健康食品業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介
公開日:2025.02.17
2025.02.17
更新日:2026.01.01
2026.01.01
近年、健康志向の高まりを背景に、健康食品業界の需要は拡大しています。それに伴い、業界内では競争が激化しており、他社との差別化や事業拡大を目的としたM&Aが活発化しています。
では、具体的に健康食品業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の健康食品業界のM&A事情を解説します。さらに、健康食品業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、M&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。
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健康食品業界とは?業界の現状を解説

健康食品業界は、健康の維持や増進を目的とした食品を扱う、国民の生活に深く根ざした産業です。本章では、業界の定義を整理したうえで、近年の動向や市場環境の変化について詳しく解説します。
健康食品業界の定義
健康食品業界とは、健康の維持や増進に役立つ食品を製造し、消費者に提供する産業を指します。この業界には、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品など、国が定める制度に基づいた商品が多く含まれます。
また、ビタミン剤やプロテインといった栄養補助食品も、この分野を構成する重要な要素です。医薬品とは異なり、あくまで食品として日常的な健康維持を支援する役割を担っています。
製造から卸売、さらにECサイトや店舗での販売に至るまで、ビジネスモデルは多岐にわたります。近年では、インターネットを通じて消費者へ直接販売するD2Cモデルを採用する企業も増加しています。このように、多様な形態で消費者の健康ニーズに応えている点が、業界の大きな特徴です。
消費者の健康意識は年々高まっており、生活習慣病予防への貢献も期待されています。科学的根拠に基づいた商品開発が進む中で、信頼性の高い情報提供の重要性も一層高まっています。今後も、国民の豊かな生活を支える不可欠な産業として、進化を続けていくでしょう。
健康食品業界の動向
健康食品業界は、社会環境の変化や消費者のライフスタイルに大きく影響を受ける産業です。予防医学への関心の高まりを背景に、日々の食事を通じて健康を管理する意識が一般化しています。その結果、特定の機能を備えた機能性表示食品などの需要が急速に拡大しています。
また、異業種からの参入が相次ぎ、市場競争はかつてないほど激化しています。製薬会社や食品メーカーは、自社の技術や研究成果を活用し、付加価値の高い新製品を次々と市場に投入しています。こうした状況下では、他社との差別化を実現するための高い研究開発力が企業に求められています。
さらに、デジタル技術の普及により、顧客一人ひとりのニーズに対応したパーソナライズ化も進展しています。SNSを活用したマーケティングが主流となり、若年層への認知拡大も加速しました。こうした市場環境の変化に柔軟に対応できる企業が、今後の業界成長を牽引していくでしょう。
健康食品業界の市場規模
矢野研究所「健康食品市場に関する調査を実施」によると、健康食品業界における市場規模は、2024年に8,945億1,000万円となっており、前年比1.2%減と、わずかに縮小しています。
ドラッグストアやコンビニエンスストアなどの店頭ルートの販売が大幅に伸長した一方、市場の牽引役であった通信販売が競合激化により2年度連続の縮小となったことに加え、海外市場が大きく減少しました。
前年比ではわずかに減少したものの、市場拡大の背景には国民全体の健康志向の高まりがあります。特に関心の高い高齢者層に支えられ、需要は引き続き堅調に推移しています。
健康食品は、一度だけでなく継続的に必要となるケースがほとんどです。健康食品会社の中には定期購入や会員制度を設けているケースも少なくありません。そのため、リピーターを確保しやすくなっています。リピーターは増えれば増えるほど売り上げが安定するため、いかに定期購入者を増やして会員を減らさないか工夫する必要があります。
また、コロナウイルスの流行にともない、これまで訪問販売が多かった健康食品の販売チャネルが、通信販売にシフトしていることも特徴のひとつです。ターゲット層によっては販売訪問の方が適していることもありますが、近年のインターネットの急速的な普及にともない、より幅広いターゲットにアプローチできるようになるでしょう。
さらに、業界内で競合が多く、競争も激しくなっています。健康食品業界は参入障壁が低く、十分な知識や自社工場を持っていなくても参入できます。そのため、異業種の企業が参入するケースも少なくありません。
サービス・運営形態の多様化
近年はD2Cモデルの普及により、小規模な企業であっても全国の消費者へ直接商品を届けられるようになりました。その結果、特定のニッチなニーズに応えるユニークなブランドが数多く誕生しています。実店舗を持たない運営形態が広がり、参入障壁が低下した点も大きな特徴です。
また、定期購入型のサブスクリプションモデルは、収益の安定化に大きく寄与しています。顧客との継続的な接点を構築することで、LTV(顧客生涯価値)を高める戦略が一般化しました。ITを活用した効率的な運営が、企業の競争力を左右する時代となっています。
高齢化社会の進展
高齢化の進行に伴い、シニア層をターゲットとした商品のニーズは急速に高まっています。具体的には、フレイル対策や認知機能の維持をサポートする食品がヒット商品となる事例が増えています。健康寿命の延伸を志向する消費行動が、業界の安定した需要基盤を形成しています。
さらに、独居高齢者の増加を背景に、手軽に摂取できるパッケージの開発も進んでいます。利便性と栄養価を両立させた商品は、今後も需要の拡大が見込まれます。高齢者の悩みや不安に寄り添った商品展開が、企業への信頼獲得につながるでしょう。
コロナ禍の影響
コロナ禍を契機として、免疫力の向上やダイエットに対する関心が世界的に高まりました。外出自粛による運動不足を背景に、自宅で手軽に栄養を補給できる食品の売上が伸長しました。この時期に健康管理の重要性を再認識した消費者は、現在も継続して関連商品を利用しています。
一方で、対面販売を主軸としてきた企業は、デジタル化への迅速な対応を迫られました。ECチャネルへのシフトが加速し、オンラインでの顧客接点の構築がビジネスの成否を左右する状況となりました。こうした変化は、業界全体のデジタルトランスフォーメーションを一段と促進したといえます。
健康食品業界のM&A動向とは?

健康食品業界では、競争力の強化や販路拡大を目的としたM&Aが活発に行われています。市場が成熟する中で、自社単独での成長にこだわるよりも、提携によるシナジー効果を重視する動きが目立っています。本章では、代表的なM&Aのパターンについて解説します。
同業種間でのM&A
同業種間のM&Aは、シェア拡大やコスト削減を主な目的として行われます。大手企業が中小メーカーを買収することで、商品ラインナップの拡充が可能になります。既存顧客とは異なる層へ迅速にアプローチできる点も、大きなメリットです。
また、物流網や製造拠点を統合することで、生産効率の大幅な向上が期待できます。
さらに、特定の成分や独自の研究技術を持つ企業をグループ化し、開発力を強化する動きも活発です。競合他社にはない強みを取り込むことで、市場における優位性をより確かなものにできます。同業ならではの業界理解の深さが、統合後のスムーズな運営を支える重要な要素となります。
異業種間でのM&A
異業種による健康食品業界への参入を目的としたM&Aも、近年は非常に増加しています。
例えば、製薬会社や大手食品メーカーが、新たな収益の柱として健康食品事業を取得する事例が目立ちます。既存のブランド力や流通ルートを活用し、健康意識の高い層へ効率的にアプローチする狙いがあります。こうした動きは、事業ポートフォリオの多角化に大きく寄与します。
また、IT企業がD2Cのノウハウを活用する目的で、既存の健康食品ブランドを買収するケースも見られます。デジタルマーケティングの知見と実体のある商品を組み合わせることで、高い成長を狙う戦略です。業界の枠を超えた連携が、新たな価値創出につながっています。
健康食品業界のM&Aの流れ

健康食品業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。
1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明書受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
それぞれ詳しくみていきましょう。
Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。
事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。
その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。
譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。
また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。
M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。
仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。
それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。
弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。
また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。
※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。
Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
次に、買い手候補先企業と接触します。
ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。
対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。
売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。
そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。
Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終締結・クロージングです。
M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。
買い手にとってDDには、以下のような目的があります。
・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる
その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。
譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]
健康食品業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

健康食品業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。
・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる
・製品開発を強化できる
・ブランド力、販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
それぞれ詳しくみていきましょう。
健康食品業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。
一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。
健康食品業界のM&Aのメリット②:仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる
事業承継において廃業を選択した場合、仕入先や取引先との契約を終了させる必要が生じます。あわせて、債権債務の整理なども求められるため、自社だけでなく取引先にも多大な影響を及ぼすおそれがあります。
一方で、M&Aを実施する場合、一般的には既存取引先との契約関係は引き継ぐことが多く、廃業による影響を最小限に抑えられます。
健康食品業界のM&Aのメリット③:製品開発を強化できる
大手企業の傘下に入ることで、高度なノウハウや技術を取り込むことが可能になります。競争の激しい業界で勝ち抜くためには、他社との差別化が欠かせません。M&Aは、研究開発力を飛躍的に高めるための有効な手段といえるでしょう。
特にこの業界では、研究開発や科学的な根拠が差別化に直結するため、高度な技術や革新的な製品を開発できるノウハウが欠かせません。
さらに、AIによるデータ解析なども導入できれば、消費者に対してより高い付加価値を提供しやすくなるでしょう。
健康食品業界のM&Aのメリット④:ブランド力、販売力を強化できる
買い手企業が持つ知名度や信頼性を活用することで、自社製品のブランド価値を高めることが可能です。
例えば、全国展開している大手企業の流通網を活用すれば、短期間での売上拡大が見込めます。自社単独では難しかったドラッグストアへの導入や海外展開も、現実的な選択肢となるでしょう。強力な販売チャネルを獲得することで、製品価値の最大化が期待できます。
また、買い手企業の豊富なマーケティング予算を活用することで、大規模なプロモーション展開も可能になります。認知度が向上すれば、新規顧客の獲得コストの抑制にもつながります。優れた製品を持ちながら販売力に課題を抱えていた企業にとって、M&Aは大きな成長機会といえるでしょう。
健康食品業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
後継者不在という課題を抱える企業にとって、M&Aは事業承継問題を解決する有力な手段です。
親族内での承継が難しい場合でも、外部の適切な買い手に経営を引き継ぐことで、これまで培ってきた技術や企業文化を次世代へつなぐことができます。計画的に承継を進めることで、取引先や顧客に不安を与えるリスクも抑えられます。円滑な経営のバトンタッチは、企業の長期的な存続に不可欠です。
健康食品業界のM&Aの相場

健康食品業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売り上げやブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。
これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。
その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。
健康食品業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。
・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ
インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。
理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。
本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。
マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。
・類似会社比較法
・類似取引比較法
類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。
具体的には、以下のように算定します。
EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)
EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。
また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。
企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。
企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値
第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。
なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。
しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。
M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]
また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]
健康食品業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

健康食品業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。
・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・企業イメージや文化が合う企業とM&Aを実施する
それぞれ詳しく解説します。
健康食品業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する
M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。
真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。
健康食品業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する
売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。
税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。
健康食品業界のM&Aのポイント③:企業イメージや文化が合う企業とM&Aを実施する
健康食品会社は、消費者からの信頼が重要となります。そのため、企業イメージや文化が異なる会社とM&Aをして自社の文化を変えてしまうと、消費者からの信頼の低下につながりかねません。
さらに、社内文化が変わってしまうと、職員の離職にもつながりかねません。イメージや文化がマッチする会社とM&Aを実施し、製品の一貫性を保ちましょう。
健康食品業界のM&A売却事例6選

ここでは、健康食品業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。
・石垣食品×メディアート
・小林製薬×梅丹本舗
・ユーグレナ×フック
・キリンホールディングス×ブラックモアズ
・ライオン×日清食品
・キリンビバレッジ×花王
実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。
健康食品業界のM&A売却事例①:石垣食品×メディアート
石垣食品は、2024年3月25日付で間野賢治代表取締役から1億5,000万円で50%の株式を取得し、3月26日付けで株式交換を実施、簡易株式交換となり、メディアートを完全子会社化しました。
石垣食品は、飲料事業や珍味事業、インターネット通信販売事業およびその他事業を行っています。しかし、業績が低迷する中で、長期安定的に事業を継続するために、化粧品やサプリメントといったこれまでと異なる事業にも進出しています。
メディアートは、1998年に設立され、売上高は2億3,800万円、4人の従業員を抱える企業です。化粧品および健康食品の販売を主力とし、育毛剤や育毛機器も取り扱っています。
本件M&Aによって、全体の業績が低迷していた石垣食品は、メディアートが有する商品開発における知見を活用し、グループの損益の改善、事業シナジーの創出を目指しています。また、
健康食品業界のM&A売却事例②:小林製薬×梅丹本舗
小林製薬は、2019年5月14日付で梅丹本舗を買収し、既存株主から全株式を取得しました。
小林製薬はヘルスケア領域を重点領域の一角として位置づけて事業展開しています。食品分野では栄養補助食品の展開を中心に、同分野の事業強化を継続して努めてきました。
梅丹本舗は1925年に創業され、売上高は5億1,800万円です。日本の食生活に馴染みのある「梅」を使用した「梅丹」「古式梅肉エキス」を主力ブランドとして販売しています。
本件M&Aによって、小林製薬が保有するマーケティング力、販売力、研究開発力と梅丹本舗のブランド力を融合し、栄養補助食品分野で新たな価値の提供を目指します。
健康食品業界のM&A売却事例③:ユーグレナ×フック
ユーグレナは、2018年2月26日付で冨安優太代表取締役が全額出資する蘭Girl From Mars B.V.から8億100万円で44.5%の株式を取得し、その後4月1日付で株式交換を実施、簡易株式交換となり、フックを完全子会社化しました。
ユーグレナは、微細藻類ユーグレナの食品用途屋外大量培養技術をコア技術とし、多様な研究開発活動とともに、ユーグレナを活用した機能性食品・化粧品等の製造販売を行うヘルスケア事業、およびユーグレナを活用したバイオ燃料開発等を行うエネルギー・環境事業を展開しています。
フックは売上高11億9100万円、14人の従業員を抱えている企業です。自社ECサイト「美的タウン」などを通じて、美意識の高い女性を中心とした顧客層向けに天然成分にこだわったサプリメントや健康食品などを販売しています。
本件M&Aによって、ユーグレナは自社の保有している通販事業基盤やマーケティング力、商品開発力および資金力と、フックが持つ女性中心の顧客基盤およびブランド力を組み合わせながら競業を進めることにより、ヘルスケア事業のさらなる拡大を図っています。
健康食品業界のM&A売却事例④:キリンホールディングス×ブラックモアズ
キリンホールディングスは、2023年8月10日付でブラックモアズを買収し、完全子会社化しました。
買い手のキリンホールディングスは、国内大手の飲料メーカーです。近年は「免疫ケア」を軸としたヘルスサイエンス領域を経営の柱として注力しています。
売り手のブラックモアズは、1932年に設立されたオーストラリアの企業です。同国でビタミン剤やサプリメントの市場シェア1位を誇る老舗メーカーとして知られています。アジア圏を含む世界各国に強固な販売網を持ち、天然由来成分に特化した高品質な製品ラインナップが最大の特徴です。
本件M&Aにより、キリンが持つ独自素材とブラックモアズの海外販路が融合します。これにより、アジア太平洋地域での事業拡大が加速すると予測されています。
健康食品業界のM&A売却事例⑤:ライオン×日清食品
ライオンは、2024年1月1日付で機能性表示食品の一部事業を、会社分割により日清食品へ譲渡しました。
買い手の日清食品は、即席麺の国内最大手であり、近年は「完全メシ」など、健康に配慮した食の付加価値向上を戦略的に進めています。
売り手のライオンは、1891年創業の老舗日用品メーカーです。譲渡されたのは「ナイススリムエッセンス ラクトフェリン」をはじめとする機能性表示食品事業です。同事業は、特定成分の研究データと通信販売を通じた高いリピート率を持つ優良な製品群に特化しています。長年の研究に裏打ちされた製品として、健康意識の高い層から長年支持されてきました。
本件M&Aによって、日清食品の持つ食品開発ノウハウと、売り手の機能性素材が組み合わさります。その結果、日常の食事を通じた新しい健康サポートの提供が、より活発になると予測されています。
健康食品業界のM&A売却事例⑥:キリンビバレッジ×花王
キリンビバレッジは、2024年8月1日付で花王から「ヘルシア」ブランドに関する事業を譲り受け、製造・販売を開始しました。
買い手のキリンビバレッジは、キリンホールディングスの傘下で飲料事業を担う企業です。
売り手の花王は、1887年創業の国内最大手の化学・日用品メーカーです。対象となったヘルシア事業は、2003年に「ヘルシア緑茶」を発売して以来、茶カテキンによる脂肪燃焼効果をうたった特定保健用食品(トクホ)の草分け的存在として知られています。科学的エビデンスを重視した開発体制と、圧倒的な認知度を持つブランドに特化した事業部でした。
本件M&Aによって、キリンの持つ広範な自動販売機や小売店への配荷力に強力なトクホブランドが加わります。これにより、消費者の健康ニーズへの対応力が大幅に高まると予測されています。
健康食品業界のM&Aに関するよくある質問

健康食品業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。
理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。
健康食品業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?
もちろん全国問わず、M&Aは可能です。
全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。
健康食品業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?
いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。
業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。
健康食品業界のM&Aに関するよくある質問③:M&Aの準備はいつから始めるべきですか?
M&Aの準備は、早いに越したことはありません。少しでも検討し始めた段階から、少しずつ準備しましょう。
早めの準備を怠ってしまうと、買い手候補が見つからなかったり、実際の価値よりも過小評価された状態で取引を進めざるを得なくなったりしてしまいます。そのため、早めに自社状況の把握やM&A助言会社へ相談しましょう。
まとめ

健康食品業界では、健康志向の高まりなどにより、需要が増加しています。その一方で、業界内の競争は激化し、生き残りや事業拡大を目指してM&Aを実施するケースが多くなっています。
健康食品業界においてM&Aを実施することは、従業員の雇用維持や取引先との関係継続に有効です。さらに、大手企業のノウハウを活用することで、製品開発力の強化も期待できます。
健康食品業界でM&Aを実施する場合、自社のイメージや文化とマッチした企業とのM&Aが重要です。自社の正当な収益力や財務状況を把握し、適切なM&A助言会社を選定しましょう。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
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