日用雑貨業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

2025.03.31

公開日:2025.03.31

2025.03.31

2025.10.31

更新日:2025.10.31

2025.10.31

日用雑貨業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

昨今、日用雑貨業界は市場規模が増加傾向にありますが、激化する競争で生き残るためにM&A取引が活発に行われるようになっています。

また、日用雑貨理業界では、小規模企業と大手企業の二極化が深刻な問題となっており、M&Aが有効な解決手段として注目されています。

では、具体的に日用雑貨業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の日用雑貨業界のM&A事情を解説します。さらに、日用雑貨業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、M&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。

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日用雑貨業界とは?業界の現状を解説

日用雑貨業界の動向

まず、日用雑貨業界の動向として、市場規模と業界の課題を解説します。

M&Aを実施するうえで把握しておきたい前提事項となるため、ぜひ参考にしてください。

日用雑貨業界の定義

日用雑貨業界とは、キッチン用品・掃除用品・収納グッズなど、日常生活に欠かせない雑貨を企画・製造・販売する産業を指します。

川上に位置するメーカーは、素材の選定や商品開発、デザインを担い、川下の小売業はスーパー、ホームセンター、専門店を通じて商品を消費者に届けています。近年では、ECサイトや定期購入サービスといった販路も拡大しており、暮らしのあらゆる場面に商品が浸透しているといえるでしょう。

このように、幅広い流通網と消費者の生活に密着している点が、業界の大きな特徴です。

日用雑貨業界の動向

日用雑貨業界は、社会の変化や生活スタイルの多様化を強く反映する産業です。100円ショップやホームセンターの成長に加え、ECの普及によって購入手段が広がり、消費者の購買行動も大きく変化しています。

一方で、低価格競争が続く中、各社はデザイン性や機能性を高めたオリジナル商品の開発に注力しています。また、環境意識の高まりを背景に、リサイクル素材やエコ商品への需要が拡大し、持続可能性を重視した商品戦略が求められています。

さらに、コロナ禍を契機に衛生関連雑貨の需要が急増し、オンラインと実店舗を融合させた販売戦略(OMO)も広がりました。こうした変化に柔軟に対応できるかどうかが、今後の業界成長を左右するでしょう。

日用雑貨業界の市場規模

業界動向リサーチによると、近年、トイレタリー市場は安定した成長を続けています。矢野経済研究所の調査では、2023年度の国内トイレタリー用品50品目の市場規模は2兆1,487億円で、前年度比102.8%と好調を維持しています。

一方、日用雑貨や生活雑貨、インテリアを含む広い分野も堅調に推移しています。EC市場のデータによれば、生活雑貨・家具・インテリアのBtoC市場規模は2023年に2兆4,721億円を記録し、2024年には2兆5,616億円へ拡大する見通しです。

さらに、化粧品や日用品を合わせた55カテゴリー全体では、2024年に5兆4,289億円へと成長すると予測されています。生活の質を重視する傾向が続き、消費者の関心は「便利さ」と「デザイン性」の両立へと移行しています。

このように、日用雑貨業界は安定した需要に支えられながら拡大傾向にあり、今後も堅調な成長が見込まれます。

サービス・運営形態の多様化

日用雑貨業界では、従来のスーパーやホームセンターによる販売に加え、サブスクリプション型や定期購入サービスが広がっています。特に日用品は消耗品としての特性が強く、定期配送の需要が高いため、安定した収益モデルを築きやすい点が特徴です。

また、ECモールや自社ECサイトを通じた直販も拡大しており、D2C(Direct to Consumer)モデルを導入する企業も増えています。実店舗では、体験型売り場や専門性を打ち出した陳列を取り入れることで、消費者に付加価値を提供する動きが進んでいます。

このように、複数の販売チャネルを組み合わせることが競争力につながり、変化に柔軟に対応できる企業が業界内で優位に立つといえるでしょう。

高齢化社会の進展

高齢化の進行に伴い、日用雑貨業界でもシニア層を意識した商品開発が進んでいます。安全性を重視した調理器具や、持ちやすさ・軽量性を追求した掃除用品など、使いやすさを重視した製品への需要が高まっています。

また、健康志向の高まりを背景に、介護補助グッズや生活支援雑貨の市場も拡大しています。購買力を持つシニア層は、生活の質を高める商品を積極的に選ぶ傾向にあり、この層への訴求が今後の成長の鍵になるでしょう。

一方で、小売現場では高齢顧客への接客対応や、高齢スタッフの雇用といった課題も存在します。高齢化は業界にとって大きな転換点であり、戦略的な対応が持続的成長を左右するといえます。

新型コロナウイルスの影響

コロナ禍では、マスクや消毒液、清掃用品などの衛生雑貨の需要が急増し、市場が一時的に拡大しました。外出自粛の影響でオンライン購買や日用品のまとめ買いニーズが定着し、ECシフトが加速した点も特徴です。

一方で、実店舗では来客数の減少により在庫調整や仕入れ戦略の見直しが必要となりました。さらに、供給網の混乱によって商品の安定供給が難しくなるケースもあり、流通リスク管理の重要性が浮き彫りになりました。

その後、需要は落ち着いたものの、OMO(Online Merges with Offline)戦略を導入する企業が増え、購買行動の変化は定着しています。コロナ禍は業界全体に大きな転換をもたらし、デジタル化と柔軟な供給体制の構築を加速させたといえるでしょう。。

日用雑貨業界のM&A動向とは?

日用雑貨業界のM&A動向

日用雑貨業界では、事業規模の拡大やブランド力の強化を目的としたM&Aが活発に行われています。

本業界では、従来はできるだけ安く仕入れて売ることが日用雑貨業界の一般的なビジネスモデルでした。しかし、大手企業と個性的な特徴を持つ小規模企業の二極化が進む中で、小規模企業が激化する競争についていけず、廃業となるケースも少なくありません。

日用雑貨業界は参入障壁が低く、競争が激しい業界です。そこで、小規模企業が事業を継続するために、M&Aを実施するケースが増えています。また、シナジー効果や業務効率化を目的としてM&Aを実施する企業もみられます。

同業種間でのM&A

同業種間でのM&Aは、日用品メーカーや販売事業者同士が統合することで規模を拡大し、経営基盤を強化する狙いがあります。仕入れや物流を一本化すれば、原材料や商品の調達コストを引き下げられ、輸送効率の向上や在庫管理の合理化にもつながります。

さらに、ブランドや販売網を共有することで、これまで地域限定で展開していた企業が全国レベルへと成長するケースも少なくありません。こうした統合によってコスト削減と競争力強化を同時に実現し、業界内での生き残りを図る手段として注目されています。

異業種間でのM&A

異業種間でのM&Aは、新しい販路の開拓や商品開発力の強化を目的として広がっています。例えば、小売やEC事業者との提携によって販売チャネルを拡大し、多様な商品を消費者に届けられる体制を整えることが可能です。

また、IT企業や物流事業者のノウハウを取り入れることで、効率的な在庫管理やデジタルマーケティングを強化し、顧客体験の向上につなげています。異業種とのシナジーによって、新しいサービスモデルや市場を創出する動きも加速しています。

このように、異業種間M&Aはリスク分散と成長戦略を兼ね備えた手法として、今後も拡大していくと考えられます。

日用雑貨業界のM&Aの流れ

日用雑貨業界のM&Aの流れ

日用雑貨業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]

日用雑貨業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

日用雑貨業界のM&Aのメリット

日用雑貨業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・売却利益を獲得できる
・個人保証を解除できる

・ブランド戦略の強化
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

それぞれ詳しくみていきましょう。

日用雑貨業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。

一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。

日用雑貨業界のM&Aのメリット②:売却利益を獲得できる

日用雑貨業界でM&Aを実施すれば、会社を売却した際に売却利益を獲得できます。会社を売却するだけあり、その金額は一般的に大きくなります。

売却利益を獲得できれば、負債の返済や新規事業の資金など、さまざまな方法での活用が可能です。また、引退後の資金としてハッピーリタイアするケースもあります。

日用雑貨業界のM&Aのメリット③:個人保証を解除できる

中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていないのが現状です。

M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。

日用雑貨業界のM&Aのメリット④:ブランド戦略の強化

M&Aを通じて有名ブランドや人気商品の権利を獲得することで、自社のブランド価値を高められる点は大きな魅力です。単独では難しい新規顧客層へのアプローチも、買い手企業の販路やマーケティング資源を活用すれば効率的に拡大できます。

例えば、大手小売グループの傘下に入ることで、全国規模の店舗網やECプラットフォームを活用でき、販売チャネルの拡大が実現します。さらに、広告やキャンペーンを共同で展開すれば、商品の認知度は飛躍的に高まり、販売力の底上げにつながるでしょう。

このように、既存顧客の信頼を維持しながら新しい顧客層を取り込める点で、M&Aは日用雑貨業界におけるブランド戦略の強化策として有効な手段といえます。

日用雑貨業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

日用雑貨業界でも、後継者不足や経営リスクの集中は深刻な課題となっています。M&Aは事業承継を円滑に進める有効な手段であり、経営者個人の負担を大きく軽減できる点が強みです。

特に中小規模の企業では、金融機関からの借入に経営者保証が求められるケースが多く、承継時のリスクが障壁となってきました。M&Aによって大手グループの一員となれば、財務基盤の安定や資金調達力の向上が期待できます。

結果として、経営リスクを分散しながら、新たな投資や事業展開にも積極的に取り組める環境が整います。M&Aは単なる事業売却ではなく、安定した成長と持続可能な経営を実現するための手段といえるでしょう。

日用雑貨業界のM&Aの相場

日用雑貨業界のM&Aの相場

日用雑貨業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。

これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。

その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。

日用雑貨業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

・類似会社比較法
・類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]

日用雑貨業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

日用雑貨業界のM&Aのポイント

日用雑貨業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・シナジー効果が見込める企業と取引をする

それぞれ詳しく解説します。

日用雑貨業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。

日用雑貨業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する

M&A助言会社に求められる能力は多岐にわたります。法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、そして顧客の立場に寄り添って助言を提供できる姿勢が求められます。さらに、M&Aにおける売り手・買い手双方の行動原理を理解し、それを交渉に活かせることも重要です。

真に顧客に寄り添える立場であるかを見極めるためには、売り手・買い手の双方から報酬を受け取る仲介会社ではなく、売り手と同じ立場で事業オーナーに助言する会社(FA)を選ぶことが大切です。

また、その会社に所属するアドバイザーの知識・経験・ノウハウなど、FAサービスの品質そのものも慎重に確認すべきポイントです。

日用雑貨業界のM&Aのポイント③:シナジー効果が見込める企業と取引をする

これまで育ててきた会社がM&A後に発展できるかどうかは、買い手企業の選定によって大きく左右されます。買い手候補を選ぶ際は、事業の方向性や経営資源においてシナジー効果が見込まれる企業を検討することが重要です。

シナジー効果を発揮できれば、事業の成長や競争力の強化が期待できます。一方で、経営方針や企業文化の相性が合わなければ、売上の低下や従業員の離職につながるおそれもあります。

そのため、短期的な条件だけでなく、中長期的な発展を見据えた買い手選定が欠かせません。

日用雑貨業界のM&A売却事例6選

日用雑貨業界のM&A売却事例

ここでは、日用雑貨業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。

・サックスバーホールディングス×ギアーズジャム
・綿半ホールディングス×藤越
・日本成長投資アライアンス×Francfranc

・イオン×キャンドゥ
・クスリのアオキHD×一二三屋
・ニトリHD×島忠

実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。

日用雑貨業界のM&A売却事例①:サックスバーホールディングス×ギアーズジャム

サックスバーホールディングスは2022年10月3日付でギアーズジャムを買収し、全株式を取得しました。

サックスバーホールディングスは、東京デリカ、アイシン通商、ロジェールジャパンなどをグループ会社として保有しており、経営管理および不動産管理を行っています。

ギアーズジャムは2010年に設立され、売上高は14億8,500万円です。メンズバッグや財布、雑貨などの小売販売を行っており、「ギアーズジャム」「ジャムハウス」のショップブランドを有しています。また、リーズナブルな価格帯を中心とした商品構成で2店舗を展開しています。

本件M&Aによって、サックスバーホールディングスは傘下で東京デリカがほとんど取り扱っていないリーズナブルな価格帯を中心とした商品構成の店舗として、出店機械を増加させ、業者拡大につなげることを目指しています。

日用雑貨業界のM&A売却事例②:綿半ホールディングス×藤越

綿半ホールディングスは、傘下でグループの共同仕入れ業の綿半パートナーズを通じて、2021年11月1日付で藤越を買収し、全株式を取得しました。

綿半ホールディングスは、小売事業や建設事業、貿易事業などを展開しています。綿半パートナーズはグループの共同仕入れ窓口として国内外のメーカー・問屋からの商品仕入れとプライベートブランド商品の開発並びに相互供給を行っています。

藤越はインテリアショップ「FUJIGGICOSI」を展開しており、家具・インテリア・雑貨・アパレルの販売事業を行っています。ヴィンテージスタイルの家具や雑貨を多数取り揃え、トータルコーディネートした売場展開により、独自スタイルを築いてきました。また、インターネット通販の展開や自社の物流センターで家具の商品管理・配送も手がけています。

本件M&Aによって、綿半ホールディングスは仕入れ機能の共有化による取扱商品の拡充、インターネット通販・家具配送のノウハウ共有を図っています。

日用雑貨業界のM&A売却事例③:日本成長投資アライアンス×Francfranc

日本成長投資アライアンスは運営するJ-GIA2号投資事業有限責任組合を通じて、2021年8月31日付でFrancfrancを買収するとしました。

Francfrancは、創業者である高島郁夫氏が香港に設立した資産管理会社を通じて約51%を、セブン&アイ・ホールディングスが直接保有分と間接保有分を併せて約49%を、それぞれ出資しています。

J-GIAは出資などにより51%の株式を取得する予定です。これに伴い、高島郁夫氏の出資比率は25.5%、セブン&アイ・ホールディングスの出資比率は23.5%となります。

日本成長投資アライアンスは、主にファンドの形成と運用、投資先企業に対するアライアンス・パートナーと連携した経営支援を行っています。日本たばこ産業や博報堂をアライアンス・パートナーとして、投資先企業に経営力やブランドづくり、PRなどの支援を提供している企業です。

Francfrancは1990年に設立され、売上高は298億9,000万円です。インテリア雑貨や家具の企画・販売を通じてライフスタイルを提案しており、差別化されたブランド力・商品力を武器にコアファン層を拡大し、オペレーションの磨き込みにより販売力を向上させ、高収益を生み出す体制を構築しています。

本件M&Aによって、新たな経営体制のもとで「Francfranc」ブランドの発展やECチャネルの強化などのDX化推進を図っています。

日用雑貨業界のM&A売却事例④:イオン×キャンドゥ

イオンは2021年10月14日付でキャンドゥ株式の公開買付けを開始し、連結子会社化を決定しました。買付価格は1株2,700円で、筆頭株主とも応募契約を締結しています。

イオンは総合流通グループを統括し、ショッピングセンター、金融、サービスなどを多角的に展開しています。

キャンドゥは1993年設立の100円ショップ運営会社で、国内外に約1,100店を展開し、直営とFCの両輪で成長してきました。

本件により出店機会や共同調達の効率化が進み、価格と品揃えの競争力が一段と高まるといえるでしょう。子会社化後も上場は維持される方針が示されました。

日用雑貨業界のM&A売却事例⑤:クスリのアオキHD×一二三屋

クスリのアオキHDは2021年11月4日に一二三屋の全株式取得を決議し、2022年3月1日に子会社のクスリのアオキが吸収合併しました。取得価額は非開示です。

同社はドラッグストアと調剤薬局を核に、食品・日用品を扱うワンストップ型の店舗を東日本中心に展開しています。

一二三屋は1990年設立の福島県いわき市の食品スーパーで、売上高約24.7億円、4店舗を運営し、地域密着の生鮮品に強みがあります。

合併により東北でのドミナントが強化され、生鮮と日用品の相互送客や物流効率化が進むと考えられます。あわせて店舗改装による買い物利便性向上も進める計画です。

日用雑貨業界のM&A売却事例⑥:ニトリHD×島忠

ニトリHDは2020年11月13日付で島忠株式の公開買付けを発表し、完全子会社化を通じた経営統合を進めました。TOBは統合と企業価値最大化を目的としています。

ニトリHDは、家具・生活雑貨の製造から販売までを手掛ける製造小売に、物流やITを組み合わせた一貫体制のビジネスモデルを有し、全国に広い店舗網を持つ総合小売グループです。

島忠は1960年設立の家具・ホームセンター運営会社で、売上高は1,466億円規模(2020年8月期)と公表され、関東を中心に展開しています。

統合で商品開発と物流、販売までが一体化し、価格競争力と品揃えの最適化、OMO推進が加速するといえるでしょう。暮らし関連のワンストップ需要に広く応える体制が整うでしょう。

日用雑貨業界のM&Aに関するよくある質問

日用雑貨業界のM&Aに関するよくある質問

日用雑貨業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

日用雑貨業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

日用雑貨業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

日用雑貨業界のM&Aに関するよくある質問③:M&Aの助言会社にはどのタイミングで相談すべきですか?

M&Aを検討し始めた段階で相談するようにしましょう。できるだけ早い方が、理想のM&Aを実現しやすくなります。

逆に、相談が遅くなると取引の際に不利な条件を提示されたり、本来の価値を知られないまま相場よりも安く買収されたりする可能性があります。できるだけ早く相談するようにしましょう。

まとめ

まとめ

日用雑貨業界では、市場規模の拡大が進んでおり、今後も好調を維持するでしょう。しかし、競争が激化する中で、小規模企業は苦しい状況となり、M&Aによって大手企業の傘下となるケースが増えています。

水産加工・卸業界でM&Aを実施すれば、後継者不足を解消でき、事業の継続や個人保証の解除、売却利益の獲得を実現できます。

また、M&Aを実施する際には、自社の収益力や財務状況を確認し、適切なM&A助言会社を選定したうえで、シナジー効果が見込まれる企業と取引をしましょう。

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この記事の著者

RISONAL 編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

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