建材卸売業のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
公開日:2026.04.26
2026.04.26
更新日:2026.04.26
2026.04.26
建材卸売業は、メーカーから建築資材(木材・金属・セメント・外装材・住宅設備など)を仕入れ、工務店・ハウスメーカー・施工業者に販売する中間流通機能を担う産業です。建材卸売業界の市場規模は年間販売額ベースで約20兆円とされており、住宅設備・建材市場は2024年度に約4兆429億円に達する見込みです(※)。
建材卸売業は地域密着型の傾向が強く、地域の工務店やハウスメーカーとの取引関係に依存しやすい構造にあります。主要10社の売上高を合計しても全体の20%程度にとどまり、寡占化が進んでいない点が業界の特徴です。
一方で、新設住宅着工戸数の中長期的な減少、建材価格の高騰、人手不足、後継者不在といった課題が、中小の建材卸売業者の経営を圧迫しています。こうした環境下で、事業承継や販路拡大、取扱商品の拡充を目的として、M&Aを選択肢に入れる企業が増えています。
本記事では、建材卸売業でM&Aを行う際の相場の考え方をはじめ、業界の現状や代表的な売却手法について解説します。
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無料相談が可能です。実際にどの程度の価格で売却できるのか、どのようにすればより高く売却できるのかを、ぜひご確認ください。
※参考:経済産業省「経済センサス」
建材卸売業界の現状
建材卸売業界は、木材を中心とした「木建ルート」、水まわりの「管材ルート」、電気まわりの「電材ルート」、窓・サッシの「建具ルート」など、建材の種類によって流通経路が異なる多層構造の業界です。メーカーから商社、一次卸(問屋)、二次卸(販売店)を経て施工業者に届くという多段階流通が特徴で、末端の施工業者が中小企業や個人事業主であることが多いため、信用供与の観点からこの構造が維持されています。
市場環境としては、2022年度以降、省エネ性能を重視した高価格帯の商品が好調で、住宅設備・建材市場は堅調に推移しています。一方で、人手不足や建築費高騰で工事の進捗が遅れ、建材の在庫が積み上がる局面も見られます。建設物価指数は過去最高水準の更新が続いており、建材価格の高止まりが業界全体の収益構造に影響を与えています。
中長期的には、人口減少や世帯数の減少に伴い、新設住宅着工戸数の大幅な増加は見込みにくい状況です。2040年度には住宅設備・建材市場は既存住宅向けが半数を超えると予測されており、リフォーム需要への対応が建材卸売業の成長戦略において重要な位置づけとなっています。
※参考:経済産業省「経済センサス」
建材卸売業界でM&Aを行うのはなぜ?売却の理由を紹介
建材卸売業界でM&Aが選ばれる理由は、大きく「事業承継」と「経営の安定化・規模拡大」の二つに集約されます。
まず、事業承継の観点では、建材卸売業は地域の工務店との長年の信頼関係や、メーカーとの仕入れルートがオーナー個人に紐づいているケースが多く、後継者不在がそのまま取引関係の断絶リスクに直結します。人材不足も深刻で、商品知識や配送ノウハウを持つ従業員の確保が年々難しくなっています。
次に、経営の安定化・規模拡大という観点では、建材卸売業はスケールメリットが仕入れ交渉力の向上や物流コストの低減に直結しやすい業態です。建材価格の高騰や原材料費の上昇が続く中、単独では仕入れコストの吸収が難しい中小事業者が増えています。同業他社との統合やグループ化によって、仕入れの効率化、取扱商品の拡充、配送エリアの拡大を図る動きが活発化しています。
近年は、サプライチェーンの垂直統合(工事業の獲得や製造販売業の取り込み)と水平統合(同業統合による地域シェア拡大)の両方が見られ、業界再編の動きが進んでいます。
建材卸売業界での企業売却方法は?3種類を紹介
建材卸売業界のM&Aでは、売却対象や、取引先との契約関係・在庫・倉庫機能の引き継ぎ方針によって、選ぶべき方法が変わります。代表的な手法は以下の3つです。
- 株式譲渡
- 会社分割
- 事業譲渡
建材卸売業は多品種の在庫管理や倉庫・配送機能が事業の根幹を支えているため、手法選択にあたってはこれらの承継方法を慎重に検討する必要があります。それぞれの手法について解説します。
株式譲渡とは?中小企業M&Aで最も選ばれる手法の仕組みと特徴
株式譲渡とは、企業の株主が保有する株式を他者に譲渡することで、経営権を移転するM&Aの手法のひとつです。中小企業のM&Aにおいては最も多く活用されており、後継者不在や事業承継を目的としたケースでよく採用されています。
株式譲渡のメリット
株式譲渡において、売却対象となるのはあくまで「株式」であり、会社そのものの法人格や契約関係、資産・負債はそのまま引き継がれます。
そのため、以下のようなメリットがあります。
- 従業員や取引先との契約を維持したまま、スムーズな引き継ぎが可能
- 許認可や契約の再取得が原則不要で、実務上の負担が少ない
- 法人格が継続するため、営業活動を中断せずに承継できる
とくに、現経営者が引退を検討している場合でも、事業を止めることなくバトンタッチできるため、後継者問題の有効な解決策となります。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項による相手方同意や、業種許認可の変更届・再許可が必要となる場合があるため、事前確認は不可欠です。
株式譲渡の注意点・デメリット
一方で、株式とともに過去の負債や簿外債務(帳簿に載っていないリスク)も引き継がれるという側面もあるため、買い手企業にとっては慎重な対応が必要です。
そのため、M&Aを進める際には、財務・法務・税務などに関するデューデリジェンス(詳細調査)を丁寧に実施し、リスクを洗い出すことが不可欠です。
会社分割とは?M&Aで活用される組織再編の手法と注意点
会社分割とは、企業が事業の一部を他の会社に移転することで、権利義務を承継させる法的な組織再編手続きです。M&Aにおいては、売却対象の事業を切り出してスムーズに移転させる手段として活用されています。
会社分割の主な種類
会社分割には、以下のような分類があります。
- 新設分割:新たに設立した会社に事業を承継させる
- 吸収分割:既存の他社に事業を承継させる
さらに、分割により得る対価の受け取り先によっても分類されます。
- 分割型分割:対価を分割元会社の株主が受け取る
- 分社型分割:対価を分割元会社自身が受け取る
会社分割のメリットと特徴
会社分割の最大の特徴は、契約・資産・負債などの権利義務を包括的に移転できる点です。これにより、個別契約ごとの承継手続きを省略でき、事業の引き継ぎが円滑に進められます。
また、分割によって整理された事業をその後に売却することで、M&Aの手続きも効率化されます。
税務上の注意点:適格分割と非適格分割の違い
会社分割には税務上の取り扱いに注意が必要です。「適格分割」であれば譲渡益の課税は繰り延べされますが、採用するスキームによっては「非適格分割」に該当します。
非適格分割では、資産が時価で評価され、譲渡益課税やみなし配当課税の対象となるため、税負担が発生します。
また、会社分割と株式譲渡をセットで行う場合、タイミングによって課税リスクが高まるため、スキーム設計は専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。
事業譲渡とは?M&Aで活用される承継手法と税務上の注意点
事業譲渡は、企業が事業の一部または全部を、契約に基づいて他社へ売却するM&A手法のひとつです。
譲渡の対象となる資産・負債・契約関係を個別に指定して承継する点が特徴であり、柔軟性が高い一方で、手続きは煩雑になりやすいという側面もあります。
事業譲渡のメリット:簿外債務を回避しやすい
事業譲渡では、契約書に記載されたものだけが承継対象となるため、買い手企業にとっては、不要な債務やリスクを回避しやすくなります。
特に、簿外債務の存在が懸念されるケースでは、株式譲渡ではなく事業譲渡を希望する買い手企業が多い傾向にあります。
売り手側の税務上の扱い:事業譲渡益に課税
事業譲渡によって得た対価のうち、譲渡対象資産・負債の簿価純額との差額は「事業譲渡益」として、売り手側に法人税が課税されます。
また、事業譲渡には以下のような消費税に関する注意点もあります。
課税資産と非課税資産の両方をまとめて譲渡するため、資産ごとの課税・非課税を区分し課税対象資産部分の消費税を計算する必要があり、それぞれの対価を合理的に区分し、課税・非課税の計算を行う必要があります。
事業譲渡のデメリット:承継手続きが煩雑
個別承継であるため、以下のような実務負担が大きい点はデメリットと言えます。
- すべての契約(従業員との雇用契約含めて)を再締結する必要がある
- 許認可や届出が一から取得し直しとなる場合がある
建材卸売業界の売却の流れは?3つのステップを紹介

建材卸売業界のM&Aを進める場合は、大きく3つのステップに分けて進められます。
- M&Aの準備と助言会社の選定
- 買い手候補先企業との接触、意向表明受領
- 詳細調査(DD)、最終契約とクロージング
それぞれの段階で必要となる準備や手続きが異なるため、流れを把握しておきましょう。
Step1.M&Aの準備と助言会社の選定
はじめに、売却目的と希望条件を整理したうえで、M&A助言会社を選定します。この段階で重要なのは、いくらで売れるかだけでなく、どのような買い手に、どのような形で取引基盤を引き継ぎたいのかを明確にしておくことです。
建材卸売業の場合、評価や条件に影響しやすい論点として、主要取引先(工務店・ハウスメーカー等)との取引年数と契約条件、仕入れ先メーカーとの関係と代理店としての地位、倉庫・配送機能の自社保有か外注か、在庫の品目数と回転率、地域内のシェアと競合環境などが挙げられます。これらを事前に棚卸しし、資料として説明できる状態に整えておくことで、後工程での条件修正を抑えやすくなります。
Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
次に、助言会社を通じて買い手候補へ打診を行います。初期段階では概要資料を提示し、関心を示した企業と秘密保持契約を締結したうえで、財務や運営に関する詳細情報を開示します。
買い手候補は、譲渡価格のレンジ、取引方法、引き継ぎ条件、売却後の運営方針などをまとめた意向表明書を提出します。売り手は、提示金額だけでなく、従業員の処遇、既存取引先との関係維持、倉庫・配送体制の継続なども含めて比較したうえで、基本合意に進むかを判断するのが一般的です。
Step3.詳細調査(DD)、最終契約とクロージング
基本合意後は、買い手による詳細調査が行われます。建材卸売業では、財務・税務・契約関係に加えて、在庫・倉庫・取引先の実態確認も重視されやすい点が特徴です。
特に確認されやすいのは、在庫の品目別評価と滞留在庫の状況、倉庫の立地・面積・賃貸借条件、主要取引先との契約条件と継続性、売掛金の回収サイクルと与信状況、商品別の粗利率と交叉比率(売上総利益/在庫金額)などです。調査結果を踏まえて最終条件を調整し、最終契約を締結します。その後、対価決済と引き渡しを行うクロージングをもって、取引が完了します。
M&Aの流れについてより詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
[M&Aのプロセス]
建材卸売業界の売却の相場は?価値算定方法を解説
建材卸売業界のM&Aにおける売却価格は、「〇〇円が相場」と一律に決まるものではありません。実務では、取引基盤の安定性、倉庫・配送機能の価値、在庫の質を総合的に評価したうえで、最終的に売り手と買い手の交渉によって価格が決定されます。
建材卸売業は、地域内の工務店・ハウスメーカーとの取引関係、メーカーとの仕入れルート、倉庫・配送機能が評価の中心になりやすく、同規模の売上であっても、地域シェアや在庫の健全性によって評価額が大きく変わりやすい業態です。
特に、特定の地域で高いシェアを持つ企業や、自社倉庫と配送網を保有する企業は、取引先と物流機能を一体で取得できる点で、買い手にとっての魅力が大きく、評価が高くなりやすい傾向があります。
こうした理由から、建材卸売業のM&Aでは、まず企業価値を算定し、そのうえで負債や現金などを考慮して株式価値を算出するという流れで、評価の全体像を整理するのが一般的です。
以下では、その基本的な考え方について解説します。
1.企業価値を算定する
建材卸売業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。
理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。
本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。
マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。
- 類似会社比較法
- 類似取引比較法
類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。
具体的には、以下のように算定します。
EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)
EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。
また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかによって、算定結果は大きく左右されます。
2.株式価値を算定する
企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。
企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値
第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。
なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。
しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。
M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]
また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
建材卸売業界で企業を売却する3つのメリット
建材卸売業でM&Aを活用するメリットは、経営者個人の利益にとどまりません。適切な承継は、従業員の雇用や地域の建設業者への安定供給といった関係者の利益を守る手段にもなります。
- 従業員の雇用と商品知識を維持できる
- 経営者は売却益を得られる
- 地域の建設業者への安定供給体制を守れる
ここでは、売り手にとって特に重要な3つのメリットを解説します。
従業員の雇用と商品知識を維持できる
建材卸売業は、多品種にわたる商品知識や配送ノウハウを持つ従業員によって事業が支えられています。廃業を選択した場合、従業員は職場を失い、長年にわたって蓄積された商品知識や取引先との関係も散逸してしまいます。
M&Aにより事業が承継されれば、従業員の雇用を維持しながら商品知識や取引ノウハウも引き継げるケースが多く、売り手にとっては、人材と知見を守りながら事業を引き継げる点が大きなメリットです。
経営者は売却益を得られる
M&Aによる売却は、これまで築いてきた取引先ネットワークや仕入れルート、倉庫・配送機能を含む事業価値を資金化する手段です。得られた売却益は、引退後の生活資金や資産承継、次の事業への投資などに活用できます。
後継者不在のまま廃業した場合、在庫の処分や倉庫の原状回復に費用がかかり、取引基盤の価値を十分に回収しにくくなります。M&Aであれば、事業の継続性を前提に価値が評価されるため、経営者は合理的に出口を設計しやすくなります。
地域の建設業者への安定供給体制を守れる
建材卸売業は、地域の工務店やハウスメーカーにとって日常的な資材調達先として機能しています。突然の廃業は、取引先にとって代替の仕入れ先確保や価格交渉のやり直しが必要となり、工事の遅延やコスト増につながる可能性があります。
M&Aによって承継されることで、倉庫・配送体制や在庫を維持しながら事業が続けられるケースも多いため、地域の建設業者への供給責任を果たしながら事業を引き継げる点は、売り手にとっても大きなメリットといえます。
建材卸売業界で企業を売却する際の3つのポイント
建材卸売業でM&Aを成功させるためには、単に売上があるだけでは不十分です。買い手は、取引基盤の安定性、在庫の健全性、倉庫・配送機能の価値を厳しく確認します。
- 取引先と在庫の実態を整理する
- 事業の属人性を下げる
- 信頼できる専門家を活用する
ここでは、建材卸売業の売却を検討する際に特に重要な3つのポイントを解説します。
取引先と在庫の実態を整理する
建材卸売業の価値は、財務数値だけでなく、取引先との関係性、在庫の健全性、倉庫・配送機能の効率に大きく依存します。買い手は、多品種の在庫管理が適切に行われているか、倉庫面積あたりの収益性が健全かを慎重に見ます。
そのため、売却前に以下の点を棚卸しし、説明できる状態にしておくことが重要です。
- 主要取引先の一覧と取引年数、契約条件
- 商品別の粗利率、回転率、在庫数の定期チェック状況
- 交叉比率(売上総利益/在庫金額)の推移
- 倉庫の所有/賃借の状況と面積・立地条件
- 配送エリアと配送コストの構造
この整理が不十分だと、DDを経て価格が下がったり、取引自体が止まったりする要因になります。
事業の属人性を下げる
建材卸売業の評価を下げやすい要因の一つが、オーナーや特定の営業担当者への過度な依存です。仕入れ交渉、価格設定、得意先対応がキーパーソンに集中している場合、買い手からは引き継ぎにくい事業と判断されやすくなります。
属人性の観点から評価を高めるためには、以下のような取り組みが重要です。
- 取引先情報と商品マスタの一元管理
- 仕入れ基準と価格設定ルールの可視化
- 営業プロセスの標準化と担当者の複数化
- 在庫管理・発注フローのシステム化
属人性を下げることで、人が変わっても事業が維持できる企業として評価されやすくなり、買い手の選択肢も広がります。
信頼できる専門家を活用する
建材卸売業のM&Aは、一般的な事業売却に比べて、多品種の在庫評価、倉庫・配送機能の引き継ぎ、取引先との契約関係といった論点が複雑になりやすい領域です。準備や設計が不十分なまま進めると、売却後にトラブルが生じるリスクもあります。
そのため、以下のような専門家の支援を受けることが重要です。
- FAをはじめとした売り手側に立つM&A助言会社
- 税理士・弁護士などの専門家
- 契約条件や引き継ぎ計画を設計できる支援者
売り手専属のFAを活用すれば、価格交渉や条件調整においても、売り手の利益を優先した交渉を進めやすくなります。
感情に左右された場当たり的な判断を避けるという観点でも、第三者による専門的な視点は不可欠といえるでしょう。
建材卸売業界での企業売却にかかる税金とは?
企業を売却する際には、売却益に対して税金が発生します。この税金の仕組みは、「個人オーナーが売却する場合」と「法人が株式を譲渡する場合」で異なるため、正しく理解しておくことが重要です。個人・法人別にわかりやすく解説します。
個人オーナーの場合
個人が自社株などの株式を譲渡し、譲渡益(売却益)が発生した場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。
課税の仕組み
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
この譲渡所得には、以下の税が課せられます。
- 所得税(復興特別所得税含む)
- 住民税
給与所得などとは分離して課税されるため、所得の合算は不要ですが、確定申告が必要です。
ただし、ミニマムタックスに該当する場合は給与所得等の他の所得との合算して算出する必要があるため、適切に節税するためには、事前に税理士など専門家への相談が欠かせません。
法人の場合
法人が保有する株式を譲渡した場合、その売却益は法人の「益金(収益)」として扱われ、他の事業収益と合算されて法人税等が課税されます。
法人の場合の税務処理
- 譲渡益は法人所得として計上され、通常の法人税率で課税
- 譲渡損失が出た場合、他の所得と損益通算が可能
- 所得と損失の調整により、柔軟な節税が可能
評価差額にも注意
帳簿価額と時価の差(含み益)がある場合、譲渡時に課税対象となる可能性があります。
まとめ
建材卸売業界は、住宅設備・建材市場の堅調な推移やリフォーム需要の拡大を背景に一定の市場性がある一方で、新設住宅着工戸数の中長期的な減少、建材価格の高騰、人材不足といった構造的な課題に直面しています。特に中小の建材卸売業者にとっては、単独での仕入れ交渉力や配送効率に限界が生じやすく、M&Aは事業の継続と競争力強化を図るための現実的な選択肢となっています。
売却を成功させるためには、取引先との関係性や在庫の健全性の整理、属人性の低減などについて、専門家の支援を受けながら早期から適切な準備を進めることが欠かせません。
RISONALでは、売り手に特化したFAサービスを提供しています。専属のエージェントがお客様の希望に沿った取引を実現するため、最適なサポートを行います。より高い評価額での売却を目指したアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を抑えた成約も可能です。
建材卸売業界のM&Aでは、買い手目線で条件調整が進みやすい仲介型の支援の場合、価格や引き継ぎ条件が売り手に不利になるケースも少なくありません。そのため、誰の利益を最優先に交渉するのかを明確にした支援体制が重要です。
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