「中小企業の事業承継にFAを」(日経新聞への掲載記事)
公開日:2022.07.05
2022.07.05
更新日:2024.05.31
2024.05.31

中小企業経営者の高齢化を背景に起業の休廃業・解散件数は増加傾向にあり、近年は年間4万件を超える。このうち過半数の企業は黒字とされる。
価値ある企業が後継者不在で廃業するのを避けるため、M&A(合併・買収)を通じた事業承継は欠かせない手段になりつつあり、政府は年間6万件を目標にM&Aによる第三者承継を補助金などで支援している。
しかし、中小企業のM&Aで一般的な「両手仲介」の場合、仲介事業者は売り手と買い手の両方から手数料を受け取るため、利益相反の恐れが指摘される。中立を保てたとしても、どちらか一方の利益のために助言を提供することは難しく、両者の妥協点を探る交渉支援などに機能が限られる。
ほとんどの経営者にとって事業譲渡は一生に一度の一大イベントである。当然、自己利益のために支援してくれる専門家を必要としているが、M&A仲介業者は売り手の利益の代弁者になり得ない。案件成立を優先し、価格を低く抑えるなど買い手の要望を通そうとする誘因が働くからだ。売り手が不利な条件の契約締結を仲介業者から提案されたり、セカンドオピニオンの利用を拒否されたりするケースも散見される。
大手M&A仲介会社は自主規制団体を設立し、仲介サービスの品質向上と業界の健全な発達を目指しているが、両手仲介には構造的な限界があると考えられる。
上場会社などの大企業のM&Aはファイナンシャルアドバイザリー(FA)サービスが一般的だ。大手金融機関や監査法人などがサービス提供者となる。FAは顧客に専属して顧客の利益追求を支援しその対価として報酬を得る。取引相手からは手数料を取らない。大企業では経営者が株主などステークホルダーへの経営責任を果たすため、自社の利益追求を支援してくれる専門家を起用している。
中小企業のM&Aは、マッチングプラットフォームなど売り手と買い手を仲介するサービスは充実してきた。ただ、M&Aが事業承継の手段として一層活用されるには、売り手の利益の保護が欠かせない。
そのためには中小企業のM&Aにおいても当事者、特に売り手の利益追求を支援するFAサービスの普及が必要と考える。
本稿は、日本経済新聞 2022年7月5日朝刊「私見卓見」に掲載された当社代表 作田が寄稿した記事を転載したものです。
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