店業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の3つの事例を紹介します。

・鎌倉新書×ベル少額短期保険
・日税サービス×富士グローバル
・IXホールディングス×Jリスクマネージメント

実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。

保険代理店業界のM&A売却事例①:鎌倉新書×ベル少額短期保険

鎌倉新書は、2023年11月1日付でベル少額短期保険を買収し、約7100万円で71.61%の株式を取得しました。

鎌倉新書は、ポータルサイト運営を中心とした終活に関わる情報サービスの提供や、自治体に対する高齢者領域での住民サービスの支援を行っている企業です。

ベル少額短期保険は、終活分野に特化したユニークな保険商品を展開する1984年設立の老舗企業です。個人向けの特定リスクに対応する商品設計に強みを持ちます。

本件M&Aにより、鎌倉新書は既存サービスとの連携を強化し、クロスユースの拡大や顧客データベースの拡充など、保険領域の成長を加速させることが期待されています。

保険代理店業界のM&A売却事例②:日税サービス×富士グローバル

日税サービスは、2024年3月27日付で富士グローバルを買収し、株式を取得しました。

日税サービスは税理士との連携を通じて保険販売を行う保険代理店で、幅広い専門サービスを提供しています。

富士グローバルは1990年に設立され、保険販売だけでなく福利厚生制度の構築やWebセキュリティ、海外リスクマネジメントなども手がける多機能型代理店です。

本件M&Aにより、日税サービスは法人向けサービスの幅を広げ、保険業界におけるサービスモデルの再定義を目指す動きを強化する見込みです。

保険代理店業界のM&A売却事例③:IXホールディングス×Jリスクマネージメント

クレアシオン・キャピタルは、2023年9月22日付で同社が出資するIXホールディングスを通じて、Jリスクマネージメントに投資し、既存株主から株式を取得しました。

IXホールディングスは、成長企業への出資と事業支援を目的とした投資会社で、クレアシオン・キャピタルが経営戦略や管理体制の整備を支援しています。

Jリスクマネージメントは2009年に設立され、生命保険・損害保険の乗合代理業を全国展開しており、独自の見込み客獲得ルートが強みです。

本件M&Aにより、Jリスクマネージメントは経営基盤を強化し、将来的な株式上場を見据えた成長戦略を加速させると見られています。

保険代理店業界のM&Aに関するよくある質問

保険代理店業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

M&A後の営業体制や募集人の処遇はどうなりますか?

M&A後は、買い手企業の方針に基づいて営業体制が再編されるケースが一般的です。

ただし、現場の混乱を避けるため、一定期間は既存の営業スタイルを尊重しながら段階的に移行が進められることが多いです。募集人についても、多くの場合は継続雇用され、既存の顧客対応を担う役割が求められます。

処遇や配置はM&A契約時に合意されることが多いため、売り手側があらかじめ意向を整理しておくことでスムーズな取引につながります。

まとめ

保険代理店業界では乗合代理店の台頭や販売チャネルの多様化が進むなか、経営者の高齢化や事業拡大と専門性の強化といった課題から、M&Aが活発化しています。特に、営業体制や顧客基盤の維持を目的とした第三者への事業承継が注目されています。

保険代理店業界でM&Aを実施すると従業員の雇用や顧客対応を維持できるほか、個人保証の解除といったメリットも期待できるでしょう。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。

この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

まずは無料で
ご相談ください

お電話でのお問い合わせ

03-6831-9322

(平日9:00〜18:00