後継者不在の印刷業が選んだ事業承継M&A──会社と従業員を託せる相手を見極めた成約の舞台裏
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- 成約インタビュー
公開日:2026.04.24
2026.04.24
更新日:2026.04.24
2026.04.24
案件概要
- 業種/所在地/従業員数:印刷業/関東/約30名
- 譲渡理由:後継者不在
- 成約時期/成約スキーム:2025年5月/株式譲渡
- 案件担当者:片桐康太、森麻里奈
オーナー様がM&Aを検討された背景を教えてください。
(森)対象会社の業績は好調だったものの、同世代のご友人たちが徐々に引退されていくなかで、ご自身としても引退や今後の事業承継について意識されるようになり、当社へご相談いただきました。
(片桐)長年にわたり安定した業績を維持しており、事業自体は順調に推移していました。一方で、将来的な事業承継については明確な後継者がいない状況にあり、このままでは築き上げてきた事業や従業員の雇用を守り続けることが難しくなるのではないか、という不安をお持ちでした。そうしたなかで、会社の価値や強みを理解し、今後さらに発展させてくれる企業へ引き継ぐ方法として、M&Aを前向きに検討されました。
初回面談時の印象を教えてください。
(片桐)初回面談では、オーナー様が長年大切に育ててこられた会社を譲ることに対し、非常に真摯に向き合っていらっしゃる印象を受けました。その一方で、「本当に従業員や取引先にとって良い形になるのか」「会社の文化や想いは守られるのか」といった点について、強いご不安や葛藤も感じられました。
案件初期に感じた課題を教えてください。
(森)M&Aそのものに対する拒否感はなく、ご理解もいただけていた印象です。ただ、創業社長として長く事業を運営されてきたこともあり、オーナー資産の切り離しには相応の時間と労力が必要になるだろう、という課題感を持っていました。
案件成約において意識された点は?
(森)売主様のご希望もあり、単に条件面だけでなく、事業理解が深く、対象会社とのシナジーを大きく発揮していただける企業を選定することを重視しました。
(片桐)そのうえで、オーナー様が長年築いてこられた事業の価値をしっかりと理解し、今後も大切に育ててくれる企業であるかを重視しました。従業員の処遇や取引先との関係性など、承継後の将来像まで見据えながら買い手候補の選定を進め、双方が安心して話し合いを進められるよう、事業内容や強みを丁寧に共有し、相互理解を深めることを意識しました。
成約までに苦労した点と、どう乗り越えましたか?
(片桐)成約までの過程では、売主様の考えやご希望を丁寧に伝えながら、条件面だけでなく、買い手企業側の将来の事業運営に関する認識とのすり合わせに時間を要する場面がありました。交渉や情報共有を重ねるなかで、お互いの理解を深め、少しずつ信頼関係を築いていくことが重要でした。
(森)買い手企業からは受け入れがたい要求が出る場面もありましたが、売主側として譲歩できる点・できない点を明確にし、諦めずに粘り強く交渉を続けました。買い手企業としても本件の実行に対する強い想いがあったため、最終的には売主様にもご納得いただける形で合意に至ることができました。
成約後のオーナー様のご様子はいかがですか?
(片桐)成約後、オーナー様からは「信頼できる企業に事業を引き継ぐことができて安心した」とのお言葉をいただきました。長年経営されてきた会社を手放すことは大きな決断ですが、従業員や事業の将来を考えたうえで、納得できる形で次のステージにつなげられたことに安堵されているご様子でした。
(森)ご自身が第一線で運営されてきた大切な会社と従業員を、信頼できる大企業へ引き継ぐことができたことを喜んでいらっしゃいました。
今回のM&Aを通じて感じたこと・伝えたいことは?
(片桐)今回のM&Aを通じて改めて感じたのは、M&Aは単なる会社の売却ではなく、これまで築き上げてきた事業や想いを次の担い手へ託していく、事業承継の一つの形だということです。経営者の方にとって会社は人生そのものであり、その決断には大きな責任と覚悟が伴います。だからこそ、条件面だけでなく、事業への理解や価値観の共有を丁寧にすり合わせていくことが重要だと考えています。
(森)M&Aは単に「売り渡す」行為ではなく、オーナー様が人生をかけて大切に育て、守り抜いてきた会社と従業員を、次世代へつなぎ、さらに飛躍させていくための手段でもあると改めて感じました。
案件担当者からのメッセージ
片桐 康太
M&Aに決まった正解はありません。企業の状況や経営者様の想いによって、最適な進め方は大きく異なります。だからこそ、まずは一度、率直なお考えをお聞かせいただければと思います。
経歴
三菱UFJ銀行 M&A ファイナンスグループにて LBO ファイナンス業務に従事。LBO チームヘッドとして、PE ファンド等による多数の買収案件のファイナンスアレンジメント業務に関与。
三菱UFJ銀行以前は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券 M&A アドバイザリーグループにて、フィナンシャル・アドバイザリー業務に従事。事業承継、資本業務提携、TOB、組織再編等多岐にわたる案件にてアドバイザリーサービスを提供。
早稲田大学卒。東京大学大学院修了。
森 麻里奈
M&Aにはさまざまな形があります。オーナー様がどのような想いで譲渡を考えられているのか、どのような譲渡先を望まれているのかによって、取るべき進め方は変わります。オーナー様の想いに沿ったM&Aを実現できるよう、全力でご支援いたします。
経歴
デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーにて、製造業、小売、インフラ等を中心に、日本企業に対しM&Aアドバイザリーサービスを提供。デロイト関連会社及びDeloitte LLP(ロンドン)にて、ファイナンシャルアドバイザリーサービスのグローバル戦略策定支援にも従事。
デロイトグループ以前は、新日本監査法人にて、化学、鉄鋼、製造、商社等を中心に上場・非上場企業に対する会計監査業務を提供。また、AIスタートアップにて経理部長として従事した経験もある。
大阪大学経済学部卒。公認会計士。
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