会計事務所業界のM&A事情とは?業界動向や事例を解説!

2025.05.30

公開日:2025.05.30

2025.05.30

2026.03.10

更新日:2026.03.10

2026.03.10

会計事務所業界のM&A事情とは?業界動向や事例を解説!

昨今、会計事務所業界では売上高・事業所数ともに増加傾向にある一方、後継者不足や人材の確保といった課題を抱えており、M&Aが活発に行われるようになっています。会計事務所業界では、事業承継や人材確保、顧問先の維持を目的として、M&Aが有効な手段として注目されています。

では、具体的に会計事務所業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の会計事務所業界のM&A動向を解説します。さらに、会計事務所におけるM&Aのメリットや注意点、よくある質問も紹介しているため、M&Aを検討している方はぜひ参考にしてください。

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会計事務所の定義

「会計事務所」という名称に、実は法律上の明確な定義はありません。実務上は、記帳代行や経営コンサルティングを主軸とする資格を持たない事業者から、税理士法に基づく独占業務(税務代理など)を担う税理士事務所まで、幅広い会計・財務業務を遂行する事業者の呼称として使われています。

M&Aを検討する際は、対象となる事務所が「どの業務領域で収益を上げているか」を正確に切り分けることが重要です。

会計事務所と税理士事務所の違い

資格に紐づく独占業務の有無が最大の壁です。税理士事務所は税理士法に縛られるため、買い手にも同等の資格や法人格が求められるケースが大半です。対して、広義の会計事務所は、バックオフィス支援など業務範囲が多岐にわたるため、一般企業やシステムベンダーなど異業種からの買収ニーズも存在します。

この違いは、M&A実務において買い手候補の幅に直結します。税理士事務所・税理士法人のディールでは、買い手側にも同等の資格や法人格が求められるなど、法的なハードルがつきまといます。対して、税務の独占業務を持たず、コンサルティングや記帳代行を主軸とする広義の会計事務所であれば、一般事業会社やシステムベンダーなど、異業種からの買収ニーズも幅広く取り込むことが可能です。

会計事務所業界の動向

会計事務所業界は国内外で着実に成長を続けており、市場の拡大とともに業界構造にも大きな変化が起きています。

総務省・経済産業省の「経済センサス」によると、国内では、売上高が平成24年の1兆1,975億円から令和3年には1兆9,022億円まで増加し、事業所数も平成21年の24,583から令和3年には30,479へと拡大しました。

公認会計士事務所・税理士事務所の売上高・事業所数の推移

総務省・経済産業省「経済センサス

売上高の増加や事業所数の拡大は、企業の会計・税務業務の外部委託ニーズや、コンプライアンス強化に対応するためのサービス需要の高まりが背景にあります。

一方、世界市場ではビッグ4と呼ばれる大手会計事務所(Deloitte、PwC、EY、KPMG)が圧倒的なシェアを持ち、コンサルティング業務を中心に売上を伸ばしています。地域別では北米が主導的地位を維持していますが、中国をはじめとするアジア太平洋地域の成長も顕著です。また、各国で監査人の独立性確保に向けた法整備が進み、業界全体の信頼性向上にも寄与しています。

こうした中で、ネットワークやアソシエーションによる国際的な連携や、業務の高度化・効率化を目的としたアウトソーシングの活用も広がっており、今後も多様なサービス展開が進むと見込まれます。

会計事務所業界のM&A動向

会計事務所業界では後継者不在や経営者の高齢化といった構造的課題を背景に、M&Aの活用が加速しています。とくに中小規模の会計事務所では、事業承継の手段として第三者への譲渡を検討するケースが増えており、それに伴ってM&Aの動きも活発になっています。

実際のM&Aにおいては、同業種の企業による買収が一般的です。顧問先の引き継ぎや人材確保をスムーズに進められる点が評価されており、業界内での再編が進んでいます。

一方で近年は異業種からの参入も目立ち、コンサルティングファームやIT企業がM&Aを通じて会計業界へ進出している状況です。

会計事務所が持つ専門的知見や顧客基盤に価値を見出す動きが背景にあり、DX推進やITソリューションとの親和性を求めるケースが増えています。買い手企業にとってもM&Aによる事業拡大や収益力強化は大きなメリットであるため、今後もこの流れは続くとみられています。

なお、税理士業界における後継者不足の要因や、そうした環境下で働くメリット・注意点については、以下の公開記事も参考になります。人材事情を把握する際の一助としてご覧ください。

※参考:ジョブノック「税理士事務所に後継者がいない要因とは?働くメリットは?

会計事務所業界のM&Aの流れ

会計事務所業界のM&Aの流れ

会計事務所業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。

[M&Aのプロセス]

会計事務所業界におけるM&Aのスキーム

会計事務所のM&Aスキームは、組織形態により決定されます。個人事業主は「事業譲渡」、税理士法人は「株式(持分)譲渡」が一般的です。

個人事業で用いる事業譲渡は、特定の事業のみを切り出す「一部譲渡」も可能ですが、顧問契約や従業員の雇用、システム契約を個別に巻き直す「個別承継」となるため、移行時の顧客離れや離職リスクを伴います。

また、税務面でも大きな違いがあります。株式譲渡が約20%の分離課税であるのに対し、事業譲渡はのれん代が最大55%の総合課税となり、消費税も課税されます。

スキーム選択は実務の手間と手取り額に直結するため極めて重要です。

会計事務所業界のM&Aのメリット

会計事務所業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・既存顧問先との信頼関係を維持できる
・個人保証を解除できる

それぞれ詳しくみていきましょう。

事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。

一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。

既存顧問先との信頼関係を維持できる

会計事務所にとって、顧問先との信頼関係は事業の基盤です。廃業や経営者の交代によってその信頼が損なわれると、契約解消や顧問先の離脱につながるリスクがあります。

しかし、M&Aによって同業の買い手に引き継がれる場合、これまでの対応実績や担当者体制を維持することで、顧問先の安心感を保ちやすくなります。

買い手企業が同業であれば、サービスの継続性や専門性が担保され、顧客離れのリスクを最小限に抑えることが可能です。

このように、M&Aは単なる事業譲渡にとどまらず、長年築いてきた顧問先との関係を未来へ引き継ぐ手段として、大きなメリットがあります。

個人保証を解除できる

中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていないのが現状です。

M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。

会計事務所業界のM&Aの相場

会計事務所業界のM&Aの相場

会計事務所業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。

これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。

その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。

会計事務所業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

・類似会社比較法
・類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]

会計事務所業界のM&Aを成功させるポイント

会計事務所業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・顧問先・スタッフの引き継ぎ体制を整える

それぞれ詳しく解説します。

適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。

自社の正当な収益力・財務状況を把握する

売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。

税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。

顧問先・スタッフの引き継ぎ体制を整える

会計事務所のM&Aでは、単に株式や契約を引き継ぐだけでなく、「人」と「信頼」のスムーズな継承が成功の鍵です。顧問先との長期的な関係や所員一人ひとりの知見・経験は、目に見えない資産として事務所の価値を支えています。

M&A成約後に顧問契約が解除されたり、キーパーソンとなるスタッフが離職してしまえば、譲渡価格以上の損失が発生するリスクもあります。そのため、買い手との信頼関係構築や業務の段階的移行、スタッフとの丁寧なコミュニケーションを通じた不安解消など、人的側面での準備が欠かせません。

経営者が自ら顧問先への説明を行ったり、引き継ぎ期間を設けたりすることで、M&A成約後の定着率と継続率を高めることができます。このように配慮のある進め方が、M&Aが真に成功するかどうかを左右する要因です。

会計事務所業界のM&Aにおける注意点

売り手として希望価格での譲渡を実現し、その後のトラブルを防ぐには、顧問先と従業員をいかにそのまま引き継ぐかが重要です。

事務所の価値の源泉は、顧客との信頼関係と実務を回す職員そのものであり、これらが流出すれば譲渡価格は容赦なく減額されます。ここでは、売り手が意識すべき3つの注意点を解説します。

顧問契約の解消

顧問先は事務所の看板ではなく、代表者や担当者を信頼しています。M&Aを機に担当者が変わり、報酬改定まで重なれば、顧問先は簡単に離脱します。大量解約が起きれば、譲渡価格の減額や損害賠償に発展しかねません。

これを防ぐには、どの顧問先に、いつ、どのように挨拶するか、引き継ぎのシナリオを買い手と事前に綿密に設計し、今後もサービス品質は落ちないと納得してもらうことが、売り手の最大の責務です。

従業員の離職

長年苦労を共にしたベテラン職員の離職は、事務所の売却において致命傷になります。代表交代への不安や新しい評価制度への警戒から、M&Aの噂が出ただけでエース級の職員が辞めてしまうケースは後を絶ちません。

売り手としては、買い手との基本合意の段階で現在の給与水準や雇用条件の維持を絶対条件として確約させ、職員の生活を守るための交渉を妥協なく行う必要があります。

契約・規制への適合

税理士事務所の譲渡では、税理士法違反に巻き込まれないよう、買い手が税務業務を適法に行える体制を持っているかを、売り手側も厳格に見極める必要があります。

また、事業譲渡の場合、現在使用しているオフィス賃貸借契約や各種業務システムの契約名義が買い手に移転できないと、引き継ぎが頓挫します。対象の契約が本当に移転可能かどうか、売り手自身が事前に確認しておく作業も欠かせません。

会計事務所業界のM&A売却事例

ここでは、会計事務所業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の3つの事例を紹介します。

・ジャスネットコミュニケーションズ×ゼイカイ
・マッチポイント×Future Create
・汐留パートナーズ×中本国際

実際の取引を参考にして、自社の売却に役立ててください。

会計事務所業界のM&A売却事例①:ジャスネットコミュニケーションズ×ゼイカイ

ジャスネットコミュニケーションズは2025年4月1日付でゼイカイの主要事業を譲受しました。対象の事業は、税理士向け新聞「税界タイムス」や会計業界に特化した展示イベント「会計事務所博覧会」などです。

ジャスネットコミュニケーションズは、会計・税務・経理・財務分野に特化した人材紹介、派遣、教育サービスを提供しており、既存の人材領域に加えて情報発信・ネットワークの拡大を目指しています。

ゼイカイは長年にわたり税理士業界向けに専門メディアやイベントを提供してきた企業で、専門性の高い情報資産と業界ネットワークが強みです。

本件M&Aにより、JCは全国の税理士事務所に向けたサービスをさらに拡充し、情報提供と人材支援の両面で会計業界への包括的な貢献を目指します。

会計事務所業界のM&A売却事例②:マッチポイント×Future Create

マッチポイントは、2024年10月5日付でFuture Createと経営統合しました。

マッチポイントは、グループ内に不動産会社やコンサル会社などを擁し、顧問先に対してトータルで支援する体制を構築しているのが特徴です。

Future Createは財務コンサルティングにも強みを持ち、経営戦略の支援を含めた幅広いサービスを提供しています。

本件M&Aにより、双方の知見と人材を結集し、税務・会計に留まらない付加価値の高い支援が可能となりました。顧問先に対して、構想から実行支援まで一貫した対応ができる体制が整備されます。

会計事務所業界のM&A売却事例③:汐留パートナーズ×中本国際

汐留パートナーズは、2022年10月1日付で中本国際と経営統合しました。

汐留パートナーズは、上場企業やそのグループ会社、外資系企業などへの対応を得意とし、国際的な案件にも対応できる体制を備えています。

中本国際も同様にクロスボーダー案件を得意とし、グローバル展開を目指すクライアントへの支援に注力してきました。

本件M&Aにより、国際税務や高度な会計ニーズへの対応力が一層強化され、上場準備企業や海外進出を目指す企業にとっても心強い体制構築が可能となるでしょう。

会計事務所業界のM&Aに関するよくある質問

会計事務所業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

まとめ

会計事務所業界では売上や事業所数の拡大が進む一方で、後継者不足や人材確保といった課題が浮き彫りになっており、M&Aの活用が広がっています。同業間での引き継ぎや、異業種からの参入も活発化しており、事業承継や組織再編の選択肢としてM&Aは非常に有効です。

会計事務所でM&Aを実施すれば、顧問先との信頼関係を維持しながら事業を継続できます。また、従業員の雇用確保や経営者の個人保証の解除といったメリットも期待できるでしょう。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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